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博士(医学)種市 洋 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(医学)種市   洋 学位論文題名

Risk factors and probability of vertebral body collapse       in metastases of the thoracic and lumbar spine

(胸椎および腰椎の転移性脊椎腫瘍における椎体圧潰発生の危険因子と予測確率)

学位 論文内容の要旨

  脊椎 癌転移 に続 発す る椎 体圧 潰は 不安 定性 によ る疼 痛、 腫瘍や圧潰椎体組織の脊柱管内陥 入 によ る神経 障害 を引 き起 こし 、末期癌患者のQOLを著しく低下させる。椎体圧潰の予防は放 射 線療 法や脊 柱再 建術 によ り達 成さ れる が、 適切 な治 療時 期や治療法選択には椎体圧潰の切 迫 期を 決定す るこ とが 重要 であ る。 本研 究で は多 重ロ ジス テイックモデルを用い悪性腫瘍転 移 胸 ・ 腰 椎 に お け る 病 的 椎 体圧 潰の 危険因 子を 分析 し、 切迫 椎体 圧潰 の時 期を 予測 した 。

【 対象・方法】転移性脊椎腫瘍を有する53患者(平均年齢59.7歳)から椎骨の全部または大部 分 が溶 骨性転 移巣 で占 めら れる 胸椎・腰椎の100椎を対象とした。原発腫瘍の内訳は腎癌:17 椎 、乳 癌:15椎、 前立 腺癌 :15椎、肝細胞癌:13椎、肺癌:8椎、その他:32椎であった。転 移 椎は 脊椎レ ベル によ り50椎づ っ2群に分類した。すなわち、同名の肋骨が、直接、胸郭形成 に 関与 するTlからTl0まで を胸 椎群 (T群 )と し、 同名 の肋 骨が自由端となるTllとT12および 全腰椎を胸腰椎・腰椎群(L群)に分類した。

  生体力学的観点から、椎体圧潰の危険因子として椎体の腫瘍占拠率:xl、椎弓根破壊:x2、 後 方要 素破壊 :x3、肋 椎関 節破 壊:x4の4項目 を選 定し た。xlはCTで計測し、x2〜x4はCTとX 線 断層像で判定した。腫瘍占拠率(xl)は溶骨部の最大断面を通るスライスで溶骨部面積を計測 し 、こ れを予 測正 常椎 体面 積( 上下 隣接 正常 椎体 の断 面積 の平均値)で除して求めた。面積 計測には画像解析ソフトImage l.52 (NationalInstitute of Health,MD)を用いた。椎弓根転移によ り 椎体―後方要素間の連続性が断たれたものを椎弓根破壊(x2)、椎弓根以外の後方要素(椎間 関 節、椎弓、棘突起)が転移により破壊されたものを後方要素破壊(x3)、肋骨頭関節面を含む 椎 体部分が転移により破壊されたものを肋椎関節破壊(x4)とした。椎体圧潰とは終板骨折また は 椎体 骨皮質 の病 的骨 折に より 椎体 高を 減じ たも のと し、 最低椎体高が予測正常椎体高(上 下隣接正常椎体高の平均値)の90%未満である場合を椎体圧潰とした。

  椎体 圧潰の 発生 確率 をpとし 、前 述のxl〜x4を要 因と して 多重 ロジ ステ イッ クモ デル によ る 解析 を行っ た。 各群 ごと に全 要因 のオ ッズ 比を 算出 し、 椎体圧潰の危険因子を同定した。

さらに各危険因子の有無による椎体圧潰の発生確率くp)を求め、これをもとに切迫椎体圧潰の 診 断基準を作成した。統計検定には統計ソフトJMP 2.0 (SAS institute Inc.,NC)を用いた。

【 結果】椎体圧潰に及ぼす影響度は、T群では(1)肋椎関節破壊(オッズ比10.17、p=0.021)、

(2)腫瘍占拠率(腫瘍占拠率10a/o増加毎のオッズ比2.44、p=0.032)、(3)椎弓根破壊(オッズ比 1.73、p=0.703)、(4)後方 要素 破壊(オッズ比1.17、p=0.886)の順に大きく、統計学的に有意 な 危険因子と判定されたのは(1)ヽ(2)であった。ー方、L群では、(1)腫瘍占拠率(腫瘍占拠率 10ah増加毎のオッズ比4.35、p=0.002)、(2)椎弓根破壊(オッズ比297.08、p―ー0.009)、(3)後方 要 素破壊(オッズ比0.03、p=0.027)の順に影響度が大きかった。(1)ヽ(2)は椎体圧潰発生の危

