「
貧困プロファイル」
南アフリカ共和国
2006 年 8 月
地 図
略 語 一 覧
CBO : Community Based Organisation コミュニティ組織 CSR : Corporate Social Responsibility 企業の社会的責任 DAC : Development Assistance Committee 開発援助委員会 DBSA : Development Bank of South Africa 南アフリカ開発銀行 EC : European Commission 欧州委員会
DfID : Department for International Development 国際開発省(イギリス) GDP : Gross Domestic Products 国内総生産
GEAR : Growth, Employment and Redistribution 成長・雇用・再配分 GNI : Gross National Income 国民総所得
GTZ : Deutsche Gesellschaft für Technische Zusammenarbeit
ドイツ技術協力公社 HDI : Human Development Index 人間開発指数 HDR Human Development Report 人間開発報告書 IDT : Independent Development Trust 独立開発基金 IES : Income and Expenditure Survey 所得支出調査 IMF : International Monetary Fund 国際通貨基金 JBIC : Japan Bank for International Cooperation 国際協力銀行 JICA : Japan International Cooperation Agency 国際協力機構 MDGs : Millennium Development Goals ミレニアム開発目標 NDA : National Development Agency 全国開発機構 NGO : Non-governmental Organization 非政府組織 ODA : Official Development Assistance 政府開発援助 OECD : Organization for Economic Cooperation and
Development 経済協力開発機構
PHC : Primary Health Care プライマリー・ヘルス・ケア RDP : Reconstruction and Development Programme 復興開発計画
SANGOCO : South African NGO Coalition 南アフリカ NGO 連合 SDI : Service Deprivation Index サービス貧困指数 Stats SA : Statistics South Africa 南アフリカ統計局 UNDP : United Nations Development Programme 国連開発計画 USAID : US Agency for International Development 米国国際開発庁
目 次
第 1 章 南アフリカの貧困概況... 1 1.1. 経済的貧困と不平等の測定 ...1 1.1.1. 経済的貧困の測定方法:貧困ライン ...1 1.1.2. 貧困指標...3 1.1.3. 不平等指標 ...9 1.2. 非経済的側面による貧困の測定 ... 11 1.2.1. 基礎インフラへのアクセス ... 12 1.2.2. 雇用 ... 14 1.2.3. 教育 ... 17 1.2.4. 保健 ... 18 1.3. 南アフリカにおける貧困の要因 ... 20 1.3.1. 世帯レベルで見る貧困の要因... 20 1.3.2. 州レベルで見る貧困の要因 ... 24 1.3.3. 国レベルで見る貧困の要因 ... 28 1.3.4. 不法移民と貧困問題 ... 33 第 2 章 南アフリカ政府の取組みと成果 ... 35 2.1. 貧困削減に向けた政策的枠組... 35 2.1.1. 経済概況... 35 2.1.2. 開発計画と貧困削減戦略... 37 2.1.3. セクター戦略... 40 2.1.4. 財政的枠組と実績... 44 2.2. 貧困削減に向けた政府のキャパシティ... 48 2.2.1. 中央政府... 48 2.2.2. 地方分権化と地方政府 ... 49 2.3. 貧困削減の成果 ... 51 2.3.1. MDGs の達成状況 ... 51 2.3.2. 経済成長と経済的貧困の関連... 58 2.3.3. インフラ整備と経済的貧困の関連... 59 第 3 章 貧困削減に向けたパートナーシップ ... 63 3.1. 援助機関による取組み... 63 3.1.1. 国際機関... 66 3.1.2. 二国間援助機関 ... 67 3.2. 参加型開発の取組みの現状 ... 723.2.1. 市民社会と非政府組織(NGO: Non-Governmental Organisation)... 72
3.2.2. 民間セクター... 73
別添資料 別添 1:社会経済マトリクス 別添 2:貧困関連用語解説 別添 3:ミレニアム開発目標とモニタリング指標 別添 4:国別用語解説 別添 5:貧困削減関連情報リソース 別添 6:ローカルコンサルタントによる貧困指標試算 別添 7:南アフリカ共和国における各ドナーのプロジェクト・プログラム 参考文献・資料 図表目次 表 表 1-1 貧困者比率と貧困ギャップの傾向(1995-2002 年)...4 表 1-2 貧困状況の変化(1995∼2000 年)...4 表 1-3 州別の貧困人口(2003 年) ...5 表 1-4 州別の貧困者比率および貧困ギャップの傾向(1995-2002) ...6 表 1-5 飢餓状態にある世帯の比率(2000 年) ...6 表 1-6 人種別人口構成(2001 年センサス) ...8 表 1-7 人種別貧困者比率および貧困ギャップ比率...8 表 1-8 飢餓状態にある世帯の比率(2000 年) ...8 表 1-9 不平等状態の測定(1995 年および 2000 年)...9 表 1-10 州別ジニ係数(2003 年)... 10 表 1-11 ジニ係数の推移... 11 表 1-12 支出階層 5 分位における人種グループのシェア... 11 表 1-13 基礎インフラにアクセスできる世帯の割合... 12 表 1-14 基礎インフラへのアクセス... 13 表 1-15 貧困層の基礎サービスへのアクセス... 13 表 1-16 所得階層別労働指標(1995)... 14 表 1-17 フォーマル・セクターの就労男性の平均時給(1995-2002) ... 15 表 1-18 州別失業率と失業人口 ... 15 表 1-19 属性別失業率(公式定義による) ... 16 表 1-20 州別教育水準 ... 17 表 1-21 属性による教育施設へのアクセス ... 18 表 1-22 州別保健指標 ... 19 表 1-23 保健施設へのアクセス ... 19 表 1-24 支出・所得階層 5 分位による所得・支出レベル(1 人当たり年額) ... 21 表 1-25 属性による貧困者比率と貧困ギャップの傾向(1995-2002 年)... 22 表 1-26 飢餓状態にある世帯の比率... 23 表 1-27 世帯の経済状況に強い相関を持つ変数 ... 24 表 1-28 人間開発指数(2003 年)... 25 表 1-29 南アフリカ統計局による開発指数 ... 25 表 1-30 州別南アフリカ統計局開発指数の比較 ... 26 表 1-31 サービスが欠如している状態の定義... 26
表 1-32 Service Deprivation Index(1996 年、2001 年)... 27
表 1-33 旧ホームランドと現状 ... 29
表 1-34 スラムに関する指標の推移... 32
表 2-2 セクター別 GDP 成長率の推移 ... 36 表 2-3 産業別 GDP シェアの推移 ... 36 表 2-4 RDP の枠組... 37 表 2-5 住居指標... 41 表 2-6 主な社会手当の受給者数および支給額 ... 43 表 2-7 社会手当の分配状況(シミュレーション)... 44 表 2-8 政府予算の推移... 45 表 2-9 セクター別政府支出額とシェア... 45 表 2-10 政府による社会サービスへの 1 人当たり政府歳出額(1995 価格) (1994-2002)... 46 表 2-11 社会手当の貧困削減への影響(2002 年)... 47 表 2-12 主要 RDP プログラムへの支出状況 ... 47 表 2-13 土地権利回復と土地改革助成金(1998-2005)... 48 表 2-14 州の財政状況 ... 50 表 2-15 貧困・飢餓の撲滅に関する達成状況... 52 表 2-16 初等教育の普及に関する達成状況 ... 53 表 2-17 ジェンダー格差の是正に関する達成状況... 54 表 2-18 子どもの死亡率の削減に関する達成状況... 54 表 2-19 妊産婦の健康の改善に関する達成状況 ... 55 表 2-20 感染症の蔓延防止に関する達成状況... 55 表 2-21 持続可能な環境作りに関する達成状況 ... 56 表 2-22 政府行動計画による成果(1994-2002) ... 56 表 2-23 基礎サービスへのアクセスの改善状況 ... 56 表 2-24 飲料水・衛生に関する指標の改善状況 ... 57 表 2-25 グローバルな開発パートナーシップの構築に関する達成状況 ... 58 表 2-26 州別経済・雇用構造... 59 表 2-27 州別基礎インフラへのアクセス状況... 61 表 3-1 ODA 純受取額の推移 ... 64 表 3-2 ODA 純受取額のドナー別推移... 64 表 3-3 ODA 純受取額のドナー別割合の推移 ... 65 表 3-4 主要ドナーのセクター別援助配分(1995∼2004 年) ... 66 表 3-5 日本の対南アフリカ ODA 供与額の推移... 71 図 図 1-1 支出階層 5 分位による人口分布の変化(1995 年および 2000 年) ...3 図 1-2 貧困マップ...7 図 1-3 ローレンツ曲線(国全体) 1995 年および 2000 年... 10 図 1-4 ローレンツ曲線(州別)2000 年 ... 10 図 1-5 旧ホームランド... 30 図 2-1 GEAR による政策のフロー... 39 図 2-2 所得階層間の社会手当の分配状況 ... 52 図 2-3 所得階層間の政府学校教育支出の分配状況... 53 図 2-4 所得階層間の政府保健支出の配分状況 ... 54 図 2-5 所得階層間の政府住宅支出の配分状況 ... 57
