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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 医 学 ) 道 鎭 明 晴

    

学位 論文題 名

  

mmunostained CathepsinsBandLCorrelate with Depth of Invasion and Different IvIetastatic     Pathways in Early Stage Gastric Carcinoma

(免疫染色法によるカテプシンB およびL の発現と、

早期の胃癌における深達度及び転移経路との関連)

学位論文内容の要旨

【背景・目的】近年鏡視下治療の進歩などに伴い,胃癌に対して低侵襲手術が行われるよ うになってきている.しかしながら早期の段階で治療しても経過観察中に転移を認める症 例もあり,治療法選択のためにも癌の浸潤転移に関する予測因子の検索がますます重要と なってきている.癌の進行過程において,細胞外マトリックス,基底膜,血管壁等の周囲 組織の破壊に種々の蛋白分解酵素が関与している.カテプシンB とカテプシンL はともに システインプ口テアーゼに分類され,生理的にはライソゾーム内で細胞内蛋白の異化に加 担しているが,細胞の腫瘍化と共に細胞外に分泌され,周囲組織の破壊に関与しているこ とが知られている.これまでいくっかのヒト腫瘍組織でその産生,分泌が亢進しているこ とが報告されており,さらにカテプシンB に関してはその発現が大腸癌や肺癌の予後に影 響するとの報告もある,また乳癌において,カテプシンB ,L と同様なライソゾーム酵素に 含まれるカテプシンD は予後因子のーっと考えられてきている.胃癌についてもカテプシ ンB ,L の発現亢進が報告されているものの,進行症例を中心とした検討が多く,その臨床 的意義についても明らかにはなっていない.そこで比較的早期の胃癌におけるカテプシン

B

,L の発現における臨床的意義を検討することにより,カテプシンB ,L の発現が予後因子 となりうるか否かを検討した,

【対象・方法】北海道大学医学部附属病院第1 外科にて切除された胃癌51 症例51 病変を 対象とした.癌の浸潤範囲は粘膜下層まで達するもの(sm 癌)38 病変,固有筋層まで達 するもの(mp 癌)13 病変であり,全症例手術時には遠隔転移は認めず,UICC 分類でstage

II

までの比較的早期の病変である.これら51 病変の,ホルマリン固定バラフィン包埋切片 を用いて,ABC 法で免疫染色を行なった.1 次抗体はカテプシンB ,カテプシンL ともに 抗ヒトのポリク口ーナル抗体を使用し,DAB で発色した.染色強度の判定方法は,ランダ ムに癌細胞を1 ,000 個カウントし,その中の染色陽性細胞の比率により,カテプシンB ,カ テブシンL について各群17 例ずつ均等にそれぞれ,陰性,弱陽性,強陽性の

3

群に分類 した.染色の強度すなわち各カテプシンの発現レベルと,胃癌の組織型,深達度,リンバ 管浸襲,静脈侵襲及びりンバ節転移の有無との関係を検討した.統計はMann ーlrVhitneyU テストを用い,P 値

0.05

未満を有意とした.

【結果】1 )カテプシンB ,

L

ともに周囲の正常組織はほとんど染色されず,主に腫瘍組織

(2)

に 染色 を認 めた .さ らに 腫瘍 内部で もり ンバ球など正常細胞の染色頻度は低かった.癌細 胞 の各 群で の染 色陽 性比 率は ,カテ プシ ンBでは陰性群が0−48%,弱陽性群が51−87%,

強 陽性 群が88100% であ り, カテ プシ ンLでは各々0―33%,35−71%,73ー100%であっ た ,2) 胃癌 組織 での カテ プシ ンBの 発現 と,組織型,静脈侵襲,リンバ節転移との関係は 認 め な か っ た が, 深達 度に 関し てはsm癌 よりmp癌で より 強い 発現 を認 めくpく0.05),ま たりンバ管侵襲に関しても,侵襲陰性例(34例)より侵襲陽性例(17例)で強しゝ発現を認めた くpく0.05).3)カテプシンLは,組織型,リンバ管侵襲,リンバ節転移との関係は認めなか っ た が , 深 達 度 に 関 し て , カ テ プ シ ンBと 同 様 にsm癌 よ りmp癌 に 強 い 発 現 を 認 め た

(pく0.05),さらに静脈侵襲に関して侵襲陰性例(46例)より侵襲陽性例(5例)で強い発現を認 めたQく0.05),

【 考 察 】 本 研 究は シス テイ ンプ ロテ アー ゼで あるカ テプ シンB, カテ プシ ンLの 胃癌 にお け る臨 床的 意義 を検 討し たも のであ る. 一般にプ口テアーゼは不活性前駆体で細胞より分 泌 され ,種 々の 蛋白 分解 酵素 及び内 因性 酵素阻害物質による複雑なカスケードで酵素活性 が 調節 され てい る. その ため システ イン プ口テアーゼの組織内での蛋白分解能の測定は困 難 と考 えら れて いる .今 回の 研究は ,ポ リク口ーナル抗体を使用した免疫染色法であるた め ,プ 口テ アー ゼの 酵素 活性 を直接 測定 したものではなく,腫瘍細胞のプロテアーゼ産生 能 を評 価し たも ので ある とい える, これ までも過去に異なる評価法である酵素活性法及び ELISAに より ,胃 癌組 織で カテ プシ ンBLの 発現 が正 常組 織より 亢進 していることは報告 さ れて いた .今 回施 行し た免 疫染色 法は 半定量法ではあるが,これらの結果と一致した,