(2)

険 因 子 と し て 統 計 学 的 に 有 意 で あ っ た が 、(3)は 圧 潰 を 起 こ り に く く す る 因 子 と 判 定 さ れ た。

  椎 体圧 潰 の 発生 確 率(p)はT群 で は 、 式)pくT) 〓exp(A,T)/t1十exp(A,T)1[A,T〓logit p(T)〓 0.089xl十0.546x2十0.161x3十2.319x4 ‑ 4.597]カ ゝ ら、L君 華で は 、 式)p(L)〓exp(XL)/tl十 exp(A,Iー)1[入L=logit p(L)=0.147xl十5.694x2 ‑ 3.609x3 ‑ 5.492]から求められる。実際の癌転移脊 椎 を 想 定 し 、 種 々 の 転 移 状 況 に お け る 椎 体 圧 潰 の 発 生 確 率 を 求 め る と 以 下 の よ う に な る 。 胸 椎 で は 椎 体 の 腫 瘍 占 拠 率 が30%で 他 部 位 の 骨 破 壊 が な い 場 合 の 椎 体 圧 潰 発 生 確 率 は0.13(13%) で あ る が、 腫 瘍 占拠 率 が30%で も肋 椎 関 節 破壊 を 伴 う場 合 はO.57 (57%)と な る。 一 方 、 胸腰 椎・

腰 椎 で は 、 椎 体 の み の 転 移 で他 部 位 の 破壊 を 伴 わな い 場 合、 腫 瘍 占拠 率 が20070の 椎 体 圧 潰発 生 確 率 は0.07 (70/0)、300/0に な る と0.25 (25c70)、40c70で は0.60 (60%)な ど と 求め ら れ る。

  椎 体圧 潰 の 発生 確 率 が概 ねO.5(50ワD) に なる 場 合 を切 迫 椎 体圧 潰と定 義すると 、切迫椎 体圧 潰 の 診 断 基 準 は 、 胸 椎 で は 腫 瘍 占 拠 率 が50‑60%の も の 、 占 拠 率25‑30%で も 肋 椎 関 節 破 壊 を 伴 う も の 、一 方 、 胸腰 椎 ・ 腰椎 で は 占拠 率 が35‑400/0の もの 、20‑25 010でも椎 弓根など 破壊を 伴う ものとなる。

【 考 察 】 転 移 椎 の 生 体 力 学 的 特 性 は 、 疼 痛 の 程 度 、 麻 痺 の 原 因 と 進 行 度 、 患 者 の 全 身 状 態 、 生 命 予 後 、 転 移 椎 数 、 治 療 感 受 性 な ど と 並 ぴ 転 移 性 脊 椎 腫 瘍 の 治 療 法 決 定 に 際 し 重 要 な 因 子 で あ る 。 し か し 、 現 状 で は 転 移 椎 の カ 学 的 特 性 、 す な わ ち 、 転 移 に よ る 骨 破 壊 の 程 度 や 局 在 の 違 い が 椎 体 圧 潰 に 及 ぽ す 影 響 に 関 す る 知 見 は ほ と ん ど 得 ら れ て い な い 。 生 体 力 学 実 験 で は 適 切 な 溶 骨 型 転 移 モ デ ル が 作 製 で き な い た め 有 用 な 結 論 は 出 て い な い 。 ま た 、 乳 癌 転 移 椎 に 関 す る 臨 床 的 研 究 か ら は 椎 体 圧 潰 が 終 板 骨 折 を 契 機 に 発 生 す る が 示 さ れ て い る が 、 終 板 骨 折 や椎体圧潰発生の危険因子は全く解明されていない。

