第 2 章 南アフリカ政府の取組みと成果
2.3. 貧困削減の成果
2.3.1. MDGs の達成状況
る。次いで、
Gauteng
、Eastern Cape
、Limpopo
となっており、Gauteng
を除いては人口 規模が大きく、貧困者比率の高い州への配分が大きいものと考えられる。中期支出予測 においても、これらの州に対する予算の割合は大きくなっている。しかしながら、公共サービス・行政省(
Department of Public Service and Administration
) や州・地方政府省によれば、地方政府の計画・実施能力は十分でなく、特に、土木エン ジニアの不足が、基礎サービス関連のインフラ整備促進の阻害要因となっている。表 2-15 貧困・飢餓の撲滅に関する達成状況
指標 1990 1994 1997 2000 2003 2004
下位20%層(貧困層)の所得あるいは消費シェア(%) n.a. n.a. n.a. 3.5 n.a. n.a.
1日1ドル未満で暮らす人口比率(%) n.a. 6.3 n.a. 10.7 n.a. n.a.
食料エネルギー消費が最低水準に未満の人口比率(%) n.a. n.a. n.a. n.a. n.a. n.a.
貧困ギャップ比率(1日1ドルを貧困ラインとした場合)(%) n.a. 0.6 n.a. 1.7 n.a. n.a.
貧困者比率(国の貧困ライン以下の人口比率)(%) n.a. n.a. n.a. 35.7 n.a. n.a.
5歳未満児にしめる低体重児の割合(%) n.a. 9.2 n.a. 11.5 n.a. n.a.
(出所) World Bank Web-Site,(http://www.worldbank.org/), Millennium Development Goals Country tablesより作成
図 2-2 所得階層間の社会手当の分配状況
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
0 第1分位
第2分位 第3分位
第4分位 第5分位
第6分位 第7分位
第8分位 第9分位
第10 分位
所得階層
支出配分
1995 2000 45度線
(出所) Servaas van der Berg (2005)”Fiscal Expenditure Incidence in South Africa, 1995-2000”, National Treasury, p.35, Table 5より作成
(2)
目標2:初等教育の完全普及
南ア政府は、教育セクターに重点を置き、政府歳出も教育セクターに最大の配分を行っ ており、初等教育指標は高い水準を保っている。しかしながら、州間格差は大きく、貧 困州ほど初等教育指標が低いことから、地域の状況に応じた政策の実施が求められる。
また、貧困および不平等状態が深刻化していることから、初等教育へのアクセスが低下 しているものと推察され、今後の初等教育指標の悪化が懸念される。政府による学校教 育支出は、所得低位層を中心に分配されているが、最も厳しい状態にある第
1
分位層に 必ずしも重点的に配分されているわけではない。ただし、1995
年に比して2000
年の曲 線が45
度線から外側にシフトしていることから、政府はより低所得者層を意識した予 算配分を行ったものと考えられる。しかし、教育省(Department of Education
)によれば、貧困層への配分状況は州によって相違があり、貧困率の高い
Eastern Cape
やFree State
、Limpopo
においては、貧困層への配分が多くなっているが、KwaZulu-Natal
やNorthern
Cape
、Mpumalanga
では、貧困層への配分は非貧困層への配分を下回っている37。
表 2-16 初等教育の普及に関する達成状況
指標 1990 1994 1997 2000 2003 2004
純就学率(学齢児に占める割合)(%) 87.9 n.a. 91.3 89.6 89.0 n.a.
初等教育完了率(学齢児に占める割合)(%) 80.7 n.a. 92.4 87.5 98.8 n.a.
5年生に進級する児童の割合(%) 75.3 n.a. 75.9 64.8 n.a. n.a.
青年層の識字率(15-24歳)(%) n.a. n.a. 93.9 n.a. n.a. n.a.
