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博士(医学)増子佳弘 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(医学)増子佳弘 学位論文題名

ラット小腸温阻血・再灌流傷害に対するL‑Glutamine の 効果: heme oxygenase ― 1 の誘導と抗 apoptosis 作用

学位論文内容の要旨

  I目的

  小腸移植片は他の固形臓器とは異なり,阻血・再灌流傷害に対して高い感受性を示す.

蛋白質 構成アミ ノ酸L‑Glutamine (Gln)の小 腸に対する保護効果については以前より指 摘され ており, われわれ はGlnを投与し た小腸組織ではhemeoxygenase‑1[HSP32 (HO‑1) が高度に発現され,阻血・再灌流傷害に対して耐性が得られることを報告してきたが,そ の保護的機構については必ずしも明らかではなかった.ラット小腸の阻血・再灌流傷害に おいてapoptoslsは重要な因子であり,これを制御することにより傷害を軽減できる可能 性があ る.Apoptosisを制御するシグナルとしてBc1・2やBaxなどのBcl・2familyが知ら れてお り,HSP70やHO‐1を過剰発現させた細胞ではBcl.2も共誘導され虚血に耐性を示 すとい う報告も みられる.これらの知見よりGlnの保護的役割として,H0・1の発現に加 えてBcl‐2familyの誘導が関与している可能性が推測された.本研究では,Gln前投与に よるラ ッ卜小腸 組織内H0‐1の発現とapoptosis関連蛋白であるBcl・2familyの誘導およ びこれらの誘導発現と温阻血・再灌流傷害後の小腸組織の再生過程の関連性について検討 した.

  H方法

  Lewis系 雄 性ラ ッ ト (230〜295g冫 を 用いたlactatedRinger(LR)液25mVkgを静脈 内投 与 し た対 照 群 をLR群 ,G1n5mmoM【gを投与 した実験 群をGln群とし た.また ,こ れら の 被 験薬 を投与 しない無 処置群 も設定し た.被 験薬投与3,6,9,12,24時 間後 に起始 部より15か ら25cmまで の空腸を 採取し,reVerSetranSCriptionp01ymerasechain reactionくRT.PCR)法 を用いたHO.1とBcl・2,Baxの遺伝子発現とW6stemblot法を用 いてHO‐1およ びBcl.2,Baxの蛋白発現を解析した.また,60分間の小腸温阻血・再灌 流後O,1,6,24時 間 に おけ る 小 腸の 組織 を,HaematoXylin&Eosin(H&E)染 色と TdT■mediatedd.uridinetriphosphatebiotinnickendlabeling(TUNEL冫染色法を用い て検討した,

  m結果

  Gln群 のHO・lmRNAは 無 処置 群 と 比較 し て3〜24時間 ま で 有 意な 発現 増強を認 めた

(Pく0.05),HO・1蛋白合成はGln投与後3時間より増強し,12時間においてピーク値が観 察され,無処置群およびLR群と比較して有意な高発現を示したくpくO.05).螢光免疫染色 におい て無処置 群やLR群 では小腸 壁全体のHO.1発現は乏 しかっ たが,Gln群では投与

