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博士(歯学)百合草健圭志

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Academic year: 2021

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博士(歯学)百合草健圭志

学 位 論 文 題 名

多 血 小 板 血 漿 に よ る 骨 形 成 促 進 効 果

― マウ ス 骨 折モ デ ルを 用いた 評価ー

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

【緒言】

  近年,骨組織再生をもたらす治療法として,多血小板血漿(platelet‑rich plasma:

PRP)を 局 所 に 投 与 す る 試 み が 数 多 く 行 わ れて い る .こ のPRP中に は ,各 種 細 胞増 殖 因 子が 含 まれ て お り, これらの 細胞増殖 因子群が 複雑かつ 相互に作 用す るメ カ ニ ズム の 下で 働 い て骨 形成を促 進するも のと考え られてい る.また ,こ れらの増 殖因子は 普段は血 小板のa顆粒 中に貯留 されてい るが,脱 顆粒する 際に 分泌 さ れ るも の と考 え ら れて おり,こ の脱顆粒 を起こす 原因とし て血液凝 固反 応により 活性化さ れるトロ ンビンによ る刺激な どがあげ られる.Q顆粒から 分泌 され る 細 胞増 殖 因子 に は ,主 に血小板 由来成長 因子(PDGF),腫 瘍細胞増 殖因子

・p (TGF‑酌,インスリン様成長因子‐I(IくiF‑l),血管内皮細胞増殖因子(VEGF)な どが 含 ま れて い る, こ れ らの 細胞増殖 因子の全 てが協奏 的に働く ことで, 生体 内で の 骨 形成 が 正常 に 行 われ ると考え られてい るが,そ の詳細な メカニズ ムの 全て が 明 らか に きれ た わ けで は ない . ま た, 先 に述 べ たPRPを用い た骨組織 再 生療 法 に おい て も,PRP中 のど の 成分 が , どの よ うな メ カ ニズムで 骨形成を 促 進し て い るの か につ い て の詳 細は明ら かにされ ておらず ,またそ れを調査 する ための良い評価系は樹立されていない.

  1984年 にBonnarensとEinhomに より 発 表さ れ た 実験 的 骨折 モデルは ,その後 も多 く の 研究 が なさ れ て おり ,骨折部 治癒過程 を評価す る実験系 として確 立さ れた モ デ ルで あ る. 骨 折 治癒 は胎生期 における 骨形成と 類似して おり,軟 骨形 成, 軟 骨 の吸 収 と線 維 骨 の形 成および 線維骨の りモデリ ングと層 板骨の形 成と いう 過 程 をた ど り, 骨 形 成の 様々な状 態を観察 すること ができる .そこで 本研 究で は , 新た に マウ ス 大 腿骨 骨折モデ ルをその 評価法に 用い,骨 折治癒に 対す るPRP由来成分の作用を評価した.

【材料と方法】

  5週齢 の 雄ICRマ ウ スに 全 身 麻酔 を 行っ た 後 ,26匹 のマ ウ スか ら 心臓採 血法 に よ り 約0.8 ml/匹 採 血 し , 全 体 と し て 約20 ml採 取 し た ,Citrate‑

Phosphate‑Dextrose solutionをあらかじめシリンジ内に0.15 ml採取しておき,抗 凝 固剤 ′ として使 用した.採 血した全 血液は第 一段階と して200gで10分 間(室 温 )遠 心 分離を行 い,赤血球 分画(下 層)と血 漿分画( 上層)に 分かれた うち の 血漿 分 画を別の 容器に移し た.第二 段階とし て,分離 した血漿 分画を250gで

(2)

10分 間( 室温 )再 び遠 心分 離を行い,下部の3 mlをPRP,残りの成分を乏血小板 血漿(Platelet‑Poor Plasma: PPP)とした.PRP中の血小板をトロンビン処理して活 性 化 す る た め , 牛 ト ロン ビ ン1,000Uを10% 塩化 カル シウ ム水 溶液10 mlに溶 解 し た もの を作 製し ,PRPと卜 ロン ビン ・塩 化カ ルシ ウム 水溶 液を体 積比9:1 の割 合で 混合 した .そ の後 ,18,000gで10分間 の遠 心分 離を行い,凝固したフ ィブ リン 成分 や血 球成 分を 取り除き,残りの上澄みをPRP‑released supematant (PRPS)として採取し,実験に使用した.