(出所) World Bank Web-Site, (http://www.worldbank.org/), Millennium Development Goals Country tablesより作成
図 2-3 所得階層間の政府学校教育支出の分配状況
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
0
第1分位 第2分位 第3分位 第4分位
第5分位 第6分位 第7分位 第8分位
第9分位 第10分位 所得階層
支出配分
1995 2000 45度線
(出所) Servaas van der Berg (2005)”Fiscal Expenditure Incidence in South Africa, 1995-2000”, National Treasury, p.35, Table 5より作成
(3)
目標3:ジェンダーの平等、女性のエンパワメントの達成
初等・中等教育における男女比はほぼ同じであり、教育におけるジェンダーの平等は確 保されているものと考えられる。特に、中等教育における男女比は女子のほうが上回っ ている。高等教育においても、
2001
年時点で男女比は100
対115
と女性が上回ってい るが、政治への女性の参加を示す国会における女性議員の割合は30
%であり、政治へ の女性の参加については更なる改善が求められる。37
Department of Education (2003) “Plan of Action: Improving access to free and quality basic education for all”,
p.17
表 2-17 ジェンダー格差の是正に関する達成状況
指標 1990 1994 1997 2000 2003 2004
国会に占める女性議員の割合(%) 3.0 n.a. 25.0 30.0 30.0 30.0 初等・中等教育における男子に対する女子の割合(%) 103.2 n.a. 102.2 100.0 100.4 n.a.
識字青年女子の青年男子に対する割合(15-24歳)(%) n.a. n.a. 100.8 n.a. n.a. n.a.
非農業セクターに就業している女性の割合 n.a. 39.5 n.a. n.a. n.a. n.a.
(出所) World Bank Web-Site, (http://www.worldbank.org/), Millennium Development Goals Country tablesより作成
(4)
目標4
:子どもの死亡率の削減子どもの死亡率の削減に関する指標については、徐々に改善が見られる。これは、無償 保健政策による効果が上がり、人々が保健サービスへのアクセスを向上させたことによ るものと考えられる。
政府の保健セクターへの歳出の配分は、所得低位層を中心になされている。ただし、第
1
分位層および第2
分位層への配分は、1995
年から2000
年で減少しており、貧困層の 子どもの死亡に関する指標に悪化がみられないか、検証することが必要である。表 2-18 子どもの死亡率の削減に関する達成状況
指標 1990 1994 1997 2000 2003 2004
はしかの予防接種率
(生後12-23ヶ月の幼児)% 79.0 76.0 82.0 77.0 83.0 83.0 乳児死亡率(1000出生当たり) 45.0 45.0 n.a. 50.0 53.0 53.0 5歳未満児死亡率(1000人当たり) 60.0 59.0 n.a. 63.0 66.0 66.0
(出所) World Bank Web-Site, (http://www.worldbank.org/), Millennium Development Goals Country tablesより作成
図 2-4 所得階層間の政府保健支出の配分状況
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
0
第1分位 第2分位 第3分位
第4分位 第5分 位
第6分 位
第7分位 第8分位 第9分位 第10
分位
所得階層
支出配分
1995 2000 45度線
(出所) Servaas van der Berg (2005) ”Fiscal Expenditure Incidence in South Africa, 1995-2000”, National Treasury, p.35, Table 5より作成
(5)
目標5:妊産婦の健康の改善
妊産婦の健康改善に関するデータは整備されておらず、したがって、
2000
年以降の変 化の状況を確認することは困難である。UNDP
のMDGs
カントリーレポート2005
年に よれば、妊産婦死亡率は1998
年時点で10
万出生当たり150
人であり、非常に高い水準 であるとしている。WB
のデータでは2000
年時点で230
人と増加しており、妊産婦の 健康に関わる環境の悪化が懸念される。また、南アフリカでは、HIV/AIDS
感染率が11
% と高く、母子感染のリスクも高い。妊産婦が置かれている状況についての詳細な分析が 必要である。表 2-19 妊産婦の健康の改善に関する達成状況
指標 1990 1994 1997 2000 2003 2004
熟練の保健スタッフによる介助を受けた出産の割合(%) n.a. 82.0 84.4 n.a. n.a. n.a.
妊産婦死亡率(推定、10万出生当たり) n.a. n.a. n.a. 230.0 n.a. n.a.
(出所) World Bank Web-Site, (http://www.worldbank.org/), Millennium Development Goals Country tablesより作成
(6)
目標6: HIV/AIDS、マラリアなどの疾病の蔓延防止
前述の通り、南アフリカにおいて
HIV/AIDS
は深刻な問題となっている。HIV/AIDS感 染率は、ピークの2000
年から低下しているが、今後もHIV/AIDS
感染者の増加が予測 されており、予断を許さない。また、結核の発症率が急激に増加しているが、これはHIV/AIDS
感染の拡大の影響によるものである。南アフリカ政府は、HIV/AIDS
対策に取組んでいるが、保健・医療面からのアプローチのみでなく、教育や若年層の失業対策 など、HIV/AIDS感染拡大の要因すべてに対応する包括的なアプローチが必要であると 考えられる。
表 2-20 感染症の蔓延防止に関する達成状況
指標 1990 1994 1997 2000 2003 2004
避妊法普及率(15-49歳女性)(%) 57.0 n.a. 62.0 n.a. n.a. n.a.