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後3時間より筋層や陰窩を中心として絨毛上皮に至るまで発現の増強が認められた. Bcl 2 mRNAはGln投 与 後3時間 を ピ ーク と し て発 現 が 増強 し た が, 無 処 置 群お よ びLR群 で は発 現性に差 はなかった.一方,Bax mRNAは3群ともほぼ同程度の発現を示した.Bcl‑2 とBaxのmRNA発 現 比 率 は ,Gln投 与 後3時 間 から12時間 ま で 無 処置 群 と 比較 し て 有 意に 増加した (Pく0.05). Bcl‑2蛋白合成は無処置群およびLR群でも認めたが,Gln群で は3時間後 より24時 間にかけ て発現 が有意に 増強した (pく0.05). Baxの蛋白質発現は Western blot法では確認できなかった,温阻血・再灌流後の小腸組織所見において,再灌 流後1時間 の無処 置群およ びLR群で は,筋層 と陰窩を残して絨毛が脱落して粘膜下層の 浮腫と離開を認めたが,Gln群では絨毛の一部が残存して部分的に上皮の再生も始まり粘 膜下 層の浮腫 もわずかであった.再灌流後6時間では,Gln群は絨毛上皮の再生が良好で あっ たが,無 処置群とLR群では再生は遅延し,絨毛構造の乱れや再生上皮細胞の核異型 の他 に出血, 炎症細 胞浸潤, 粘膜下 層の浮腫 などを認めた.再灌流後24時間では,Gln 群は ほぼ正常 絨毛の形態に再生した.LR群と無処置群では再生絨毛はのびてきたが,上 皮細胞の配列の不整と炎症細胞浸潤を認めた,再灌流直後および1時間後の残存した小腸 組 織 内のTUNEL陽 性細胞 は各群間 で差はな かった が,再灌 流後6時間で はGln群 の残存 絨 毛 と再 生 した 絨毛にお けるTUNEL陽性細 胞の出 現は少な かった .一方, 無処置 群と LR群では再生した絨毛内にTUNEL陽性細胞の出現を多く認めた.

  1V考察

  Gln投与によ り小腸 組織内に 抗酸化 物質glutathioneとHO‑1が共 誘導性に発現増強し て,結果的に再灌流傷害が軽減することを報告してきた.しかし,その保護的メカニズム に つ いて は 十分 に解明さ れてい ない.本 研究で は,Glnのラッ ト小腸に おけるHO‑1と apoptosis関連遺伝子であるBcl‑2 familyの遺伝子および蛋白発現性を解析して,温阻血・

再灌流後の小腸組織再生過程における形態学的特徴とapoptosisとの関連性についても検 討し た.Glnの前投 与によル ラット 小腸組織 にHO‑1 mRNAおよび蛋 白質が誘導発現し,

同時 にapoptosis抑制遺伝 子Bcl‑2 mRNAと蛋 白質も発現することが確認された.また,

Gln群では再 灌流傷 害後の絨毛再生過程が促進され,再生絨毛内のapoptosisが抑制され てい ることが 確認さ れた,以 上の結 果より,Glnの保護的メカニズのひとつとしてHO‑1 とBcl‑2の共誘導が関与していることが判明した.しかし,本研究ではどのようなシグナ ルを 介してこ れらが共誘導されたのかについて直接検討していない.Glnはjun nuclear kinaseくJNK)やextracellular signal related kinaseなどのmitogen‑activated protein kinase (MAPK)を活性 化させる ことが 報告され ている .JNKの 活性化 によりその下流域 の 転 写因 子AP‑1が 活性 化 さ れHO‑1が 誘 導さ れる可能 性があ る.また ,MAPKによ り転 写 因 子c丶MPresponseelementbindingprotein(CREB) が活性化 され, さらにCREBは Bcl‐2の発現を増強するという報告もある.これら従来の報告と今回の実験結果より,Gln 投与 による阻 血・再灌流傷害に対する保護効果の少なくてもーつのメカニズムとして,

MAPKカス ケード を介したH0.1とBc1・2の共 誘導が関与している可能性が推察された.

し か し, 本 実験 系におい てGln投与下にMAPKが活性 化される のか, その下流 域で転 写 因子AP.1やCREBが活性 化される のかな どについ ては実 証されて ない.今後Gln投与に よ るinvivoでの シ グ ナル 伝 達 系の 解 明 に向 け て さら な る 検討 が 必 要 と思 わ れ た.

  V結語

  本研 究におい て,Glnの前投与は小腸組織にH0・1やBc1・2などを誘導して,その後の

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阻血・再灌流傷害を軽減させることが判明した.生体にとって有用なアミノ酸であるGln は,donor preconditioningにおける薬理学的な有効戦略として臨床の小腸移植の場におけ る実践が期待される.

