第 2 章 南アフリカ政府の取組みと成果
2.2. 貧困削減に向けた政府のキャパシティ
ンフラに関する無料サービスを実施するために、
2006
年度だけで40
億ランドが支出さ れる予定となっている。また、農業土地省(
DALA
:Department of Agriculture and Land Affairs
)は、資産所有の 分配における不平等の是正に向けて、土地の権利回復および土地改革に関するプログラ ムを実施し、土地の購入に対する補助金の交付を通じて、土地の再配分を図っている。2004/05
年度予算で、およそ5
億3,600
万ランドが配分されている。しかし、土地の再配分だけでは、貧困削減に効果がないことが指摘されている。配分された土地を生産的 に活用することが不可欠であり、そのためにはインフラの整備、訓練、金融、市場への アクセスなどの支援制度が必要とされる。
表 2-13 土地権利回復と土地改革助成金(1998-2005)
土地権利回復 土地改革補助金
会計年度 金額
(1,000ランド)
DALA予算に占める割合
(%)
金額
(1,000ランド)
DALA予算に占める割合
(%)
1988-99 12,088 1.7 358,274 49.6
1999-2000 122,196 17.8 173,008 25.3
2000-01 205,590 26.7 156,623 20.3
2001-02 186,528 19.2 332,431 34.2
2002-03* 242,951 25.2 251,463 26.1
2003-04* 265,441 25.1 209,247 19.8
2004-05* 305,873 26.8 230,314 20.2
(出所) United Nations Development Programme (UNDP) (2003) “South Africa Human Development Report 2003”, p.81, Table 4.2
(注) * 予想値
(1)
南アフリカ開発銀行(DBSA)DBSA
はプロジェクト・ファイナンスを専門とする金融機関であり、インフラ整備への 資金供給を行っている。金融機関としての採算性を重視しながらも、南ア共和国の開発 への貢献の役割を担う取組みも行っている。その一つが、DBSA
開発基金(DBSA Development Fund
)であり、2001
年12
月に設立された34。同基金の目的は、農村あるい は都市の人的、制度的、金融面での阻害要因に対し無償資金を提供し、開発金融の効果 を最大化し、以て、効率的かつ効果的なサービス・デリバリーや地方経済開発を促進す ることである。具体的には、同基金は、キャパシティ・ビルディングのための無償資金供与 開発のファシリテーション
パートナーシップの構築 による支援を提供している。
開発基金の現在の重点地域は、
Eastern Cape
およびLimpopo
であり、無償資金によって、地方政府のキャパシティ・ビルディングを支援している。また、より低金利のターゲッ ト・インフラプログラムという金融パッケージを提供し、インフラ整備が遅れた地域の 開発を支援している。
(2)
国家開発機構(NDA
:National Development Agency
)NDA
は南アフリカの国営企業の一つであり、貧困削減を組織の使命としている。財務 省および社会開発省(Department of Social Development
)から予算が配分され、2006
年 度の予算額は1
億2,300
万ランドであった。活動の柱は、i)コミュニティ・エンパワメ ント、ii
)パートナー開発、iii
)研究、iv
)対話の促進である。i
)については、無償資金を供与し、コミュニティ組織(CBO
:Community Based
Organisation
)のキャパシティ開発を行い、所得獲得機会の向上に資する起業のためのプロポーザルの作成や、プログラムの策定を行う能力の向上を支援している。
ii
)では、あらゆる資源を動員し、効果的な開発を進めるために、様々なレベルでの調整を行って いる。
iii
)では、起業に有益な農業技術や食品加工などの研究を行い、提供している。iv
)では、政府、民間セクター、市民社会の対話を促進し、政策と実施のギャップを解 消できるよう、ファシリテーターとしての役割を果たしている。NDA
のスタッフは121
名で、そのうち68
名が州事務所に駐在し、地域の開発活動を支援している。政府予算のほかに、NDAではヨーロッパ連合(EU:European Union)の支援によるプ ロジェクトの実施機関として、地方政府のキャパシティ・ビルディングにも取組んでい る。
2.2.2.
