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博士(歯学)鈴木敏雄 学位論文題名

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Academic year: 2021

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(1)

     博士(歯学)鈴木敏雄 学位論文題名

ラットにおけるBone Morphogenetic Protein −2 による 異所性骨形成に対するプロプラノロールの影響

学位論文内容の要旨

【緒言】

  骨 は 骨 芽 細 胞 と 破 骨 細 胞 の 分 化 と 機 能 の バ ラ ン ス に よ り 骨 形 成 と 骨 吸 収 を 繰 り 返 し , 恒 常 性 を 保 っ て い る 組 織 で あ る . こ の 骨 リ モ デ リ ン グ 現 象 は , 活 性 型 ビ タ ミ ンD, 副 甲 状 腺 ホ ル モ ン , カ ル シ ト ニ ン な ど の 全 身 性 ホ ル モ ン の 他 , 骨 芽 細 胞 の 分 化 に 重 要 なBone morphogenetic protein (BMP)Transforming growth fac:tor‑p,Insulin‑Iike gtowth factorなどのサイトカインによっても調節されている こ と が 知 ら れ て い る . 最 近 , こ れ ら の 制 御 因 子 の ほ か に レ プ チ ン が 全 身 の 骨 量 を 調 節 し て い る こ と が 報 告 さ れ た . レ プ チ ン は1994年 ,Friedmanら に よ り 通 常 の マ ウ ス の2倍 以 上 に 肥 満 す るobe闘 突 然 変 異 遺 伝 性 肥 満 マ ウ ス の 原 因 遺 伝 子 と し て 単 離 同 定 さ れ た . こ の レ プ チ ン は ,146ア ミ ノ 酸 残 基 よ り な り 脂 肪 細 胞 か ら 分 泌 さ れ る 代 表 的 な ア デ ィ ポ カ ン と 称 さ れ る ホ ル モ ン の ー つ で あ る . 主 に 視 床 下 部 弓 状 核 お よ ぴ 腹 内 側 核 に 作 用 し て 摂 食 と エ ネ ル ギ 一 代 謝 の 亢 進 を も た らし , 肥満や体重増加を抑制する機能を有すると考えられて いる・

  こ の レ プ チ ン を 欠 損 し た ぬ ′0bマ ウ ス は , 肥 満 に 加 え 全 身 の 骨 量 が 増 加 して い る こ と が 知 ら れ て い る . こ の 骨 量 の 調 節 は , 液 性 因 子 に よ る も の で な く , 視 床 下 部 腹 内 側 核 を 介 し エ ピ ネ フ リ ン な ら び に ノ ル エ ピ ネ フ リ ン を 神 経 伝 達 物 質 と す る 交 感 神 経 お よ び 骨 芽 細 胞 の 細 胞 膜 上 の 胆 受 容 体 が 関 与 し て い る と 報 告 さ れ て い る . し か し な が ら , 局 所 に お い て 交 感 神 経 系 な ら び にB受 容 体 に よ っ て 骨 形 成 が 調 節 さ れ る か 否 か 明 ら か で は な い . そ こ で , 本 研 究 で はBMP2に よ る ラ ッ ト 異 所 性 骨 誘 導 実 験 系 を 用 い て ,p受 容 体 遮 断 薬 の ー っ で あ る プ ロ プ ラ ノ ロ ー ル が 異 所 性 骨 形 成 に 及 ば す 効 果 に つ い て 調 べ , 局 所 に お け る 交 感 神 経 系 な ら び D受 容 体 の 骨 形 成 に お け る 役 割 を 明 ら か に す る こ と を 目 的 と し た ・

【材 料と 方法 】

  プ ロ プ ラ ノ ロ ー ル は 局 所 投 与 と 全 身 投 与 に 分 け て 実 験 を 行 っ た . 局 所 投 与 の 場 合 , 担 体 と し て 繊 維 性 ガ ラ ス 膜(Fibrous glsmemtneFmを 使 用 し , プ ロ プ ラ ノ ロ ー ル な ら び に ヒ ト 組 み換 えBMP12, ヒト 組み 換えFi blaSt伊Dvm factorGF) ‐2を 含浸 しベ レッ ト体とし て凍結乾燥後,4週齢のWistal・‐langAH 雄 ラ ッ ト の 背 部 皮 下 に 埋 入 し た .1週 お よ び2週 後 に ベ レ ッ ト 体 を 摘 出 し , 軟X 線 写 真 撮 影 , カ ル シ ウ ム 含 有 量 , ア ル カ リ フ オ ス フ ァ タ ー ゼ 活 性 ,RFPCRに よ mRNA量 の 測 定 , ヘ マ ト キ シ リ ン ・ エ オ ジ ン (HE) 染 色 な ら ぴ に 鍍 銀 染 色 を

(2)

