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開発計画と貧困削減戦略

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第 2 章 南アフリカ政府の取組みと成果

2.1. 貧困削減に向けた政策的枠組

2.1.2. 開発計画と貧困削減戦略

南ア政府は、

1994

年の民主化以降、アパルトヘイトにより構造化した様々な側面にお ける不平等と格差の是正に取り組んできた。また、これまで分断されてきた先進国型の

first economy”

と途上国型の“

second economy”

を連携させ、経済の活性化と雇用機会の 増大による貧困撲滅を目指し、「復興開発計画」(RDP:Reconstruction and Development

Programme

)を基盤として様々な取組みを行っている。本節では

RDP

とその政治的目標

の実現に向けて策定された成長・雇用・再配分(

GEAR

Growth, Employment and Redistribution

)戦略、さらに

RDP

の行動計画である「政府行動計画」(

Government Action Plan

)についてレビューする。

(1)

復興開発計画(RDP: Reconstruction and Development Programme)

アパルトヘイト下において、南アフリカ経済はすでに停滞が始まり、これを打破するた めの経済自由化についての議論が

1980

年代半ばから活発化した。ボータ政権は

1986

年 に長期経済戦略を発表し、

1993

年にはデクラーク政権下で「南アフリカ経済の再構成:

規範モデルアプローチ」、通称

NEM

がまとめられた。これらの経済政策は、市場志向 の経済自由化を盛り込んだものであったが、基本的にはアパルトヘイトを前提とするも のであり、抜本的な経済構造の改革を意図するものではなかった。

こうした動きに対し、現在の南アフリカ与党であるアフリカ民族会議(

ANC

African

National Congress

)は、南アフリカ国内の大学の専門家を「マクロ経済研究グループ」

MERG

Macroeconomic Research Group

)として組織し、「民主主義を機能させるため に:南アフリカにおけるマクロ経済政策枠組」(通称

MERG

報告)を取りまとめた。

MERG

報告を理論的バックグランドとして、復興開発計画(

RDP

)が策定され、

ANC

は、

1994

4

月の総選挙でそれを公約として掲げた。初の民主的総選挙で選出された マンデラ政権は、国民全体を統合し、包括するための社会・経済的政策枠組として、

RDP

を政府の公式の政策に位置づけた。

RDP

は、アパルトヘイトを撲滅し、民主的で、かつ人種差別および男女差別のない社 会を構築することを目指したものである。特に、アパルトヘイト体制の払拭のため、

RDP

の実施プロセスにおいては、政府以外の組織の参加の重要性が認識され、また、

国レベル、州レベル、地方レベルにおける効果的な実施体制の構築の必要性が明確にさ れた。

RDP

の最優先課題として貧困撲滅が掲げられ、

RDP

では、社会、組織、環境および経 済的持続可能性、特に、負担可能性(

affordability

)に留意した取組みを行うこととされ た。表

2-4

に示す

10

分野が優先分野として掲げられた。

2-4 RDP

の枠組

6つの基本原則 5つの基本政策 優先分野

‹ 統合された持続可能な計画

‹ 人々によって進められるプロセス

‹ すべての国民にとっての平和と安全

‹ 国家建設

‹ 復興と開発の連携

‹ 南アフリカの民主化

‹ 基本的ニーズの充足

‹ 人的資源の育成

‹ 経済の構築

‹ 国家および社会の民主化

‹ RDPの実施

‹ 土地改革

‹ 住宅とサービス

‹ 水と衛生

‹ エネルギーと電化

‹ 電気通信

‹ 運輸

‹ 環境

‹ 栄養

‹ 保健

‹ 社会保障と社会福祉

(出所) African National Congress (1994) “The Reconstruction and Development Programme”より作成

(2)

