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参加型開発の取組みの現状

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第 2 章 南アフリカ政府の取組みと成果

3.2. 参加型開発の取組みの現状

3.2.1.

市民社会と非政府組織(NGO: Non-Governmental Organisation)

南ア共和国の

NGO

は、アパルトヘイト政権下において、反アパルトヘイトを掲げ、政 府に代わって、不利な立場の人たちに社会サービスを提供したことを起源としている。

多くのドナーも

NGO

を通じて反アパルトヘイト支援を行っていたため、

NGO

は相当額 の資金へのアクセスがあり、コミュニティ組織(

CBO: Community Based Organisation

) のために資金を仲介し、専門家を擁して、不利な立場に置かれた人々を支援していた。

こうした背景から、南アフリカの

NGO

は、民主化という目標を掲げた政治的な色合い が強い。

CBO

は、南アフリカでは一般に

NGO

と区別して語られ、農村部や都市のタウンシップ にあるコミュニティの住民自身によって運営される組織を指す。

CBO

には専門知識を 持つスタッフがいないことが多い48。アパルトヘイト体制下では、

CBO

NGO

の支援 を受け、反政府運動や不利な立場の人たちに対する社会サービス提供の直接の担い手と なっていた。

南ア共和国では、このように「アパルトヘイト体制打破」という政治的目標を持った

NGO

CBO

が発展してきた。一方、居住地を隔離され、単なる労働力としてしかみな されていなかった人々の間では、共同体や自治組織といった生活のために組織化された グループがあまり発展しなかった。

1994

年の政権交代後、政府はアパルトヘイトを撲滅し、民主的で人種差別や男女差別 のない社会を構築することを目指しており、貧困削減に取り組んでいる。復興開発計画

RDP

)等の政策文書には、貧困削減の取り組みにおける

NGO

CBO

の重要性と、

連携の必要性が書かれている。しかしながら、アパルトヘイト政権下で

NGO

に集まっ ていたドナーの援助資金が、

1994

年の政権交代以降、

RDP

の実施支援に集中するよう になり、多くの

NGO

が財政難に陥っているのが現状である。さらに、前述のとおり、

南ア共和国においては、民主化という政治的目標を持った

NGO

CBO

以外の生活に 根ざした住民組織が発展しておらず、

CBO

のキャパシティ・ビルディングが必要とさ れている。

そのため、南ア政府は、

CBO

を直接支援することによって貧困を削減することを意図 し、

1990

年に独立開発信託基金(

IDT: Independent Development Trust

)を、

1998

年に国 家開発機構(

NDA

)を設立した49

IDT

は、旧ホームランドのような貧困地域における

48

平野克己  「南アフリカの衝撃」  アジア経済研究所  1998

49

1996

年には、

NDA

が発足するまでの暫定期間として、移行期全国開発基金(

TNDT: Transitional National

Development Trust)が設立されている。

学校等の社会インフラ建設や農村開発プロジェクトに対して資金を提供している。

NDA

は、貧困層のニーズにこたえるための

CBO

の活動に対して、無償で資金を提供す ると同時に、

CBO

のキャパシティ・ディベロップメントにも積極的に取り組んでいる50。 民主化以降、反アパルトヘイトという目標を規定しない、純粋な開発志向の

CBO

が新 たに多数出現してきている。こうした

CBO

は、専門知識を持った指導者を擁し、

NGO

に頼らず、直接政府に掛け合って資金調達する傾向がある。このように、近年、政府と

CBO

が関係を強化する中で、資金を仲介してきた

NGO

が疎外されつつある状況が見ら れる。

NGO

は、資金仲介機能の縮小が避けられない中、

CBO

のキャパシティ・ディベ ロップメントや、政府に向けたアドボカシー活動などに活動内容の転換を図ろうとして いる。アパルトヘイト政権下に資金面で

CBO

を支援してきた代表的な

NGO

である

Kagiso Trust

は、

CBO

に対して、プロジェクトの立案や組織作り、訓練、開発資金を政

府から獲得するためのプロポーザル作成支援等を行うとしている。

ネットワーク

NGO

の代表的なものには、南アフリカ

NGO

連合(

SANGOCO: South Africa

National NGO Coalition

)があるが、

2006

年現在、活動が停滞し、無力化しつつあるとい

う情報もある。近年、貧困削減で成果を上げている代表的な

NGO

の一つとして、水・

衛生分野で活動する

Mvula Trust

が挙げられる。

Mvula

は、地元住民を巻き込んだ貧困 層へのサービス・デリバリーの手法を開発し、費用効率の高い持続可能なインフラ整備 を行っている。

Mvula

の成功は、多くの地方自治体が

Mvula

を支援することによって、

水・衛生関連のインフラ整備を行おうとするようになったことからも見て取れる。

NGO

CBO

に関する法律には、1997 年に制定された非営利組織法(Nonprofit

Organisation Act

)があり、福祉省(

Department of Welfare

)の

NPO

局で、

NPO

登録制度 が導入されている51

2005

3

月時点では、

29,000

団体が

NPO

として登録されている52

3.2.2.