ま たプ 口テ アー ゼの 発現 程度 と癌の 進行 度との関係は,いまだ一定の見解が得られていな い . 今 回 の 研 究 で , カ テ プ シ ンBLの 発 現 程度 はsm癌 のmp癌 へ の 進 展 と の間 に正 の相 関 を示 し, 早期 の胃 癌の 進行 に関係 する こと が示 され た, さら にカ テプシンBはりンパ管 侵 襲陰 性例 より 陽性 例で 強い 発現を 認め ,カ テプ シンLで は静脈 侵襲 陰性例より陽性例で 強 い 発 現 を 認 めた こと より ,カ テプ シンBはり ンバ 行性 転移 に, カテ プシ ンLは 血行 性転 移 に関 与す る可 能性 が示 唆さ れる. 血管 壁にはその構成成分としてエラスチンからなる弾 性 繊維 が含 まれ てお り, 強固 なバリ アー を形 成し てい る. カテ プシ ンLのエラスチン分解 能 がカ テプ シンBより100倍以 上高い とい う基礎研究報告があり`,この基質特異性の相違 が 転移 様式 の相 違の 原因 にな ってい る可 能性が考えられる.これまで本研究のように特定 の プ口 テア ーゼの発現と転移様式との関係を示した報告tまなく,今後腫瘍の発育進展にお け るプ 口テ アー ゼそ れぞ れの 意義に つい て更なる研究が期待される.本邦では早期の胃癌 に 対し て, 胃切 除及 び所 属リ ンバ節 郭清 術が標準的治療であったが,術後の生活の質等を 考 慮す ると 低侵 襲の 治療 が望 ましい .実 際近年では早期の胃癌に対して鏡視下治療が行わ れ るよ うに なっ てき てい る. しかし なが ら縮小治療の適応決定のためには,これまで以上 に 転移 に関 与す る因 子の 検索 が重要 とな る.本研究の対象であるカテプシンB,Lの発現も 転 移予 測因 子の ーつ とな る可 能性が ある ものと考えられる.また術前,術中腫瘍組織のカ テ プシ ンの 発現 を調 べる こと により ,縮 小手術の適応を選択する要素となると共に,カテ プ シンLが強 く発 現し てい る腫 瘍に は術 後の 化学 療法 を追 加する とい った,治療法選択の 一助となる可能性についても示唆される.

【 結 語 】 カ テ プ シ ンBLと も にsm癌 よ りmp癌で 多 く 発 現 し て い る こ と よ り, カテ プシ ンB,Lの発 現は 早期 胃癌 から 進行胃 癌へ の進 展に 関与 して いる .ま たカテプシンBの発現 は りン バ管 侵襲 と, カテ プシ ンLの 発現 は静 脈侵 襲と 相関 するこ とよ り,両者は異なるル ートの転移に関与している可能性が示唆される.今後胃癌組織のカテプシンの発現検索は,

治療法の選択因子のーつになりうるものと期待される.

(3)

学 位 論 文 審 査 の 要旨

    

学位論文題名

  

mmunostained CathepsinsBandLCorrelate with Depth of Invasion and Different IVIetastatic     Pathw aysln Early Stage Gastric Carclnoma     

(免疫染色法によるカテプシンB およぴL の発現と、

    

早期の胃癌における深達度及び転移経路との関連)

  

近年胃癌に対して低侵襲手術が盛んに行われているが,早期の段階で治療しても転移のた めに死亡する例があり,治療法選択のためにも癌の浸潤転移に関する予測因子の検索がます ます重要となっている.癌の進行の過程において,カテプシンを含め種々の蛋白分解酵素の 関与が知られている.カテプシンB とカテプシンL はともに腫瘍化に伴い細胞外に分泌され,

周囲組織の破壊に関与していることが知られている.ヒト腫瘍組織においても産生及び分泌 が亢進していることが報告されているが,進行症例を対象としたものが多く,またその臨床 的意義についても明らかではない.そこで申請者は,比較的早期の胃癌におけるカテプシン

B

及び

L

の発現の臨床病理学的意義を検討することにより,これらの発現が予後因子となり うるか否かを検討した.

