博士(歯学)梅本紘子 学位論文題名
Type VII collagen deficlenCyCauSeSdefeCtiVetOOth enamelf6rmationduetopOOrdid. : erentiationof ameloblaStS
(7型 コ ラ ー ゲ ン 欠損 は エナ メ ル 芽細 胞 分 化障 害 によ る エ ナメ ル 質形 成 不 全 を 引 き 起 こ す )
学位論文内容の要旨
皮 膚、毛、 歯など上皮 系組織の発生においては上皮間葉相互作用が働いている。
上皮問葉相互作用に関与する多数の分子が報告されているが、その中でも、表皮基 底膜部に存在する17型コラーゲン(COL17)の欠損によルエナメル質形成不全が発症 しCOL17が上皮問葉相互作用に関与している可能性があることが報告されている。
基 底膜部に 存在する他 の分子も上皮間葉相互作用に関与している可能性が示唆さ れ、基底膜部に存在する分子の欠損マウスの歯の形成を調べることは重要であると 考えた。
劣 性栄養障 害型表皮水 疱症は出生時に発症し、四肢、体幹に多数の水疱、びらん を形成し、頭髪の脱落、爪の形成異常に加え、食道狭窄や口腔粘膜びらんなどの粘 膜障害がみられる常染色体劣性の遺伝性疾患である。繰り返し起こる水疱形成およ び瘢痕治癒により手指、足指は癒着し棍棒状を呈することがある。表皮基底膜部に 存在するanchoring fibrilの構成分子である7型コラ―ゲン(COL7)をコードする遺伝 子の変異によりanchoring fibrilの欠損が起こり、表皮下に水疱が形成される。本症 患者の歯には高頻度にう蝕がみられ、エナメル質形成不全が疑われている。本研究 で は、本症 でのエナメ ル質形成障害の発症機序を解析し、原因分子であるCOL7が 歯の形成において果たす役割について検討を行った。
試料として、本症患者の抜去歯、本症のモデル動物であるCOL7ノックアウト・マウ ス(Col71/I)と野生型マウス(C,oI7U十)の歯を用いた。患者の抜去歯については、実 体顕微鏡でエナメル質表面の観察を行うとともに、研磨標本を作製し、光学顕微鏡、
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いてエナメル質横断像の観察を行った。マウスの歯に ついては、実体顕微鏡でエナメル質表面の観察を行うとともに、SEMでエナメル質表 面 、 エ ナ メ ル 質 横 断 像 の 微 細 構 造 の 観 察 を 行 った 。 走査 型 分 析電 子 顕 微鏡 (SEM―EDX)、Micro CTで、エナメル質の構成元素分析、石灰化度の測定を行った。
光 学顕微鏡 、透過型電 子顕微鏡(TEM)で、歯の形成の3ステージ(分泌前期、分泌 期、成熟期)の観察を行った。また、免疫組織化学を用いて歯胚におけるCOL7の存
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在 部 位 の 観 察 、RT‑PCR法 を 用 い て 歯 胚 お よ び 初 代 培 養 エ ナ メ ル 芽 細 胞 に お け る COL7のmRNA発 現 の 確 認 、 歯 胚 お よ び 初 代 培 養 エ ナ メ ル 芽 細 胞 に お け る エ ナ メ ル タンパク(アメロゲニン、アメロブラスチン、エナメリン、タフテリン、エナメライシン、
DSPP)のmRNA発現をりアルタイムPCR法にて検討した。
