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博士(医学)仲 紘嗣 学位論文題名

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Academic year: 2021

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(1)

     博士(医学)仲   紘嗣 学位論文題名

     上部消化管内視鏡検査後の

   急 性 胃 粘膜 病 変に おけ る組 織学 的検 討

―特にHelicobacter pylori との関連について 学位論文内容の要旨

【緒言】

  我 が国で 上部消化管内視鏡検査が普及し始めた1970年代から、検査を受けた一部の患者が検 査 数日後 に突然激しい心窩部痛を訴え、前回観察されなかった胃幽門部を中心とした多発びら ん・黒苔を伴う出血性胃炎・多発胃潰瘍などの急性胃粘膜病変が観察されると報告されていた。

この病態を「上部消化管内視鏡検査後の急性胃粘膜病変」(Postendoscopic acute gastric mucosal lesion:以下PE一AGNILと略す)と呼んでいる。PE‑AGltILの原因は当初、一般のAGtKLと同一と思わ れており偶然にその発症前後を観察したと考えられていた。その後、内視鏡検査によるストレス 説 、内視 鏡挿入・ 空気注 入に伴う 胃の過伸 展によ る血流障 害説な どが主に推測されてきた。

  著者および共同研究者は、このPE―AGbfLの原因が風py′Dガ感染ではないかとの仮説を立て、

1989年以降PEーAG乢患者の血清学的・分子生物学的研究を、さらに内視鏡機器の洗浄消毒法の改 善とPE一AG乢の発生頻度との関連についての研究をおこなった。

【目的】

  〃・  pyl ori関連の急性胃炎・急性潰瘍の報告は少なく、また、多数例でのその組織学的特徴を示 した報告はない。本論文では、PE一AGPIL患者から得られた組織標本を用い、〃.pylori密度および 炎 症 細 胞 浸 潤 な ど の 組 織 学 的 検 討 か ら そ の 関 連 を 明 ら か に す る こ と を 目 的 と し た 。

【対象と方法】

  対 象は1976年から1989年までに発生したPE―AGHL患者のうち、AGHL発症前に胃生検を受けた 12例(22標 本) と 、AGML発 症から 平均3.2日 後に再 度胃生検 を受け た36例(102標本 )であ る 。胃生検 標本はHE染色、ギ ムザ染色および〃py|りj免疫染色をおこない、光学顕微鏡下に て以下の項目を検討した。  O〃.ガ|け|密度、◎好中球浸潤、◎単核球細胞浸潤にっいては UpdatedSydneySystemに従って、各々3十(marked)、2十(moderate)、1十(mild)、ー(normal) の4段階に分け評価し、@びらんおよび壊死、@胃粘膜萎縮、◎腸上皮化生にっいてはその有無 で 判断した。もっとも優勢な所見を採用し、1例にっき1所見として表示した。統計学的方法は

(2)

対 応 の ない 場 合 の再ilcoxon検定、Fisherの直接 確率法、 回帰係 数を用い た。pく0.05を有 意差ありとした。

【結果および考案】

  1.内視 鏡所見 :対象患 者の平均年齢は発症前症例で45.7歳、発症後症例では39.4歳で、両 群問に有意差はなかった。発症前症例でやや年齢が高かったのは何らかの内視鏡的異常所見を有 する症例が集積されたためと考えられた。発症時の内視鏡検査所見は浮腫のみが3例、急性出血 びらんが14例、黒苔を伴う出血性胃炎が9例、急性胃潰癌が10(多発9,単発1)例で、いずれも 急性胃粘膜病変の所見を呈していた。

  2.組織学的所見:

  OH. pyloriは 発症前 症例で3例25.O% に観察さ れ、そ の密度は いずれも1十であった。発症 後 症例で は25例69.4% に認めら れ、そ の密度は3十が6例 、2十 が9例 、1十 が10例で あった。

〃・  pyl orjの検出率は発症後症例で有意に高かった(pO.02)。また、H pylori密度は発症から胃 生検までの日数が短いほど強く観察された(pく0. 01)。これらの結果はPE一AGMLが〃.pyl oriによ る急性感染であることを示唆する所見であった。

