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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 医 学 ) 米 谷 圭 史

    

学位 論文題名

Angiotensin‑converting enzyme gene polymorphism in Japanese patients with hypertrophic cardiomyopathy

(肥 大型心筋 症症例に おけるア ンジオテン シン変換酵素遺伝子多型性の検討)

学位論文内容の要旨

  

緒言。 近年、肥 大型心筋 症が多発 した家系の 解析により、ミオシン重鎖遺伝子変異を有 する症 例の存在 が報告さ れ、心筋 細胞サルコ メアを構成するタンパク質の異常が心筋肥大 の原因 となりう ることが 明らかと なった。ま た左室心筋肥大は、高血圧症、大動脈弁狭窄 症など圧負荷があると発生し、その機序としてcatecholamine,angiotensin IIなどの液性因子 や伸展 刺激等に よる細胞 増殖作用 が明らかに されつっある。しかしその一方で、血圧正常 ながら びまん性 左室心筋 肥大を呈 する症例や 、家系内発症を認めない肥大型心筋症弧発症 例も存 在する。 また圧負 荷による 左室心筋肥 大においても、アンジオテンシン変換酵素阻 害薬に よる肥大 の退縮は 降圧効果 と相関しな いとの報告もあり、心肥大発症機序の多様性 を示し ていると 考えられ る。アン ジオテンシ ン変換酵 素(ACE)は、レ ニン・ア ンジオテン シン系 を調節す る因子の ーっとし て重要な位 置を占め ている。

1990

年、血清

ACE

レベルは

ACE

遺伝 子 自 体、 す なわ ち

ACE

遺伝 子

I/D

多 型 に より 半ば規定 されている とぃうこ とが報 告 され た の を契 機 に、ACED遺 伝子と心 疾患との 関連をし めす報告が 相次いで なされた 。 これら の疾患や 現象は、ACEの作用で生成したangiotensin IIによる、心筋・血管平滑筋そ の他の 増殖作用 との関係 で説明さ れる。血清

ACE

レベルと 同様、局 所レニン ・アンジオテ ン シン 系 に おい て も、

ACE

遺 伝子

I/D

多型 に よ り組 織ACE活性 が規定され ている可 能性が ある。 以上のこ と踏まえ 、我々は アンジオテ ンシン変換酵素遺伝子と左室心筋肥大との関 連を明 らかにす るため、 家族性を 含む肥大型 心筋症症例においてアンジオテンシン変換酵 素遺伝子多型性を検討した。

  

方法 。対象は 北海道大 学医学部 附属病院 循環器内科にて心エコー図検査を施行し肥大型 心筋 症と診断 した患者

80

例、及び その健常 家族88例、計

168

例。肥大 型心筋症 の診断は、

病歴 、理学所 見より心 筋肥大を 呈する他 の疾患を除外し、心エコー図法上、心室中隔、心 尖部 、あるい は左室自 由壁に局 在する肥 大を呈するものとした。ただし、びまん性肥大を 呈し ても、基 礎疾患が 既往上も 検査所見 上も全く認められない場合、肥大型心筋症に含め た 。 これ ら を 同一 家 系内 複 数 発症 の 認め る 家 族性

HCM

群(FHCM群) と 家 系内 発症 の認め な い 孤発 性

HCM

群(SHCM群 ) に わけ 、 それ ぞ れ の群 の う ち心 エ コー 図 上 異常 所見 を認め な い 正 常 者 を 一 群 に ま と め た 。 以 上 の 「 全

HCM

患 者 群 (全

HCM

群) 」 、 「FHCM群 」 、

SHCM

群 」、 「 家族 歴 を 有す る 正 常詳

(Controls)

」の間 でACE I/D型を検 討した。 ゆ型 の 判 定は 末 梢 血か ら ゲノ ム

DNA

を抽 出 し判 定 に 用いた 。PCR反応は

Rigat

らの方法に 従っ た 。 統 計 解 析 は 先 に 述 べ た

4

群 の 間 で 、

ACE

遺 伝 子 多 型 の

DD

型 .

ID

型 .

II

型 それ ぞ れ に属 する人数 を調ペ、

3

通りのgenotypeの 出現比率 のパターン を比較し た。統計手法とし て は

X2

検 定 を用 い 、5010の危険 率で群間 の独立性 を検定し た。年齢 、収縮期血 圧、拡張 期 血 圧 、 平 均 左 室 最 大 璧 厚 に つ い て は 、 分 散 分 析 に よ る 群 間 比 較 を 行 っ た 。

(2)

  結果。「全HCM群」「FHCM群」「SHCM群」「Controls」の4群の年齢、収縮期血圧、

拡張 期 血圧 の 平 均値 は 有意 差 を認 め なか っ た。 ま た「 全HCM群」、 「FHCM詳」、

「SHCM群」の3群間では左室最大壁厚の平均値に有意差を認めなかった。「全HCM詳」

における 肥大様式は 非対称性中 隔肥大が全 体の約85%を占めた。また肥大様式は、

「FHCM群」と「SHCM群」との間で有意な偏りを認めず、ACE遺伝子型との間にも特異 的な偏りは認めなかった。対象の168例はすぺてDD、ID、IIいずれかのgenotypeを示した。