  本 研究 で は 、胸 椎 に おけ る 椎 体圧 潰 の 危 険因 子 は (1) 肋 椎関 節 破 壊と(2)椎 体 の 腫瘍 占 拠 率で あ る こ と を 明 ら か に し た 。 胸 椎 は 肋 椎 関 節 を 介 し て 胸 郭 の 一 部 に 組 み 込 ま れ て い る こ と に よ り 高 い カ 学 的 安 定 性 を 得 て い る 。 そ の た め 胸 椎 で は 腫 瘍 の 大 き さ そ の も の よ り も 肋 椎 関 節 破 壊 に 伴 っ た 胸 郭 と の 解 離 ( 安 定 化 機 構 の 喪 失 ) が 椎 体 圧潰 発 生 に大 き な 影響 を 及 ぽす 。 ま た 、 胸 郭 と 直 接 の 関 連 の な い 椎 弓 根 や 他 の 後 方 要 素 破 壊 が 椎 体 圧 潰 に 影 響 し な い こ と も こ れ を 裏 付 け て い る 。 こ れ ま で に 肋 椎 関 節 破 壊 が 胸 椎 の 安 定 性 を 損 な う こ と や 腫 瘍 に よ る 肋 椎 関 節 破 壊の臨床的意義を明らかにした研究はなく、本研究の意義は大きい。

  胸 腰椎 ・ 腰 椎に お け る椎 体 圧 潰の 危 険 因子は(1)椎 体の腫 瘍占拠率 と(2)椎弓根破 壊であっ た。

胸 腰 椎 ・ 腰 椎 で は 胸 椎 と は 対 照 的 に 、 転 移 巣 の 大 き さ そ の も の が 椎 体 圧 潰 の 発 生 を 規 定 し て い た 。 ま た 、 椎 弓 根 破 壊 の 影 響 も 大 で あ っ た 。 椎 弓 根 破 壊 は 椎 体 に 発 生 し た 転 移 巣 が 後 方 に 拡 大 し た 結 果 起 こ り 、 骨 破 壊 に よ り カ 学 的 強 度 を 減 じ た 椎 体 が 椎 弓 根 に よ る 後 方 支 持 組 織 と の 連 絡 を 絶 た れ 一 層 不 安 定 と な る こ と が 椎 体 圧 潰 を 惹 起 す る 原 因 と 考 え ら れ た 。 一 方 、 後 方 要 素 破 壊 は 椎 体 圧 潰 が 生 じ に く く な る 因 子 で あ っ た 。 こ れ は 後 方 要 素 転 移 例 に は 同 部 が 初 発 部 位 と 考 え ら れ る も の が 多 く 、 こ の 場 合 、 椎 体 の 腫 瘍 占 拠 率 が 比 較 的 小 さ い た め に 一 般 に 椎 体圧潰は起こりにくくなるためと推察された。

  胸 椎 と 胸 腰 椎 ・ 腰 椎 で は 転 移 椎 の カ 学 的 特 性 が 異 な っ て お り 、 そ れ に よ り 切 迫 椎 体 圧 潰 の 時 期 や 転 移 パ タ ー ン に も 明 ら か な 差 が あ る 。 転 移 巣 が 椎 体 に 限 局 し て い る 例 で み る と 、 切 迫 椎 体 圧 潰 と ぃ え る の は 胸 椎 で は 腫 瘍 サ イ ズ が 腫 瘍 占 拠 率で50‑600/0の 例 であ る の に 対し 、 胸 腰 椎 ・ 腰 椎 で は こ れ よ り 小 さ な35‑40%程 度 で あ っ た 。 胸 腰 椎 ・ 腰 椎 で は 転 移 成 立 後 の よ り 早 い 時 期 に 切 迫 椎 体 圧 潰 と な る こ と が わ か っ た 。 転 移 椎 の レ ペ ル に よ っ て 切 迫 圧 潰 の 時 期 が 異 な る こ と は 臨 床 上 重 要 で あ る 。 非 圧 潰 期 ( 切 迫 椎 体 圧 潰 以 前 の 時 期 ) と 切 迫 圧 潰 期 で は 、 転 移 性 脊 椎 腫 瘍 に 対 す る 治 療 は 大 き く 異 な る 。 悪 性 リ ン パ 腫や 乳 癌 など の 放 射線 感 受 性腫 瘍 で は 、 非 圧 潰 期 に 放 射 線 療 法 を 行 う こ と に よ り 転 移 椎 の 安 定 性 を 再 ぴ 獲 得 で き る 可 能 性 は 高 く 、 不 要 な 手 術 侵 襲 を 加 え な く と も 良 好 な 結 果 が 得 ら れ る 場 合 が 多 い 。 一 方 、 放 射 線 感 受 性 腫 瘍 で も 切 迫 圧 潰 期 に は 脊 柱 再 建 術 を 施 行 し な い 限 り 、 椎 体 圧 潰 は 予 防 し 得 な い 。 放 射 線 療 法 は 安 定 性 獲 得 に3カ 月 以 上 を 要 す る と さ れ 、 切 迫 圧 潰 期 に お け る 椎 体 圧 潰 予 防 効 果 は 期 待 で き な