  

対象は遠隔転移は認めない胃癌51 症例で,癌の浸潤が粘膜下層まで達するもの(sm 癌)

が38 例,固有筋層まで達するもの(mp 癌)が13 例であった.これらのホルマリン固定パ ラフィン包埋切片を用いて,ABC 法で免疫染色を行なった.1 次抗体はカテプシンB ,カテ プシンL ともに抗ヒトのポリク口一ナル抗体を使用し,DAB で発色した.染色強度の判定 方法は,無作為に癌細胞を1 ,000 個カウントし,その中の染色陽性細胞の比率により,カテ プシンB ,カテプシンL についてそれぞれ,陰性,弱陽性,強陽性の3 群に,各群均等に分 類した,染色の強度すなわち各カテプシンの発現レベルと,胃癌の深達度,組織型,リンバ 管 浸 襲 , 静 脈 侵 襲 及 び り ン バ 節 転 移 の 有 無 と の 関 係 を 検 討 し た ・

  

カテプシンB 及びL ともに周囲の正常組織はほとんど染色されず,主に腫瘍組織に染色を 認めた,さらに腫瘍内部でも正常問質細胞の染色頻度は低かった.これまでも過去に異なる 評価法である酵素活性法及びELISA により,胃癌組織でカテプシンB 及びL の発現が正常 組織より亢進していることは報告されていた.今回施行した免疫染色法は半定量法ではある が,これらの結果と一致した.

  

胃癌組織でのカテプシンB の発現と,組織型,静脈侵襲,1 」ンパ節転移との関係は認めな

正 正

西

(4)

か っ た が , 深 達 度 に 関 し てはsm癌 よりmp癌 でよ り強 い発 現を 認め ,ま たり ンバ管 侵襲 に 関しても,侵襲陰性例(34例)より侵襲陽性例(17例)で強い発現を認めた.また,カテプシン Lは ,組織型,リンパ管侵襲,1」ンバ節転移との関係は認めなかったが,深達度に関して,

カ テ プ シ ンBと 同 様 にsm癌 よ りmp癌 に 強 い 発 現 を 認 め た. さ ら に 静脈 侵襲 に関し て侵 襲 陰性例(46例)より侵襲陽性例(5例)で強い発現を認めた,

  プ 口テアーゼの発現程度と癌の進行度との関係は,いまだ一定の見解が得られていない.

今 回 の 研 究 で カ テ プ シ ンB及 びLと も に, そ の 発 現 程 度 はsm癌 か らmp癌 へ の 進 展 と の 間 に正 の相関を示し,早期胃癌から進行胃癌への進展に関与していることが示された.またさ らに カテ プシ ンBはり ンパ管 侵襲 陰性 例よ り陽 性例 で強 い発 現を認め,カテプシンLでは静 脈侵 襲陰 性例 より 陽性 例で 強い 発現を認めたことより,カテプシンBはりンバ行性転移に,

カテ プシ ンLは血 行性 転移に 関与 する可能性が示唆される.血管壁に含まれるエラスチンに 対し ,カ テプ シンLは カテプ シンBよ り高 い分 解能 を持ち ,こ の基質特異性の相違が転移様 式の 相違の原因になっている可能性が考えられる.これまで本研究のように特定のプ口テア ーゼ の発現と転移様式との差異を示唆する報告はなく,今後腫瘍の発育進展におけるプ口テ アーゼそれぞれの意義について更なる研究が期待される.

  以 上よ り, 本研 究の 対象 であ るカ テプ シンB及びLの発 現は ,早期の胃癌における転移予 測因 子のーっとなるものと考えられる.また今後は術前,術中腫瘍組織のカテプシンの発現 を調 べる こと によ り, 縮小 手術 の適応を選択する要素となると共に,カテプシンBの発現が 亢進 して いる 腫瘍 はり ンバ 節郭 清領域の拡大を,カテプシンLが強く発現している腫瘍には 術後 化学 療法 を追 加す ると いっ た, 治療 法選 択因 子のー っに なりうるものと期待される,

  審 査 に あ た り , 副 査 浅 香教 授 よ り1)カ テプ シンB及びLの抗 体特 異性 につ いて ,2) 粘 膜内 での カテ プシ ンの 発現 程度 及び粘膜癌での検討について,3)転移巣でのカテプシン発 現の 有無 につ いて ,4)性差 など 他の臨床的項目の検討について質問があり,副査吉木教授 より11」ン バ管 と静 脈の 鑑別 に関して,2)リンバ管侵襲とりンパ節転移との一致率につ いて ,3)癌 組織 の管 腔側と 浸潤 先端 部で の発 現の 差に つい て,4)治療への応用について 質 問 が あ っ た . 主 査 西 村 教授 か ら は1)カ テプ シンBとLの 相関 の有 無に っい て,2)免 疫 染色 以外のプ口テアーゼ評価法に関して質問があった.申請者は未発表データを中心に自己 研究 結果を詳細に説明し,過去の報告との相違点に関しての考察及び今後の臨床応用の具体 的な可能性等,上記質問に対して適切な回答を行った・

  審 査員 一同 は本 研究 を, 早期 の胃 癌に おけ るカ テプシ ンB及びLの意義について検討した 研究 として高く評価し,申請者が博士(医学)の学位を受けるのに充分な資格を有するもの と判定した.

参照

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