総計ではDD型30例、ID型69例、II型69例であり、Dアレル出現頻度は0.38であった。

全HCM群 と正常群間 でgenotype出現パ夕一 ンを比較すると、「全HCM群」でID型の頻 度、Dアレルの頻度が高く、統計学上有意差を認めた。これによりHCMとACE遺伝子の 関連が示された。家族性と弧発例の検討では、「FHCM群」と「Controls」との比較で ACE遺伝子型出現パターンに有意差を認めることはできなかったのに対し、「SHCM群」

と「Controls」との比較では、「SHCM群」でID型の割合が高く、Dアレルの頻度を多く 認めた。

  考察。本研究で考察した二点を示す。一点目はDアレルが欧米諸国の報告よりも有意に 低かったこと。ACE遺伝子と心疾患との関連は、急性心筋梗塞症、拡張型心筋症、心電 図診断による左室肥大、HCMの突然死などが報告されている。これらは欧米諸国の報告 で、Dアレルの出現頻度が0.54〜0.58の間であった。今回の結果ではDアレル頻度が0.38 となり、欧米諸国の報告と比ベ明かな低値を示した。他の日本人を対象にACE遺伝子多 型を調べた報告においても、Dアレル出現頻度は0.32〜0.39の間であり、I/Dアレル頻度 に人種間或いは地域差のあることが疑われる。しかし多くの報告において、疾患群でのD allele頻度がコントロール群より有意差を持って高く、Dアレル(またはDD genotype)が 異 な る 人 種 間 で も 共 通 の 心 疾 患 危 険 因 子 で あ る 可 能 性 を 示 し て い る 。   考察の二点目はHCM、特に弧発例でDアレル頻度が高かったことである。本研究では、

HCM弧発例でDアレルの高い傾向が顕著に現れたことを初めて示した。Dアレ少を持つ場 合のOdds ratioは、FHCMは正常群と比較して遺伝子型に偏りがないのに比し、全HCMで はDアレルを有した場合の約2倍、SHCMでは約3倍となった。

  家族性HCMについては、その発症原因としてミオシン重鎖、トロポニン、トロポミオ シンなどサルコメアを構成する蛋白質の異常が明らかとなってきている。しかし、弧発 性HCMについては、一部家族性HCMと同様に構造蛋白質をコードする遺伝子のjerm line における点突然変異に起因するものが報告されているものの、大部分は原因が不明であ り、圧負荷による左室肥大(LVH)との形態的差異も明らかではない。既に心電図基準に よるLVHについては、L¥rHのないものに比しDアレル頻度が高かったとの報告があり、

弧 発 性HCMに つ い て の 調 査 で も 同 様 の 傾 向 を 示 す 可 能 性 は 充 分 考 え ら れ た 。   今回我々が、断層心エコ一図記録によりHCMと診断した患者jこおいて、特に弧発性 HCM群でDallele頻 度が高いこ とを証明し たことは、家族性HCM以外の、弧発性HCMを 含む心肥大の発症・進展において、ACEの関与がある可能性を示したものである。この こと は、弧発性HCMと、圧負荷などによる二次的なLVHとの間に一部overlapする症例 が存在することを示しているものと考えられた。

  結論。アンジオテンシン変換酵素遺伝子は、肥大型心筋症の発症・進展に関連があると 考えられた。

(3)

学位論文審査の要旨

    学 位論 文題 名

Angiotensin‑converting enzyme gene polymorphism in Japanese patients with hypertrophic cardiomyopathy の巴大 型心筋症症例におけるアンジオテンシン変換酵素遺伝子多型性の検討)

  近年 、肥 大型 心筋症が多発した家系の解析により、p‑ミオシン重鎖遺伝子変異を有する症例 の 存在 が報 告さ れ、心筋細胞サルコメアを構成するタンパク質の異常が心筋肥大の原因となり う るこ とが 明ら かとなった。また、左室心筋肥大は、高血圧症、大動脈弁狭窄症などの圧負荷 があると発生し、その機序としてcatecholamine,anglotensinIIなどの液性因子や伸展刺激等によ る 細胞 増殖 作用 が明らかにされつっある。しかしその一方で、血圧正常ながらびまん性左室心 筋 肥大 を呈 する 症例や、家系内発症を認めない肥大型心筋症弧発例、更には家系内発症を認め な がら 現時 点で は遺伝子変異をとらえられない症例も存在する。また、圧負荷による左室心筋 肥 大に おい ても 、アンジオテンシン変換酵素阻害薬による肥大の退縮は降圧効果と相関しない と の 報 告 も あ り 、 心 肥 大 発 症 機 序 の 多 様 性 を 示 し て い る と 考 え ら れ る 。   アン ジオ テン シン 変換 酵素(ACE)は 、レ ニン・アンジオテンシン系を調節する因子のーつ と し て 重 要 な 位置を 占め てい る。1990年、 血清ACEレ ベル はACE遺 伝子 自体、 すな わちACE遺 伝 子Iゆ 多型 によ り半 ば規 定さ れて いる とぃ うことが報告されたのを契機に、以後ACED遺伝子 と 心疾 患と の関 連を しめ す報告 が相 次い でな された。これらの疾患や現象は、ACEの作用で生 成したangiotensinIIによる、心筋・血管平滑筋その他の増殖作用との関係で説明される。血清 ACEレベ ルと 同様 、局 所レ ニン ・ア ンジ オテ ンシン系においても、ACE遺伝子Iゆ多型により組 織ACE活性が規定されている可能性がある。