(3)

いからである。また、椎弓切除術は転移性脊椎腫瘍による神経障害の治療法として広く行わ

れているが、切迫圧潰期にこれを単独で行うことは転移椎の不安定性を増強させ、椎体圧潰

を誘発する危険性が高いため禁忌である。切迫圧潰期においては強固な即時安定性を付与で

きるようなインストルーメンテーション併用の脊柱再建術が適応となる。以上のように、切

迫椎体圧潰という概念の導入と、その適切な診断は転移性脊椎腫瘍の治療法決定に重要な指

針を与えるため、臨床上の有用性は高い。また、これにより適切な治療法とその施行時期の

決定が可能となるため治療成績の向上が期待され、延いては患者の高いQOL の獲得・維持にも

っながると考えている。

(4)

学位論文審査の要旨

    学位論文題名

Risk factors and probability of vertebral body collapse     in metastases of the thoraclCandlumbarSpine

(胸椎およぴ腰椎の転移性脊椎腫瘍における椎体圧潰発生の危険因子と予測確率)

  脊 椎 癌転 移 に 続発 す る 椎体 圧 潰は不安 定性によ る疼痛、 腫瘍や圧 潰椎体組織 の脊柱管 内陥 入 に よ る 神 経 障 害 を 引 き 起 こ し 、 末 期 癌患 者 のQOLを 著 しく 低 下さ せ る 。椎 体 圧 潰の 予 防 は 放射 線 療法 や 脊 柱再 建 術に よ り達成 されるが 、適切な 治療時期 や治療法選 択には椎 体圧潰 の 切迫 期 を決 定 す るこ と が重 要 である 。本研究 では多重 ロジステ ィックモデ ルを用い 悪性腫 瘍転移 胸・腰椎 における病 的椎体圧 潰の危険 因子を分 析し、切 迫椎体圧潰の時期を予測した。

  悪 性 腫瘍 転 移 胸・ 腰 椎 で椎 骨 の全 部 ま たは 大 部分 が 溶 骨性 転移 巣で占めら れる100椎を 対 象 と し た 。 転 移 椎 は 胸 郭 形 成 に 関 与 す るTlか らTl0ま で を 胸 椎 群(T群 ) 、T11とT12およ び 全腰 椎 を胸 腰 椎 ・腰 椎 群(L群 ) の2群 (各50椎 ) に 分類 し た 。生 体 力学 的 観 点か ら 、椎 体圧潰 の危険因 子として椎 体の腫瘍 占拠率:xl、椎弓根 破壊:x2、 後方要素破壊;x3、肋椎関 節 破 壊 :x4の4項 目 を 選 定 し 、CTとX線 断 層 像 を 用 い て 評 価 し た 。 椎体 圧 潰 を目 的 変数 、 xl  ‑x4を説 明 変数 と し て多 重 ロジ ス テ ィッ ク モデ ル に よる 解 析を行っ た。各要因 のodds比 を 算出 し 、椎 体 圧 潰の 危 険因 子 を同定 した。さ らに各危 険因子の 有無による 椎体圧潰 の発生 確率(p)を求め 、切迫椎体 圧潰の診 断基準を 作成した 。

  椎 体 圧潰 の 危 険因 子 は 、T群 で は 肋椎 関 節 破壊 (odds比10 .17、p=0.021) と 腫瘍 占 拠 率

( 腫瘍 占 拠率10ゲD増加 毎 のodds比2.44、p=0.032) 、L群 では 、腫瘍占 拠率(腫 瘍占拠率 10% 増 加 毎 のodds比4.35、p=0.002) 、椎 弓 根 破壊 (odds比297.08、p=0.009) と 判定 さ れた。 椎体圧潰の発生確率(p)はT群では、式)p(T)= exp(1T)/{1十exp(JT)}  [1T= logit p(T)〓0.089xl十0.546x2十0.161x3十2.319 x4  ‑4.597]か ら 、L群 では 、 式)