本 研 究 の 対 象 と な っ た 患 者 は9歳 、 女 児 、COL 7A1にc.6574+1G>Cお よ び c.8109+2T>Aの 遺 伝 子 変 異 を 有 し て い た 。 歯 列 不 正 の 予 防 を 目 的 に 両 側 上 下 顎 第 ー 小 臼歯 の 抜 歯を 行 っ た。 患 者 の 抜去 歯 に おい て 、 実体 顕 微 鏡下 で は エナ メ ル質 表 面 に 広範 な 脱 灰が 認 め られ た が 、 明ら か な エナ メ ル 質形 成 不 全は 認 め られ な かっ た 。 研 磨標 本 を 作製 し 、 エナ メル質 横断像を 光学顕 微鏡で観 察した 結果、健 常人と比 較 し て 異常 は 認 めら れ な かっ た が 、SEMで 微細 構 造 を観 察した ところ 、患者で はエナ メル小柱配列の規則性が乱れていることが確認された。
Col〆・ マ ウ スの 切 歯 およ び 臼 歯 に関 し て は、 実 体 顕微 鏡下で は、歯 の概形、 エナメ ル 質 表 面 の 色 調 お よ び 構 造 異 常 は認 め ら れな か っ た。SEMで も 、 エナ メ ル 質表 面 の 微細構造の異常は認められず、同週令のC,o´ 7+/゛と比較して、C,D´ア/.臼歯において 咬 耗 の 亢 進 は 認 め ら れ な か っ た 。SEM―EDXで は 、 エ ナ メ ル 質の 元 素 分布 状 態 を 比 較 し た とこ ろ 、 含有 元 素 の種 類やカ ルシウム および りン含有 率に差 は認めら れなかっ た 。Micro CTで は、 切 歯 切 縁部 で のCT値 に 差は 認 め られ な か った 。 し かし 、 切 歯エ ナ メル質横 断像をSEMで観 察した ところ、 エナメ ル小柱配 列の規則性がC・〇′〆.では 乱 れ て いる こ と が確 認 さ れた 。 免 疫 組織 化 学 では 、Col7+/゛ の 歯 胚基 底 膜 部にCOL7 が 認 め られ 、Col 7‑/‑で の 消失が観 察された 。また 、歯胚基 底膜部 基底板の 構成分 子 である4型コラ―ゲンの免疫組織化学にでは、C,ol7'ノ十、Col7一/・ともに染色が観察さ れた。
TEMでは 、 歯 の形 成 の3ス テ ― ジ (分 泌 前 期、 分 泌 期、 成 熟 期) の 観 察を 行 っ た。 分 泌前期では、C,o´ 7'‑/゛の歯胚基底膜部基底板から弧状に伸びるanchoring fibrilの存 在 が確認 された が、Col〆.の 歯胚基底 膜部には 明らか なanchoring fibrilは観 察され な か っ た。 分 泌 期で は 、 エナ メル芽 細胞の大 きさ、 エナメル 基質の 厚さに差 は観察さ れ な か った が 、Colア 卜に お い て エナ メ ル 芽細 胞 の ト― ムス突 起の形 態異常が 観察さ れた。C,〇′ 7+/゛の卜一ムス突起は三角形状を呈し規則正しく整列していたが、C,ol T'‑
の トームス 突起は 幅、長さ におい てCol7+/゛と 比較して 未発達であった。成熟期では、
エ ナメル芽 細胞の 大きさ、 細胞小 器官の形態に差は観察されなかったが、C,D´71/一で は エ ナ メル 小 柱 の配 列 が 乱れ て お ル エナ メ ル 質は 粗 造 であった 。Rr‐PCR法を用 いた 歯 胚 お よ び 初 代 培 養 エ ナ メ ル 芽 細 胞 に お け るCOL7のmRNA発現 を 確 認し た と こ ろ、
歯胚、培養細胞ともにCわ′アノ十ではCOL7の発現が確認されたが、Cわ´ア/・では確認さ れ な か っ た 。 エ ナ メ ル タ ン パ ク のり ア ル タイ ムPCRでmRNA量 を定 量 的 に調 べ た と こ ろ 、 歯 胚 お よ び 初 代 培 養 エ ナ メ ル 芽 細 胞 に お い て 主 要 な エナ メ ル タン パ ク のmRNA 発 現の低 下がCわ′ア ^で観察 された 。初代培 養エナ メル芽細 胞の免 疫組織化 学では、
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Col7+/゛の細胞質に顆粒状のアメロゲニンが観察されたが、Col7・/,では観察されなか った。