  ◎好中球浸潤は発症前症例で3例25.O%に観察され、その程度はいずれも1十であった。発症 後症 例 で は33例91.7% に認 め ら れ、 そ の 程度 は3十が14例 、2十 が12例、1十が7例 であっ た。好中球浸潤の検出率も発症後症例で有意に高かった(P. 0001)。また、好中球浸潤の程度 は発症から胃生検の日数が短いほど強く観察された。

  ◎単核 球細胞浸 潤は発 症前症例 で1例 、発症 後症例で3例に観察され、その頻度はいずれも 8.3%で あった。 その程 度は発症 後症例 の1例 で2十 を示し た以外は いずれも1十であった。

  @びら んは発症 前症例 で2例16.7%に観察され、発症後症例では32例88.9%にみられた。壊 死はそれぞれ0例、16例44.4%に観察された。

  PE‑AGhtIL患者における発症後症例で好中球浸潤の活動性カミ著しく、特に生検までの日数が短い ほど著明に観察されたことや、発症前後の症例で慢性炎症の指標である単核球細胞浸潤がほとん ど 観 察 さ れ な か っ た こ と な ど は 〃 ・  pylorJに よ る 急 性 感 染 を 示 唆 し た 。

  ◎胃粘 膜萎縮 は発症前 症例で8例中2例25.O%、発症 後症例で は31例中2例6.4%に観 察さ れた。PE一AGHL発症前後の症例全体では10.3%であった。

  ◎ 腸上皮 化生は発症前症例で12例中4例33.3%、発症後症例では36例中1例2.8%であった。

PE一AGHL発症前後の症例全体では10.4%であった。

  胃粘膜萎縮や腸上皮化生は今日では〃. pyloriによる慢性持続炎症の結果と考えられている。

PE―AGkL患者での胃粘膜萎縮や腸上皮化生の頻度は日本人の同世代に比し明らかに低く、PE‑AGML 患者の大半が発症前に〃. pyloriに感染していなかったことを示唆しており、これらの結果も

〃. pyloriによる急性感染像と矛盾しない。

【結諭】

以上の組織学的検討結果からPE―AGMLの大部分は〃.pyloriによる急性感染と考えられた。

    ‑ 143ー

(3)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

上部消化管内視鏡検査後の

急性胃粘膜病変における組織学的検討 一特にHelicobacter pylori との関連について

  上 部 消 化 管 内 視 鏡 検 査 後 の 急 性 胃 粘 膜病 変 (postendoscopic acute gastric mucosal lesion,以 下PE‑AGML)がHelicob8cter pylori(以下Hpyl orめによる急性感染像か否かを、

PE−AGML発 症 前 症 例12例 (22標 本 ) 、 発 症 後 症 例36例 (102標 本 ) の 胃 生 検 組 織 を 用 い、HE染色、ギムザ染色、〃.ルZ〇.灯免疫染色を行い組織学的に検討した。〃.pロ〇ガ検出 率は 発 症前 症例 で25%で あっ たの に比 較し 発症 後症 例で は69% と有 意に 高く、〃・川〇rj 密度 は 発症 から 胃生 検までの日数が短いほど著しかった 。好中球浸潤の陽性率も発症前症例 で25% で あ っ た の に 比 較 し 発 症 後 症 例 で92% と有 意に 高く 、そ の程 度も 発症 から 胃生 検 ま で の 日 数 が短 い ほど 強か った 。胃 粘膜 萎縮 は発 症前 症例25% 、発 症後 症 例6%、 症例 全 体 で は10% で あ っ た 。 腸 上 皮 化 生 は 各 々33% 、3% 、10% で あ っ た 。 胃 粘 膜 萎 縮 や 腸 上皮 化 生は 今日 では 〃.p口 噺に よ る慢 性持 続感染の結 果と考えられている。これらの所見 はPEーAGMLの大 半が 発症前に〃.pロDrjに感染していな かったことを示唆しており、ほとん ど の PE− AGMLは 組 織 学 的 に 〃 . 加 噺 に よ る 急 性 感 染 像 と 考 え ら れ た 。   公 開 発 表 にあ た って 、副 査の 古木 教授 からApロ 〇rJ陰性 のPElAG乢11例 の考 察に つい て の 質 問 が あ っ た 。 申 請 者 は 、 こ の う ち3例は 血清 学的 にガ 刪Dガ 抗体 の陽 転化 を確 認し て おり〃.pりDr|感染例であること、組織学的に〃.pルDrJを検出できなかった残りの8例は、

