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博 士 ( 医 学 ) 岩 田 豊 英 学 位 論 文 題 名

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博 士 ( 医 学 ) 岩 田 豊 英

学 位 論 文 題 名

骨 粗 鬆 症 性 外 傷 後 胸 ・ 腰 椎 椎 体 圧 潰 の 組 織 学的 研 究 学 位 論 文 内 容 の 要 旨

く緒言冫骨粗鬆症 に起因する脊椎圧迫骨折の一部は、正常な治癒経過をたどらず、椎体が圧 潰、扁平化するこ とがある。さらに、まれに椎体の後方部が脊柱管内陥入を起こし、神経 障害を惹起する骨 粗鬆症性外傷後椎体圧潰となるため観血的治療が必要となる。しかし、

本疾患の病理学的 経過は、組織学的検討が不十分なためよくわかっていない。本研究では 手術時に一塊とし て摘出した骨粗鬆症性椎体と、骨粗鬆症のない破裂骨折を組織学的に比     

較、観察し、外傷 後椎体の修復過程の経過に検討を加えた。本論文は、椎体外傷とくに骨 粗 鬆 症 と 関 連 す る 圧 潰 椎 体 の 外 傷 後 変 化 を 全 体 的 に 検 索 し た 最 初 の 論 文 で あ る 。

く材 料と 方法 冫手 術時 に一 塊と し て摘出した外傷 後椎体47椎体を組織学的に観察した。

こ の う ち 骨 粗 鬆 症 の あ る 椎 体36例 ( 男 性10例 、 女 性26例 ) の手 術時 平均 年令 は6 7.

3才 で あ り 、 受 傷 か ら 手 術 ま で の 期 間 は14日 か ら28力 月 ( 平均7.4カ 月) であ った 。 ま た 、骨 粗鬆 症の ない 椎体 は11例( 男 性8例、 女性3例) では 、手 術時 平均 年令 は4 4.

3才 で あ り 、 手 術 ま で の 期 間 は5日 か ら6カ 月 ( 平 均1.8力 月 )で あっ た。 摘出 後、 椎 体は直ちにホルマリン固定し、最大割面で前 額面断または矢状面断にて切り出した。切り 出 し た 椎 体 は10% の 蟻 酸 で 脱 灰 後、 パラ フイ ンに 包埋 し、 厚さ3Umの 切片 とし て、 ヘ マトキシリンーエオジン(H―E)染色を行った。染色切片は、まず拡大複写機(ピクト口グ ラフイー:富士フイルム社製)を用いて、10倍の拡大写真を撮影し、割面全体の組織像を 観察した。ついで光学顕微鏡を用いて観察した。さらに、骨粗鬆症のある椎体に関しては、

帯状に厚く存在していた線維組織を拡大写真 を用いて観察して層の厚さを計測した。その 際、 層の 長軸 を4等 分す る3力所 に おいて層の厚さ を計測し、その測定値を平均したもの を線維組織層の厚さとした

く 結果冫【I】骨粗鬆症を伴う 圧潰椎体の組織像:椎体の切片は、組織学的に多彩な修復過 程 の像を示したが、受傷から摘出までに経過した期間によ って分類すると、一定の規則性 を 認めた。そこで以下のように分類して、それぞれの組織 像の特徴を分析した。各摘出時 期 の 観 察 椎 体 数 は 、1) 急 性 期2椎 体、2)修 復期4椎 体、3)沈 静期30椎 体で あっ た。

そ れぞれの組織像の特徴は以下のとうりであった。

  1)急 性期 (受 傷後2週以 内) :すべての標本は出血壊死巣を示した。出 血壊死巣の周 辺 部には、マクロファージが侵入し、壊死骨髄細胞を貪食 していた。また、マクロファー ジ により貪食を受けている出血壊死巣の周囲では、大型の 線維芽細胞が増生していた。さ ら に正常骨髄側に近づくにっれ線維芽細胞層の周囲には線 維組織が密に増生していた。一 方 、正常の骨髄と骨梁は、壊死巣の対側で椎体側壁と椎体 終板がっくる三角形の領域に観

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察された。明らかな骨新生像はなかった。

  2)修 復期 ( 受傷 後3週〜8週の 椎体 ): 細片 化した壊死骨梁を含む壊死巣が存在し、

壊死巣と正常骨髄の間には、修復線維組織層が帯 状に存在していた。層の厚さは、受傷か ら 摘 出 ま で の 期間 に関 わら ず 約2.5mmであ った 。修 復線 維 組織 に接 する 壊死 骨お よび 壊死組織の一部は、吸収されている組織像が観察 された。一方、修復線維組織層の正常骨 髄側では骨新生像を認めた。また、修復線維組織 帯の外側に存在する正常骨髄組織は、椎 体側壁と終板とがっくる三角形の領域に存在した 。

  3)沈静期(受傷後8週以上):組織像は基本的 に修復期と同じで、細片化した壊死骨梁 を含む壊死巣、壊死巣を囲む厚さ約2.5mmの線維組織帯、さらにそれを囲む正 常骨梁部分 から 構成 され てい た。しかし、 壊死組織の吸収像や骨新生像はほとんど認めなかった。

