博士(獣医学)岩見由生彦 学位論文題名
イヌの自血球に対するモノクローナル抗体の作出と
フローサイトメト1J ーおよび免疫組織化学による反応性の検討
学位論文内容の要旨
モノ ク ロー ナ ル 抗体 の 作 製技 術 が開 発されて 以来、免 疫担当細 胞の表面抗 原を 認 識 する 多 くの モ ノ クロ ー ナル 抗 体 が作製さ れ、マウ スやヒト の免疫系の 解析に 用 い られ て きた 。 近 年、 小 型の 実 験 動物以外 でも、ウ マ、反芻 動物、ゾタ などの 大 型 動物 の 自血 球 に 対す る 抗体 が 作 製され、 免疫系の 解析が進 められてい る。イ ヌ は 獣医 学 的に 重 要 な動 物 のー つ で あるが、 その免疫 系に関す る基礎的な 研究は 十 分 では な い。 本 研 究の 目 的は 、 フ ローサイ トメトリ ーおよび 免疫組織化 学に有 用 な イヌ 自 血球 表 面 抗原 に 対す る モ ノクロー ナル抗体 を作製し 、イヌの免 疫系の 解析を行うことである。
2匹のBALB/cマウスに イヌの胸 腺細胞とフ口イント完全アジュバ.ントからなるエ マ ル ジョ ン を皮 下 接 種し た 。16週 間後 、イヌの 末梢血か ら分離し た白血球を 静脈 内および腹腔内に投与して追加免疫を行った。4目後にマウスのJMi臓からJJ印ネtIl胞を 調 製 し、 定 法に 従 っ てマ ウ スミ エ ロ ーマ 細 胞 株(P3Ul) と 細 胞融 合 を行ってハ イ ブリ ドーマを 作出した 。ゴロニー を形成し たウェル の培養上ijliについて、フロー サ イ ト メ ト リ ー(FCM)によ る 一 次ス ク リー ニ ン グを 行 い 、169個 のハ イ ブ リド ー マ中 、末梢血 自血球と 反応を示す ものが99個 認められ た。主としてりンバ系糸ln胞 あ る いは 非リンパ 系ネm胞の いずれか 一方と反 応する抗 体を産生 しているハ イブリ ド ー マ を 選 択 し 、 免 疫 組 織 化 学 に よ る 二 次 ス ク リ ー ニ ン グ を 行 っ た 。 第I章で 取 り上 げ た169.1抗 体は 、FCMに よ る スク リ ーニ ン グ で主 に非リ ンパ球 と 反 応し 、 免疫 組 織 化学 で は胸 腺 の 上皮性細 網細胞お よび胖臓 の莢組織で 陽性反 応 を 示す も ので あ っ た。 こ の抗 体 を 用いて、 免疫系、 神経系を はじめとし た全身 の 主 要 な 臓 器 に おい て 抗体 陽 性 細胞 の 分布 を 免 疫組 織 化学 に よ り検 索 し た。 ま た 、 免疫 組 織化 学 で 最も 強 い陽 性 反 応が得ら れた耳下 腺からの 組織抽出抗 原を用 い て 、 免 疫 ブ ロ ッ テ イ ン グ 法 に よ る 認 識 抗 原 分 子 量 の 解 析 を 行 っ た 。
169.1抗 体 ( マ ウ スIgM)は、FCMに よる 解 析で は り ンバ 球 集 団と は 反応 せ ず 、 非 リ ン パ球 集 団 と反 応 を示 し た 。非 リ ンパ 球 集団の 中で最も 強く反応 した細胞群 は 、 プ ラス チ ッ クシ ヤ ーレ 処 理 によ っ て完 全 に除去 され、側 方散乱光 の強度がり ン パ 球 よ り や や 強 い こ と から 単 球 であ る と考 え ら れる 。 一方 、 免 疫組 織 化 学で は、胸腺の上皮性荊1網糸IiI)K!、Jj印臓の莢組織、耳下腺の導管系などの上皮組織およ び 末梢ネl垂l経系ニューロンの細胞質に反応が認められたが、組織中の単球・マクロ フ ァ ー ジ系 の 細 胞に陽性 反応は認 められな かった。169.1抗体の認 識分子量 は48お よび52kDaであった。
