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博 士 ( 医 学 ) 鯉 沼 潤 吉

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 鯉 沼 潤 吉

学 位 論 文 題 名

Characterization of an Opa Interacting Protein5(OIP5)     Involved in Lung and Esophageal CarclnogeneSiS      (肺癌・食道癌の進行に関わる癌抗原 OIP5 の同定)

     学位論文内容の要旨

【 背 景 と 目 的 】 肺 癌 ・ 食 道 癌 は 共 に 悪 性 度 の 高 い 癌 種 で あ り 、肺 癌は 本 邦の 悪性 腫 瘍に よる 死 亡 数 の 第1位 で あ る 。 治 療 と し て は 外 科 的切 除、 放 射線 化学 療 法に よる 集 学的 治療 が 行わ れて い るも の の末 だ良 好 な治 療成 績 が得 られ ず 、新 たな 治 療法 ・診 断 法の 開発が急務である 。そこで我々 は 肺 癌 ・ 食 道 癌 に おい て高 頻 度、 高レ ベ ルに 発現 が ヒ昇 して い る遺 伝子 を 同定 し、 そ の遺 伝子 の 機 能 解 析 を 行 う こ と に よ っ て 新 規 分 子 標 的 候 補 を 見 出 す こ と を 目 的 と し た 。

【 対 象 と 方 法 】  27,648遺 伝 子 か ら な るcDNAマ イ クロ アレ イ を用 いて 肺 癌・ 食道 癌 の網 羅的 遺 伝 子 発 現 情 報 解 析 を行 い、 肺 癌お よび 食 道癌 組織 に おい て高 頻 度、 高レ ベ ルに 発現 上 昇し てい る 遺伝 子 を抽 出し た 。抽 出し た 複数 の遺 伝 子に 対し 半 定量 的RT−PCRを 施行 し、 癌 にお ける 発現の確 認 を す る と 共 に 、Multiple tissue northern blotを用 いて 正 常組 織で の 発現 を確 認 した 。こ れ ら の 発 現 確 認 実 験 に よ り 、 癌 に 特 異 的 な発 現 をし てい る 遺伝 子と し てOpa interacting protein 5 (OIP5)が 同定 さ れた 。さ ら に新 規診 断 マー カー や 新規 治療 薬 開発 に向けた標的分子 抽出のための high‑throughput screeningの 延 長 と し てsiRNAを 用 い た 遺 伝 子発 現阻 害 実験 、肺 癌 ・食 道癌 組 織ア レ イを 用い た 免疫 組織 学 的検 討を 行 った 。

  OIP5はOpaタ ン パ ク と 結 合 す る タ ン パ ク と し て 、Hela細 胞cDNAラ イ ブ ラ リ ー を 用 いた スク リ ーニ ン グに より 同 定さ れた .OpaはNeisseria Gonorrhoeaeに お いて 人の粘膜.上二皮 などへの接着 に 必 要 な タ ン パ ク とさ れて い る。OIP5に 関し ては こ れま でに ヒ 卜の 肺癌 ・ 食道 癌で の 報告 はな き れ て お ら ず 、 癌 悪 性化 との 関 連は 未知 の タン パク で ある 。そ こ で我 々は 、OIP5の予 後 診断 マー カ ーと し ての 有用 性 と新 規治 療 法開 発の た めの 機能 解 析を 行っ た 。

  肺 癌 ・ 食 道 癌 組 織試 料: 埼 玉が んセ ン ター にお い てイ ンフ ォ ーム ドコ ン セン トの 得 られ た非 小 細 胞 肺 癌 患 者336症 例 か ら 切 除 さ れ た 癌 組織 と、 そ れぞ れの 症 例に 対応 し た非 癌部 組 織、 また 北 海 道 大 学 病 院 第 二 外 科 お よ び 恵 佑 会 札 幌病 院 にお いて 食 道癌 患者305症 例 から 切除 さ れた 痛組 織 と 、 そ れ ぞ れ の 症 例に 対応 し た非 癌部 組 織を 用い て 作製 され た 組織 マイ ク 口ア レイ を 用い て、 免 疫 組 織 学 的 検 討 を 行っ た。 同 様に して イ ンフ ォー ム ドコ ンセ ン 卜の 得ら れ た肺 癌・ 食 道癌 患者 由 来の 試 料を 用い てtotal RNAを抽 出 し、 半定 量 的RT―PCRを行 っ た。