第 1 章
南アフリカの貧困概況
南アフリカ共和国(以後、南ア共和国)において、1994 年にアパルトヘイト(人種隔 離政策)1 が撤廃され、民主化が行われてから、10 年以上が経過した。 しかしながら、民主化が進められた現在においても、人口のわずか 10%未満を占める に過ぎない白人系資本が支配的であるという、南ア経済の構造に大きな変化はみられず、 今に至っている。南ア経済は、金やダイヤモンドなどの希少鉱物資源を中心とする鉱業 セクターを基礎にして、国際経済にもそのプレゼンスを確立してきた。一方、アパルト ヘイト政策下で、アフリカ系住民はこうした白人系資本の鉱業セクターにおける労働力 として動員されたという歴史的背景から、非都市部における農業セクターは荒廃し、雇 用機会もほとんどないという状況にある。また、多数のアフリカ系住民が居住する非都 市部における開発が著しく遅れており、南ア経済は、先進国型経済と途上国型経済が並 存する二重構造を内包している。 南ア政府は民主化の進展においてアフリカ系住民の権利を法的に保障し、こうした二重 構造の融和を図る政策や、富の分配の不均衡、政治的・社会的権利の不平等、就業機会、 基礎インフラ・社会サービスへのアクセスなど様々な側面での不均等の是正に取り組ん でおり、ドナーからの援助も行われてきている。しかし、長期間にわたるアパルトヘイ トによって、制度化され、定着した、白人と非白人(アフリカ系、アジア系、カラード) の間の差別的な構造は、容易に解決できる課題ではなく、同国の貧困問題の根底に存在 している。 本プロファイルでは、こうした背景を踏まえ、主に既存の文献・資料に基づき、南ア共 和国の貧困および不平等の状況について概観し、同国の貧困・不平等の要因について考 察する。1.1. 経済的貧困と不平等の測定
民主化以降の貧困・不平等を測定するために有効なデータとしては、人口センサス(1996 年および 2001 年)、1995 年から 5 年ごとに実施されている所得支出調査(IES:Income and Expenditure Survey)がある。これらのデータに基づいて、南アフリカの貧困・不平 等の状況を把握するために、南アフリカ統計局(Stats SA:Statistics South Africa)を中 心に、様々な分析が試みられている。本プロファイルにおいては、現在入手可能な 1995 年および 2000 年に実施された IES のデータに基づく分析を中心に、1994 年の民主化以 降の南アフリカの貧困・不平等の状況を概観する2 。1.1.1. 経済的貧困の測定方法:貧困ライン
南アフリカでは、財務省(National Treasury)が経済的貧困の測定のために、IES1995 の データに基づいて、初めて国としての貧困ラインを設定した。設定方法としては、i)1 人当たりの最低必要栄養量、および、ii)南アフリカの人口の支出階層下位 20%層の総 1 同国における人種差別は、オランダによる入植が行われた 17 世紀にさかのぼるが、1948 年に国民党によ り、アフリカ系、アジア系、カラードに対する人種差別政策が制度化された。詳細は、別添 4 国別用語 集参照。 2 現在、2006/07 年の IES が準備中であり、最新の貧困データは IES2006/07 のデータの集計に基づいて今後、 南アフリカ統計局を中心に分析作業が行われる見込みである。支出額に占める食糧支出の割合、の推定値から Orshansky 法3によって必要最低支出額を 算出し、貧困ラインとした。これにより、1995 年時点の貧困ラインは、大人 1 人当た り 1 ヶ月 354 ランドとされた。ミレニアム開発目標(MDGs:Millennium Development Goals)における貧困状況の測定には、国際貧困ライン(1 日 1 ドル未満、または 1 日 2 ドル未満)が用いられているが、同国の貧困ラインを 1 日当たりに必要な支出額にドル 換算すると、おおよそ 2.7 ドル4であり、国際貧困ラインよりやや高い水準で設定された ものだったといえる。 しかし、南ア共和国では、支出階層の下位 20%層では十分な食料を得ることが出来き ていないものと推測されている5。そうした低所得者層では食料支出が本来支出される べき額を下回り、エンゲル係数が実際よりも低めであることも考えられる。そのため、 エンゲル係数を勘案して算出する方法では貧困ラインも低めに設定された可能性もあ る。また、2000 年価格で調整した IES1995 と IES2000 のデータを比較すると、1 人当た り年間平均支出額は 1995 年 12,282 ランドに対し、2000 年 10,463 ランドと低下してい る。図 1-1 は、2000 年価格で調整した 1995 年の支出階層 5 分位6の支出レベルに基づい て、2000 年時点での支出の人口あるいは世帯分布を示したものである。1995 年に比し て 2000 年では、第 3 分位層以下の割合が大きくなっており、上位層の割合が低下して いる。インフレ率は一ケタ台とそれほど高くはないものの、年々物価は上昇しているこ とを鑑みると、生活水準の低下がうかがわれる。したがって、1995 年に設定された貧 困ラインを価格調整して、2000 年の貧困状況を計測した場合、貧困状況が過少に評価 されている可能性もある。「現在の貧困ラインは必ずしも現在の南アフリカの貧困層の 実情を反映したものではない」という指摘は、南アフリカ統計局によってもなされてい る7。 本報告書においては、南ア共和国の貧困ラインの設定にこうした課題があることを念頭 において、現状の貧困ラインから計測される貧困指標をもとに、貧困状況についての分 析を行なうものとする。 3 1960 年代に米国政府によって導入された貧困ライン設定方法で、低所得者層の世帯支出に占める食糧費 の割合(エンゲル係数)に着目したもの。(詳細は、別添 4 参照) 4
1 ドル=4.299 ランド。(1995 年平均為替レート。International Monetary Fund, “International Financial Statistics データベースによる) 5 2001 年のセンサスベースのデータで、飢餓に直面している世帯はおよそ 18%。 6 総支出の人口分布を最低位から 20%ずつ 5 等分に区分して示す支出階層。通常、第 1 分位層が最低位 20%、 第 5 分位が最高位 20%として示される。詳細は別添の用語集参照のこと。
7 社会開発省(Department of Social Development)が中心となり、食糧バスケットおよび非食糧バスケット
に基づく貧困ラインの研究が行われている。Stat SA は、IES2000 のデータに基づいて貧困ラインの算出 を行っており、2006 年後半には作業を完了し、政府内の合意を得る予定となっている。また、IES2000 のデータに基づく貧困ラインの算出にあたっては、ある特定グループ(旧体制下での特権階級に属する グループ)の回答が抜け落ちているため、その影響がどの程度出るかという課題があり、データの偏り による歪みを排除するための研究・分析が行なわれている。
図 1-1 支出階層 5 分位による人口分布の変化(1995 年および 2000 年) 30 24 21 15 10 25 23 21 17 14 20 20 20 20 20 20 20 20 20 20 0 5 10 15 20 25 30 35 第1分位 第2分位 第3分位 第4分位 第5分位 家計支出 第1分位 第2分位 第3分位 第4分位 第5分位 個人支出 支出階 層 人口分布(%) 1995 2000
(出所) Statistics South Africa, (2002), “Earning and Spending in South Africa”, p.31, Figure3.2 より作成
(注) 元の表では、第 1 分位が最上位の所得・支出階層とされているが、本報告書では混乱を避けるため、第 1 分位 を最低位所得・支出階層とした。
1.1.2. 貧困指標
(1) 貧困者比率と貧困人口
国連開発計画(UNDP: United Nations Development Programme)の南アフリカ人間開発報 告書 2003 年版(HDR: South Africa Human Development Report)では、1995 年に設定さ れた貧困ライン、1 人当たり月額 354 ランドを使用して、1995 年 IES データと 2002 年 人口センサスのデータに基づいて貧困者比率を推定している8 。これによると、2002 年 の貧困者比率は、国全体で 48.5%であり、1995 年の 51.1%に比して 2.6 ポイントの改善 にとどまっている(表 1-1)。国際貧困ラインによる貧困者比率の同期間の変化は、1 日 2 ドル未満の場合では 24.2%から 23.8%と 0.4 ポイント低下しているものの、1 日 1 ドル未満の場合では 9.4%から 10.5%と 1.1 ポイント増加している。貧困ラインによる いずれの貧困者比率の比較でも、1995∼2002 年の 7 年間において大きな変化は見られ ない。 貧困の深度、すなわち、貧困層の貧困ラインからの乖離の状態を示す貧困ギャップ比率 は微増しており、貧困の度合いの改善は進んでいない。むしろ、貧困の度合いが悪化し 8
