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博士(医学)原田干洋 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(医学)原田干洋 学位論文題名

蝸牛交流電流刺激による耳鳴抑制の研究

―臨床応用と 動物実験との比較 検討一

   目的   学位論文内容の要旨

   耳鳴は耳科的な症状として頻度の高いものであるが、まだその治療法 は確立されていない。しかし、最近の人工内耳の研究等の中で、蝸牛電 流刺激が耳鳴を抑制することが報告され、その臨床応用が期待されてい る。そこで、蝸牛交流電流刺激が新しい耳鳴治療法として応用可能であ るか臨床的に検討した。次に、臨床研究で用いた交流電流が蝸牛神経に どの様な影響を及ぽすのか、基礎研究として、モルモットの蝸牛神経自 発放電の変化に着目して検討を行った。最後に、両者の結果を比較する ことにより、耳鳴に対する蝸牛交流電流刺激の作用機序を考察した。

   臨床研究交流電流刺激の耳鳴治療への応用

対象と方法:耳鳴を主訴として北海道大学耳鼻咽喉科を受診した患者の うち、一般的な治療方法のみでは難治性で、電流刺激による治療を希望 した34 名38 耳を対象とした。一回の治療毎にっき刺激部位は一側とし、

対象耳に鼓膜麻酔を行い鼓膜切開後、鼓室岬角に電極を当て電流刺激を 行った。刺激の強さは耳鳴が充分に抑制された時点または刺激部位の痛 みが出現する直前でとどめ、250pA を上限とした。電流刺激は二週間以 上の間隔をあけて行なった。

結果:ピッチマッチテストによる耳鳴周波数の検査および問診上では、

電流刺激により、耳鳴の周波数が小さくなる傾向が認められた。耳鳴の 強さでは治療前の耳鳴の強さは平均 17.2dB で、治療後の耳鳴の強さは平 均10.3dB と改善し、この差は、統計学的には危険率1 %以下で有意な差と なっていた。この耳鳴の改善度と、治療前の耳鳴のピッチ、聴力閾値、

罹患期間、患者の年齢等との相関は特に認められなかったが、長期に亘

る耳鳴患者に対しても充分効果が期待できることがわかった。臨床効果

を見ると 、lOdB 以上改善したものは 38 耳中 17 耳44.7 %で、 5dB 以上を

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改善 と見 ると 71.1 % であ った 。逆 にSdB ラウドネスが上昇したものが38 耳中 2 耳あ った が、 これ らの 症例 では 自覚的な耳鳴の増強は訴えていな かっ た。 アン ケート によ る自 覚的 な耳 鳴改善度は、消失したものが5 耳 13.2 %、改善したと答えたものカセ6 耳68.4 %、変らないと答えたものが6 耳15.8 % であった。耳鳴消失を含めた自覚的な改善率は80 %を越え、重 篤な 副作 用は認められなかった。したがって我々の交流電流刺激法によ る 耳 鳴 治 療 は 臨 床 的 に 充 分 有 効 な 方 法 と 考 え ら れ た 。

   基 礎 実 験蝸 牛交 流電 流刺 激が モル モッ トの 蝸牛 神経 自発 放電に 及ば す 影響

方 法: 実験 動物 には モルモットを用いた。麻酔下に蝸牛の電流刺激を行 い 、頭 蓋内 より 蝸牛 神経線維の活動電位を記録した。自発放電の変化は PST ヒ スト グラム を用 いて 解析 した 。   ‥

結 果: 交流 電流 刺激 に対する蝸牛神経自発放電の応答は、ほとんどが興 奮 性の 変化 を示 した 。

   交流 電流 刺激 によ り自発放電数の増加を認めた22 線維にっき、単一蝸 牛 神経 の放 電頻 度の 増加率を計算した。交流電流刺激時の放電頻度の増 加 率は 20 ス パイ ク/ 秒を境に自発放電頻度が小さいほど増加率が高いこ と が 明 ら か で 、 相 関 係 数 0.91 の 高 い 対 数 相 関 を 示 し た 。    同一 の線 維に おい て、閾値及ぴ放電頻度の変化率を調べたところ、刺 激 周波 数が 低い ほど 放電頻度の変化の閾値が小さい傾向があり、放電頻 度 の変 化率 も大 きい 傾向が認められた。しかし、音刺激に対して存在す る よう な、 特定 の刺 激周波数に対して閾値が非線型的に変化する現象(