成長・雇用・再配分(GEAR:Growth, Employment and Redistribution)戦略

1996

年には、

RDP

における政治目標を達成するために、経済成長による失業問題およ び貧困問題の解決を目指す、「成長・雇用・再配分(

GEAR

)戦略」が導入された。

GEAR

は、財政健全化、金融政策、貿易自由化、労働市場政策を柱とし、失業率の低下と基礎 サービスの供給を可能にするために必要な

6

%の経済成長率達成を目指した。

住宅、保健、教育、土地改革などの各セクターについての政策は、

RDP

の政策が踏襲 されたが、柱となった財政政策、金融政策、貿易政策、労働市場政策は、経済界の意向 も反映され、

RDP

とは異なるアプローチが採用された。

GEAR

の成果を見ると、

2000

年時点では、インフレ率については

10

%以下に抑制する という目標を達成したが、経済成長率は

6%には届かず、また、雇用も拡大するどころ

か減少した。雇用拡大のための経済活性化に必要な投資に関する目標も達成には及ばな かった。特に、外国投資は

350

億ランドが見込まれていたにもかかわらず、実際には

61

億ランドに留まった。

GEAR

の経済成長によるアプローチのみでは、南ア共和国が 抱える構造的問題の解決には課題があることが明らかになっている。

なお、GEARによる取組みの教訓を踏まえて、2010年以降の経済成長率

6%台という、

経済成長目標を達成するための「成長分配促進戦略(

ASGISA

Accelerated Shared-Growth

South Africa

)」が策定されている。

ASGISA

では、経済成長の阻害要因として、熟練労

働力不足、割高な輸送費用といった課題を指摘し、その解決策として、教育・能力開発 やインフラ整備などを挙げている。

2014

年までに失業を半減させることが目指されて

いるが、

ASGISA

の具体的な行動計画は未だ明確になっておらず、今後の取組みが注目

される。

図 2-1 GEARによる政策のフロー

財政政策 金融政策 貿易政策 労働市場政策

(政策措置)

y 赤字削減 y 所得税見直し y 政府消費支出削減 y GDP に対する税金の比

率の低下

(政策措置)

y 金融引締政策 y 為替管理の緩和 y 外国人投資家による国

内信用へのアクセス緩

y 機 関 投 資 家 の ア セ ッ ト・スワップを通じた海 外資産取得制限の倍加

(政策措置)

y 関税改正の促進 y 優遇税制 y 競争政策

y 輸出に対する輸入費用 の相殺

y 量的制限の関税への切 替え

y 一般輸出優遇措置の段 階的廃止

y 新規製造業投資に関す る減価償却の前倒し・促

y 中小企業振興

(政策措置)

y 労働市場の流動性拡大 y 間接賃金費用削減 y 交代勤務やジョブ・シェ

アリング、職業柔軟性向 上のためのインセンテ ィブ増加

y 賃金上昇につながる生 産性

y 賃金の適正化

y 柔軟な労働市場に関す る法的枠組み

(期待される成果)

y 債務返済の抑制 y インフレ抑制

y 政府出超削減による投 資財源の確保

y 再配分の促進 y 財政的歯止めの是正

(期待される成果)

y インフレ削減

y 実質実行為替レートの 安定化

y 国内貯蓄・投資増加 y 高度経済成長の促進 y 雇用機会の拡大 y 公平な所得分配の促進

(期待される成果)

y 投入財価格の抑制 y 産業再編の促進 y 新規投資の奨励 y 金以外の輸出増加 y 民間投資増加 y 製造業拡大

y 海外固定資本投資の増

y 中小企業の育成

(期待される成果)

y 競争促進と労働集約的 産業による成長への道

y 投資と雇用の拡大 y インフレ圧力の低下 y 柔軟性のある集団交渉

制度

y 生 産 性 向 上 に よ る 賃 金・給料の上昇

1996年から2000年におけるGEARの主要目標 - GDP成長率6%(2000年まで)

- 雇用拡大と失業の削減(2000年以降、年間409,000件の雇用創出)

- インフレ率を10%以下に抑制

- 5年間で金以外の年間平均実質輸出額の成長率8.4%

- 国内貯蓄をGDP18%から22%に増加

- 実質民間投資を年平均11.7%増加、2000年中には国内投資をGDP20%から約26%に増加 - 外国投資の流入額GDPの約4% 

2000年時点における実際の成果

- 1997〜2000年のGDP成長率年平均は2.1%。2000年のGDP成長率は3.1%

- 非農業セクターの雇用が509,000に減少 - インフレ率が10%以下

- 実質輸出額の年平均成長率は4.3%

- 2000年の国内貯蓄はGDP15.2%

- 2000年の総投資は16.7%

- 2000年の外国直接投資はGDP0.7% 

(出所) United Nations Development Programme (UNDP) (2003) “South Africa Human Development Report 2003”, United Nations Development Programme, p.189, Table 8.11より作成

成長・雇用・再配分戦略

(3)

政府行動計画(Government’s Programme of Action)

RDP

に集約される政策枠組のもと、イシューごとに長期計画を策定し、年度ごとに予 算および実施計画を「政府行動計画」として策定している。

2005

年政府行動計画では、

以下の

6

つのクラスターごとに具体的な政策・計画が策定され、現在、各所管の省庁に よって実施されている。

経済・投資・雇用クラスター ガバナンス・行政クラスター

国際関係・和平・安全保障クラスター 司法・犯罪防止・治安クラスター 社会クラスター

公共インフラの整備、経済成長による雇用促進、および地域間格差の是正に関する取組 みは、経済・投資・雇用クラスターに含まれており、基礎サービス、保健、教育、住宅、

社会保障については社会クラスターにおいて取組みが行われている。また、公共インフ ラの整備や、基礎サービス、社会サービスへのアクセスの改善の取組みの実施体制につ いては、ガバナンス・行政クラスターに関わるものである。

各セクターの具体的な取組みについては、2.1.3にとりまとめる。

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