南アフリカ統計局のレポート “Measuring Poverty in South Africa”(2000 年)によると、センサスと IES デ ータに基づく貧困者比率では差異が生じている。センサスのデータに基づく貧困者比率のほうが、IES のそれより高めに出ており、特に貧困世帯比率において大きい。これは、センサスに基づく貧困者比率 は所得ベースであり、IES では支出ベースで算出されていることによるものである。一般に、途上国にお いては、所得は必ずしもフォーマルな活動による現金収入のみではないため、各世帯の生活水準を図る 上では貨幣取引を伴わない消費も含めた支出額をベースとするほうが、実態を見るのにより望ましいと されている。なお、人口センサスでは法律的に回答が義務付けられているため、すべての階層のデータ がカバーされているが、IES では回答者はサンプリングによる任意での回答となることから、上位層に該 当する一部の支出階層グループのデータが欠損しているという問題もある。
た貧困層が若干増加したものと推察される。 なお、1995 年および 2000 年の IES データに再度重み付けを行い、再計算したデータ9を もとに算出した貧困者比率では、1995 年 32%から 2000 年 49%と大きく増加しており、 貧困ギャップ比率も 12%から 22%と 10 ポイントも悪化している(表 1-2 貧困者比率 および貧困ギャップ比率)。アマルティア・センが考案したセン貧困指数10は、所得ギャ ップ(貧困ギャップ)と不平等の状況(ジニ係数)を反映して算出され、これを見ても 0.24 から 0.39 と貧困が拡大している(表 1-2 セン貧困指数)。 データの問題により、単純な経年比較はできないが、これらの貧困指標の推定値や 2001 年の支出レベルが 1995 年に比して低下していることから、貧困が拡大し、貧困の深度 も大きくなっている可能性が高く、貧困の状況は深刻化しているものと考えられる。 南アフリカ統計局は、2006/07 年度に実施が予定されている IES において、より精確な データ収集を行い、南アフリカの貧困状況をできるだけ的確に把握するよう調査・研究 を進めているところである。最新のデータによる貧困状況の測定に注視する必要がある。 表 1-1 貧困者比率と貧困ギャップの傾向(1995-2002 年) (単位:%) 国別貧困ライン 国際貧困ライン 貧困ライン(1 ヶ月当たり 354 ランド) 以下の人口割合 1 日 2 ドル未満で 生活する人々の割合 1 日 1 ドル未満で 生活する人々の割合 1995 2002 1995 2002 1995 2002 貧困者比率 51.1 48.5 24.2 23.8 9.4 10.5 貧困ギャップ 17.8 18.0 6.2 9.6 2.5 4.6
(出所) United Nations Development Programme (UNDP), (2003), “South Africa Human Development Report 2003”, p.41, Table 2.20 および p.43, Table 2.21 より作成 表 1-2 貧困状況の変化(1995∼2000 年) 指標 1995 年 2000 年 貧困者比率 32% 49% 貧困ギャップ比率 12% 22% セン貧困指数 0.24 0.39
(出所) Development Bank of Southern Africa, Human Science Research Council, and United Nations Development Programme, (2005) “Development Report 2005: Overcoming Underdevelopment in South Africa’s Second Economy”, p42, Table 2 より作成
(2) 地域間格差
現在、南アフリカにおいて、州レベル以下の消費者物価指数(CPI:Consumer Price Index) のデータがないため、州別の貧困ラインは設定されていない。南ア政府は、都市部およ び非都市部の価格調整のみを行った国レベルの貧困ライン11を用いて、州別の貧困状況
9
C. Simkins (2004) “What happened to the distribution of income in South Africa between 1995 and 2001?”
10
Sen’s Poverty Index は、貧困ラインによる貧困者比率の測定のみでは、貧困の深刻な度合いや格差の問題 が反映されず、貧困の実態を適切に示すものとはなっていないとの考えから開発された指数である。(貧 困者比率 x ジニ係数)+貧困ギャップ比率 x(1-ジニ係数)で求められる。ジニ係数がゼロの時、完全平 等状態であることから、貧困層の間の所得間格差がなければ、ジニ係数はゼロとなり、貧困ギャップ比 率の水準まで貧困者比率を低下させることができる。 11 価格調整を行った都市部および都市部の貧困ラインの数値は、南ア統計局の資料などでも公表されてお
を分析している。
表 1-3 で貧困ライン未満にある貧困人口を見ると、最も大きな貧困人口を抱えているの は、東部海岸沿いの KwaZulu-Natal(約 523.7 万人)であり、次いで南東部の Eastern Cape (約 481.7 万人)、北部 Limpopo(約 360.9 万人)である。これらの州は、いずれも旧ホ ームランドとして黒人居住地域とされていた地域を抱えており、アフリカ系住民が今で も多い地域である。 表 1-3 州別の貧困人口(2003 年) (単位:千人) Western Cape Northern Cape Eastern Cape Free State KwaZulu -Natal Mpu-
Malanga Limpopo Gauteng North West
貧困人口 1,030 407 4,817 1,650 5,237 1,843 3,609 2,452 2,149
州人口 4,524 823 6,437 2,707 9,426 3,123 5,274 8,837 3,669
(出所) Development Bank of Southern Africa, Human Science Research Council, and United Nations Development Programme, (2005) “Development Report 2005: Overcoming Underdevelopment in South Africa’s Second Economy”, p.138, Table 2.1 より作成 (注) 州人口は 2001 年センサスのデータ。 表 1-4 で 2002 年の州別貧困指標(国別貧困ライン)を見ると、貧困者比率が 50%を超 えている州が 9 州のうち 7 州ある。貧困者比率が最も高い州は Eastern Cape で、州人口 のうち 7 割近い人々が貧困状態にある一方で、貧困者比率が最も低い Gauteng12では 18.4%と、貧困状況の州間格差は非常に大きい。 また、貧困者比率が高い州では、貧困ラインからの乖離の状況を示す貧困ギャップ比率 (国別)が 20%前後と高く、貧困ラインから乖離した貧困層がより多く、貧困の度合 いが深刻であると考えられる。図 1-2 の貧困マップ13においても、貧困者比率が高い Free
State と Eastern Cape に極貧層が集中している傾向がみられる。
データの問題により単純な経年比較ができないため14、国別貧困ラインによる州ごとの 貧困率の改善状況を推定することは困難であるが、貧困ラインからの貧困層の平均支出、 あるいは所得の乖離度、すなわち貧困の深刻の度合いを示す貧困ギャップ比率は、ほと んどの州で悪化している。また、絶対的水準での極貧層を測定する 1 日 1 ドル未満とい う国際貧困ラインで見ても、すべての州で貧困者比率の悪化が見られ、より厳しい環境 に置かれている極貧層が、全体的に増加している可能性が高いものと推察される。 表 1-5 は飢餓状態にある世帯の割合を示しているが、貧困者比率の高い州において飢餓 状態にある世帯の割合が高いこともこうしたことを裏付けている。貧困者比率が最も高 い Eastern Cape では、幼児以外にも飢えている人を抱えている世帯の割合は 30%を超え ており、貧困人口のおよそ半数が食糧も十分に得られず、飢餓に苦しむという深刻な状 態にあると考えられる。 らず、本調査では確認できなかった。 12 首都プレトリアおよび経済都市のヨハネスブルグを擁する。 13 南アフリカ統計局推定の貧困ライン月額 800 ランドに基づき貧困者比率が算出されている。 14 1995 年のデータは IES、2001 年のデータはセンサスと、データの性質が異なる上、南アフリカにおいて は州別の物価に関するデータが整備されていないため、州別に貧困ラインの調整を行うことができず、 州別の物価状況が反映されていないことも、州別の貧困指標の経年比較を困難にしている。
表 1-4 州別の貧困者比率および貧困ギャップの傾向(1995-2002) 国別貧困ライン 国際貧困ライン 貧困ライン以下の人口割合(%) 1 日 2 ドル未満で生活 する人々の割合(%) 1 日 1 ドル未満で生活する 人々の割合(%) 州 1995 2002 1995 2002 1995 2002 貧困者比率 Western Cape 28.8 28.6 7.5 6.4 2.7 1.3 Eastern Cape 68.3 71.2 39.5 41.1 15.3 14.9 Northern Cape 54.4 55.4 19.2 20.8 8.3 6.4 Free State 59.9 63.6 21.5 24.3 6.6 5.6 KwaZulu-Natal 50.5 53.2 25.1 24.1 13.1 11.1 North West 56.5 59.4 26.6 28.5 11.9 10.3 Gauteng 20.0 18.4 8.2 5.1 3.4 2.1 Mpumalanga 54.8 59.7 24.4 24.6 9.2 7.3 Limpopo 60.7 62.7 36.6 36.8 18.5 17.7 貧困ギャップ Western Cape 8.5 7.5 2.8 1.3 1.3 0.4 Eastern Cape 27.9 26.9 14.7 9.5 5.6 2.9 Northern Cape 19.6 19.0 8.4 5.1 4.2 1.7 Free State 20.3 20.9 7.4 4.9 2.7 1.2 KwaZulu-Natal 18.9 18.1 10.9 6.9 6.2 3.8 North West 21.9 22.4 11.3 7.8 5.3 2.7 Gauteng 7.9 6.2 4.3 1.7 2.5 0.9 Mpumalanga 20.0 20.9 8.8 5.6 3.8 1.3 Limpopo 23.5 23.7 14.1 9.9 7.5 4.9