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学位論文審査の要旨 主査    教 授    浅香正博 副査    教 授    藤堂    省

副 査   教 授   石 橋 輝 雄

学 位 論 文 題 名

ラット小腸温阻血・再灌流傷害に対するL ・ Glutamine の 効果: heme oxygenase‑l の誘導と抗 apoptosis 作用

  小 腸 移 植 片 は 他 の 固 形 臓 器 と は 異 な り 、 阻 血 ・ 再 灌 流 傷 害 に 対 し て 高 い 感 受性 を 示 すこ と が 知 ら れ て い る 。 蛋 白 質構 成 ア ミノ 酸L―Glutamine (GIn)の 小腸 に 対 する 保 護 効果 に つ い て は 以 前 よ り 指 摘 さ れ て お り 、 こ れ ま でGlnを 投 与し た 小 腸組 織 でheme oxygenase‑l/HSP32 (HO‑1) が 高 度 に 発 現 さ れ 、 阻 血 ・ 再 灌 流 傷 害 に 対 し て 耐 性 を 獲 得 す る こ と を 報 告 し て き た が 、 そ の メ カ ニ ズ ム は ま だ 明 ら か に さ れ て い な い 。 小 腸 阻 血 ・ 再 灌 流 傷 害 に お け る apoptosisの 関 与 、HO−1とBcl‑2の 関 連 を 示 す 文 献 な ど か ら 、Glnの 保 護 的 役割 と し てHO‑1 の 発 現 に 加 え てBclー2familyの 誘 導 が 関 与 し て い る可 能 性 を推 測 し た 。本 研 究 では 、Gln前 投 与 に よ る ラ ッ ト 小 腸 組 織内HOー1の 発 現とapoptosis関 連蛋 白 で あ るBcl‑2 familyの 誘 導 発 現 と 温 阻 血 ・ 再 灌 流 傷 害 後 に お け る 小 腸 組 織 再 生 過 程と の 関 連性 に つ いて 検 討 し た。Lewis 系 雄 性 ラ ッ ト を 用 い て 、lactated Ringer (LR)液25 ml/kgを静 脈 内 投与 し た 対照 群 をLR群 、 Gln5mmol/kgを 投 与 し た 実 験 群 をGln群 と し た 。 ま た 、 無 処 置 群 も 設 定 し た 。 被 験 薬 投 与3 から24時間後に空腸を採取し、reverse transcription polymerase chain reaction (RT‑PCR)法を用 い てHO‑1、Bcl‑2、Baxの 遺 伝 子 発 現 を 、Western blot法 を 用 い てHO‑1、Bcl‑2、Baxの蛋 白 発 現 を 解 析 し 、 免 疫 組 織 染 色 法 でHO‑1蛋 白 の 局 在 性 を 検 討 し た 。 ま た 、60分 間 の 小 腸 温 阻 血 ・ 再 灌 流 直 後 か ら24時 間 に お け る 小 腸 の 組 織 を 、HE染 色 とTdT−mediated d‑uridine triphosphate biotin nick end labeling (TUNEL)染色 法を用 いて検討 した。Gln群のHO‑1 mRNA は3か ら24時 間 ま で 有 意 な 発 現 増 強 を 示 し 、HO‑1蛋 白 もGln投 与 後3時 間 よ り 増 強 し 、 24時 間 ま で 有 意 な 高 発 現 を 示 し た 。 螢 光 免 疫 染 色 に お い て 、Gln群 で は 投 与 後3時 間 よ り 筋 層 や 陰 窩 を 中 心 と し て 絨 毛 上 皮 に 至 る ま で 発 現 の 増 強 が 認 め ら れ た 。Bcl‑2 mRNAはGln 群 で 発 現 が 増 強 し た が 、Bax mRNAは3群 と も ほ ぼ 同 程 度 の 発 現 を 示 し た 。Bcl‑2とBaxの mRNA発 現 比 率 は 、Gln投 与 後3か ら12時 間 ま で 有 意 に 増 加 し た 。Bcl‑2蛋 白 合 成 は 無 処 置 群 お よ びLR群 で も 認 め た が 、Gln群 で は3時 間 後 よ り24時 間 に か け て 発 現 が 増 強 し た 。 Baxの 蛋 白 質 発 現 は 確 認 で き な か っ た 。 温 阻 血 ・ 再 灌 流 後1時 間 の 小 腸 組 織 は 無 処 置 群 と LR群 で は 、 筋 層 と 陰 窩 を 残 し て 絨 毛 が 脱 落 し 粘 膜 下 層 の 浮 腫 と 離 開 を 認 め た が 、Gln群 で は 絨 毛 の 一 部 が 残 存 し 粘 膜 下 層 の 浮 腫 も 軽 度 で あ っ た 。 そ の 後 の 絨 毛 上 皮 の 再 生 はGln 群 に お い て 良 好 で 、24時 間 後 に は ほ ぼ 正 常 絨 毛 の 形 態 を 示 し た が 、 無 処 置 群 とLR群 で は 再 生 が 遅 延 し た 。 再 灌 流 直 後 と1時 間 後 の 残 存 小 腸 組 織 のTUNEL陽 性 細 胞 に 差 は な か っ た が 、 再 灌 流 後6時 間 に お け るGln群 の 再 生 絨 毛 に お け るTUNEL陽 性 細 胞 は 他 の 群 に 比 べ て 少 な か っ た 。 以 上 の 結 果 よ りGlnの 保 護 的 メ カ ニ ズ ム の ひ と っ と し てHOー1とBcl‑2の