壊死 の 強い 部位 や多 発胃潰瘍の辺縁からの生検であり、 このような部位からの生検診断はし ぱし ぱ 偽陰 性を 示す ことが文献的に知られており、組織 学的に〃.pガDぬを検出できなかっ たと考えられ必ずしも〃.p口D dとの関連を否定できない と回答した。続いて、急性感染か ら慢 性 感染 移行 に関 する宿主因子の質問があった。申請 者はPE−AGML例は長期の経過観察を して い ない ので 不明 であ ると 回答 した 。ま た、AGMLを起こしたガpり〇ガのサブタイプにつ いての質問があった。申請者は 、〃.p〃〇rjのサブタイプは菌株が保存されていないので検討 して い ない と答 えた 。さらに、動物モデルの有無につい ての質問があった。申請者は近年胃

博 敬

正  

  隆

香 木

浅 吉

授 授

教 教

査 査

主 副

(4)

炎を引き起こす動物モデルが開 発されたと回答した。最後に血清〃. pyl ori抗体のクラスに つい て の質 問が あっ た。 申請 者は 測定 し得 たのはIgG抗体であると答えた。次ぎに 、副査の 小池教授からPE一AGMLを引き起 こす〃.pyl oriの菌種につ いての質問があった。申請者は、

発症 前 症例12例 の中 にす でに 〃, pylori陽 性の 症例 が3例あ り 、こ れらの症例で も内視鏡 的に はAGMLを引 き起こして おり、ブースター効果により発症したと考えられるが、 菌種の違 いかどうかにっいては不明であ ると回答した。続いて、〃. pylori感染後の血中抗体の上昇時 期に 関 する 質問 があ った 。申 請者 は過 去の 我々の症例 での測定では平均7週間目で 上昇した と答 え た。 また 、血 中風pyl ori抗 体の 機能 にっいての質問があった。申請者は再 感染時の 中和 作 用は 無い と回 答し た。 さら に、PE―AGMLのこ の10年間 の 推移 についての質 問があっ た。 申 請者 は我 々の一連の 検討から内視鏡機器の洗浄消毒法が改善され激減してい ること、

しかし、なお、日本で少数なが ら発生しているので、洗浄消毒の徹底が必要であると答えた。

次ぎ に 日本 人の 〃.  pyl ori感 染 率に つい ての質問があった。申請者は1950年以 前に生ま れ た 日 本 人 の 感 染 率 は70ー80% で 、 若 年 者 で は20ー30% で あ る と 回 答 し た 。 最 後 に 、 主査 の 浅香 教授 からPE−AGMLの原因として従来ストレス説や血流障害説などがあっ たが本研 究の 結 果感 染説 が主体とな ったと考えてよいかとの質問があった。申請者は、過去 に様々な 要因 を 検討 した がいずれも 決定的な結果を示し得ず、今回の一連の検討結果からPE一AGMLの 原因 は 内視 鏡を 介し た微 生物 感染 その 中で も風pyl oriが中心をなしていると考え ていると 回答した。

  本研究は、PEーAGMLの大半が 〃,pyl ori初感染によることを明らかにし、消化器病学および 公衆 衛 生学 的に 貴重なデー タを提供した発表であったため、審査員一同はこれらの 成果を高 く評 価 し、 申請 者が博士( 医学)の学位を受けるのに十分な資格を有するものと判 定した。

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