行った.プロプラノロールの全身投与は,ラット1匹あたり100 pgを毎日1回 3週連続し て腹腔内に 注射した.全身投与1週後にFGM担体にBMP‑2ならぴに FGF‑2を含浸しラット背部皮下に埋入した.埋入2週後に摘出し,カルシウム含 有 量 な ら び に ア ル カ リ フ オ ス フ ァ タ ー ゼ 活 性 の 測 定 を 行 っ た .   【結果と考察】

  FGMを 担体 と してFGF‑2をBMP‑2とともにラ ット皮下に 埋入すると 内軟骨 性 骨 化が 促 進さ れ ることが報 告されてい る.そこで 担体としてFGMを用い BMP‑2 0.8 ygとFGF‑2 0.1 Vgを加え,さらにプロプラノローノレ10 Vgを添加と 無添加のベレット体を作製し,プロプラノロールのラット異所性骨形成に及ば す効果について検討した.プロプラノロールを添加した場合において,埋入2 週後では,X線不透過度はプロプラノロールを添加しなかった場合に比較して 高くなり,カルシウム含有量も大きな値となった.アルカリフオスファターゼ 活性についてはプロプラノロールの添加の有無による有意な差は認められなか った.さらにベレッ卜体内部にどのような組織が形成されたかを調べるために HE染色を行い観察した.埋入1週後のペレット体においては,プロプラノロ―

ルの添加,無添加に関わらずFGM内部に軟骨様の組織が観察された.プロプラ ノロールを添加し,埋入2週後に摘出したベレット体では,プロプラノロール を添加していない場合と比べて,多くの骨様の組織が観察された.摘出したペ レット体中の骨芽細胞の存在について明らかにするために,埋入2週後に摘出 したベレット体よりmRNAを抽出し,al(J[)collagen,オステオカルシンならぴに Runx2 mRNAの発 現についてRT‑I℃R法を用いて調べた.ベレット体中のこれ らのmRNA発現量は,プロプラノロールを添加した場合の方が,無添加の場合 と比較して多かった.

  以上の結果はFGMを担体としてBMP‑2とFG.F.2を用いた場合である.これ まで異所性骨形成を誘導することが知られているBMP一2のみを用いた場合,プ ロプラノロールの添加がどのような効果を及ばすかを調べた.BMP・20.8pgに プロプラノロール10鰐を含浸したベレット体を作製し,ラット皮下に埋入し た .埋入1週,2週いずれの 時期においてもX線不透過像は認められず,カル シウム含有畳においてもプロプラノロールの添加の有無による有意な差は認め られなった.

  次にプロプラノロールの投与方法の違いによる影響を調べた.プロプラノロ ールを腹腔内注射により全身に投与した場合,局所投与で確認された埋入2週 後におけるカルシウム含有量の増加は認められなかった.BMP一2とF(源・2を含 浸したFG.Mをラット皮下に埋入すると1週後には,軟骨が誘導され続いて骨形 成が開始される.この時点で,全身投与されたプロプラノロ―ルの血中濃度が,

骨芽細胞上に発現している交感神経系p受容体に結合する十分量に達していな い可能性が考えられた・

  神経線維を特異的に染色する鍍銀染色法を用いて,ペレット体中の神経線維 の存在を検索した.FGM担体にBMP・2とF(酒‐2を添加し埋入2週後に摘出し たベレット体では,骨芽細胞様細胞の周囲に自由神経終末と推察される組織が 観察された.BMP.2のみを添加した場合においては鍍銀染色法によって染色さ れる細胞は観察されなかった.また,B1四一2とF(班‐2を添加したペレット体に おいて神経組織のマーカータンパク質である竹佃,neumlcclladheSionmolccule,

(3)

growth‑assoclatedprotein一43およびp_2adrene晒creceptorのmRNAの発現量は 聊佃.2のみを添加した場合よりも多かった.異所性に形成された骨組織におい ても組織内に神経終末が分布していることおよびプロプラノロールにより異所 性骨形成が促進されたことから,交感神経系ならびにp受容体を介する骨芽細 胞の機能の制御機構が,異所的に誘導された骨組織においても存在しうる可能 性が示された.

【結論】

  本研究において,異所性に誘導された骨形成はプロプラノロールの添加によ り増加することを見出した,また,本研究により,p受容体ならぴに交感神経系 を介した骨形成の調節機構が全身性のみならず局所においても存在している可 能性が明らかになった.

(4)

学位論文審査の要旨

     学位論文題名

ラットにおけるBone Morphogenetic Protein ―2 による 異所性骨形成に対するプロプラノロールの影響

  審査は,まず論文提出者に対して提出論文の内容の要旨を説明させ,論文の内容につい て審 査 委員 の 口頭 試 問を 行 っ た. 以 下に 提 出論 文 の要 旨 と審査の内 容を述べる .   論文提出者は,局所における交感神経系ならぴにD遮断薬投与によって骨形成が調節され るか否かを明らかにするため,Bone Morphogenetic Protein (BMP)‑2によるラット異所性骨 誘導実験系を用いて検討した.