  以上 のこ と踏 まえ、申請者はアンジオテンシン変換酵素遺伝子と左室心筋肥大との関連を明 ら かに する ため 、家族性を含む肥大型心筋症症例においてアンジオテンシン変換酵素遺伝子多 型(ACEgeneI/Dpolymo叩msm)を検討した。

  対象 は北 海道 大学医学部附属病院循環器内科にて心エコー図検査を施行し肥大型心筋症と診 断 した 患者80例 、及 ぴそ の健常 家族88例 、計168例。肥大型心筋症の診断は、病歴、理学所見

和 秀

義 慶

上 田

川 安

授 授

教 教

査 査

主 副

(4)

  より心筋肥大を呈する他の疾患を除外し、心エコー図法上、心室中隔、心尖部、あるいは左室   自由壁に局在する肥大を呈するものとした。ただし、びまん性肥大を呈しても、基礎疾患が既   往上も検査所見上も全く認められない場合、肥大型心筋症に含めた。これらを同一家系内複数   発 症 の認 め る家 族 性HCM群(FHCMs)と家系内 発症の認め ない孤発性HCM群(SHCMs)にわけ   た。以上の 「全HCM患者群(HCMs)」、「FHCMs」、「SHCMs」、「 家族歴を有 する正常群   (Controls)」の間でACE I/D型を検討した。I/D型の判定は末梢血からゲノムDNAを抽出し判定   に用いた。PCR反応はRigatらの方法に従った。統計解析は先に述べた4群の間で、ACE遺伝   子多型のDD型.ID型.II型それぞれに属する人数を調ベ、3通りのgenotypeの出現比率のパ   ターンを比較した。統計手法としてはX2検定を用い、5%の危険率で群間の独立性を検定し   た。年齢、収縮期血圧、拡張期血圧、平均左室最大璧厚については、Kruskal‑Wallis検定による   群間比較を行った。

    その結果、「HCMs」「FHCMs」「SHCMs」「Controls」の4群の年齢、収縮期血圧、拡張期   血圧は有意 差を認めな かった。また「HCMs」、「FHCMs」、「SHCMs」の3群間では左室最   大璧厚に有意差を認めなかった。「HCMs」における肥大様式は非対称性中隔肥大(ASH)が全体   の約85%を占めた。また肥大様式は、「FHCMs」と「SHCMs」との間で有意な偏りを認めず、

  ACE遺伝子型との間にも特異的な偏りは認めなかった。対象の168例はすぺてDD、ID、IIいず   れかの遺伝子型を示した。全例ではDD型30例、ID型69例、II型69例であり、Dアレル出現頻   度は0.38であった。HCMsとControls間でgenotype出現バターンを比較すると、HCMsでID型   の頻度、Dアレルの頻度が高く、X2検定による有意差を認めた。FHCMsとControlsとの比較で   はACE遺伝子型出現バターンに有意差を認めることはできず、SHCMsとControlsとの比較では、

  SHCMsで、Dアレルの頻度を有意に多く認めた。

    多変量解析では、年齢.  ACED遺伝子が肥大の有意な危険因子であった。また、ACE遺伝子   多型が病態に影響を与える機序について、ACE遺伝子の多型部位近傍に存在するスプライス異   常が関与する可能性を示した。

,  口頭発表において、副査の安田慶秀教授から、コントロール群の設定についての質問がなさ   れ、続いて家族性肥大型心筋症についての浸透率、多変量解析の結果の年齢要因の意義、高血   圧性左室肥大との関連、人種差の意義についての質問があった。続いて副査の北畠顕教授より、

  孤発性の発症におけるD遺伝子の意義、治療への応用の可能性について質問があった。最後に、

  主査の川上義和教授より、人種差におけるD遺伝子の頻度と肥大型心筋症発症率の関係につい   て、予後との関係についての質問があり、ACE遺伝子型とサルコイドーシスについての示唆が   あった。以上の質間に対し申請者は、研究結果と文献的見解とから、概ね妥当と思われる回答   をおこなった。

    本研究は肥大型心筋症、特に孤発例の発症にアンジオテンシン変換酵素遺伝子が関与してい   ることを明らかにした点においてその意義は大きく、また研究者として誠実かつ熱心であり、

  審査員一同 は協議の結 果、申請者 が博士(医 学)の学位授与に値するものと判定した。

    ―196―

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