以上の結果より、C,D´〆・では歯胚基底膜の構造異常により、歯原性上皮細胞から エナメル芽細胞への分化(特にトームス突起の形成)が障害され、エナメル基質の分 泌異常が生じるため、立体構造に欠陥のあるエナメル質が形成されると考えられた。
Col Ti‑歯胚および初代培養エナメル芽細胞において主要なエナメルタンパクの発現 の低下が観察されたが、エナメルタンパクは卜―ムス突起から分泌されるため、ト―ム ス突起の形成障害によルエナメルタンパクの分泌が低下したと考えられた。表皮基底 膜ヘ ミデスモ ゾームの 構成分子で あるCOL17の欠 損マウス では、歯 の色素沈着低 下、石灰化不全、エナメル小柱の乱れ、ト―ムス突起の形成障害、エナメルタンパク の発 現低下が 報告され ている。COL7欠 損では歯の色素沈着低下、石灰化不全は観 察されなかったが、COL17と同様に、エナメル小柱の乱れ、ト―ムス突起の形成障害 が観察され、基底膜構成分子が歯の形成において重要な役割を果たしていると考え られた。以上より、COL7が上皮間葉相互作用に関与し、エナメル芽細胞の分化の制 御に重要な役割を果たしている可能性が考えられ、ヒト患者での観察結果と合わせ て、劣性栄養障害型表皮水疱症患者では、エナメル質の立体構造は正常とは異なり、
う蝕が進行しやすい可能性が示唆された。
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学位論文審査の要旨 主査 教
副査 教 副査 教 副査 教
授 北川善 授 土門卓 授 網塚憲 授 清 水
学 位 論 文 題 名
政 文 生
宏(医学研究科)
Type VI 工 collagen deficiency causes defective tooth enamel formation due to poor differentiation of ameloblasts
(7 型コラーゲン欠損はエナメル芽細胞分化障害によるエナメル質形成不全 を引き起こす)
審査 は、審査 委員全 員の出席 のFに口頭試 問の形式 により 行われた 。申請 者に対して提 出論 文とそれ に関連 した学科 目について試問を行った。審査論文の概要は以・Fの通りであ る。
皮膚 、毛、歯 などト 皮系組織 の発生 において はト皮 間葉相互作用が働いている。卜皮間 葉相 互作用に 関与す る多数の 分子が 報告され ているが 、その中でも、表皮基底膜部に存在 す る17倒 コ ラ ー ゲ ン(COL17)の 火損 に よ りエ ナ メ ル質 形 成 イく 令 が 発癌 しCOL17がL皮 間葉 相互作用 に関与 している ロJ能性があることが報告されている。基底膜部に存任する他 の分 子も上皮間葉相互作用に関与してし、る可能性が示唆され、基底膜部に存任する分子の 欠損マウスの歯の形成を調べることは重要であると考えた。
劣性 栄養障害 犁表皮 水疱症は 出生時 に発症レ 、四肢 、体幹に多数の水疱、びらんを形成 し、 頭髪の脱 落、爪 の形成異 常に加 え、食道 狭窄や門 腔粘膜びらんなどの粘膜障害がみら れる 常染色体 劣性の 遺伝性疾 患であ る。本症 患者の歯 牙には高頻度にう蝕がみられェナヌ ル質 形成不全 が疑わ れている 。本研 究では、 本症での エナメル質形成障害の発症機序を解 析 し 、原 因 分 子で あ る7型 コ ラ ーゲ ン(COL7)が歯 の形 成におい て果た す役割に ついて 検 討を行った。
試料 として、 野生刪 マウス(C017/+)、 劣性栄養 障害刷 表皮水疱 症のモ デル動物 である COL7ノ ッ クア ウ ト ・マ ウ ス (C017r)お よ びヒ 卜COL7をC0171・に トラシス ジェニ ックし たCOL7h+1+.m‑/・マウス(COL7ヒト化マウス)を用しゝて、実体顕微鏡、免疫組織化学、走杏 型 電 子 顕 微 鏡(SEM)、 走 査 型 分 析 電 子 顕 微 鏡(SEM‑EDX)、 透 過 型 電 子 顕 微 鏡(TEM) を用 いたマウ ス歯の 組織学的 検索を 行い、工 ナメル器 および初代培養エナメル芽細胞にお けるエナヌルタンパクの発現をりアルタイムPCR法にて検討した。