特 徴 周 波 数 の 存 在 ) は 、 電 流 刺 激 に お い て は 認 め ら れ な か っ た 。    直流 電流 刺激 にお いては、正円窓を負極とする直流刺激では、自発放 電 頻度 は抑 制さ れ、 正円窓を正極とする直流刺激では、自発放電は増加 し た。 また 、電 流刺 激中の活動電位数の変化を経時的に見ると直流刺激 で は低 電流 では 自発 放電の変化が遅く現れ、高い電流になるほど自発放 電 の変 化が 早く 現れ た。

   同一 の線 維に 対し て直流刺激、及び数種類の刺激周波数で交流刺激を

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行い得たものでは活動電位放電頻度の変化の閾値は直流刺激に比べ交流 刺激時では明らかに高かった。

   自 発 放 電 数 は 電 流 刺 激 の 前 後 で 変 化 し な か っ た 。    考案

   臨床研究における結果と、基礎研究における結果を対比し、交流電流 刺激時には蝸牛神経活動電位の放電頻度は抑制されないこと、また、電 流刺激の後には蝸牛神経自発放電に変化がないにもかかわらず、臨床上 では刺激後も耳鳴抑制効果があることから、交流刺激時の耳鳴抑制は、

末梢の抑制によるのではなく、より中枢において耳鳴を抑制させたもの

と考えられた。今回の研究によって、内耳性難聴に伴う耳鳴のように末

梢の障害に起因すると思われるような耳鳴においても、耳鳴の機序の理

解には中枢聴覚系へのアプローチが今後必要になることが明らかとなっ

た。今回の研究の結果から、今後更に中枢聴覚系への解析を進めて行く

こ と が 重 要 か つ 意 義 の あ る こ と で あ る と 思 わ れ た 。

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学位論文審査の要旨

    学位論文 題名

    蝸牛交流 電流刺激による耳鳴抑制の研 究     ‐臨床応 用と動物実験との比較検討・

目的

  蝸牛交流電流刺激が耳鳴抑制に対し有効であることを示し、その機序を解明するために、

まず新しい耳鳴治療法として、蝸牛交流電流刺激が応用可能であるか臨床的に検討した。次 に、臨床研究で用いた交流電流が蝸牛神経にどの様な影響を及ぼすのか、基礎研究として、

モルモットの蝸牛神経自発放電の変化に着目して検討を行った。最後に、両者の結果を比較 す る こ と に よ り 、 耳 鳴 に 対 す る 蝸 牛 交 流 電 流 刺 激 の 作 用 機 序 を 考 察 し た 。 臨床研究交流 電流刺激の耳鳴治療への応用

  対象と方法:耳鳴を主訴として北海道大学耳鼻咽喉科を受診した患者のうち、一般的な治 療方法のみでは難治性で、電流刺激による治療を希望した34名38耳を対象とした。ー回の治 療毎にっき刺激部位は一側とし、対象耳に鼓膜麻酔を行い鼓膜切開後、鼓室岬角に電極を当 て電流刺激を行った。刺激の強さは耳鳴が充分に抑制された時点または刺激部位の痛みが出 現する直前で とどめ、250 pAを上限とした 。電流刺激は二週間以上の間隔をあけて行なっ た。

  結果:ピッ チマッチテストによる耳鳴の 周波数の検査および問診上では、電流刺激によ り、耳鳴の周波数が小さくなる傾向が認められた。耳鳴の強さでは治療前の耳鳴の強さは平 均17.2dBで、 治療後の耳鳴の強さは平均10.3dBと改善し、この差は、統計学的には危険率1