結核発症率(10万人当たり) 186.2 306.4 391.7 465.0 536.4 536.4 HIV/AIDSにより孤児になった児童数 n.a. n.a. n.a. 660,000 1,100,000 1,100,000 HIV感染率(15-49歳)(%) n.a. n.a. n.a. 20.9 15.6 15.6 DOTSにより発見された結核患者の割合(%) n.a. n.a. 6.2 75.0 118.4 118.4
(出所) World Bank Web-Site, (http://www.worldbank.org/), Millennium Development Goals Country tablesより作成
(7)
目標7:持続可能な環境作り
南アフリカ政府は、国民への基礎サービス供給の拡大を進めている。地方政府レベルに おいて、水、衛生設備、廃棄物処理に関わるインフラ整備を進めるとともに、低所得者 層の基礎サービスへのアクセスを向上させるために、一定量の無償供給や重量料金制を 導入している。これにより、水、衛生設備などへのアクセスについては改善が見られて いる。
表 2-21 持続可能な環境作りに関する達成状況
指標 1990 1994 1997 2000 2003 2004
よりよい水へのアクセス(%) 83.0 n.a. n.a. n.a. 87.0 n.a.
よりよい衛生設備へのアクセス(%) 63.0 n.a. n.a. n.a. 67.0 n.a.
保障された所有権・居住権へのアクセス(%) n.a. n.a. n.a. n.a. n.a. n.a.
CO2排出量(1人当たりメートルトン) 8.3 8.2 8.1 7.4 n.a. n.a.
森林面積(%) 7.4 n.a. n.a. 7.3 n.a. n.a.
エネルギー使用1単位当たりGDP(PPPドル) 3.9 3.5 3.6 3.8 3.9 n.a.
国定保護区面積(%) n.a. n.a. n.a. n.a. 5.5 5.5
(出所) World Bank Web-Site, http://www.worldbank.org/, Millennium Development Goals Country tablesより作成
(注) エネルギー使用1単位当たりGDPとは、産業活動に使用された石油1キロ当たりの2000年国際ドル換算され た購買力平価(PPP)ベースGDPである。
政府行動計画による成果は表
2-22
である。水、電気、住宅については、1994
年あるい は1995
年に比べて、2000
年あるいは2004
年の指標は大きく改善している。衛生設備 についても改善は見られるが、非都市部における衛生設備へのアクセスを持つ人口の割 合は依然として低い。表 2-22 政府行動計画による成果(1994-2002)
成果 データ
衛生的な水が入手可能となった人数 8,339,054人 配電網への接続数 3,803,160件 補助金によって完成したあるいは建設中の家屋 1,462,628件
(出所) Government of South Africa (2003) “The Tide has Turned: Build a People’s Contract for a Better South Africa” (Government’s Programme of Action for 2003), South Africa Government Online (www.info.gov.za/)より作成
南アフリカ政府は住宅建設について、補助金を供与し、適切な住宅供給を促しているが、
その分配状況を見ると、必ずしも貧困層に重点を当てたものとはなっていない。
1995
年の分配状況では第4
分位層および第3
分位層への配分が厚くなっているが、2000
年 には第1
分位層から第7
分位層まで、ほぼ均等に配分されている。貧困層が厳しい住環 境にある状況が変わっていないことを鑑みると、住宅政策については貧困層への裨益は あまり大きくないものと考えられる。表 2-23 基礎サービスへのアクセスの改善状況
基礎サービス 1995年 2000年
フォーマルな住居に生活している世帯 65.8 72.6 主な光源として電気を利用している世帯 63.5 71.7 主な水源として水道を利用している世帯 78.5 84.3 水洗あるいは化学トイレを使用している世帯 56.9 58.3
(出所) Government of South Africa (2003) “The Tide has Turned: Build a People’s Contract for a Better South Africa” (Government’s Programme of Action for 2003), South Africa Government Online (www.info.gov.za/)より作成