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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 理 学 ) 中 野    張

     学位論文題名

Optimal hedging in the presence of shortf ・ a11riSk    (ショートフオールリスクが存在する場合の最適ヘッジング)

学位論文内容の要旨

  一 般 の金 融 市 場モ デ ル にお い て 、す べ て の条件 付請求権Hが 優複製可 能であ ることはよく知られている。すなわち、(Xtx 7r)o≦t≦Tを初期資産がxで、取引戦 略が(7rt)O<tくTのポートフォリオの価値確率過程とするとき、確率1でXヂ >

Hと な る 初 期 資 産XHと 取 引 戦 略71‑Hが存 在 す る。 し か し、 与 え られ た 初 期資 産zが ロの優複 製コス トXHよりも 小さい 時には、 各戦略7rに対し、 ロ冫冫弓 とな る 確 率が 正 になる 。この ような状 況をシ ョートフ オール( 赤字) リスクが 存在 す る とい う 。ショ ートフ オールを 考慮し た場合の へッジン グの問 題は、単 期間 モ デ ルに お いては 、マー コピッツ の平均 ―分散理 論の発展 形とし て70年代 後半 か ら 研究 さ れてい たが、 多期間ま たは連 続時間モ デルに対 しては 、確率過 程論の枠 組みの 中で、Follmer‑Leukert (Finance Stoch.,1999,2000)などによ り近年盛んに研究されるようになうた。

  こ の よう な 流 れを受け て、本 論文では ショー トフオー ルリス ク存在下 におけ る投資戦略決定の問題を以下の3部に分けて論じる:

  I. Efficient hedging with coherent risk measure

 II. Minimizing coherent risk measures of shortfall in discrete‑time models      with cone constraints

III.  Minimization of shortfall risk in a jump‑diffusion model   Follmer―Leukertにおいて はショ ートフオ ールのりスク尺度はショートフオー ル の 実数 値 凸 関数 の 期 待値 に よ って 定 義 され てい る。第1部で は、Artzner et al. (Math. Finance,1999)にお いて導入 されたCoherent Risk Measure (CRM) と 呼 ばれ る り スク 尺 度 を用 い る 。こ れ は 、適 当 な 確率 変 数 の 空間 の 上 の汎関 数 で あり 、 経 済学 の見 地から望 ましい 性質によ って公 理的に定 義され る。現在 実 務 で広 く 使 われ てい るVaR(Value−atーrisk)の欠点 を補うCVaR(Conditional Value―at−risk)がCRMの代 表 的 な例 で あ る 。一 般 のCRMを ショ ー ト フオ ール の り ス ク 尺 度 と し て 用 い た の は 本 研 究 が 初 め て で あ る と 思 わ れ る 。   考え る 金 融市 場 はセミ マルチ ンゲール モデルに よって 記述され るとし 、取引 コス トなどの 市場の 摩擦要因 は考慮し ない。pを工1(Q,ア ,P) 上のCRMとし、

(2)

確率制御問題

    minp(−max(0,ローi署 ))

    汀

としてショートフオールルスク最小化問題を定式化する。次に、解析の基礎と して、可積分確率変数の空間11(Q,ア,P)上のCRMに対する表現定理を証明 する。これ は適当な 連続性を もつCRMを、ある確率測度の族に関する期待値 のsupとして表すものである。この結果は工oo(Q,ゲ,P)やぴ(Q)アjP)に対し ては既に知られていたが、L1(g2,ア,P)のような空間で理論を展開した方が解 析の都合が良いと考えたためである。この表現定理を用いて基本的な解の存在 定理を証明する。また、特殊な設定において、Neyman−Pearsonの補題を使っ て具体的な最適解を構成する。

  第2部 では 、 第1部 に続いて、CRMによるシ ョートフ オールル スク最小 化 問題を考察する。金融市場は取引戦略に制約を課した離散時間モデルとし、第 1部のアプ口ーチをより発展させる。この問題に対しては従来の確率制御の手 法が適用できない所が難しい点である。凸解析の常套手段に従い、元の問題を その双対問題へ帰着させるというのが基本的な方針である。双対ギャップがな いことを示すために、Cvitanic→Karatzas (Bernoulli,2001)による議論の拡張 を用いる。これは非線型関数解析の結果を応用する抽象的な議論であるが、こ の 方 法 に よ り 、 最 適 解 の 構 成 の 理 論 的 な 手 順 が 明 ら か に さ れ る 。   Follmer‑Leukertの論文では、市場モデルが完備と呼ばれる性質を満たす場 合に、最適な最終富の明示的表現が与えられている。しかし、この最終富を構 成する投資戦略を具体的に求めることは一般には難しい。第3部では、完備市 場のひとつの例であるj ump‑diffusionモデルに対して、Follmer―Leukertと同 様のショートフオールリスク最小化問題について研究する。戦略の集合をより 解析に適した形に定義し直した上で、最適解が、夕ーゲットの完全ヘッジング の戦略とある効用最小化問題の解戦略の差で表せるという数学的にきれいな形 の定理を証明する。これはりスク最小化戦略の具体的な構成を実現した数少な い結果のうちのーつであると言える。