  5週 齢 の 雄ICRマ ウ スに 全 身 麻 酔 か け た 後 , 左 大 腿 骨 髄 腔 内 に25Gの注 射針 を長 軸方 向に 刺入 し骨 内固 定を 行い ,骨 幹部中 央で 徒手 法により大腿骨を骨折 させた.骨折から1日後,同部にPRPS,あるいは同量のphosphate bufferedsaline

(PBS) を27Gの 注射 針と1mlシ リン ジで 骨折 部骨 膜下 に20山注 入した もの をそ れ ぞ れPRP群 , 対 照 群 と し た . 放 射 線 学 的 検 索 で は,SOFTEXCSM‐2を用 いて 大 腿 骨 骨 折 部 のX線 写 真 を 撮 影 し ,X線 写真 上で 骨折 部の 治癒 状態, 仮骨 の形 成状態を検索した.組織学的検索では,試料は通法に従い,lO%中性ホルマリン に て 固 定 後 ,EDTA脱 灰を 行 い , パ ラ フ ィ ン 包 埋 し ,5mmの 切 片 を 作 成し た.

その後,アルシアン・ブルー染色を行い,光学顕微鏡下で組織学的に検索した.

【結果】

放射線学的所見

  骨 折 後7日 目 で はPRP群 , 対 照群 とも に骨 折部 仮骨 形成 は顕 著で はか った.

骨 折後14日 目に なる と仮 骨の 全体 像が 不透 過像と して 確認 でき ,明 らか にPRP 群 の仮 骨形 成量 が対 照群 を有 意に 上回 って いた, 骨折 後21日目 ではPRP群,対 照 群と もに 仮骨 の大き さは 減少 し骨 折後 各時 点で の仮骨としての膨隆はほぼ認 められなくなった.

組織学的所見

  骨 折 後7日 目 に お い て は ,PRP群 と対 照群 との 間に 組織 学的 に大 きな 差異は 認 めら れな かっ た,い ずれ の組 織像 にお いて も, 骨折線部を中心として膨隆す る 仮骨 の形 成が 認めら れた .ま た, 主と して 未成 熟な軟骨組織が全体を占め,

物 理的 な骨 膜反 応性の 骨形 成も 認め られ た. 骨折 後14日目においては,仮骨の 大 きさ は増 大し ,軟骨 組織の増加,成熟,吸収が見られた.7日目に比べて仮骨 内 の軟 骨組 織は 成熟し ,肥 大軟 骨組 織が よく 観察 されたが,一部は吸収され線 維 骨の 形成 も認 めら れた .PRP群で は対 照群 と比 較し て軟 骨組 織の 吸収 がより 進 み, 線維 骨へ のより 多く の置 換が 認め られ た. 骨折後21日目では,仮骨の大 きさはりモデリングにより減少した. PRP群では大部分の軟骨組織は吸収され,

線 維骨 に置 換さ れて いた .一 方, 対照 群で は,PRP群 と同 様に 軟骨 組織 は吸収 さ れ, 線維 骨に 置換 され てい たが ,PRP群と 比較 して より 多く の軟 骨組 織が残 存しているのが認められた.

【考察】

  近年 ,PRPを 利用し 局所 の骨 再生 能カ を高 めよ うと いう 試み が, 数々 の動物 モ デル を用 いて 行われ 好成 績が 報告 され てい る. しかしながら,マウスの骨欠 損 モデ ルに 対す るPRPの影 響や イヌ の骨 欠損 モデ ルに 対す る影 響な どの 報告に よ れば ,PRPに よる骨 形成 への 促進 的な 効果 は認 めら れな いと あり ,そ の評価 はいまだに定まっていない,また,in vitroにおける研究においても,問葉系幹

(3)

細胞からの骨芽細胞への分化に対して,PRPの有効性を認めるもの,歯根膜細 胞への効果を報告するものがあるが,そのような効果はないとする報告もあり,

いまだにその効果については意見が分かれている.