  その他、圧潰椎体にみられる特異な組織像とし て、軟骨組織の出現や破裂腔の存在があ っ た 。 破 裂 腔 に 面 す る 線 維 組 織 表 面 は 滑 膜 様 細 胞 が 被 覆 し て い た 。

【II】骨 粗鬆 症を 伴わない圧潰 椎体の組織像:受傷後2週以 内に摘出された2椎体の組織 学的 変化 は、 基本 的に骨粗鬆症 のある椎体の初期と同じであった。受傷後3〜8週で摘出 された6椎体では、壊 死骨梁のない修復線維組織帯が存在せず、線維組織中で 壊死骨の破 骨細胞による吸収像に隣接し、大型の骨芽細胞を 持った新生骨梁が観察された。一方、2 力月 以上 を経 過し た3椎 体で は、 骨芽 細胞 は扇 平となり、その活動は沈静化していた。

く考察冫椎体の外傷後骨壊死という概念は、椎体には栄養血管が豊富なところから、これま でにはほとんど認知されることがなかった。また 、現在までになされた組織学的な報告は 組織所見を断片的に述ぺたもので、その全体像については統一した見解が得られていない。

その ため 、一 つの 疾患 概念として 包括されることなく、様々な呼称で報告されてきた。

  今回、得られた組織所見から、骨粗鬆症を伴う 圧潰椎体の修復過程を推測すると、っぎ のようになる。外傷により椎体内部の骨梁、およ び周囲の骨髄血管が損傷する。出血巣は 椎体のほぼ中央部に広がり、この部は虚血となる 。壊死巣内の骨梁の骨細胞は壊死して壊 死骨となる。っづぃて、壊死巣周囲の正常組織で は壊死組織の除去のための修復反応を開 始する。毛細血管の新生を伴う線維芽細胞の侵入 と増殖、壊死産物除去のためのマクロフ アージの侵入は受傷後2週以内に始まり、壊死巣を囲む肉芽組織の形成へと進 行する。壊 死巣が肉芽組織化されると同時に、肉芽組織の前 線では破骨細胞が壊死骨を吸収し、肉芽 組織中の骨梁は消失していく。すなわち、壊死巣 のまわりには骨梁をほとんど含まない肉 芽組織が形成される。一方、骨折部に隣接する正 常骨梁あるいは残存壊死骨の表面には骨 添加がなされる。8週 以降になると、修復反応は沈静化し、吸収しきれなかっ た壊死巣は 残存する。

  っぎに骨粗鬆症の有無による椎体組織の差につ いて述べる。骨粗鬆症のない椎体では、

線維組織中に壊死骨を芯とした骨新生像を認めた 。これは、壊死骨の吸収と同時に活発な 骨形成が進行し、壊死骨が新生骨に取り囲まれて 新たに再構築される骨梁の足場となった と考える。しかし、骨粗鬆症のある圧潰椎体では 、壊死巣近傍の線維組織中では壊死骨の 吸収像が、正常骨梁側では骨新生像が、線維組織 層を隔てて認められた。このような違い は、線維芽細胞による線維組織の増生と、同時に 起こる線維組織中での壊死骨の消失に、

骨添加が追いっかないために生じたと推測する。

  線維組織層を形成する修復過程をたどると、骨 折部には壊死組織と線維組織が残存し、

骨折をまぬがれた骨梁だけでは荷重に耐えること ができずに、圧潰が徐々に進行すると考

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える。骨粗鬆症のある場合とない場合とでは、同じように圧潰している椎体であっても椎 体骨梁の状態は同じではないことを確認した。