以 上の所見 より、169.1抗 体は限ら れた細J胞 に含まれ 、細胞形態 の維持に関係し て い る 抗原 を 認 識す る と考 え ら れた 。 また 胸 腺の上 皮性細網 細胞が特 異的に染色 さ れ る 一方 で 、 胸腺 内 にこ の 陽 性細 網 細胞 を 欠く特 殊な領域 の存在す ることが分 かった。
第H章 で は 、FCMに よ る ス クリ ー ニ ング で 主に り ン パ球 集 団と 反 応 し、 免 疫 組 織 化 学 でも り ン パ球に陽 性反応が 認められ る抗体(59.4抗 体)を選 択して性 状解析 を 進 め た。 胸 腺 、末 梢 血お よ び 脾臓 か ら分 離 し た自 血 球に つ い て単 染 色FCM解析 を 行 う とと も に 、末 梢 血リ ン パ 球に つ いて は59.4抗 体と 市 販抗 体 ( 抗Thy‑l、 抗 CD4お よ び抗CD8抗 体) を 用い た 二 重染 色FCM解 析 を 行っ た 。免 疫 組 織化 学 では 、 胸 腺および 脾臓にお ける59.4陽性 キ田胞の 分布を検 索し、胸腺 の連続切片に対して 59.4抗 体、上記の市販抗体.および抗サイトケラチン抗体を用いた免疫染色を施して 比ll5cした。
検 索の 結 果 、FCMで の59.4抗 体 ( マウ スIgGl)と り ン パ球 の 反応 性 は 螢光 強度 の 迎 い によ っ て3段階に分 けること ができた 。胸腺の りンパ球 は弱ある いは中等度 に 陽性を示 した。末 梢血およ び鵬!臓 のりンパ 球は中等度 陽性群と 強陽性群に分け ら れ た 。末 梢 血 ルン バ 球に 対 す る二 重 染色FCM解析によ って、CD8陽 性細胞は59.4 強 陽 性 集団 に 含 まれるこ と、CD4陽性 細胞の半 数が中等 度陽性細 胞に含ま れること が 分かった 。59.4抗体を 用いた胸 腺の免疫 組織化学 では、陽性 細胞は主に胸腺髄質 に 認 め ら れ た 。 一 部 の 陽 性リ ン パ 球は 胸 腺の 皮 髄 境界 付 近に 集 塊 を形 成 し てお り 、 こ の部 位 は 第I章 で 述 べた 細 網 細胞 を 欠く 領 域 と一 致 して い た 。牌 臓 では辺 縁 ; お ¥ か ら 赤 腓 髄 に か け て 強 陽 性 を 示 す り ン パ 球 が 散 在 し て い た 。 以 上の 所 見 より 、59.4抗体が 認識する 抗原は、 胸腺内で 比較的分 化の進ん だTリ ン バ 球 で発 現 し 始め 、 末梢 リ ン パ組 織 内で り ンバ球 が成熟あ るいは活 性化すると 発現量がより多くなると考えられ.る。
学 位 論 文 審 査の 要 旨 主 査 教 授 岩 永 敏 彦 副 査 教 授 橋 本 晃 副 査 教 授 小 沼 操 副 査 助 教 授 橋 本 善 春
学 位 論 文 題 名
イヌの自血球に対するモノクローナル抗体の作出と
フローサイトメト1J ーおよび免疫組織化学による反応性の検討
免 疫 担 当 細 胞 の 表 面 抗 原 を 認 識 す る モ ノ ク ロ ー ナ ル 抗 体 が 多 数 作 製 さ れ 、 様 々 な 動 物 の 免 疫 系 の 解 析 に 用 い ら れ て い る が 、 イ ヌ の 免 疫 系 に 関 すIる 基 礎 的 な 研 究 は 十 分 で な い 。 申 請 者 は 、 フ ロ ー サ イ ト メ ト リ ー(FCM)お よ び 免 疫 組 織 化 学 に 有 用 な 自 血 球 に 対 す る モ ノ ク ロ ー ナ ル 抗 体 を 独 自 に 作 製 し 、 イ ヌ の 免 疫 系 の 解 析 を 行 っ た 。 