  免 疫 組 織 学 的 検 討: 抗体 は 市販 のanti―OIP5ポ リ クロ ーナ ル 抗体 を用 い た。 肺癌 ・ 食道 癌組 織 ア レ イ の 判 定 は3名 の 臨 床 情 報 未 知 の 医 師 の 判 定 に よ り 行 い 、 生 存 分 析 で はStat View statistical program(SaS)に よ りlog rank testを 用 い てpvalue0.05未 満を 有意 差 あり と判 定 した 。

【 結 果 】OIP5は 正 常 肺 、 正 常 食 道 い ず れ で も 発 現 を 認 め ず 、 癌 に お い てmRNAレ ベ ル で 強 く 発 現し て いる 遺伝 子 であ るこ と が肺 癌・ 食 道癌 臨床 検 体、 細胞 株 を用 いた 半 定量 的RT一PCRにより示 さ れ た 。 一 方 ,OIP5はMultiple tissue northern blotによ り 正常 臓器 で は精 巣に の み発 現し て おり 、 癌精 巣抗 原 であ る可 能 性が 示唆 さ れた 。

  非 小 細 胞 肺 癌 細 胞 株LC319、 小 細 胞 肺 癌SBC―5、 食道 癌細 胞 株TE2を用 いたsiRNAに よる 発現 阻

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害 実験 に おい て、OIP5の 発現 抑 制に よる 細 胞増 殖抑 制 効果 を認 め た。

  非 小 細 胞 肺 癌 、 食 道 癌 組 織 マイ ク 口ア レイ を 用い た免 疫 組織 学的 検 討を 施行 し 、OIP5が 非 小細 胞 肺 癌 、 食 道 癌 組 織 に お い て 高頻 度 に発 現し て いる ニと を 確認 した 。 この タン パ クを 強く 発 現す る 症 例 は 発 現 し な ぃ 症 例 に 比 して 有 意に 予後 不 良で ある こ とが 示き れ た。 多変 量 解析 を用 い た検 討 では 非 小細 胞肺 癌 にお いて 独 立し た予 後 閃子 であ っ た。

  以 上 よ り 、 こ の 分 子 が 肺 癌 ・食 道 癌細 胞の 悪 性化 に関 与 する 有望 な 治療 標的 で あり 、か っ 有用 な 予後 マ ーカ ーと 考 えら れた 。

  OIP5はRaflの 結 合 タ ン パ ク で あ る こ と が 報 告 さ れ て お り 、 我 々 は そ こ に着 目 してOIP5とRafl と の 結 合 を 免 疫 沈 降 に て 確 認 した 。Western blot法 によ りOIP5、Raflの発 現を 確 認し たと こ ろ、

両 者 の 発 現が 類似 し てい るこ と を確 認し た 。OIP5はRaflの 発現 に 影響 を受 け てい ると 考 え、siRNA を 用 い た 発 現 阻 害 実 験 、 お よ び発 現 ベク ター を 用い た実 験 にお ぃて 、Raflのタ ン パク 量に 依 存し てOIP5タ ンパ ク量 が 変化 する こ とを 確認 し た。

【 考 察 】  我 々 は 新 規 診 断 マ ーカ ー 、新 規分 子 標的 治療 薬 開発 のた め のマ イク ロ アレ イシ ス テム を 用い て 、網 羅的 遺 伝子 ・タ ン パク 発現 情 報解 析を 行 うこ とに よ り、 癌特 異 的に 発現上昇を認め、

正 常臓 器 では 精巣 に のみ 発現 を 認め るOIP5を同 定し た 。

  OIP5はLAP2aと 結 合 しcell cycleに 関 わ る こ と 、centromereで の 細 胞 分 裂 に 関 わ る こ と な ど in vitroの 報 告 は あ る も の の 、ヒ ト の癌 にお け る機 能的 な 報告 はな さ れて おら ず 、癌 悪性 化 との 関 連は 未 知の 分子 で ある 。

