博 士 ( 理 学 ) 光 田 千 紘
学 位 論 文 題 名
放 射 過 程 に よ っ て 調 節 さ れ た二 酸 化 炭 素氷 雲 に よ る 古 火 星 大 気 の 温 室 効 果
研 究 の 背 景 と 目 的
学 位 論 文 内容 の 要 旨
本研究では,古火星のような弱い太陽放射フラックス下で,厚いニ酸化炭素大気中に形 成される二酸化炭素氷雲が大気熱構造ヘ与える影響と,その結果もたらされる温室効果 について理論的に調べた.
地形的 証拠から 形成当時,およそ38億年前の火星は温暖湿潤な気候が生じていたと考 えられ,その温暖化メカニズムとしてニ酸化炭素氷雲の散乱温室効果が提案されている 散乱温 室効果は 雲の放射特性を決める雲粒径や柱密度に強く依存することが従来の研 究から示されているが,雲パラメタを決める物理は複雑であり,これらの物理的制約は ほとんど行われていない.
そこで本研究では,凝結層の放射冷却によって形成された雲が凝結層を放射平衡化し,
それ 以上雲が 形成さ れないよ うな平衡状態へ自動的に収束するという放射過程による 雲パラメタの調節機構を提案し,この過程の実現可能性と,そのときに生じる温室効果 を一次元放射対流凝結平衡モデルにより数値的に検討した.さらに,この結果を応用し,
古火星が温暖な気候を持っ大気圧および凝結核数濃度条件と,地球型惑星において温暖 な気 候が生じ る可能 性のある 惑星質量,軌道半径,中心星質量条件を明らかにした,
放 射 過 程 に よ る 氷 雲 調 節 の 可 能 性
凝結核数濃度が105―l08 kg‑lではエネルギー収支が釣り合い,大気構造がそれ以上変 化しない平衡解が存在した.雲パラメタの収束は,雲がその発達にっれてより強い放射 加熱を受けるようになり,臨界半径値を超えた雲粒はむしろ蒸発するという負のフイー ドバック が働くこ とにより起こる,この場合での臨界雲粒半径は3ー20 ymと小さく,
落下による消失の効果は雲構造へ影響を与えない.さらに雲の温室効果により地表面温 度が上昇すると雲へより強い熱放射が入射し,雲が蒸発するという雲と地表面温度との フイードバック効果も働き,大気構造は収束する,凝結核がそれより少ないと,50 ym
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を超える大きな雲粒が形成され,雲が平衡状態ヘ達する前に雲粒が落下する.凝結核が それ以上多いと,雲粒は赤外放射を消散するほど成長できず,雲による反温室効果が生 じるため,地表面温度が二酸化炭素の凝結温度まで下がっても平衡状態へと達しなぃ,
この場合,地表面での暴走的な大気の凝結が生じ,大気圧を下げる事で平衡状態へ達す ると考えられる.
凝 結 層 の 放 射 平 衡 化 に よ る 温 室 効 果
地表面 の熱収支は,太陽および赤外放射の入射による加熱と対流による熱輸送による冷 却,そ して地表面の赤外放射の射出による冷却で決まる.従来の研究では,雲によって 太陽及 び赤外放射の入射量が増加する温室効果のみが考えられていた,しかし,雲によ って凝 結層が放射平衡化すれば,対流による熱輸送が少なくてすむため温室効果は強ま る,こ の効果は,雲の温室効果のうちの大部分を担っており,雲の赤外放射後方散乱に よる温 室効果が生じていなくても,地表面温度は二酸化炭素の凝結を無視した場合の値 よりも 上昇する,
古 火 星 大 気 へ のimpl ication
古火 星において3気圧分の二酸化炭素大気が存 在すれぱ,雲の散乱温室効果によって 温暖な気候を説明できる.また現在の地表からの巻き上げによって供給される火星ダス トは1―2オー ダの 変動 が起 こ ることが知られ ている.その他にも凝結核数濃度は火 山噴火,隕石衝突,宇宙線強度変化などにより変化しうるだろう.古火星で凝結核量の 変動が生じ,それによって一時的に温暖な気候が繰り返し生じたかもしれない.二酸化 炭素氷雲の散乱温室効果が古火星気候ヘ与える影響をより詳細に見積もるためには,凝 結核の供給消失過程を検討する必要がある .
