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博 士 ( 獣 医 学 ) 石 古 博 昭 学 位 論 文 題 名

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博 士 ( 獣 医 学 ) 石 古 博 昭

学 位 論 文 題 名

コ ク サ ッ キ ー ウ イ ル ス A24 型 の 変 異 株 に よ る 急 性 出 血 性 結 膜 炎 の 分 子 疫学 的 研 究

― 世 界 に お け る 伝 播 と 日 本 へ の 進 入 経 路 ―

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

   ̄ コク サ ッキ ーウ イ ルスA24型 変異 株(CA24v) は1960年後 半 にジ ャワ 島 で突 然発 生 した 急性 出 血 性 結 膜 炎 (Acute hemorrhagic conjunctivitis,AHC)の病 原 ウイ ルス で あっ て1970年に シン ガポ ー ルの 流行 で 初め て患 者 から 分離 さ れた 。本 ウ イル スに よ るAHCの流 行は そ の出 現以 来, 東南 ア ジア とイ ン ド亜 大陸に限局し てほぼ数年間隔で 繰り返されてきた 。しかし,1985年以 降こ れら の 地域 で第4次流 行 が発 生す る と同 時に 台湾,日 本,中国,ガーナ や中央アメリカなど にも伝播し,世 界的流行の様相を呈 するに至った。

  本 研 究 で は ,1970年 以 降 世 界 各 地 で 分 離 さ れ た 多 数 のCA24vに っ い て ゲ ノ ムRNAの3Cプ 口 テ イ ナ ー ゼ(3Cp… ) 領 域の 塩 基配 列の 決 定を 行な っ た。 次い で 各株 間の 塩 基配 列を 比 較し て系 統樹 を 作成 し,CA24vの 出現 時期 を 推定 する と とも に, 本 ウイ ルス の 陛界 的な 伝 播経 路と 日本への進入経 路を検討した。

  まず,1970〜  1989年の問に世界 各地(シンガポ―ル,夕イ,台湾,中国,パキスタン,ガーナ)

でAHC患 者 か ら 分 離 さ れ た28株 お よ び 日 本 で 分 離 さ れ た4株 を 用 い , ゲ ノ ムRNAの3C゛ ′ 。 領 域 の 全 領 域549塩 基 の 塩 基 配 列 を 決 定 し た 。 す な わ ち , ウ イ ル スRNAを 鋳 型 にcDNAを 合 成 し ,3C″ 。 の 全 領 域 を 含 む674塩 基 をPolymerase Chain Reaction(PCR)法 に よ っ て 増 幅 し た 。 こ の 増 幅DNA断 片 をM13mpllベ ク タ ー で サ ブ ク 口 ― ニ ン グ し た後 , サン ガ一 法 によ り塩 基配 列 を決 定し た 。そ の結 果 ,過 去20年 間に 世界 各 地で 分離 さ れた32株の3C t'o領域には 塩基 の欠 損 また は挿 入 がま ったく見られ なかった。また, これらの分離株の 塩基配列を最初に分 離 さ れ た1970年 のCA24vの 塩 基 配 列 と 比 較 し た とこ ろ ,1970年 以 降の 株で1ま3Cp…領 域 の塩 基に 総数119座 位 の置 換が 認 めら れた 。 さら にこ れ らの 塩基 置 換は コド ンの第3位で圧倒的に多 く,119座位中101座位を占めていた 。

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  一 方, アミ ノ 酸置 換は 総 アミ ノ酸183座 位 中13座位 で認められたのみで あった。このよう にア ミ ノ 酸置 換を 伴 わな い塩 基 置換 (同 義 置換 )が 多 数生じている ことから,3C゛′D領域には 極め て 強 い機 能制 約 が働 いて い ることが 示唆された。また ,13座位ものアミノ 酸置換が認められ なが ら プ ロ テ ア ー ゼ 活 性 の 発 現 が ま っ た く 損 な わ れ てい な こと から , これ らの ア ミノ 酸置 換 は3 C r。遺 伝子 が コー ドす る 酵素 蛋白 質 の構 造や 機 能を 解析 す る上 で有 用 であると考えられ た。

  各 分離 株の 系 統関 係を 検 討す るた め に, まず 特 定の分離株(1975年のシ ンガポール株)か らの 各 分 離株 の遺 伝 的距 離(d´ ´)と各 分離株の分離年月 との間で回帰分析を 行なって塩基置換 速度