(出所) United Nations Development Programme, (2003),“South Africa Human Development Report 2003”, p.41, Table 2.20 および p.23, Table 2.21 より作成
(注 1) 貧困者比率は IES の支出ベースによるもの。 (注 2) Limpopo 州は、従前の Northern Province である。
表 1-5 飢餓状態にある世帯の比率(2000 年) (単位:%) 1 人以上の 7 歳未満児が 飢えている世帯 7 歳未満児に加えて、1 人以上の 7 歳以上の者が飢えている家庭 合計 8.8 18.2 地域別 都市 6.6 15.5 都市以外 12.5 22.9 州 Western Cape 5.4 10.1 Eastern Cape 16.2 31.4 Northern Cape 5.6 13.3 Free State 8.6 22.3 KwaZulu-Natal 9.2 17.9 North West 9.6 20.0 Gauteng 5.4 13.4 Mpumalanga 12.4 27.5 Limpopo 8.9 14.0
(出所) United Nations Development Programme, (2003) “South Africa Human Development Report 2003”, p.276, Table 23 より作成。
(注) 「飢餓状態」とは、家計調査において「前年に食事を与えることができない日があった」
図 1-2 貧困マップ
(出所) Statistics South Africa (2000) “Measuring Poverty in South Africa”, Appendix Map1 (注) Northern Province は現在の Limpopo である。
(3) 人種間格差 南アフリカでは、アパルトヘイトの後遺症により、貧困状況における人種間格差も著し い。 人種別の人口構成を見ると、2001 年時点のアフリカ系住民の人口は 3,540 万人を超えて おり、全人口 4,482 万人のおよそ 8 割を占めている(表 1-6)。人種別の貧困者比率を見 ても、アフリカ系が最も高く、1995 年時点から低下しているものの、2002 年でもアフ リカ系住民の半数以上が貧困にあえいでいる(表 1-7)。一方で、人口シェアでは 10% に満たない白人系住民の貧困者比率は 6.9%(2002 年)であり、白人系住民の貧困層は ごくわずかであるといえる。また、1 日 1 ドル未満の国際貧困ライン未満の貧困層の割 合(2002 年)は、白人系では 1%未満だが、アフリカ系では 12.8%と格差が見られる。 国別貧困ラインによる貧困ギャップ比率も、アフリカ系では 20%以上と貧困がより深 刻な状況を示している。飢餓状態にある世帯の比率で見ても、アフリカ系住民の 2 割以 上の世帯が飢餓に苦しんでいる(表 1-8)。
表 1-6 人種別人口構成(2001 年センサス)
(単位:千人)
アフリカ系 カラード インド・アジア系 白人 合計
人口 % 人口 % 人口 % 人口 % 人口 %
35,416 79.0 3,995 8.9 1,115 2.5 4,293 9.6 44,820 100
(出所) Statistics South Africa (2004) “Census 2001: Primary tables South Africa”, p.5, Table C より作成
表 1-7 人種別貧困者比率および貧困ギャップ比率 国別貧困ライン 国際貧困ライン 貧困ライン以下の人口割合(%) 1 日 2 ドル未満で生活 する人々の割合(%) 1 日 1 ドル未満で生活 する人々の割合(%) 世帯の類型 1995 2002 1995 2002 1995 2002 貧困者比率 アフリカ系 62.0 56.3 30.4 28.7 12.0 12.8 カラード 38.5 36.1 10.1 11.2 2.8 3.6 白人系 1.5 6.9 0.3 1.4 0.2 0.4 インド系 8.3 14.7 1.2 6.1 0.7 3.1 貧困ギャップ比率 アフリカ系 22.1 21.5 7.7 11.5 3.2 5.6 カラード 10.7 11.6 2.1 4.1 0.6 1.8 白人系 1.5 2.4 0.4 0.8 0.2 0.5 インド系 2.2 4.4 0.6 2.8 0.5 2.0
(出所) United Nations Development Programme (2003) “South Africa Human Development Report 2003”, p.41, Table 2.20 およ び p.23, Table 2.21 より作成 表 1-8 飢餓状態にある世帯の比率(2000 年) (単位:%) 1 人以上の 7 歳未満児が 飢えている世帯 7 歳未満児に加えて、1 人以上の 7 歳以上の者が飢えている世帯 南アフリカ 8.8 18.2 アフリカ系 10.7 22.0 カラード 5.0 9.9 インド系 0.9 5.5 白人系 0.9 2.9
(出所) United Nations Development Programme (2003) “South Africa Human Development Report 2003”, p.276, Table 23 より作成。 アパルトヘイト下でアフリカ系住民と同様の差別を受けていたカラード15およびイン ド・アジア系住民16の貧困者比率は、アフリカ系住民に比して低い水準である(表 1-6)。 これは、彼らが熟練労働者あるいは半熟練労働者として動員され、白人とアフリカ系住 民の中間に位置づけられたことが背景にあるものと考えられる。なお、インド・アジア 系住民とカラードの貧困者比率を比較すると、カラードの貧困者比率の方が高くなって いる。カラードの人口シェアはおよそ 9%で、そのうち 36.1%が貧困ライン以下の貧困 層であり、貧困ギャップ比率は 11.6%とアフリカ系住民に次ぐ水準である。他方、イン 15 カラードとは、白人とアフリカ系およびインド・アジア系住民との間に生まれた混血の住民を指す。17 世紀にオランダ人による入植が開始された当初は、先住民族であるサン人、コイコイ人、あるいは奴隷 として連れてこられたマレー系の女性とオランダ系男性の間で混血が進み、その子孫が主にカラードと 呼ばれている。 16 アジア系住民とは、サトウキビのプランテーションの労働力として連れてこられた、主にインドおよび マレー半島を中心とするアジア系移民とその子孫を指す。
ド系住民は、アフリカ系住民やカラードに比して比較的教育水準が高いと言われており、 貧困者比率は約 15%と低く、貧困ギャップ比率も 4%台と、貧困ラインに近い水準での 貧困層が多い(表 1-7、2002 年時点)。
1.1.3. 不平等指標
南アフリカ開発報告書 2005 年版(Development Report 2005)では、不平等状態を示すジ ニ係数について、様々な論文で測定された数値を示している。これによると、IES から 計算した 2000 年の世帯レベルの所得によるジニ係数は 0.57∼0.62、支出によるジニ係 数は 0.59 である。個人レベルで見ると、所得によるジニ係数は 0.69 であり、支出によ るジニ係数は最も低い推定値で 0.577、高い推定値で 0.682 である。ジニ係数では、南 アフリカが、所得・支出の分配面における不平等が最も深刻な国の一つであることを示 している17 。なお、IES では所得・支出階層の上位層のデータに欠損があることから、 分配面の格差、不平等はさらに深刻である可能性も考えられる。 表 1-9 不平等状態の測定(1995 年および 2000 年) 調査 1995 2000 所得 支出 所得 支出 世帯レベル 家計収支合計に基づくジニ係数 Fedderke et al (2003) 0.58 0.59 0.62 0.59Statistics South Africa (2002) 0.56 - 0.57
-世帯レベル 1 人当たり家計収支によるジニ係数
独自計算 - 0.65 - 0.65
個人レベル 一人当たり収支に基づくジニ係数
Fedderke et al (2003) 0.66 0.66 0.69 0.67
Poswell (2004) - 0.639 - 0.682
Hoogeveen & özler(2004) –
“Core Consumption” - 0.565 - 0.577
(出所) Development Bank of Southern Africa, Human Science Research Council, and United Nations Development Programme (2005) “Development Report 2005: Overcoming Underdevelopment in South Africa’s Second Economy”, p.138, Table 2.1 より作成 1995 年と 2000 年のデータを比較すると、世帯レベルでは、支出ベースのジニ係数にほ とんど変化が見られないが、所得ベースのジニ係数は悪化している。また、個人レベル のジニ係数はいずれの推定値でも、同期間において悪化している。IES1995 および 2000 の支出データに基づいて作成したローレンツ曲線を見ても、1995 年の曲線に比して 2000 年の曲線は外側にシフトしている。これらのことから、全体として不平等の状況 は悪化しているものと推察される。 17