イ ヌ の 胸 腺 細 胞 を マ ウ ス に 免 疫 し て 得 ら れ た169個 の ハ イ ブ リ ド ー マ 中 、 末 梢 血 自 血 球 と 反 応 す る も の が99個 認 め ら れ た 。 こ の 中 か ら り ン バ 球 系 細 胞 に 反 応 す る も の と 非 リ ン ノ ヾ 球 系 細 胞 に 反 応 す る も の を ー つ ず つ 選 択 し 、FCMと 免 疫 組 織 化 学 に よ る 検 索 を 行 つ た 。
第I章 で 取 り あ げ た169.1抗 体 ( マ ウ スIgM)は 、FCMに よ る 解 析 で は 、 非 リ ン パ 球 集 団 と 反 応 し た 。 最 も 強 く 反 応 し た 細 胞 群 は プ ラ ス チ ッ ク シ ャ ー レ 処 理 に よ っ て 完 全 に 除 去 さ れ 、 側 方 散 乱 光 の 強 度 が り ン パ 球 よ り や や 強 い こ と か ら 単 球 で あ る と 考 え ら れ た 。 一 方 、 免 疫 組 織 化 学 で は 、 胸 腺 の 上 皮 性 細 網 細 胞 、 表 皮 、 耳 下 腺 の 導 管 系 な ど の 上 皮 組 織 、 お よ び 末 梢 神 経 系 ニ ュ ー ロ ン の 細 胞 質 に 陽 性 反 応 が 認 め ら れ 、 細 胞 形 態 の 維 持 に 関 係 し て い る 抗 原 を 認 識 し て い る と 考 え ら れ た が 、 組 織 中 の 単 球 ・ マ ク ロ フ ァ ー ジ 系 の 細 胞 に は 陽 性 反 応 は 認 め ら れ な か っ た 。169.1抗 体 の 認 識 抗 原 分 子 量 は48お よ ぴ52kDaで あ っ た 。
第 皿 章 で は 、 主 に り ン バ 球 集 団 と 反 応 す る59.4抗 体 ( マ ウ スIgGl) を 取 り あ げ た 。 FCMに よ る 解 析 で 、 胸 腺 の り ン パ 球 は 弱 あ る ぃ は 中 等 度 に 陽 性 を 示 し た 。 末 梢 血 お よ び 脾 臓 の り ン パ 球 は 中 等 度 陽 性 群 と 強 陽 性 群 に 分 け ら れ た 。 末 梢 血 リ ン パ 球 に 対 す る 二 重 染 色FCMに よ り 、CD8陽 性 細 胞 は59.4強 陽 性 集 団 に 含 ま れ る こ と 、CD4陽 性 細 胞 の 半 数 が 中 等 度 に 陽 性 を 示 す こ と が 明 ら か に な っ た 。 胸 腺 の 免 疫 組 織 化 学 で は 、 陽 性 細 胞 は 主 に 胸 腺 髄 質 に 認 め ら れ た 。 ま た 、 胸 腺 の 皮 髄 境 界 付 近 に 細 網 細 胞 を 欠 く 特 殊 な 領 域 が 存 在 し 、 こ の 領 域 の り ン パ 球 が59.4抗 体 に 選 択 的 に 反 応 す る こ と が 示 さ れ た 。 脾 臓 で は 、 辺 縁 帯 か ら 赤 脾 髄 に か け て 強 陽 性 を 示 す り ン パ 球 が 散 在 し て い た 。59.4抗 体 が 認 識 す る 抗 原 は 、 胸 腺 内 で 比 較 的 分 化 の 進 ん だTリ ン パ 球 で 発 現 し 始 め 、 末 梢 リ ン パ 組 織 内 で り
ン パ 球 が 成 熟 あ る い は 活 ´ 性 化す る と 発 現 量 が よ り 多 く な ると 考 え ら れ た 。
以上のように、申請者は、イヌの白血球に対するモノクローナル抗体を作製し、
FCM