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博士(獣医学)福岡 隆 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(獣医学)福岡   隆 学位論文題名

   Role of Outer Membrane Protein OprD        in the Activities of Carbapenem Antibiotics against Pseudornonas aer ひginosa

(緑膿菌に対するカルバペネム系抗生物質の抗菌活性における     OprD外膜蛋白の役割)

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  緑膿菌(Pscudomon 1saeruginosa)感染症は難治性であり,臨床 上最も問題となっている感染症の1つである。グラム陰性菌の外 膜には数種類の親水性物質の透過孔が存在する。緑膿菌の外膜透 過孔は他のグラム陰性菌の透過孔よりも薬剤に対する透過性が低 いので,緑膿菌は多くの抗生物質に対して高度自然耐性を示す。

そのため,緑膿菌感染症に対して十分な治療効果を示す抗生物質 は少ない。カ丿レバペネム系抗生物質は,新しい母核をもつp‑ラ クタム剤であり,従来の抗生物質と比較して多くの菌種に対して 強い抗菌カをもち,緑膿菌感染症に対しても優れた治療効果を示 す。

  本論文は,新規カルノヾペネム系抗生物質panipcncm (PAPM) の抗緑膿菌活性を特に外膜透過性の面から検討し,緑膿菌感染症 に対するカルノヾペネム系抗生物質の作用機構について得られた新 知見を述べたものである。

1. PAPMのOprD透過孔 を介した緑膿菌外膜透過性および抗緑 膿菌作用機構

  カ ル バ ベ ネ ム 系 抗 生 物 質imipcncm (IPM)は 外 膜 蛋 白 で あ る     I

OprDの 透 過 孔 を 介 し て 緑 膿 菌 外 膜 を 透 過 す る が , セ フ ウ ム 系 お

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よびぺニシリン系抗生物質は他の経路を透過すると考えられてい る 。PAPMは ,IPMに 次い で 世界 で2番 目に開発さ れた新規カル バ ペネム系抗生物 質であり,多くの菌 種に対してIPMとほぼ同 等 の優 れた 抗 菌カ を示 す 。緑 膿菌 標 準株PA01およびそのOprD 蛋白欠損 変異株を用いて,PAPMのOprD透過孔を介した緑膿菌、

外 膜 透 過 性 お よ び 抗 緑 膿 菌 作 用 機 構 に つ い て 検 討 し た 。

・PA01株 に 対 す るPAPMの 最 少 発 育 阻 止 濃 度(MIC)は6.25 yg/mlで ,IPMより も4倍 ,セ フ ェム 系抗 生物質ccf tazidirne (CAZ)よ り も2倍 ,そ の効 果 が劣 って いたが ,ペニシリン系抗 生物質piperacillin (PIPC)とは同等であった。OprD蛋白欠損変 異 株に 対す るPAPMお よ びIPMの 効果 は ,親株と比較して4か.

ら8倍 劣 っ て い た 。PA01株 お よ びOprD蛋 白 欠 損 変 異 株 へ の

[14C] PAPMの取り込み量を測定したところ,OprD蛋白欠損変異 株の方がPA01株よ りも有意に取り込み量が少なかった。これら の こ と か ら ,PAPMはIPMと 同様 にOprD透 過孔 を 介し て緑 膿 菌 外 膜 を 透 過 し , 抗 菌 活 性 を 示 す と 考 え ら れ た 。   PAPMの 抗緑 膿 菌作 用機 構 につ いて 調べる ため,PAOl株を用 い て 細 胞 壁 合 成 酵 素(PBPs)に 対 す るPAPMの 親 和 性 およ び 菌 形態に与 える影響について 検討した。p‑ラクタム剤は,内膜上 に存在す る数種類のPBPsに結合し,細胞壁合成を阻害すること により抗菌カを示すことが知られている。[14C] penicillinGと PBPsの結合を50°/。阻害する薬剤濃度から薬剤のPBPsに対する 結 合親和性を求め たところ,いずれの 薬剤もPBPIAには親 和性 を 示 し た が ,CAZおよ びPIPCは 隔 壁形 成に 関 与す るPBP3に 対 して高い 親和性を示したの に対し,PAPMは仲張開始に関与する PBP2に対して高い 親和性を示した。走査型電子顕微鏡により薬 剤作用時の菌の形態を観察すると,これら薬剤の作用を反映して CAZまたはPIPC作用時には 菌が著しく仲張化 した像が観察され たが,PAPM作用時 には菌が球形化または溶菌した像が多く観察 された。