世界銀行(WB:World Bank)の World Development Indicators によれば、南ア共和国はジニ係数の高さで は、データ計測時期にばらつきがあるもののデータが示されている 123 カ国中 9 位であり、国内の所得 格差が大きい中南米のパラグアイと並んでいる。一般的に、市場経済においては、競争が容認され、格 差が生じやすくなるため、ジニ係数 0.3∼0.4 が許容範囲であるといわれる。(日本は 0.249)ジニ係数が 0.5 を超えると、格差が大きく、社会的な歪みが社会不安を引き起こす危険性が高まるため、政策による 是正が必要となる。
表 1-10 で、2003 年の州ごとの不平等の状況を見ると、ほとんどの州でジニ係数は 0.6 以上の高い値を示している。最も低い州(Western Cape)で 0.58 であり、最も高い州 (Eastern Cape および KwaZulu-Natal)で 0.65 であった。貧困者比率では州間格差が非 常に大きかったが、不平等指標の州間格差は小さい。図 1-4 は、2000 年時点で貧困者 比率の最も高い州(Eastern Cape)と最も低い州(Gauteng)のローレンツ曲線を比較し たものである。これを見ると、Eastern Cape のローレンツ曲線は Gauteng に比べて外側 に位置しているが、いずれの州のローレンツ曲線も、完全平等を示す 45 度線から大き く乖離している。Eastern Cape の最下位 20%層の支出シェア 4%、最上位 20%の支出シ ェア 66%に対し、Gauteng ではそれぞれ 5%、60%であり、あまり大きな差異はない。 このようなことから、南アフリカ全体として不平等が大きく、深刻な状況にあるといえ る。 また、南アフリカ統計局によれば、人種別のジニ係数では、1998 年時点でアフリカ系 は 0.81 と完全不平等に近い値となっている。白人やカラードのジニ係数もそれぞれ 0.67、 0.65 と高く、貧困者比率の低い白人系住民であっても不平等度は深刻であることが示さ れている(表 1-11)。 表 1-10 州別ジニ係数(2003 年) Western Cape Northern Cape Eastern Cape Free State KwaZulu-Natal Mpu-
Malanga Limpopo Gauteng
North West
ジニ係数 0.58 0.61 0.65 0.63 0.65 0.64 0.64 0.60 0.60
(出所) Development Bank of Southern Africa, Human Science Research Council, and United Nations Development Programme (2005) “Development Report 2005: Overcoming Underdevelopment in South Africa’s Second Economy”, p.138, Table 2.1 より作成 図 1-3 ローレンツ曲線(国全体) 1995 年および 2000 年 図 1-4 ローレンツ曲線(州別)2000 年 0 20 40 60 80 100 0 第1分位 第2分位 第3分位 第4分位 第5分位 支出階層 支出 シェア ( % ) IES1995 IES2000 45度線
(出所) Statistics South Africa, “Income and Expenditure Survey” 1995 および 2000 より作成 0 20 40 60 80 100 0 第1分位 第2分位 第3分位 第4分位 第5分位 支出階層 支出 シェア( % ) Eastern Cape Gauteng 45度線
(出所) Statistics South Africa (2000) “Income and Expenditure Survey 2000”より作成
表 1-11 ジニ係数の推移 1995 1996 1997 1998 所得 0.73 0.78 0.78 0.80 支出 0.74 0.78 0.83 0.83 アフリカ系 0.70 0.78 0.77 0.81 カラード 0.57 0.61 0.59 0.65 白人 0.55 0.61 0.62 0.67
(出所) Statistics South Africa (2000) “Measuring Poverty in South Africa”, p.87,Figure 1 より作成
しかし、人種グループごとの支出階層 5 分位におけるシェアを見ると、不平等の状況は 人種グループによって大きく異なる。表 1-12 を見ると、貧困者比率の高いアフリカ系 住民では、最下位 20%層の第 1 分位層が最も多く、最上位 20%の第 5 分位層は最も少 ないことがわかる。2000 年時点の第 1 分位におけるシェア 35%に対し、第 5 分位層に おけるシェアは 5%に過ぎない。また、アフリカ系住民の第 1 分位層のシェアは 1995 年に比して 2000 年は増加している一方で、第 5 分位層においては減少している。他方、 貧困者比率の低い白人系住民では、2000 年時点の第 1 分位層におけるシェアは 1%に過 ぎず、第 5 分位層におけるシェアは 60%を超えており、また、各階層におけるシェア はほとんど変化していない。このことから、アフリカ系住民では多くの貧困層・低所得 者層と一部の高所得者層との格差が激しく、白人系住民では多数の富裕層と一部の貧困 層との格差が激しいという構造が明らかである。 表 1-12 支出階層 5 分位における人種グループのシェア アフリカ系 カラード インド・アジア系 白人 1995 2000 1995 2000 1995 2000 1995 2000 第 1 分位 28 35 15 18 1 4 1 1 第 2 分位 25 27 22 22 4 8 5 3 第 3 分位 22 21 24 24 15 19 10 10 第 4 分位 17 12 25 23 34 34 23 25 第 5 分位 8 5 14 13 46 35 61 61
(出所) Statistics South Africa (2002) “Earning and spending in South Africa”, p.40, Figure 4.5 より作成
(注) 元の表では、第 1 分位が最上位の支出階層とされているが、本報告書では混乱を避けるため、第 1 分位を最下 位支出階層とした。
1.2. 非経済的側面による貧困の測定
1994 年以降、貧困の側面として人間開発に焦点があてられ、各省ごとに様々な指標を 設定し、人間開発の観点からの貧困削減に向けた取組みが行われている。 HDR2003 年版において、南ア共和国の開発の状況を測定するために、人間開発指数 (HDI:Human Development Index)などの既存の指標を補完するサービス貧困指数 (SDI:Service Deprivation Index)が開発されている。SDI は、人間の豊かさは最低限の 適正な基礎サービスへのアクセスによって決定されるとして、サービスが剥奪された状 態にある世帯数を測定するものである。SDI の要素としては、①住居の欠如、②水源の 欠如、③トイレの欠如、④衛生の欠如、⑤電気の欠如、⑥暖房の欠如、⑦調理用エネル ギーへのアクセスの欠如、の 7 つが上げられている。 本項では、生活環境や社会サービスへのアクセスなどの面から見た、非経済的側面の貧 困の状況を概観する。1.2.1. 基礎インフラへのアクセス
社会開発指標は、州によってかなりの格差が見られ、貧困者比率の高い州では社会開発 指標が低いという傾向が見られる。特に、Eastern Cape、Limpopo、North Western、およ び東部の Mpumalanga では電気、水、衛生設備、廃棄物処理へアクセスできる人口の割 合が低い。
2001 年時点での水へのアクセスでは、アクセスできる世帯の割合が最も高いのは Western Cape で 98%を超えている。80%以上の州は 7 州あるが、最も低い Eastern Cape では 62.7%に留まっている。衛生設備については、Gauteng が最も高く 94.4%であり、 80%以上の州は 5 州であった。最も低い州は水へのアクセスと同じく Eastern Cape で、 63.8%である。ごみ処理については格差が大きく、80%を超えているのは Western Cape (90.8%)と Gauteng(85.1%)の 2 州のみである。50%未満の州は 4 州あり、最も低い Limpopo はわずか 17.9%である。電気は廃棄物処理ほどの格差はないが、80%を超える 州は Western Cape と Gauteng であり、最も低い Eastern Cape は 50%である。電話は全体 的に普及率が高く、最も低い Eastern Cape でもほぼ 80%に達している。 表 1-13 基礎インフラにアクセスできる世帯の割合 (単位:%) 水 衛生設備 ごみ処理 電話 電気 1996 2001 1996 2001 1996 2001 1996 2001 1996 2001 Western Cape 96.8 98.3 90.5 88.7 88.4 90.8 95.5 97.3 85.2 88.2 Northern Cape 91.1 96.2 70.9 78.3 74.7 70.4 85.1 92.5 70.7 77.4 Free State 94.0 95.8 70.3 70.7 68.8 65.2 81.3 89.9 57.2 75.2 Eastern Cape 53.5 62.7 64.2 63.8 37.3 39.9 48.1 79.9 31.7 50.0 KwaZulu-Natal 66.3 74.1 83.3 82.9 46.0 51.3 71.7 86.4 53.6 62.4 Mpumalanga 82.2 84.9 87.2 85.4 42.8 40.5 78.5 90.3 56.6 66.1 Limpopo 75.5 80.4 77.8 76.3 15.0 17.9 55.6 88.8 36.7 64.5 Gauteng 96.0 96.8 94.4 94.4 88.3 85.1 93.5 97.5 79.5 80.8 North West 81.4 86.0 86.7 84.5 39.9 39.0 72.4 89.3 44.1 71.9 Total 79.8 85.0 82.5 82.7 56.6 59.0 75.2 90.6 57.7 70.4