  本研究では,骨内固定を伴うマウス大腿骨骨折モデルを用いて骨折治癒にお けるPRPの作用を評価した.その結果,PRP投与群では,対照群に比較して骨 折後14日目の仮骨の形成量が多いこと,またその後,14日および21日目での 軟骨組織の吸収が早いことから,PRP投与により,骨折治癒におけるりモデリ ングが促進する可能性が考えられた.

【結論】

  骨内固定を応用したマウス骨折モデルを用いて,多血小板血漿(PRP)由来成 分が骨折治癒におよばす影響について調査したところ,PRPSの骨折部への投与 により骨折部仮骨の形成量が増大すること,また,骨折部治癒過程における軟 骨組織の消失時期が早まることが明らかになった.また,本研究により.PRP 中の何らかの成分カミ,骨折部治癒過程における骨のりモデリングサイクルを早 める可能性が明らかになった.

(4)

学 位 論 文 審 査 の 要 旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 教授 助教授

北 川 善 政 田 村 正 人 進藤.正信 石 崎    明

学 位 論 文 題 名

多 血 小 板 血 漿 に よ る 骨 形 成 促 進 効 果

― マ ウ ス 骨 折 モ デ ル を 用 い た 評 価 ―

  審 査 は 、 審 査 委 員 全 員の 出 席 の下 に 口 頭試 問 の 形式 に よ り行 わ れ た 。申 請 者 に対 し て 提 出論文と それに 関連した 学科目 について 試問を行 った。 審査論文 の概要 は以下の 通りで ある。

  本 研究 は 、 多血 小 板 血漿(platelet‑rich plasma: PRP)を用いた 骨組織再 生療法 においてPRP の 骨 形 成促 進 に 対す る 影 響を 調 べ る ため に , 実験 的 マ ウス 大 腿 骨骨 折 モ デル を そ の評価 法に 用 い , 骨 折 治 癒 に 対 す る PRP由 来 成 分 の 作 用 つ い て 検 討 し た も の で あ る 。   PRPの 調 製 は ,5週 齢 の 雄ICRマ ウ ス26匹 か ら 心 臓 採 血 法 に よ り 約0.8 ml/匹 採 血 し , 全 体 と し て 約20 ml採 取し た . 採血 し た 全血 液 は 第一 段 階 とし て200g10分 間 ( 室温 ) 遠 心分 離 を行い, 赤血球 分画(下 層)と 血漿分画 (上層 )に分か れたうち の血漿分画を別の容器に移し た . 第 二段 階 と して , 分 離し た 血 漿 分画 を250g10分 間 (室 温 ) 再び 遠 心 分離 を 行い ,下部 の3 mlPRP, 残 り の 成 分 を乏 血 小 板血 漿(Platelet‑Poor Plasma: PPP)と し た .PRP中 の血 小 板 を ト ロ ン ビ ン 処 理 し て 活 性 化 す る た め , 牛 ト ロ ン ビ ン1000U10% 塩 化 カ ルシ ウ ム 水 溶 液10 mlに 溶 解 し た も の を 作 製 し ,PRPと ト ロ ンビ ン ・ 塩 化カ ル シ ウム 水 溶 液を 体 積 比 9:1の 割 合 で 混 合 し た . そ の 後 ,18000g10分 間 の 遠 心 分 離 を 行 い , 凝 固 した フ ィ ブリ ン 成 分 や血 球 成 分を 取 り 除き , 残 り の上 澄 み をPRP‑released supematant (PRPS)とし て採取 し , 試 料 と し た . 次 に ,5週 齢 の 雄ICRマ ウ ス に 全 身 麻 酔 後 , 左 大 腿 骨 髄 腔 内 に25Gの 注 射 針 を 長軸 方 向 に刺 入 し 骨内 固 定 を 行い , 骨 幹部 中 央 で徒 手 法 によ り 大 腿骨 を 骨 折させ た,