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  以上 の こと から,PAPMは ,OprD透過 孔を介 して緑 膿菌外 膜 を透過 し, 内膜上 の特にPBPIAおよびPBP2に結合して菌の細胞 壁合成を阻害することにより,抗菌カを示すことが明らかとなっ た。

2.アミノ酸濃度が低い培地中におけるカルノヾペネム系抗生物質 の抗緑膿菌活性の上昇

  低 栄 養性 の培地 であ る最少 培地中 におけ る緑 膿菌に 対する PAPMの抗菌カを測定したところ,カルノヾペネム系抗生物質は Mucller‑Hinton培地(MH培地) のような感受性測定標準培地中 よりも強い抗緑膿菌活性を示すことを見いだした。この4幾キ雛を,

PA01株 およ びOprD蛋白 欠損変 異株を 用いて 外膜 透過性 の而か ら検討した。

  カルノヾベネム系抗生物質の抗菌カに影響を与えている培地成分 について調べるため,最少培地にMH培地の成分を添加して抗菌 カを測定したところ,最少培地に塩基性アミノ酸を添加すると,

PA01株に対する抗菌カが濃度依存的に低下することがI蛔らかと なった。しかし,OprD蛋白欠損変異株は影響を受けなかった。

  [14C] PAPMを用 いて ,緑膿 菌のPAPM取り込み量に対する塩 基性アミノ酸の影響について検討した。塩基性アミノ酸・(リジ ン )はPA01株の [14C] PAPM取 り込みを阻害したが,OprD蛋白 欠 損株の 取り込 みに は影響 を与えなかった。PAPMやIPMは塩基 性アミノ酸と構造が類似していることから,OprD透過孔を介し たこれらの薬剤の透過が塩基性アミノ酸によって競合的に阻害さ れると考えられた。

以上のことから,最少培地のような塩基性アミノ酸濃度が低い 培地中では,カルノヾベネム系抗生物質はOprD透過孔を介する透 過が阻害されないので強い抗緑膿菌活性を示すと考えられた。

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3.カルノヾペネム系抗生物質の而vivo抗緑膿菌活性における OprD透過孔の役割

  ヒト血清のような体液はMFI培地のような感受性測定標準培地 に 比べて塩基性アミノ酸濃度が1/40以下と低いので,m 'vivo においてカルノヾペネム系抗生物質は最少培地中と同様に強い抗緑 膿菌活性を示すと考えられた。そこで,緑膿菌に対するカルバペ ネム系抗生物質の体液中の抗菌カおよびi ivivo抗菌活性につい て検討した。

  非 働 化 し たヒ トおよ びマウ ス血清 ,マウ ス腹 水を用 いて,

PA01株 お よ びOprD蛋 白 欠 損変 異 株 に 対 するPAPM,IPMおよ.

びCAZの体液中の抗菌カを測定し,MH培地中の抗菌カと比l113(

した。PA01株に対するこれら体液中のカルノヾベネム系抗生物質 の 抗 菌 カ は ,MH培 地 中 よ りも4か ら32倍 強か っ た 。ま た,体 液に塩基性アミノ酸を添加することにより,抗菌カは減弱した。