(出所) Development Bank of Southern Africa, Human Science Research Council, and United Nations Development Programme (2005) “Development Report 2005: Overcoming Underdevelopment in South Africa’s Second Economy”, p.150, Table 2.11
貧困層の基礎インフラを見てみる(表 1-14)。南アフリカ統計局が推定した世帯貧困ラ インである月額 800 ランドから推定すると、年間所得あるいは支出が 9,600 ランド未満 の世帯が貧困層と考えられる。7,199 ランド未満の所得層を貧困層とみなすと、住居内 に水道がある貧困世帯の割合は 14.4%、水洗あるいは化学処理トイレへのアクセスのあ る貧困世帯の割合は 31.3%である。 地域別に見ると、都市部に比して非都市部の基礎インフラへのアクセスは限定的であり 大きな格差がある。住居内に水道がある割合は、都市部の 58.5%に対し、非都市部では わずか 7.8%である。また、トイレについても、水洗あるいは化学処理トイレが設置さ れているのは、都市部では 80%を超えているのに対し、非都市部では 16%程度に留ま っている。人種別に見ると、貧困者比率の高いアフリカ系住民の基礎インフラへのアク セスが低くなっている。これは、アフリカ系住民の低所得者層の多くが、インフラ整備 の遅れた非都市部に居住しているためである。 公共交通機関へのアクセスは国全体として低く、南ア共和国では旅客用鉄道はあまり整 備が進んでいないため、アクセスできる世帯の割合は、最も発展した Western Cape でも 約 32%である。貧困層では 10%未満のアクセスしかなく、特に非都市部においてはわ
ずか 1.6%である。バスについては、貧困層で 56.4%であり、非都市部でも 56.1%とな っている。貧困者比率の高いアフリカ系住民のバスへのアクセスを持つ世帯の割合は 60%を超えているが、これはむしろ、アフリカ系住民が移動手段として、バス交通に依 存せざるを得ない状況を示している。 表 1-14 基礎インフラへのアクセス (単位:%) 水 トイレ 公共交通機関 水道 (住居内) 水道 (敷地内) 水洗又は 化学処理 穴式 トイレ 電車 (徒歩 15 分・1km 以内) バス (徒歩 15 分・1km 以内) 地域のタイプ 都市部 58.5 31.4 83.0 9.2 20.9 63.9 非都市部 7.8 24.7 16.1 56.1 1.6 56.1 人種 アフリカ系 25.2 35.5 47.7 34.1 12.3 62.6 カラード 72.9 16.7 81.2 5.0 22.8 53.0 インド系 97.6 1.6 98.6 0.7 12.8 75.4 白人 95.5 1.1 99.8 0.1 17.1 53.7 州 Western Cape 74.9 13.1 88.1 1.8 32.1 61.3 Eastern Cape 22.9 15.1 31.3 32.7 3.1 40.9 Northern Cape 44.6 39.2 72.6 9.3 3.2 25.4 Free State 32.7 50.2 61.6 18.8 4.9 39.1 KwaZulu-Natal 38.1 19.1 46.7 35.3 12.4 66.6 North West 21.3 35.0 43.9 46.3 6.7 68.8 Gauteng 54.6 37.1 87.3 8.9 24.3 63.8 Mpumalanga 27.1 43.3 44.7 43.8 1.8 73.6 Limpopo 11.4 30.2 16.9 60.9 1.8 77.1 年間世帯所得(1995 年価格) 0∼7,199 ランド 14.4 29.7 31.3 36.7 9.4 56.4
(出所) United Nations Development Programme (2003) “South Africa Human Development Report 2003”, p.274, Table 23 より 作成。 また、国際貧困ライン以下の極貧層の基礎インフラへのアクセスは、1995 年から 2000 年の 5 年間で改善が見られるが、南ア共和国全体の水準とは大きく隔たっている(表 1-15)。最も改善したのは電気へのアクセスであり、電気へのアクセスのある貧困層は 10 ポイント以上増加した。しかし、全世帯のうち 70%が電気へのアクセスがある一方 で、世帯支出が 1 人 1 日 1 ドル未満の世帯では 31%、2 ドル未満の世帯では 42%に留 まっている。水道については、極貧層のアクセスの改善状況は国全体のレベルを下回っ ており、全体では 8 割を超える世帯がアクセスを持つのに対し、1 ドル未満の世帯では 5 割に満たず、2 ドル未満の世帯では 6 割に満たない。衛生施設については、ほぼ横ば いであり、アクセスの改善は進んでいない。 表 1-15 貧困層の基礎サービスへのアクセス (単位:%) 世帯支出が 1 人 1 日 1 ドル未満 世帯支出が 1 人 1 日 2 ドル未満 全世帯 1995 年 2000 年 1995 年 2000 年 1995 年 2000 年 電気 20 31 26 42 60 70 水道 45 48 52 59 76 82 衛生施設 57 57 68 67 85 85 電話 1 5 3 10 26 36
(出所) United Nations Development Programme (2005) “South Africa: Millennium Development Goals Country Report” p.13 ,Table 2 より作成
1.2.2. 雇用
南アフリカでは、失業と賃金水準が家計所得に影響を与えており、貧困の大きな要因と なっている。 表 1-16 は所得階層別に就労状況、失業率、平均賃金を示したものである。1995 年の貧 困者比率は 51%であることから、所得階層第 5 分位までがおおよそ貧困層に該当する と考えられる。貧困層の中でも貧困ラインに近い第 5 分位層で労働参加率18 は 48%と半 数に満たず、また、失業率19は 46%に達している。最貧層とみなされる第 1 分位層では、 労働参加率は 36%、失業率は 75%であり、大多数の人が失業状態にある。 また、所得階層別の労働指標からは、南ア共和国において、所得あるいは支出の不平等 が労働機会および賃金格差と関係が深いことも読み取れる。所得階層の下位層になるほ ど労働参加率が低く、失業率は高い。一方、最上位の第 10 分位層の労働参加率は 72% で、失業率はわずか 5%である。また、平均賃金をみると、第 1 分位層の平均賃金 320 ランドであり、これは 1995 年時点での貧困ラインを下回る水準であり、第 1 位分層の 平均賃金のおよそ 14 分の 1 に過ぎない。これらのことから、貧困層は労働市場へのア クセスが限られており、かつ賃金も低いという条件に置かれていることがわかる。 表 1-16 所得階層別労働指標(1995) 所得階層 10 分位 労働参加率(%) 失業率(%) 平均純賃金(ランド) 第 1 分位 36 75 320 第 2 分位 40 66 408 第 3 分位 43 57 494 第 4 分位 45 50 630 第 5 分位 48 46 789 第 6 分位 52 39 976 第 7 分位 54 31 1,214 第 8 分位 59 22 1,644 第 9 分位 66 10 2,397 第 10 分位 72 5 4,359(出所) Development Bank of Southern Africa, Human Science Research Council, and United Nations Development Programme (2005) “Development Report 2005: Overcoming Underdevelopment in South Africa’s Second Economy”, p.44, Table 4
なお、表 1-17 でスキル別に賃金水準を見ると、労働者の中では熟練度が高いほど賃金 は高く、未熟練労働者と高度な熟練労働者の格差は 6 倍以上である(2002 年)。また、 管理職でも最終教育水準で格差があり、高等教育を受けた管理職の賃金は高等教育を受 けていない管理職の賃金のおよそ 1.5 倍となっている。賃金格差は拡大する傾向にあり、 こうした状況が不平等を悪化させている要因の一つとなっていると考えられる。 18 生産人口(15∼65 歳)に占める労働人口(就業者と就業を希望している失業者)の割合 19 南アフリカ政府が公式に定める失業率とは、経済活動人口(労働人口と同義、南アフリカでは両方の用 語を同義で使用している)に占める i)インタビューの前の過去 7 日間就労していない、ii)就労の意志 がある、あるいはインタビューから 1 週間以内で就労することができる、iii)インタビュー前の過去 4 週間以内において、仕事を探している、あるいは何らかの形で自営業を行っている、の条件に当てはま る人口の割合。なお、広義の失業率では、iii)の要件は含まれない。労働省(Department of Labour)によ れば、労働力調査(LFS:Labour Force Survey)のデータに基づくと、2003 年時点で 1,620 万人の経済人 口に対し、上記の 3 つの要件に当てはまる失業人口は 456 万人で、失業率は 28%である。