地方分権化と地方政府南アフリカにおいては、アパルトヘイト体制下で資源分配における社会的不公正が制度 的に行われてきたことから、
1994
年の体制転換以降、こうした構造的な社会的不公正 を解消することが国の最重要課題として取組まれてきた。そうした中で、財政面での地 方分権化が積極的に試みられている。州政府の財源は、州政府の歳入と中央政府からの34
2005
年の南ア国内における開発金融の資金供与実績は約124
億ランド(1
億6,000
万ドル)であった。(Development Bank of South Africa (2005) “Annual Report 2004/2005”)
財政移転による。
1997
年以前は、中央政府から各セクターを所管する省(保健省、教育省など)に予算 が配分され、各省から各州のセクター局(教育局、保健局など)に予算が分配されてい た。すなわち、中央レベルでセクター間の予算配分が決定されたあと、セクターごとに 各州への配分が行われていた。新憲法の発効とともに、1997
年に包括的財政移転方式 が導入され、中央政府から州政府に予算が全額移転され、各州の予算内訳は州政府が独 自に決定できるようになり、州政府の裁量権が拡大した。表 2-14 州の財政状況
(単位:百万ランド)
中期支出予測
州 実績
1999/2000
実績 2000/01
実績 2001/02
実績 2002/03
(予想値) 2003/04 2004/05 2005/06 Eastern Cape
歳入 17,086 18,707 20,700 23,537 26,964 29,959 33,064 支出 16,307 18,162 19,591 24,019 27,933 29,959 33,065 収支 779 545 1,109 -482 -969 0 -1 Free State
歳入 7,037 7,749 8,656 9,654 11,056 12,248 13,363 支出 6,692 7,431 8,227 10,054 11,056 12,248 13,363
収支 345 318 429 -400 0 0 0
Gauteng
歳入 17,385 18,818 21,098 23,825 27,253 29,797 32,132 支出 16,831 18,109 20,203 24,159 27,030 26,696 33,003 収支 554 709 895 -344 223 3,101 -871 KwaZulu-Natal
歳入 20,273 22,629 24,998 28,337 32,908 36,434 39,808 支出 19,389 21,799 25,061 29,043 32,908 36,434 39,808
収支 884 830 -63 -706 0 0 0
Limpopo
歳入 12,869 14,565 16,189 18,405 21,373 23,477 25,712 支出 12,807 14,485 15,656 18,455 21,373 23,477 25,712
収支 62 80 533 -50 0 0 0
Mpumalanga
歳入 6,693 7,467 8,730 9,779 11,412 12,574 13,725 支出 6,548 7,024 8,455 9,779 11,362 12,524 13,675
収支 145 443 275 0 50 50 50
Northern Cape
歳入 2,507 2,622 2,965 3,357 3,934 4,326 4,699 支出 2,524 2,667 2,947 3,424 3,932 7,326 4,699 収支 -17 -45 18 -67 2 -3,000 0 North West
歳入 8,484 9,289 9,963 11,310 13,203 14,682 16,069 支出 8,241 9,216 9,906 11,349 13,203 14,682 16,069
収支 243 73 57 -39 0 0 0
Western Cape
歳入 11,280 11,908 13,041 14,355 15,979 17,373 18,716 支出 10,748 11,514 12,517 14,605 16,414 17,623 18,974 収支 532 394 524 -250 -435 -250 -258 全州合計
歳入 103,614 113,754 126,340 142,559 164,082 180,870 197,297 支出 100,087 110,407 122,563 144,887 165,211 180,969 198,377 収支 3,527 3,347 3,777 -2,328 -1,129 -99 -1,080
(出所) Development Bank of Southern Africa (DBSA) (2005) “Development Report 2005: Overcoming Underdevelopment in South Africa’s Second Economy”, Development Bank of Southern Africa p.148, Table 2.10
表
2-14
は、各州の財政状況を示したものである。2002
年度時点で、最も予算規模が大きいのは
KwaZulu-Natal
であり、歳出額は290
億ランド、全体に占める割合は20
%である。次いで、
Gauteng
、Eastern Cape
、Limpopo
となっており、Gauteng
を除いては人口 規模が大きく、貧困者比率の高い州への配分が大きいものと考えられる。中期支出予測 においても、これらの州に対する予算の割合は大きくなっている。しかしながら、公共サービス・行政省(