  本 研 究 に お い て 組 織 ア レ イ を用 い た検 討に よ り、OIP5の 発現 は非 小 細胞 肺癌 、 食道 癌患 者 の予 後 と 有 意 な 相 関 を 認 め た 。 ま た 、 一 過 性 発 現 系 お よ びsiRNAを 用い た 検討 によ り 、細 胞増 殖 との 関 連 を 認 め 、OIP5の 発 現 上 昇 が ヒ ト の 癌 悪 性 化 に 重 要 な 役 割 を 示 す こ と が 類 推 さ れ た 。   ま た 、OIP5の 発 現 がRaflの 影 響 下 に あ る こ と が 見 出 さ れ た 。RaflはMAPK pathwayの重 要 な役 割 を 担 っ て お り 、 癌 細 胞 の 増 殖・ 生 存に 関与 す る重 要な 分 子で ある 。 本研 究で はRaflに依 存 する OIP5の タ ン パ ク 量 の 変 化 が 見 ら れ た ニ と か ら 、RaflとOIP5の 結 合 阻 害 が 治療 標 的と なる 可 能性 が 示唆 さ れた 。

【 結 論JOIP5は 精 巣 以 外 の 正 常 臓 器 で は 発 現 し て お ら ず 、 肺 癌 ・ 食 道 癌 で 高 頻 度 、 高 レ ベ ル の 発 現 を 示 す 分 子 で 、 癌 細 胞 の 増殖 や 生存 に極 め て重 要な 分 子で ある と 考え られ た 。新 規分 子 標的 薬 の 治 療 候 補 、 お よ ぴ 予 後 予 測 バ イ オ マ ー カ ー へ の 応 用 の 可 能 性 が 示 唆 さ れ た 。

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学位論文審査の要旨 主 査    教 授    平 野    聡 副 査    教 授    秋 田弘 俊 副 査    教 授    松 野吉 宏

学 位 論 文 題 名

Characterization of an Opa Interacting Protein5(OIP5)     Involved in Lung and Esophageal Carcinogenesis      (肺癌・食道癌の進行に関わる癌抗原OIP5 の同定)

  肺 癌 ・ 食道 癌 は 共 に 悪性 度 の 高 い 癌種 で あ り 、 外科 的 切 除 、 放 射線 化 学 療 法 によ る 集 学 的 治療 が 行 わ れ て いる も の の 未 だ良 好 な 治 療 成 績が 得 ら れ ず 、新 た な 治 療 法・ 診 断 法 の 開発 が 急 務 で あ る 。 そこ で 我 々 は 肺 癌・ 食 道 癌 に おい て 高 頻 度 、高 レ ベ ル に発 現が上 昇して いる遺 伝子を 同定 し、

そ の 遺 伝 子 の 機 能 解 析 を 行 う こ と に よ っ て 新 規 分 子 標 的 候 補 を 見 出 す こ と を 目 的 と し た 。   27,648遺 伝 子 か ら な るcDNAマ イ クロ ア レ イ を 用 いて 肺 癌 ・ 食 道癌 の 網 羅 的 遺伝 子 発 現 情 報解 析 を 行 い 、 肺 癌 お よ び 食 道 癌 組 織 に お い て 高 頻 度 、 高 レ ベ ル に 発 現上 昇 し て い る遺 伝 子 と し て Opa interacting protein 5(OIP5)が 同定 さ れ た 。

  OIP5は 正 常 肺 、 正 常 食 道 い ず れ で も 発 現 を 認 め ず 、 癌 にお い てmRNAレ ベ ル で強 く 発 現 し てい る 遺 伝子 で あ る こ と が肺 癌 ・ 食 道 癌臨 床 検 体 、 細胞 株 を 用 い た半 定 量 的RT−PCRによ り示さ れた。

Multiple tissue northern blotによ り 正 常 臓 器 では 精 巣 に の み発 現 し て お り、 癌 精 巣 抗 原で あ る 可 能 性 が 示唆 さ れ た 。 非小 細 胞 肺 癌 細 胞株LC319、 小 細 胞 肺癌SBC―5、 食 道 癌 細胞 株TE2を用 い たsiRNAに よ る 発 現 阻 害 実 験 に お い て 、OIP5の 発 現 抑 制 に よ る 細 胞 増 殖 抑 制 効 果 を 認 め た 。   非 小 細 胞肺 癌 、 食 道 癌組 織 マ イ ク 口ア レ イ を 用 いた 免 疫 組 織 学 的検 討 を 施 行 し、OIP5が 非 小 細 胞 肺 癌 、 食 道癌 組 織 に お いて 高 頻 度 に 発 現し て い る こ とを 確 認 し た 。こ の タ ン パ クを 強 く 発 現 す る 症 例 は 発 現し な い 症 例 に比 し て 有 意 に 予後 不 良 で あ るこ と が 示 さ れた 。 多 変 量 解析 を 用 い た 検 討 で は非 小 細 胞 肺 癌 にお い て 独 立 した 予 後 因 子 であ っ た 。