[材料と方法]

  プロプラノロールは局所投与と全身投与に分けて実験を行った.局所投与の場合,担体 として繊維性ガラス膜(FGM)を使用し,プロプラノロールならびにヒト組み換えBMP‑2, ヒト組み換えFibroblast growth factor (FGF)‑2を含浸しペレット体として凍結乾燥後,4 週齢のWistar‑King AH系雄ラットの背部皮下に埋入した.1週船よび2週後にベレット体 を摘出し,軟X線写真撮影,カルシウム含有量,アルカリフオスファターゼ活性,RT‐PCR によるm恥怡量の測定,HE染色ならぴに鍍銀染色を行った,プロプラノロールの全身投 与は,ラッ ト1匹 あたり100pgを毎日1回3週 連続して腹腔内に注射した.全身投与1週 後にFGM担体にBMP‐2ならぴにFGF.2を含浸しラット背部皮下に埋入した.埋入2週後 に摘出し,カルシウム含有量ならびにアルカリフオスファターゼ活性の測定を行った.

[結果と考察]

  FGF.2とBMP‐2を含浸したペレット体においては,埋入2週後の埋入ベレット体のカル シウム含有量ならびにX線不透過度は,プロプラノロ―ルの添加により増加した.また,

摘出した埋入ベレット体中のa1(I)procollagen,オステオカルシンならぴにRunX2のmRNA 量は,プロプラノロールを添加すると,添加しない場合に比べて発現量は多かった.組織 学的にも,埋入2週後には,プロプラノロールを添加すると,添加しない場合に比べて豊 富な骨様の組織が観察された.他方,同様の実験系においてFGF―2を加えずBMP‐2のみを 用いた場合では,プロプラノロ―ルの添加によるこれらの効果は認められなかった.また,

腹腔内にプロプラノロールを連日100嵋/day3週間連続投与し同様に埋入実験を行ったが,

郎 人

敦 正

山 村

横 田

授 授

教 教

査 査

主 副

(5)

ベレット体のカルシウム含有量ならびにアルカリフオスファタ―ゼ活性に変化はみられな か っ た.BMP‑2とFGF‑2を含浸 したFGMを ラット皮下 に埋入する と1週 後には,軟 骨が 誘導され続いて骨形成が開始されるが,この時点で全身投与されたプロプラノロ―ルの血 中濃度が,骨芽細胞上に発現している交感神経系p受容体に結合する十分量に達していない 可能性が考えられた.

  神経 線維を特異 的に染色す る鍍銀染色 法において は,FGM担体にBMP‑2とFGF‑2を添 加し埋入2週後に摘出したペレット体では,骨芽細胞様細胞の周囲に自由神経終末と推察 される組織が観察された.BMP‑2のみを添加した場合においては鍍銀染色法によって染色 される細胞は観察されなかった.また,BMP‑2とFGF‑2を添加したペレット体において神 経組織のマーカータンパク質およびp‑2 adrenergic receptorのmRNAの発現量はBMP‑2の みを添加した場合よりも多かった.異所性に形成された骨組織においても組織内に神経終 末が分布してぃることおよびプロプラノロールにより異所性骨形成が促進されたことから,

交感神経系ならびにp受容体を介する骨芽細胞の機能の制御機構が,異所的に誘導された骨 組織においても存在しうる可能性が示された.

[結諭]

異所性骨形成部位においても,交感神経系もしくはp受容体を介した骨形成の制御が存在 している可能性を示唆するものと考えられた・

以 上 の 要 旨 説 明 に 引 き 続 き 質 疑 応 答 を 行 っ た . 主な質問事項は以下のとおりである・

1.FGF‑2を添加した意義とその効果・

2. FGF‑2の 骨 芽 細 胞 に 対 す る 影 響 の 可 能 性 . 3. FGM担 体 に お け る FGF‑2を 保 持 し て い る 期 間 . 4.実験結果と考察について.

5. Ca含有量とアルカリフオスファターゼ活性の結果の相違.

6.全身投与における実験的手技.

7.神経マーカータンパク質について.

  論文提出者はいずれにも明快な回答と説明をし,本論文の内容に関係のある事項に対し ても明確な知識を有していた.

  本研究は,異所性に誘導された骨形成がプロプラノロ―ルの添加により増加することを 明らかにした.これは異所性骨形成部位における交感神経系もしくはp受容体を介した骨形 成の制御のメカニズムについて,分子生物学的解明の可能性を示唆している.さらに今後 の展望に関してもしっかりとした研究立案をもっており,将来性の点においても高く評価 されるものであった.よって,学位申請者は博士(歯学)の学位授与にふさわしいものと 認めた.

参照

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