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共 誘 導 が 関 与 し 、 そ の 後 の 阻 血 ・ 再 灌 流 傷 害 を 軽 減 さ せ る こ と が 判 明 し た 。    審査 にあ たっ て、副 査の 石橋 教授 から Gln の保護 効果 はレ シピ ェン トに 対し てか、Gln に よ る Bax 抑 制 の 可 能 性 、 HO − 1 で 生 成さ れ る CO の 循 環へ の影 響、 共誘 導に 関す る検討 に つい ての 質問 があっ た。 申請 者は Gln やHO‑1 に関 する文献や自身のデータ―を用いて、

小 腸移 植に おけ るdonor preconditioning を想定したこと、Bax は変化なく、CO はむしろ微 小 循 環 を 改 善 す る こ と 、 共 誘 導 に 関 わる MAPK の 可 能 性な どを 回答 した 。次 いで 主査の 浅 香 教 授 か ら mRNA や 蛋 白 の 定 量 性 、 組織 学 的 計 測 、 Bcl‑2 の発 現部 位、 HO‑1 とBcl‑2 の 発 現は Gln の 主要 効果 か、 ノッ クア ウト マウ スでの 検討などについて質問があった。申請 者 は 文 献 や 自 身 の デ ー タ ― を 用 い て mRNA は GAPDH と の 比 で 検 討 し たこ と 、 B‑tublin で の 蛋白 定量 、組 織は形 態学 的な 評価 であ るこ と、 陰窩と筋層でのBcl‑2 発現を最近確認し たこと、Gln は小腸のFuel であり、epidermal growth factor 増強など他にも効果があること、

HO‑1 ノ ック アウ トマウ スで の検 討の 必要 性な どに つい て回 答し た。 最後 に、副 査の藤堂 教 授か らHO‑1 の 阻血・ 再灌 流傷 害軽 減の メカ ニズ ム、 空腸 と回 腸に おけ る傷害 の違い、

小 腸で のBcl‑2 発 現に 関す る報 告例 につ いて 質問が あっ た。 申請 者は HO‑1 、Bcl‑2 に関す る 文献 や自 身の データ ーを 用い て、 HO‑1 によ りheme から生じたbiliverdin などがradical scavenger として保護効果を示すこと、再灌流傷害は回腸で非常に強く組織形態評価のため 空腸を用いたこと、最近のBcl −2 関連の文献で発現が示されていることについて回答した。

   この 論文 は小 腸温阻 血・ 再灌 流傷 害に 対す るL‑Gln の 保護 効果 をHO‑1 と Bcl‑2 の共誘導 の 面か ら独 創的 に検討 したことで高く評価され、今後安全な細胞保護物質の誘導法として 小腸移植への応用が期待された。

   審査員一同は、これらの成果を高く評価し、申請者が博士(医学)の学位を受けるのに充 分な資格を有するものと判定した。

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参照

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