表 1-17 フォーマル・セクターの就労男性の平均時給(1995-2002) (単位:ランド) スキル分類 1995 1998 1999 2000 2001 2002 未熟練労働者 9.0 ± 0.2 8.8 ± 0.4 9.7 ± 0.5 10.0 ± 0.4 10.4 ± 0.9 8.3 ± 0.3 半熟練労働者 15.8 ± 0.2 12.8 ±0.3 13.7 ± 0.4 15.3 ± 0.3 15.2 ± 0.4 13.5 ± 0.3 熟練労働者 33.8 ± 1.3 28.9 ±1.3 31.8 ± 1.5 34.0 ± 1.6 29.9 ± 1.1 30.5 ± 1.3 高度な熟練者 47.5 ± 1.9 44.0 ± 2.8 48.7 ± 2.7 53.4 ± 2.3 55.1 ± 2.9 53.8 ± 2.7 管理者(高等教育なし) 43.6 ± 3.9 28.5 ± 2.2 31.6 ± 2.2 34.9 ± 1.7 41.2 ± 2.1 38.3 ± 1.8 管理者(高等教育あり) 67.7 ± 5.4 56.9 ± 5.1 67.9 ± 4.9 69.2 ± 3.7 66.0 ± 3.7 59.7 ± 2.8 (出所) Development Bank of Southern Africa, Human Science Research Council, and United Nations Development Programme,
(2005) “Development Report 2005: Overcoming Underdevelopment in South Africa’s Second Economy”, p.48, Table 8 (注 1) 価格は 2000 年価格を基準とする (注 2) エラーは信頼度 95%として算出されている。 州別に見ると、失業人口が最も大きいのは Gauteng(126.9 万人)であり、次いで KwaZulu-Natal(99.6 万人)である。失業率で見ると、2001 年時点で最も高いのは、Eastern Cape で、約 54%と州内の経済活動人口の半数以上が失業状態にある。最も低い州の Western Cape でも 23.1%と高い水準である。1996 年と 2001 年を比較すると、いずれの 州においても失業率は上昇しているが、貧困率の高い州では就労機会は極めて限定的で あり、より厳しい状況にある。 表 1-18 州別失業率と失業人口 (単位:%) 失業率 失業人口(千人) 州 1996 年 2001 年 2003 年 Western Cape 18.0 23.1 448 Eastern Cape 48.4 53.7 520 Northern Cape 27.4 35.9 79 Free State 29.9 36.3 300 KwaZulu-Natal 39.4 44.5 996 North West 38.1 43.5 348 Gauteng 28.0 32.8 1,269 Mpumalanga 33.8 35.2 260 Limpopo 45.4 46.0 349 南アフリカ 33.9 38.6 4,569
(出所) Development Bank of Southern Africa (2005) “Quantification of Poverty in South Africa: An Inter-Regional Profile”, p.11, Table 3 および Department of Labour (2004) “Labour Market Review 2004”, p.2, Figure 2 より作成
表 1-19 は属性別失業率を示している。1995 年に比して 2002 年の属性別失業率は、全 体として上昇している。2002 年のデータでは、人種別ではアフリカ系が最も高く 36.8% であり、特にアフリカ系女性の失業率は 40%を超えている。教育水準では、大学修了 以上とそれ未満で失業率に差が生じている。 こうした教育水準による失業率の格差は、アパルトヘイト下での就労構造と教育制度が 影響しているものと考えられる。南ア経済は、金などの鉱物資源開発と金属工業や化学 工業を中心とする鉱工業セクターが牽引力であった。こうした経済構造のもと、アフリ カ系住民は鉱山労働などの労働力としてのみ動員され、労働力としての「訓練」の機会 は与えられたものの、白人系住民と同様の「教育」を受ける機会は与えられなかったの
である20。国際市況の悪化や国際経済制裁の影響などにより、1980 年代には南ア経済は 競争力を低下させ、鉱工業セクターでは、経済の低迷により雇用は著しく削減された。 その結果、鉱山労働などに雇用されていたアフリカ系労働者の失業者を大量に生み出し た。新たな雇用の受け皿は限られていたため、現状のアフリカ系住民を中心とする南ア 共和国の貧困と不平等の大きな要因となっている。 表 1-19 属性別失業率(公式定義による) (単位:%) 1995 年 2002 年 男性 女性 合計 男性 女性 合計 人種 アフリカ系 15.5 25.3 19.6 32.9 41.2 36.8 カラード 12.4 16.4 14.2 19.4 23.5 21.3 インド・アジア系 8.2 12.2 9.6 16.2 28.4 21.3 白人系 2.7 4.1 3.3 5.1 7.6 6.2 全人種 12.7 20.4 15.8 26.8 34.7 30.5 地域 都市部 12.9 18.7 15.3 26.4 34.2 30.0 非都市部 12.1 23.3 16.7 27.6 35.6 31.4 教育 未就学 8.4 18.7 12.6 18.0 20.7 19.3 初等教育未修了 14.0 22.7 17.4 29.2 30.9 29.9 初等教育修了 16.3 25.3 18.7 28.3 35.0 31.4 中等教未修了 15.4 22.0 19.5 32.8 44.0 38.1 大学入学 12.5 25.3 16.0 27.2 38.1 32.3 大学修了者 4.3 20.7 4.7 11.6 17.2 14.6 学位取得者 2.3 5.1 2.4 4.9 8.6 6.6 年齢 15-19 歳 37.9 49.7 43.1 48.5 62.4 55.1 20-24 歳 27.9 36.9 23.1 52.7 61.9 56.9 25-34 歳 14.3 23.1 18.1 29.7 41.7 35.4 35-44 歳 8.1 12.8 10.0 17.3 24.3 20.6 45-54 歳 5.5 10.3 7.4 15.4 15.8 15.6 55-65 歳 4.8 4.6 4.7 11.9 8.4 10.5
(出所) Development Bank of Southern Africa, Human Science Research Council, and United Nations Development Programme (2005) “Development Report 2005: Overcoming Underdevelopment in South Africa’s Second Economy”, p.46, Table 7
一方で、大学入学者の失業率(32.3%)は、初等教育未修了者(29.9%)あるいは未就 学者(19.3%)よりも高く、教育水準が失業率に単純に関係しているのではないことが うかがえる。1980 年代に比して雇用を伸ばしているのは、金融・保険・不動産といっ たサービスセクターであるが、こうしたセクターでの雇用は専門性などが求められ、大 学入学者レベルでは門戸が厳しい。他方、高い教育水準を要求されない単純労働などの 労働市場では雇用が減少しているため、中間レベルの教育水準では、結果として失業率 が高くなっているものと考えられる。2001 年センサスによれば、「非経済活動人口」21の うち、17.5%は「仕事が見つからない」ことを就労していない理由としている。過去 4 週間求職状態にあることを条件とする公式統計上の「失業者」には該当しないため、労 働統計上「失業者」として計上されていないが、高等教育未満の教育水準の人々の中に は、公式統計上は「失業者」に計上されない、事実上の「失業者」も存在している可能 20 沢村信義「第 8 章教育・人的資源開発」(国際協力事業団 2000 年『南部アフリカ援助研究会報告書第 2 巻 南アフリカ・本編』 21 労働人口のうち、理由の如何を問わず、就労していない人々の数。障害・病気などが理由で働けない人 や、学生、主婦なども含まれる。
性がある。 年齢別に見ると、若年層ほど失業率が高く、24 歳未満の失業率は 50%を超えており、 25-34 歳でも約 35%と高い水準である。また、2001 年センサスのデータでは、20-24 歳、 25-29 歳および 30-34 歳グループの非経済人口のうち、それぞれ 24%、41%、37%が「仕 事が見つからない」としている。経済成長は見られるものの、雇用の伸び率は労働人口 の伸び率を下回っており、労働市場への新規参入者に対し、より厳しい雇用環境が続い ている22。
1.2.3. 教育