  OIP5はRaflの 結 合 タ ン パ ク で あ る こ と が 報 告 さ れ て お り 、 我 々は そ こ に 着 目し てOIP5とRafl と の 結 合 を 免 疫 沈 降 に て 確 認 し た 。OIP5はRaflの 発 現 に影 響 を 受 け て いる と 考 え 、siRNAを用 い た 発 現 阻 害 実 験 、 お よ び 発 現 ベ ク タ ー を 用 い た 実 験 に お い て 、Raflの タ ン パ ク 量 に 依 存 し て OIP5タ ン パ ク 量が 変 化 す る こと を 確 認 し た。

  本 研 究 にお い て 組 織 アレ イ を 用 い た検 討 に よ り 、OIP5の 発現 は 非 小 細 胞肺 癌 、 食 道 癌患 者 の 予 後 と 有 意 な 相 関 を 認 め た 。 ま た 、 一 過 性 発現 系 お よ ぴsiRNAを用 い た 検 討 によ り 、 細 胞 増 殖と の 関 連 を 認 め 、OIP5の 発 現 上 昇 が ヒ ト の 癌 悪 性 化 に 重 要 な 役 割を 示 す こ と が類 推 さ れ た 。 また 、 OIP5の 発 現 がRaflの 影 響 下 に あ る こ と が 見 出 さ れ た 。RaflはMAPK pathwayの 重 要 な役 割 を 担 つ て お り 、 癌 細 胞 の 増 殖 ・ 生 存 に 関 与 す る 重 要 な 分 子 で あ る 。 本 研 究で はRaflに 依 存 す るOIP5の タ ン パ ク 量 の 変 化 が 見 ら れ た こ と か ら 、RaflとOIP5の 結 合 阻 害 が 治療 標 的 と な る 可能 性 が 示 唆 さ れ た 。 以 上 よ りOIP5は 新 規 分 子 標 的 薬 の 治 療 候 補 、 お よ び予 後 予 測 バ イオ マ ー カ ー へ の応 用 の 可 能性 が 示 唆 さ れ た。

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  口 頭 発 表 に 続 き 、 副 査 秋 田 弘 俊 教 授 よ り くD肺 癌 、 食 道 癌 以 外 で の 発 現 情 報 に つ い て 、 ◎こ の分 子 の 今 後 の 応 用 に 関 す る 展 望 に つ い て 質 問 が あ っ た 。 続 い て 副 査 松 野 吉 宏 教 授 よ り @ 腺 癌 の 発 現 頻 度 が 扁 平 上 皮 癌 に 比 し て 少 な い が 、 腺 癌 に お け る 臨 床 応 用 の 可 能 性 は あ る の か 、 ◎ 既 知 の 分 子 標 的 に 対 す る 治 療 無 効 も し く は 適 応 と な ら な い 症 例 に 対 す る 有 効 性 は 見 込 め る の か 、 と い う 質 問 が あ っ た 。 最 後 に 主 査 平 野 聡 教 授 よ り くD今 回 の 遺 伝 子 の 他 に 候 補 と な る 遺 伝 子 は な か っ たの か、

◎ 精 巣 抗 原 と す る 根 拠 は ど こ に あ る の か とい う質 問 があ った 。 他、 フロ ア ーよ り、 半 定量 的RT―PCR で の 発 現 頻 度 と 、TMAで の 発 現 頻 度 に 解 離 は な い か と の 質 問 が あ っ た 。

  い ず れ の 質 問 に 対 し て も 申 請 者 は そ の 主 旨 を よ く 理 解 し 、 自 ら の 研 究 内 容 と 文 献 的 考 察 を 交 え て 適 切 に 回 答 し た 。

  審 査 員 一 同 は こ れ ら の 成 果 を 高 く 評 価 し 、 大 学 院 課 程 に お け る 研 鑽 や 取 得 単 位 な ど も 併 せ 申 請 者 が 医 学 博 士 の 学 位 を 受 け る の に 十 分 な 資 格 を 有 す る と 判 断 し た 。

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参照

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