( 進 化速 度) を 求め た。 そ の結 果,3C灯。 領域 の 置換速度は3.7x i0‑/ 塩基/年と算定さ れ,

先 にEV70のVPI領 域 の 比 較 によ っ て算 定さ れ た3.8xi0‑。/ 塩基 / 年(Takeda et al.,1992) と ほぼ等しいことが判 明した。

  次 に分 離ウイルス32株の うち同一流行から得 られた分離株を除 いた25株を用い,d´´ 分 離年 月 お よ び 塩 基 置 換 速 度 を も と に , 平 均 距 離 法(Unweighted Pairwise Grouping Method of Arithmetic Average,UPGMA)に よ っ て 系 統 樹 を 作 成 し た 。 そ の 結 果 , 供試 され た すべ ての 分 離 株は 共通 の 祖先 株か ら 由来して いることが明らか になった。また,本 ウイルスの出現時 期は 1963年11月か ら +―21ケ 月 と計算さ れた。系統樹から ,これらのウイルス は1970〜1971年分 離株 群 ,1975年分 離 株群 およ び1985‑‑‑1989年分離 株群の3群に大別された。さ らに,1985〜1989年の 世 界 的流 行に 際 して 分離 さ れた株は すべて1981年頃に 同一株から分岐した ウイルスであるこ とが 明 らかとなった。これ ら1985〜  1989年 分離株群はさらに1985年シンガポ―ル株―1986年中国株群,

1985〜1986年 台 湾株 一日 本 株群,1987年ガーナ株群,1986年イスラマバー ド株群および1987年以 降 の 各地 の 分離 株群 の5群 に 分類 され た 。こ れら の 結果 より ,1985‑‑‑1989年 のAHCの 世界 的流 行 は , 流 行 に 先 立 ち ,1981〜1983年 の 間に 同一 株 から 順次5群に 分 岐し たCA24vの 系 統が それ ぞ れ 別 々 に 異 な る 地 域 に 導 入さ れた こ とに よっ て 引き 起こ さ れた こと が 明ら かに ナ ょっ た。

  CA24vは1985〜  1986年 ,1988年お よび1989年 の3回 にわ た って 日本 に 侵入 し, 流 行し た。

CA24vの日 本へ の 侵入 経路 と 国内 伝播 に っい て解 析 する ため に ,日 本株16株の うち 先 に塩 基配 列 の 決定 さ れた4株を 除く12株に っい て3 Cproの 塩 基配 列を 決 定し た。 日 本の 各分 離 株間 の塩 基 配列を比較した結果 ,同じ流行で分離 された日本の分離 株間の塩基配列は互 いに近似していた。

1986年の 神奈 川 株間 ,1986年の和歌 山株と徳島株間,1988年の千葉株間お よび1989年の干葉 株間 の 塩基配列は同一であ った。しかし,分 離年度が異ナょる 日本の分離株間の塩 基配列は明らかに相 違 し ,む しろ 同 じ年 の国 外 の分 離株 に 近似 して い た。系統解析 法により,日本の 分離株は3群に 分 類 され た。 す なわ ち第1群は1985‑‑‑1986年の冲繩県 と他県の散発例から の分離株である。 これ

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ら は同年 の台 湾での 分離株 と同じ 群に属 して いた。 また,1985年と1986年に2年 連続し て分離 さ れ た 冲 縄の 流 行 株 の 間 では塩 基配列 の相違 はわず か1個所に 過ぎ なかっ た。第2群 は1988年 の千 葉 県の流 行で 分離さ れた2株で あって ,これ らは1987年のシ ンガ ポール 株や1988年の北 京株お よ び 香 港 株と 同 じ 群 に 属 してい た。第3群 は1989年 に千葉 県の流 行で分 離さ れた7株で ある。 これ らの 分離 株は1988年の台 湾株お よび1988年のシ ンガポ ール 株と同 じ群に 属していた。1989年の千 葉株 はす べて1988年の台 湾・シ ンガポ ール株 と同 一系統 であっ て,1988年の千葉株とは別系統で あ っ た 。こ れ ら の 結 果 から , 日 本 に おけ る3回 のCA24vの伝 播 は , ウイ ルスが 日本 国内に おい て継 代さ れたも のでは なく, それぞれ別途に海外から導入された株によることが明らかとなった。