く結語冫骨粗鬆症性椎体圧潰では椎体内に壊死巣、および骨梁を欠く線維組織層が存在した。

線維 組織層 では、壊 死巣と 正常骨梁 部との 問で、壊死巣を中心に壊死吸収、線維組織化、

骨梁 再生像 が整然と 層状に 存在し、 椎体内 の部位による経時的組織変化を示した。外傷後 の椎体は急性期,修復期,沈静期の組織像に分けられた。

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

骨粗鬆症性外傷後胸・腰椎椎体圧潰の組織学的研究

  骨 粗 鬆 症性外 傷後 椎体圧 潰の病 態と発 現機 序解明 のため 、手術 時に摘 出し た外傷 後の胸 ・腰椎 の47 体 ( 骨粗 鬆 症 性 椎 体圧 潰36椎 体、 骨 粗 鬆 症 のな い 破 裂骨 折II椎 体)を 組織学 的に検 討した 。椎 体外傷 の 修 復過 程は 、組織 所見 の変化 から、 大きく3つ に分け られた 。受 傷後2週ま で(急 性期) は、外 傷後 変 化 が 主に 観察 され、 血腫 の状態 であっ た。受 傷後3〜8週( 修復期 )では 線維 化が進 行し結 合組織 の層 が 確認 できた 。この ような 椎体 では、 マクロ ファー ジや 破骨細 胞、線 維芽細胞、骨芽細胞が活動する様子が 観察 でき、 正常骨 髄側で は新 生骨が 出現し ていた 。受 傷後2ケ月 (沈静 期)を 越えた 椎体で は、結合組織 の層 が存在 してい たが、 壊死 の吸収 や活発 な骨新 生像 のない 不活発 な組織像となっていた。骨粗鬆症椎体 の特 徴的な 所見は 、修復 期に 破骨細 胞によ る活発 な壊 死骨の 吸収が おこるため、修復期と沈静期に骨梁の ない 線維組 織の層 が形成 され ること であっ た。一 方、 骨粗鬆 症を伴 わない椎体では、骨梁のない線維組織 層は 認めな かった 。外傷 後椎 体では 、壊死 部から 正常 骨梁部 に向か って、壊死修復の時間経過を示す層状 構造 をもち 、壊死 部から 順に 壊死除 去、壊 死骨吸 収、 線維芽 細胞の 増生による線維化がおこり、残存した 正常 骨梁部 と線維 組織の 境界 では活 発な骨 新生像 があ ること がわか った。このことは、一つの椎体の中で 壊 死 の修 復に 関わる 全段 階が同 時に存 在する ことを 示し ていた 。この 変化は38週 の修復 期で最 も活 発 であ ったが 、2ケ月を 越えた 椎体で は、 組織が 安定し 、細胞 の働 きが不 活発な 像を示 してい た。このよう な椎 体では 、残存 壊死組 織や線維組織が椎体を支えられないために、二次的な圧潰がおこると考えられた。

  以上 のよう に学 位論文 内容の発表を行った。その後、副査の安田(和)教授から骨粗鬆症と線維組織層形 成の 関わり につい ての質 問が あった 。申請 者は、 線維 組織層 の形成 は、修復期において破骨細胞による壊 死骨 の吸収 が活発 におき るに も関わ らず、 骨芽細 胞に よる骨 形成が 不活発なために生じると解答した。つ ぎに 、偽関 節椎体 の位置 づけ につい ての質 問があ った 。申請 者は、 軟骨や裂腔のない線維組織層を生じた 椎体 が、圧 潰する 骨粗鬆 症椎 体の外 傷後変 化の基 本的 組織像 である としたうえで、裂腔を生じたり、軟骨 が発 生する 椎体は その亜 型で あると 考えて いる、 と解 答した 。さら に、圧潰現象の生じる部位についての 質問 があり 、壊死 部でも 線維 部でも 圧潰現 象を示 唆す る組織 所見が あったことを、検討した標本から述べ た。 次いで 副査の 阿部教 授か ら壊死 を生じ る原因 につ いての 質問が あり、検討を行った急性期の椎体では

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男 厚

明 和

浪 部

三 阿

授 授

教 教

査 査

主 副

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出 血壊 死像と なって おり、 外傷後 変化 により 壊死が 生じたと考える、と解答した。っぎに、壊死組織層残 存 の理 由につ いての 質問に は、壊 死吸 収が修 復期に 不活発であった椎体では沈静期に壊死が残存してしま う こと を、骨 梁が活 発に形 成され 壊死 組織を 残さな かった椎体と比較して、解答した。また、線維組織層 の 層状 構造の生じる理由についての質問があった。申請者は組織修復が壊死と健常部との境界で開始され、

壊 死近 傍は常 に組織 修復の 最前線 で壊 死吸収 が起こ るため、期間が経過すると健常部近くには、組織修復 が 開始 されー定期間の修後過程を経た組織が存在し、壊死近傍は常に修復の開始を示す組織像が存在する、

そ のた め、全 体とし て層状 に時間 の経 過を示 す変化 となったと考えると解答した。今後の展望についての     丶  

質 問も あり、 得られ た組織 所見を 画像 所見と 対比す ることや、多くの画像所見を検討することで、患者の     ・!

予 後判 断や治 療に直 接結び っけて いき たムと 解答し た。さらに、主査の三浪教授より、骨粗鬆症の診断根 拠 に つ い て 質問 さ れ 、DEXA施 行 例 はYAM値を 、施行 してい ない例 は骨 折の有 無と腰 椎の単 純X線写真 側 面 像で 、それ ぞれ判 断した ことを 解答 した。 骨粗鬆 症と骨折治癒の関係に関する質問があったが、骨粗鬆 症 のな かでこ のよう な圧潰 現象を 起こ す患者 はごく 一部であり、どのような骨粗鬆症患者でこのような線 維 組 織 層 を も つ 治 癒 の 過 程 を 経 る の か は 、 今 後 の 検 討 が 必 要 で あ る と 解 答 し た 。   この論 文は骨 粗鬆症 性椎 体圧潰 の病態 を知る 上で高く評価され、今後本研究の組織所見にもとづぃて、

MRIなど の画 像所見 を検討 するこ とに よって 、患者 の予後 の判断 や治 療の方針決定に大いに役立っと期待 さ れる 。

  審査員 一同は 、これ らの 成果を 高く評 価し、 大学院課程における研鑽や取得単位なども併せ、申請者が 博 士( 医学) の学位 を受け るのに 十分 な資格 を有す るもの と判 定した 。

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参照

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