臨 床 分 離 株12株 に つ い て も 同 様 な 検 討を 行 な っ た とこ ろ , PA01株と同様であった。一方,OprD蛋白欠損変興株では,塩怒 性 ア ミ ノ 酸 に よ る 抗 菌 カ の 変 化 は 認 め ら れ な か っ た 。   緑膿菌によるマウス全身感染症に対する薬剤の治療効果と´n vitro抗菌カとの関係について検討した結果,カルノヾペネム系抗生 物質は他のp‑ラクタム剤に比べて優れた治療効粟を示し,その効 果 はMH培地中の抗菌カよりもマウス血清中の抗菌カとよく相関 した。

  以上のことから,カルバペネム系抗生物質は而vivoにおいて も 最少培地中と同様にOprD透過孔を介して外膜を透過し,強い 抗緑膿菌活性を示すと考えられた。

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学位論文審査の要旨 主査. 教授    清水悠紀臣 副 査    教 授    中 里 幸 和 副 査    教 授    藤 田 正 一 副 査    教 授    小 沼    操

学 位 論 文 題 名

Role of Outer Membrane Protein OprD in the Activities of Carbapenem Antibiotlcs againstPseudomonas aeruginosa

(緑 膿菌に対するカルバベネム系抗生 物質の抗菌活性におけるO prD外膜蛋白の役割)

  緑膿 菌の 外 膜透 過孔 は他 のグ ラム 陰性 菌のそれに比べて薬剤が透過し難いため、有効 な抗生 物質が少なぃ。、しかし、カルバベネム系抗生物質は、 他の抗生物質に比べて抗菌 カが強 く、緑膿菌感染症に対しても治療効果がある。

  本 論 文 は 新 規 カ ル バ ベ ネ ム 系 抗 生 物 質panipenemPAPM) の 抗 緑 膿 菌 活 性 の 作 用 機構に ついて検討し、次のような新しい知見を得た。

  1.  PA PMは 外 膜 蛋 白 で あ るOprDの 透 過 孔 を 介 し て 緑 膿 菌 外 膜 を 通 過 し 、 内 膜 上 に 存 在 す る PBPIA PBP2に 結 合 す る 。 PBPIAは 細 胞 壁 合 成 に 、 ま た PBP2は 菌 の 伸 長 開 始 に 関 与 す る 酵 素 で あ る こ と か ら 、PAPMが 菌 に 作 用 す る と 球 形 化 ま た は 溶 菌 し 、 そ れ がPAPMの 抗 菌 作 用 で あ る こ と を 明 ら か に し た 。   2. PAPMの 緑 膿 菌 に 対 す る 抗 菌 カ は 塩 基 性 ア ミ ノ 酸 濃 度 の 低 い 最 少 培 地 で 測 定 し た ほ う が 、 感 受 性 測 定 標 準 培 地 で あ るMuellerHinton培地 で測 定す るよ り も強 かっ た 。 ‥C標 識PAPMを 用 い て 緑 膿 菌 の 取 り 込 み に 及 ぼ す 塩 基 性 ア ミ ノ 酸 の 影 響 を 調 ぺ た と こ ろ 、 同 ア ミ ノ 酸 は 、 〇prD透 過 孔 を 介 す る 透 過 を 阻 害 す る こ と を 明 ら か に し た。

  3. In vivoに お け るPAPMの 緑 膿 菌 に 対 す る 抗 菌 機 構 を 明 ら か に す る た め 、 血 清 と体液 中での抗菌丿丿を調べるとともにマウスの全身感染症に 対する治療効果を調ぺた。

そ の 結 果 、PAPMの マ ウ ス の 全 身 感 染 症 に 対 す る 治 療 効 果 はMuel ler一Hinton培 地で 測 定し た抗 菌 カよ りも マウ ス血 清中 の抗 菌カ と相 関し 、作 用機 序はin vivo.におぃて も亜vitroと同様であることが明ら かになった。

  以 上 、 本 論 文 で は 、 新 し く 開 発 さ れ た カ ル バ ベ ネ ム 系 抗 生 物 質PAPMの 緑 膿菌 に対 す る抗 菌機 構 を明らかにし、抗生物質の評価に新しI、方向を与えた。よって著者は博士

(獣医 学)の学位を授与される資格があるものと認めた。

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参照

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