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実体顕 微鏡下 ではC017l・切歯 およびE1歯において、歯の概形およびェナメル質表面の異 常 は認 め ら れな か っ た。 ま た 、SEMで も、 工 ナ メル 質 表面の微 細構造 の異常は 認めら れ ず、同 週令のC017l+と比較し て、C017l・臼歯 におい て咬耗の 亢進は 認められ なかっ た。
SEM‑EDXで は 、工 ナ ヌ ル質 の 元 素 分布 状 態 を比 較 し たとこ ろ、含 何元素の 種類やカ ルシ ウ ムお よ び りン 含 有 率に 差 は 認め ら れ な かっ た 。 しか し、切歯 エナヌ ル質横断 像をSEM で観察 したところ、エナメル小柱配列の規則性がC017・では乱れていることが確認された。
・ 方、COL7ヒ ト 化マ ウ ス では 小 柱 構 造が 改 善 して お り 、COL7と ェ ナ メル 小 柱 の配 列と の 関係 が 示 唆さ れ た 。免 疫 組 織化 学 で は 、C0171十 の歯 胚基底膜 中にCOL7が 認めら れ、
C0171・ での消 失が観察 された 。TEMで は、C017‑の歯胚 基底膜中 の係留 線維の欠 損と、 分 泌 期エ ナ ヌ ル芽 細 胞 のト ー ム ス突 起 の 形 態異 常 が 観察 された。 ルアル タイムPCRでは 、 工ナヌ ル器お よび培養 細胞にお いて主 要なエナ メルタ ンバクの発現の低下がC,017l・で観 察された。
以トの結果より、Co̲17/,では歯胚基底膜の構造の異常により、歯原′1ミト皮細胞からェナ メル芽 細胞へ の分化( 特にトー ムス突 起の形成 )が障 害され、エナヌル基質の分泌異常が 生 じる た め 、立 体 構 造に 欠陥 のある エナヌル 質が形 成される と考え られた。COL7がト皮 間葉相 互作用 に関与し 、エナメ ル芽細 胞の分化 の制御 に重要な役割を果たしている可能性 が考え られ、 劣性栄養 障害型表 皮水疱症患者では、工ナメル質の、t体構造は正常とは異な り、う蝕が進オfしやすい町能性が示唆された。
論文 審査に あたって、論文中請者による研究要旨の説明後、本研究なら,びに関連する研 究に つしゝて 口頭試 問を行っ た。主 な質問事 項は、1)COL7の構造および他の基底膜分子と の関 係性、2)同 症患者の 遺伝子 変異内容 、3)COL7ヒト 化マウス の作製方法、4)他組織で のCOL7の 発 現 、5)COL7,COL17変 異 保 困者 で の エナ ヌ ル 質形 成 不 全に つ い て 等で あ っ た。 これらの 質問に 対して申 請者か ら適切か つ明快 な同答、 説明が得られ、研究の立案と 遂行 、結果の 収集とその評価について中請者がP分な能丿Jを行していることが確認された。
本研 究は、劣 性栄養 障害掣表 皮水疱 症でのェ ナヌル 質形成不 全発症機構の解明と上皮間葉 相 互 作用 に お けるCOL7の 役 割の 仮説を示 したもの であり 、その内 容が高 く評価さ れた。
申請 者は、関 連分野 にも幅広 い学識 を有して いると 認められ 、さらに発展的研究へのモチ ベー ションも 高く将 来性につ いても 評価され た。本 研究業績 は病態解明のみならず関連領 域 に も 寄 与 す る こ と 大 で あ り 、 博 士 ( 歯 学 ) の 学 位 に 値 す る も の と 認 め ら れ た 。
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