全体として、南アフリカの教育水準は高い。南ア政府は「国民皆教育」を掲げ、1996 年に 10 年間の義務教育の無償化を導入している。成人識字指数は、1995 年から改善し て 2003 年には約 0.87 に達している。州によって格差はあるが、高い州(Western Cape、 Gauteng および KwaZulu-Natal)では 0.9 を超え、低い州(Eastern Cape や Limpopo)で も 0.8 近くに達している。初等教育から高等教育までを含めた合成粗就学指数(CGEI) は、2003 年時点において国全体で 0.8 を超えているが、1995 年に比して低下している。 1995 年には 0.9 を超えている州もあったが、2003 年では最も高い州(Free State および Mpumalanga)で約 0.87、低い州(Northern Cape)では 0.7 未満であった。就学率の低下 が教育達成度指数にも影響しており、南アフリカ全体としては 1995 年と 2003 年では約 0.85 とほぼ横ばいであったが、Western Cape、Eastern Cape、North West、Gauteng ではわ ずかながら低下が見られる。 表 1-20 州別教育水準 成人識字指数 合成粗就学指数 教育達成度指数 州 1995 年 2003 年 1995 年 2003 年 1995 年 2003 年 Western Cape 0.9278 0.9462 0.8528 0.7552 0.9028 0.8825 Eastern Cape 0.7346 0.7756 0.9167 0.8217 0.7953 0.7910 Northern Cape 0.8060 0.8462 0.7530 0.6856 0.7884 0.7927 Free State 0.8536 0.8975 0.9536 0.8687 0.8869 0.8879 KwaZulu-Natal 0.8564 0.9050 0.8650 0.7671 0.8593 0.8721 North West 0.7033 0.7404 0.8677 0.8062 0.7581 0.7493 Gauteng 0.9441 0.9672 0.8661 0.7666 0.9181 0.9004 Mpumalanga 0.7636 0.8033 0.9185 0.8698 0.8152 0.8254 Limpopo 0.7467 0.7872 0.8284 0.8240 0.7739 0.7995 南アフリカ 0.8333 0.8688 0.8788 0.8016 0.8485 0.8464(出所) United Nations Development Programme (2003) “South Africa Human Development Report 2003”, p.281-282 , Table 24 より作成。
(注 1) 成人識字指数(ALI:Adult Literacy Index)は、成人識字率に 100 分の 1 をかけたもの。最高値が 1、最低値が 0 となる。
(注 2) 合成粗就学指数(CGEI:Combined Gross Enrollment Index)は、初等、中等、高等教育の粗就学率から算出。 (注 3) 教育達成指数(EAI:Educational Attainment Index)は、識字指数と就学指数を組み合わせて算出。
貧困者比率の高い Eastern Cape、Limpopo、Mpumalanga などの州で、教育指標は他の州 に比して低い数値を示している。アパルトヘイト下で人種差別的教育制度が確立された ため、旧ホームランドを抱えるこれらの州では、基礎教育制度や設備の整備は著しく阻 害されてきたことが、現状に大きく影響しているものと考えられる。 表 1-21 は、属性ごとの初等・中等教育施設へのアクセスの状況を示したものである。 22
性別および人種別ではほとんど差が見られないが、地域間格差は大きい。都市部では、 徒歩 30 分圏内に初等教育および中等教育へのアクセスがある人の割合は 80%を超えて いる。しかし、非都市部では初等教育施設では 80%弱であるが、中等教育施設につい ては 60%未満となっている。州別に見ると、初等教育施設へのアクセスは、6 州におい て 80%以上であるが、Northern Cape、Free State および North West の 3 州では 80%未満 である。また、中等教育施設へのアクセスは、80%を超えているのは Limpopo のみで、 他の州は 80%未満であり、最も低い Northern Cape では 53.6%である。Northern Cape の 粗就学指数は最も低い値を示しているが、教育施設へのアクセスの状況も最も悪く、就 学指数が低い要因となっているものと考えられる。また、貧困層と推定される所得水準 が 7,199 ランド未満の層の教育施設へのアクセスは、初等教育については 83.4%、中等 教育については 68.3%である。貧困層の初等・中等教育の就学率等のデータは確認でき ていないが、貧困層が多く居住している州・地域での教育施設へのアクセスが限定的で あることが推測される。 表 1-21 属性による教育施設へのアクセス 初等教育施設が、徒歩 30 分 (2km)以内にある人の割合(%) 中等教育施設が、徒歩 30 分 (2km)以内にある人の割合(%) 性別 男性 81.9 70.2 女性 87.3 74.5 地域 都市部 87.1 80.1 非都市部 78.5 57.6 人種 アフリカ系 84.9 72.0 カラード 81.8 68.0 インド系 87.9 84.3 白人 78.7 71.2 州 Western Cape 85.6 74.4 Eastern Cape 88.9 63.0 Northern Cape 72.6 53.6 Free State 78.5 67.0 KwaZulu-Natal 83.3 72.8 North West 76.0 62.6 Gauteng 84.0 76.6 Mpumalanga 81.1 69.3 Limpopo 90.3 81.4 年間世帯所得(1995 年価格) 0∼7,199 ランド 83.4 68.3
(出所) United Nations Development Programme (2003) “South Africa Human Development Report 2003”, p.274, Table 23 より 作成。
1.2.4. 保健
他の社会サービスへのアクセス同様、アパルトヘイト下で形成された不平等な構造23が 影響しており、地域間および人種間での保健施設・サービスへのアクセスの格差は依然 として大きい。保健指標の格差も顕著であるが、これには健康に関連する安全な水や衛 生施設へのアクセスなど生活環境の格差も影響していると考えられる。 23 内田康雄「第 7 章保健医療」(国際協力事業団 2000 年『南部アフリカ援助研究会報告書第 2 巻 南アフ リカ・本編』)州別の保健指標を見ると、出生時平均余命の最も長い州は、KwaZulu-Natal の 62 歳であ り、唯一 60 歳を上回っている(表 1-22)。最も低い州は Free State の 51 歳であり、 KwaZulu-Natal とは 10 歳以上の開きがある。乳児死亡率で見ても、州間格差は大きく、 乳児死亡率の最も低い Western Cape では千出生当たり 31.2 人であるのに対し、最も高 い Eastern Cape は 71.3 人である。Eastern Cape は貧困者比率が高く、保健指標も低い水 準である。Limpopo や Mpumalanga といった貧困州についても保健指標は低い値を示し ている。 表 1-22 州別保健指標 出生時平均余命(歳) 乳児死亡率(千出生当たり) 州 2001-06 年 2001-06 年 Western Cape 59.0 31.2 Eastern Cape 52.0 71.3 Northern Cape 55.0 44.8 Free State 51.0 59.2 KwaZulu-Natal 62.0 68.5 North West 52.0 41.0 Gauteng 55.0 49.0 Mpumalanga 53.0 59.1 Limpopo 54.0 51.0
(出所) United Nations Development Programme (2003) “South Africa Human Development Report 2003”, p.28 , Table 24 より作成 表 1-23 保健施設へのアクセス (単位:%) クリニック・病院が 徒歩 30 分(2km)以内にある人の割合 性別 男性 67.2 女性 64.3 地域のタイプ 都市 77.2 都市以外 46.8 人種 アフリカ系 65.3 カラード 74.9 インド系 66.4 白人 64.5 州 Western Cape 79.0 Eastern Cape 49.7 Northern Cape 64.8 Free State 74.8 KwaZulu-Natal 60.7 North West 64.0 Gauteng 74.9 Mpumalanga 64.6 Limpopo 56.4 年間世帯所得(1995 年価格) 0-7,199 ランド 58.1
(出所) United Nations Development Programme (2003) “South Africa Human Development Report 2003”, p.274, Table 23 より作成。
保健施設へのアクセスを見ると、性別や人種別では大きな格差は見られないが、地域別 の格差は大きくなっている(表 1-23)。クリニック・病院が徒歩 30 分圏内にある人の 割合は、都市部では 77.2%であるのに対し、非都市部では 46.8%と 30 ポイントの開き がある。また、州別に見ても、最も高い Western Cape で 79.0%に対し、最も低い Eastern Cape では約 50%とほぼ 30 ポイントの格差が生じている。こうしたことから、保健指標 の低い州と保健施設へのアクセスを持つ人の割合が低い州とは、ほぼ一致していること がわかる。なお、保健指標が比較的高い値である KwaZulu-Natal の保健施設へのアクセ ス の あ る 人 の 割 合 は 60.7 % で あ る の に 対 し 、 保 健 指 標 が 低 い 値 を 示 し て い る Mpumalanga では 64.6%とアクセスでは KwaZulu-Natal を上回っている。したがって、 前述のように生活環境などの要因も保健指標に影響を及ぼしていると考えられ、より詳 細な分析が必要である。 貧困層とみなされる 7,199 ランド未満の所得階層では、保健施設へのアクセスを持つ人 の割合は 58.1%であり、貧困者比率の高い州の値に近い値を示している。貧困層に関す る保健指標のデータがないため、貧困層の健康状態や保健施設へのアクセスが限定され ていることで生じている問題については確認できていない。しかし、すでに見たように 貧困層は基礎インフラへのアクセスも制限されており、食糧の確保も困難な状態にある 割合も高いことから、保健の面から見ても厳しい状況にあることが推察される。