骨 折 か ら1日 後 , 同 部 にPRPS,あ る い は同 量 のphosphate buffered saline (PBS)27Gの 注 射 針 とImlシ リ ン ジ で 骨 折 部 骨 膜 下 に20 ml注 入 し た も の を そ れ ぞ れPRP群 , 対 照 群 と し た . 放 射 線 学 的 検 索 で は ,SOFTEX CSM‑2を 用 い て 大 腿 骨 骨 折 部 のX線 写 真 を 撮 影 し ,X 線 写 真 上 で 骨 折 部 の 治 癒 状 態 , 仮 骨 の 形 成 状 態 を 検 索 し た , 骨 折 後7日 目 で はPRP群 , 対

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照群と もに骨折 部仮骨形 成は顕著 ではかった.骨折後14日目になると仮骨の全体像が不透 過像と して確認 でき,明 らかにPRP群 の仮骨形 成量が対 照群を有意に上回っていた.骨折 後21日目 ではPRP群, 対照群と もに仮骨 の大きさ は減少し 骨折後各時点での仮骨としての 膨隆はほぼ認められなくなった.組織学的検索では,試料は通法に従い,10%中性ホルマリ ン にて 固 定 後,EDTA脱 灰を 行 い ,パラフ ィン包埋 し,5mmの切片 を作成し た.その 後,

アルシ アン・ブルー染色を行い,光学顕微鏡下で組織学的に検索した,骨折後7日目におい ては,PRP群と対照 群との間 に組織学 的に大き な差異は 認められなかった.いずれの組織 像においても,骨折線部を中心として膨隆する仮骨の形成が認められた.また,主として未 成熟な 軟骨組織 が全体を 占め,物 理的な骨膜反応性の骨形成も認められた,骨折後14日目 におい ては,仮骨の大きさは増大し,軟骨組織の増加,成熟,吸収が見られた.7日目に比 べて仮骨内の軟骨組織は成熟し,肥大軟骨組織がよく観察されたが,一部は吸収され線維骨 の形成 も認めら れた.PRP群 では対照 群と比較 して軟骨 組織の吸収がより進み,線維骨へ のより 多くの置 換が認め られた. 骨折後21日目では,仮骨の大きさはりモデリングにより 減少し た.PRP群で は大部分 の軟骨組 織は吸収 され,線 維骨に置換されていた.一方,対 照群で は,PRP群と 同様に軟 骨組織は吸収され,線維骨に置換されていたが,.PRP群と比 較してより多くの軟骨組織が残存しているのが認められた.

  骨内固定を応用したマウス骨折モデルを用いて,多血小板血漿(PRP)由来成分が骨折治癒 におよ ばす影響 について 調査した ところ,PRPSの骨折部への投与により骨折部仮骨の形成 量が増大すること,また,骨折部治癒過程における軟骨組織の消失時期が早まることが明ら かにな った.ま た,本研 究により ,PRP中の何 らかの成 分が,骨折部治癒過程における骨 のりモデリングサイクルを早める可能性が明らかになった,

  論文審査にあたって、論文申請者による研究要旨の説明後、本研究ならびに関連する研究 について質問が行われた。主な質問事項は、1) PRP中の成長因子の相互作用について、2)骨 折 モデル で出現す る軟骨細 胞の由来 とVEGFとの関 連、3)臨 床的にPRPの骨 増生に対 する 作用、4)骨折治癒における内骨膜、外骨膜について、等であった。これらの質問に対して申 請者から適切かっ明快な回答、説明が得られ、研究の立案と遂行、結果の収集とその評価に つい て申請者が 十分な能 カを有し ているこ とが確認 された。 本研究は、PRP投与が骨折部 治癒過程において骨のりモデリングサイクルを早めることを示したものであり、その内容が 高く評価された。申請者は、関連分野にも幅広い学識を有していると認められ、さらに骨の 再生や腫瘍の骨吸収についての研究にも興味を示しており、将来性についても評価された。

本研究業績は骨折、インプラント治療のみならず関連領域にも寄与すること大であり、博士

(歯学)の学位に値するものと認められた。

参照

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