液 体 の 水 が 存 在 す る 可 能 性 の あ る 惑 星 条 件
古火星のような惑星質量で かつ大気圧10気圧の場合には,温暖な気候が生じる最大軌 道 半径は2.9 AUであり,従来の研究で示さ れた晴天大気での1.3AUや,散乱温室効 果が生じやすい雲を大気中 に置いた場合の2.4 AUと比較しても大きな値となった.こ れは,従来考えられてこなかった凝結層の放射平衡化による温室効果を考慮したためで ある.また,様々な惑星質量や中心星スペクトル条件下でも雲による強い温室効果は生 じ ,Habitable Zoneは 晴 天 大 気 の 倍 程 度 で あ る2.3―2.9AUま で 広 が る ,
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学位論文審査の要旨
主査 教授 倉本 圭 副査 教授 渡部重十
副 査 教授 林 祥介 (神戸 大学大 学院理 学 研究科)
副査 准教授 阿部 豊(東京大学大学院理学系 研究科)
学 位 論 文 題 名
放射過程によって調節された二酸化炭素氷雲による 古火星大気の温室効果
著 者 は ,太 陽 光フ ラ ッ クス の 小さ な 二 酸化 炭 素主 成 分 大気 中 で 形成 され るニ酸 化 炭素 氷 雲が 大 気 熱構 造 に 及ば す 役割 と , その 結 果も た ら され る 温室 効 果につい て ,数 値 的理 論 的 に明 ら か にし , 火星 を は じめ と する 二 酸 化炭 素 大気 を 持つ惑星 に おい て ,地 表 面 で液 体 の 水が 安 定に 存 在 可能 な ほど の 温 暖化 が 生じ る ために必 要 とな る 太陽 光度 や大気圧 などの条 件を導出 した,二 酸化炭素氷 雲による 散乱温室 効 果は , 古火 星 の 温暖 化 機 構と し て有 力 視 され て きた が , 温室 効 果の 重 要な因子 で ある 雲 の粒 径 や 光学 的 厚 さの 決 定機 構 に つい て は, ほ と んど 明 らか に されてい な い. 著 者は , 雲 の生 成 と 二酸 化 炭素 凝 結 層の 正 味冷 却 と の負 の フイ ー ドバック に より , 凝結 層 が 放射 平 衡 化す る よう に 雲 粒径 が 決ま る 機 構を 初 めて 提 案し,そ の 実 現 可 能 性 と 形 成 さ れ た 雲 に よ る 温 室 効 果 を 数 値 的 に 調 べ た , 従 来 の 研究 で は, 雲 に よっ て 地表 面 へ の放 射 工ネ ル ギ ーの 入 射 が強 まる ことが 氷 雲に よ る温 室 効 果の 要 因 され て きた , し かし な がら 著 者 は, 対 流が 起 こると考 え られ て きた ニ 酸 化炭 素 凝 結層 が ,雲 の 形 成に よ って 安 定 成層 化 し, 地 表から大 気 への 対 流熱 輸 送 が弱 ま っ たこ と によ っ て 温室 効 果が 強 ま ると い う効 果 が重要で あ るこ と を初 め て 指摘 し , その 結 果と し て 従来 の 予想 よ り も強 い 温室 効 果が起こ り うる こ とを 示 し た. ま た ,温 室 効果 を 左 右す る 雲の 粒 径 や柱 密 度は , 凝結核数 濃 度の 関 数と し て 求ま り , 強い 温 室効 果 を 生じ さ せる た め には , 凝結 核 数濃度が 105ーl07 kgー1とな る 必 要性 が ある こ と を示 し た ,
以 上 を 過去 の気候 変動を示 す地形学 的証拠の 残されて いる火星ヘ 応用し, 古火星 の 温 暖 化 は2気 圧 の 二 酸 化 炭素 大 気で 説 明 でき , ま た火 山 噴火 や 隕 石衝 突 など に よ る凝 結 核の 突 発 的供 給 と 重力 落 下に よ る 消失 に よっ て , 一時 的 な温 暖 化が繰り 返 し 起 っ た と す る , 地 形 学 的 制 約 を 満 た す 新 し い 仮 説 を 提 唱 し た . よ っ て ,著 者は北 海道大学 博士(理 学)の学 位を授与 される資格 があるも のと認 め る,
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