  本 研究 は ,CA24vが1963年11月 か ら 土21ケ 月 に出 現し, 分離株 はすべ てこの 単一 起源の ウイ ル ス か ら進 化 し た も の であ る こ と , さら に1981年頃 に生じ た単一 株の子 孫が1985年以降 のAHC の 世 界 的流 行 を 引 き 起 こし た こ と を 明ら か に し た 。ま た , 日 本 にお ける 過去3回のCA24vによ るAHCの 流 行 の 分 子疫 学 的 解 析 では1985年 と1986年 の2年 間 冲縄 で 連 続して 発生し た流 行が同 一 系 統 のウ イ ル ス に よ って い た の を 除け ば , 日本 国内で のCA24vの伝 播は比 較的短 期間で 終つ て い た こと が 判 明 し た 。し か し ,CA24vは 数年 毎に 流行を 繰り 返して いるた め,日 本およ び世 界各 地に 散布さ れたウ イルス がそ れぞれ 土着し ,変異 して流 行を 惹き起 す可能性があるために今 後の 動向 か注目 される 。

  CA24vは 分離 株 間 の 系 統関 係 , 疫 学 的記 録 や 分離株 の性 状など に関し てそれ ぞれ 詳しく 報告 がな され ている ので, これら を相 互に比 較する ことに よって ,自 然界に おける分子進化の研究材 料 と し て他 に 例 を み な いほ ど の 利 点 を持 つ 。 従っ て,こ こに示 した 各CA24v分離株 の塩基 配列 の 比 較 とCA24v分 子 進 化に 関 す る 知 見は エ ン テ ロ ウイ ル ス の み な らず , 一 般 のRNAウ イ ルス 遺伝 子の 塩基配 列パタ ーンや 分子 進化の 解析の ための 基礎資 料と なるも のと恩われる。さらに,

これ らの 成績は 自然界 におけ るウ イルス ゲノム の存続 と病原 性獲 得に至 る機序を解析するための 有用 な情 報を含 んでい るもの と考 えられ る。

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学位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教 授 教 授 教 授 助教授

橋本 佐藤 小沼 喜田

信 夫 文 昭     操     宏

  コ ク サ ッ キ ー ウ イ ル スA24型 変 異 株(CA24v) に よ る 急 性 出 血 性 結 膜 炎 (AHC)は1969年 ジ ャワ 島 で最 初に 出 現し て以 来 ,長 く東南アジアとイ ンドで流行が繰り返 されてきた。しか し,

1985年 以降,本病tまこれらの地域 から台湾,日本, 中国,ガーナや中央アメリカなどにも伝播し,

世界流 行の様相を呈する に至っている。

  本 論 文 は ,1970年 以 降 世 界 各 地 で 分 離 さ れ た44株 のCA24vに っ い て ゲ ノ ムRNAの3Cプ 口 テ ナ ー ゼ (3Cp′ 。 ) 領 域 の 塩 基 配列 を比 較 し,CA24vの出 現 時期 と日 本 への 侵入 経 路を 検討 したも ので邦文76頁から なり,参考論文6編を付して いる。

  ま ず ,CA24vの 各分 離株 間 の塩 基置 換 の回 帰分 析 を行 って 塩 基置 換速 度 (進 化速 度 )を 求め た とこ ろ ,3Cp′。 領域の置換速度は3,7xi0‑/塩基/ 年と算定された。ま た,平均距離法に よっ て 作 成 さ れ た系 統樹 か ら,CA24vは1963年11月か ら 土21ケ月 に 発生 した 単 一の 祖先 よ り進 化し て き た も の であ り, し かも1985〜1989年のAHC世 界 流行 時に 各 国で 分離 さ れた ウイ ル スは すべ て1981年 頃に 派生 し た単 一株 の 子孫 であることが明ら かとなった。一方, 日本では1985年か ら19 89年 ま で にCA24vに よ るAHCの 流 行 が3回 発 生 し た 。 国 内 外 の 分 離 株 を 系 統 解 析 し た 結 果 , 同 じ流 行 から 得ら れ た国 内の 分 離株 の塩基配列は互い に近似していたが, 分離年度の異なる 株間 で は塩 基 配列 が相 違 し, むし ろ 同じ 年の国外の分離株 に近似していた。こ れらの成績から, 日本 に お け る3回の 流 行は ,そ れ ぞれ 別々 に 海外 から 導 入さ れた 株 によ って い たこ とが 判 明し た。

以 上 の よ う に , 申 請 者 はCA24vに よ るAHCの 流 行 に っ い て 分 子 疫 学 的 解 析 を 行い , 多く の新 知見を もたらした。これ らの成績は,ウイル ス学,―疫学や公衆衛生学に寄与するところが大きい。

よって 審査員一同は石古 博昭氏が博士(獣医 学)の学位を受け るに充分ナょ資格 を有するものと認 める。

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