%以下で有意な差となっていた。この耳鳴の改善度と、治療前の耳鳴のピッチ、聴力閾値、

罹患期間、患者の年齢等との相関は特に認められなかったが、長期に亘る耳鳴患者に対して も充分効果が期待できることがわかった。臨床効果を見ると、lOdB以上改善したものは38耳 中17耳44.7%、5dB以上を改善と見ると71.1%に変化が認められた。また逆にSdBラウドネス が上昇したも のが38耳中2耳あったが、これらの症例では自覚的な耳鳴の増強は訴えていな かった。アン ケートによる自覚的な耳鳴改善度は、消失したものが5耳13.2%、改善したと

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夫 道

征 正

山 藤

犬 加

授 授

教 教

査 査

主 副

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答えたものが26耳6814%、変らないと答えたものが6耳15.8%であった。耳鳴消失を含めた 改善率は80%を越え、盈篤な副作用は認められなかった。従って我々の交流電流刺激法によ る耳鳴治療は臨床的に充分有効な方法と考えられた。

基 礎 実 験 蝸 牛 交 流 電 流 刺 激 が モ ル モ ッ ト の 蝸 牛 神 経 自 発 放 電 に 及 ば す 影 響   方法:実験動物にはモルモットを用いた。麻酔下に蝸牛の電流刺激を行い、頭蓋内より蝸 牛神経線維の活動電位を記録した。自発放電の変化はPSTヒストグラムを用いて解析した。

  結 果:交流 電流刺激に対する蝸牛神経自発放電の応答は、ほとんどが興術性変化を示し た。交流電流刺激により自発放電数の増加を認めた22線維にっき、単一蝸牛神経の放電頻度 の増加率を計算した。交流電流刺激時の放電頻度の増加率は20スバイク/秒を境に自発放電 頻度が小さいほど増加率が高いことが明らかで、相関係数0.91の高い対数相関を示した。同 一の線維において、閾値及び放電頻度の変化率を調べたところ、個々の線維でみると刺激周 波数が低いほど放電頻度の変化の閥値が小さい傾向があり、放電頻度の変化率も大きい傾向 が認められた。しかし、音刺激に対して存在するような、特定の刺激周波数に対して閏値が 非線型的に変化する現象(特徴周波数の存在)は、電流刺激においては認められなかった。

単一線維での電流刺激の前後での自発放電数に変化はなかった。

  考案

  臨床研究における結果と、基礎研究における結果を対比し、交流電流刺激時には蝸牛神経 活動電位の放電頻度は抑制されないこと、また、電流刺激の後には蝸牛7111経自発放電に変化 がないにもかかわらず、臨床上では刺激後も耳鳴抑制効果があることから、交流刺激時の耳 鳴抑制は、末梢の抑制によるのではなく、より中枢において耳鳴を抑制させたものと考えら れた。今回の研究の結果から、内耳性難聴に伴う耳鳴のように末梢の障害に起因すると思わ れるような耳鳴においても、中枢聴覚系の理解が今後必要になることが叨らかとなった。そ して、今後更に中枢聴覚系への解析を進めて行くことが重要かつ意義のあることであると思 われた。

  口頭発表に当り、加藤教授より電流刺激時に蝸牛神経内の遠心性線維を刺激した作用によ る影響の可能性にっき質問がなされた。また金田教授より頚部外傷後に生ずる耳f!eに対する 治療の可能性について、田代教授より耳鳴の原疾患、ならびに今後の中枢に対する研究の可 能性について、斎藤和雄教授より治療の効果持続期間および治療後の耳鳴の再発について質 問がなされたが申請者は適切な解答をした。また副査の加藤、金田両教授には個別の審査を 受け合格と判定された。

  以上、本研究は交流電流による耳鳴治療にっき臨床及び基礎の両面から検討したもので、

耳鳴治療並びに耳鳴の病因解明に大きく寄与するものである。よって博士(医学)の学位授 与に十分値するものと判定される。

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参照

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