p(L)〓exp(1L)/t1十ex p(l L)1[1L=Jogit p(L)=0.147x1十5.694 x2  ‑3.609 x3  ‑ 5. 492]か ら求めら れる。椎体 圧潰の発 生確率が 概ね0.5(50% )になる場合を切迫椎体圧潰 と 定義 す ると 、 切 迫椎 体 圧潰 の 診 断基 準 は 、胸 椎 では 腫 瘍 占拠 率が50‑6 0%のもの 、占拠率 25‑30%で も 肋 椎 関 節 破 壊 を 伴 う もの 、 一 方、 胸 腰椎 ・ 腰 椎で は 占拠 率 が35‑40% のも の 、 20 ‑25ゲDでも 椎弓根な ど破壊を伴 うものと なった。

  転 移 椎の 生 体 力学 的 特 性は 、 患者の全 身状態、 生命予後 、腫瘍の 生物学的特 性と並び 治療 法 決定 に 必須 の 因 子で あ るに も かかわ らず、そ の特性は 未知のま まである。 本研究で は、胸

一・139

之 志

男 省

紘 清

藤 田

坂 堂

加 金

宮 藤

授 授

授 授

教 教

教 敦

査 査

査 査

主 副

副 副

(5)

椎における椎体圧潰の危険因子は肋椎関節破壊と椎体の腫瘍占拠率であることを明らかにし た。胸椎は肋椎関節を介して胸郭の,部に組み込まれていることにより高いカ学的安定性を 得ている。そのため肋椎関節破壊に伴う胸郭との解離(安定化機構の喪失)が椎体圧潰発生 に大きな影響を及ぽす。これまでに肋椎関節破壊が胸椎の安定性を損なうことや腫瘍による 肋椎関節破壊の臨床的意義を明らかにした研究はなく、本研究の意義は大きい。一方、胸腰 椎・腰椎では胸椎とは対照的に、転移巣の大きさそのものが椎体圧潰の発生を規定していた。

胸椎と胸腰椎・腰椎では転移椎のカ学的特性が異なっており、それにより切迫椎体圧潰の時 期や転移パターンにも明らかな差がある。転移巣が椎体に限局した場合の切迫椎体圧潰は胸 椎で は腫瘍 占拠 率が

50‑60%

の例 であ るの に対し 、胸 腰椎・腰椎ではこれより小さな35‑

40%

程度であった。これは胸腰椎以下では転移成立後より早期に切迫椎体圧潰となること意 味 し て お り 、 転 移 レ ベ ル に よ る 切 迫 圧 潰 の 時 期 の 相 違 を 示 す も の で あ る 。

  

本研究は胸椎、腰椎への転移性脊椎腫瘍における椎体圧潰の主要要因を多重口ジスティツ クモデルを用いて解析し切迫椎体圧潰の発現予測を行ったもので、胸椎と腰椎における各々 の特徴を明らかにした。

  

公開発表において、会場.から胸椎部不安定性における肋椎関節関与の大きさを裏付ける実 験データについて、副査の宮坂和男教授から転移による後方要素破壊について、溶骨領域の 計測法について、および急性麻痺例の手術法について、次いで副査の藤堂省教授から原発腫 瘍の種類と椎体圧潰発生の関係について、骨粗鬆症の椎体圧潰に及ぽす影響について、およ び乳癌の脊椎転移例に対する実際の治療法選択についての質問があった。その後、副査の金 田清志教授から胸腰椎と中下位腰椎における荷重分担の違いが椎体圧潰に及ぽす影響につい て、続いて主査の加藤紘之教授から切迫椎体圧潰の定義について、およびその臨床応用に関 する質問があった。いずれの質問に対しても、申請者は自らの研究結果や過去の研究報告を 引用し、論理的な考察と豊富な知識に基づいて明解に解答した。

  

以上、本研究は転移性脊椎腫瘍の生体力学的特性を明らかにした最初の独創的研究である。

転移性脊椎腫瘍に対する適切な治療法選択の重要な指標を提示した点で高く評価でき、今後 の終末期医療の発展に寄与することが期待される。

  

審査員一同は、これらの成果を高く評価し、申請者が博士(医学)の学位を受けるのに充 分な資格を有するものと判定した。

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参照

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