(3)

学位論文審査の要旨

     学位論文題名

Optimal hedging in the presence of short 随11risk

( シ ョ ー ト フ オ ー ル リ ス ク が 存 在 す る 場 合 の 最 適 ヘ ッ ジ ン グ )

  一般の金融市場モデルにおいて,すべての条件付請求権は優複製可能である.しかし,与えら れた初期資産が優複製コストよりも小さぃ時には,いかなる投資戦略に対しても,ショートフオ ール(赤字)の起こる確率は正になる.ショートフオールを考慮した場合の最適^ッジングの問題 は,単期間モデルにおいては,マーコビッツの平均_分散理論の発展形として1970年代後半から 研究されていた.近年,多期間または連続時間モデルに対しても,同じ問題が,確率過程論の枠組 みの中で,盛んに研究されている.しかし,このテーマには,リスク尺度の選択や空売り等の種々 の 制 約 に 関 す る も の な ど , 今 後 の 発 展 が 待 た れ て い る 多 く の 事 柄 が あ る .   本論文は,このような現況にあるショートフオールリスク存在下における最適^ッジングの問 題について,いくっかの新しい観点でもって,より現実的な,従ってより難しい設定に対して.理 論的な深い考察を行っている.内容は大きく3部に分かれる.

  第1部では,リスク尺度として,Coherent Risk Measure(略してCRM)と呼ばれるりスク尺度 を用いる.これは,現在実務で広く使われているVaR (Value at Risk)の欠点を補うことを目的に・

Artzner等によって導入された新しいりスク尺度で,経済学の見地から望ましい性質によって公

理的に定義される.一般のCRMをショートフオールのりスク尺 度として用いたのは本研究が初 めてである.解析の基礎として, 著者は,可積分確率変数の空間上のCRMに対する表現定理を証 明する.そして,この表現定理を用いて基本的な解の存在定理を証明する.また,特別な場合には,

Neyman‑Pearsonの補題を用いて具体的に最適解を構成する.

  第2部では,第1部に続いて,CRMによるショートフオールリ スク最小化問題を扱うが,金融 市場モデルとしては,取引戦略に制約を課した離散時間モデルを考察する.そして,この場合に,

著者は第1部のアプローチをより発展させる.この設定では,取り引き戦略に対する制約のため に,従来の確率制御の手法が適用できなぃという難しさがある.著者は,まず,凸解析の常套手段 に従い,元の問題をその双対問題ヘ帰着させる.そして,非線型関数解析の結果を応用する抽象 的な議論により,双対ギャップがないことを示す,この方法により,最適解の構成の理論的な手

124

郎 一

一 秀

上 田

保 上

津 神

授 授

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教  

  教

助 教

教 助

査 査

査 査

主 副

副 副

(4)

J慣が明らかにされる.

  第3部では,上のようなCoherent Risk Measureによるものではなく,実数値凸関数の期待値 という古典的なりスク尺度によるショートフオールリスク最小化問題を,完備市場のひとつの例 であるjumpーdifrusionモデルに対して考察する.完備市場においては,この問題の最適解は存在 することは分かっても.それを構成する投資戦略を具体的に求めることは,一般に難しい.ところ が著者は.戦略の集合をより解析に適した形に定義し直した上で,そのような最適解をある効用最 小化問題の解戦略の差として,具体的に構成してみせた.これは,リスク最小化戦略の具体的な構 成を実現した数少ない結果として価値がある.

  これは要するに,著者は,ショートフオールリスク最小化問題についての新知見を得たもので あり,数理ファイナンスに貢献するところ大なるものがある.

  よっ て, 著者 は, 北海 道大 学博 士( 理学 )の 学 位を 授与 される資格あるものと認める.

125 ‑

参照

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