民間セクター

(1)

サービス・デリバリーへの民間参入

1994

年に打ち出された復興開発計画(

RDP

)には、通信セクターの民営化以外に、各 種サービス・デリバリーへの民間参入に関する記述はない。

2006

3

月現在、水、衛 生、電気、廃棄物処理などの基本サービスのデリバリーは地方自治体が担っており、民 間参入は進んでいない。電気に関しては、発電の

30

%のみを民間セクターが担うこと になっているが、配電事業への民間参入は行われていない。運輸セクターにおいては、

タクシーや乗合バスなどの一部の交通機関が民間で運営されている。南ア共和国では、

雇用が貧困削減と深く関わっており、貧困層の通勤手段となる公共交通機関は、貧困層 の雇用促進に重要な役割を果たす。しかし、現状利用可能なタクシーや乗合バスは、料 金が高い、治安が悪い、事故が多いといった問題を抱えている。

(2)

企業の社会的責任(CSR: Corporate Social Responsibility)

現在、南ア共和国に進出している外国大手企業は、何らかの形で「企業の社会的責任」

CSR

)活動を行っており、これらも貧困削減と深い関係がある。例えば、日系企業を

50

2.2.1

参照。

51

登録は無料で、申請から約 2

ヶ月程度の時間がかかる。

Department of Welfare (http://www.welfare.gov.za/

2006

年現在)

52

Government of South Africa (2005) “South Africa Year Book 2005/06”

含めた多くの外資系企業では、

HIV/AIDS

対策を自社負担で実施している。これは、南 ア共和国では、各企業が従業員の

HIV/AIDS

問題に対処する責任を有しており、政府プ ログラムは被雇用者以外を対象としているためである。従業員が

HIV/AIDS

で死亡する ことは、企業にとっても大変な痛手であるため、彼らが生活するコミュニティにまで目 を向けて、従業員を守る必要があるのである。こうした活動は、経営者の理念や善意で 行われているというより、アフリカの社会的現実の中で、経済活動を維持発展させてい くためには不可欠のものだといえる。企業による活動は、犯罪防止や学校教育支援にも 及んでおり、

CSR

は南ア共和国の企業社会に組み込まれている感がある。

企業の

CSR

事例として、ドイツに本社を置く自動車会社であるダイムラー・クライス ラー社と日本企業の日産自動車の活動を紹介する。

南ア共和国におけるダイムラー・クライスラー社の

CSR

事例

南アフリカの貧困削減において、貧困層の雇用問題は重要課題の1つである。ヨハネスブルグにある

CIDA

City University

は、貧しいコミュニティ出身の出来のよい生徒をターゲットにした大学であり、彼らが将来

SADC

の国々において経営者や企業家になれるよう、教育している。ダイムラー・クライスラー社は、大 学から離れたところに住んでいる生徒の通学費を負担したり、休暇期間中の仕事を提供したりすることで、

この活動を支援している。

(出所)Daimler Chrysler (2004) “Shaping Communities. Building Bridges. Promoting Dialogue.; Corporate Social

Responsibility in 2004”, Daimler Chrysler

日産自動車の職場における

HIV/AIDS

対策

日本企業の日産自動車は、

HIV/AIDS

への対応として、南アフリカの同社社員に対し、啓発、研修活動、任 意カウンセリング、検査を随時行っているほか、個々のケースに応じた生活改善プログラムを地域のクリ ニックや支援団体の協力のもと、導入している。

(出所)

Nissan Motor Company  「サステナビリティレポート 2005」

(http://www.nissan-global.com/JP/)

2006

3

月現在

(3)

企業の雇用に関する政府の規定

南ア政府は、雇用における格差是正に取り組んでいる。

1998

年に雇用均等法を制定し、

企業に対し平等な雇用を義務付けているほか、外国民間企業の雇用に関して、現地人の 雇用を原則とすることを定めている。さらに、政府調達の入札においては、過去に差別 を受けていたアフリカ系、カラード、女性などの雇用割合も入札時の評価に加えている。

また、石油産業では

2010

年までにアフリカ系、カラード、女性などが経営するエンパ ワメント企業の参入を

25

%に増加させることを定めているほか、鉱業セクターでは

2013

年までにエンパワメント企業の参入を

26

%に増加させ、経営陣の

40

%にアフリカ 系、カラード、女性などを登用する目標を定めている53

3.2.3.

参加型開発のための環境

南ア共和国では、貧困層の多くを占める非白人は、アパルトヘイト政策の下でサービス の受益者とはみなされていなかったため、行政による政策決定に参加する場を与えられ ていなかった。また、先に述べたとおり、非白人社会における住民の組織化が進んでお らず、インフォーマルな自治組織も発展していない。そのため、民主化以降、政府は地 方自治体の政策策定に住民が参加する場や、そのための住民委員会(

Ward Committee

) の設立を試みている。

53

日本貿易振興機構、JETRO Web-Site (http://www.jetro.go.jp/indexj.html) 2006

3

月現在

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