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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 工 学 ) 深 澤 達 矢

学 位 論 文 題 名

シベリア北極圏における大気環境汚染の現況調査と汚染機構の解析

学位論文内容の要旨

  近 年、北極圏においては、冬〜春季にアークティック.ヘ イズ(北極煙霧層)と呼 ばれ る黒い煙霧層が発生するようになり、大気汚染が深刻化 してきている。ただしこ れ まで 北 極圏 の約3分 のー を占めるシベリア地域においては 、大気環境調査はなされ てお らず、北極圏全域の汚染状況の把握ができナょかった。しかし近年のロシアの政治 状況 の変化により、外国人研究者によるロシア国内における 学術調査が可能となって き てい る 。本 研究 は、1993年か ら3年間にわたルシベリアの ヤクーツク、ティクシ、

ノリ リスク、その他の地域において大気中の汚染物質濃度お よび土壌沈着汚染物質濃 度の 測定調査を行い、その結果を基に、シベリア北極圏にお ける大気環境汚染の実態 を明 らかにし、汚染機構の解析を行ったものである。以下に 本論文の要旨を述べる。

  第 一章では、本論文の背景として、北極圏においてこれま で行われて来た大気環境 汚染 調査にっいて概説し、さらに本研究の目的を述べた。

  第 二章では、まず、ロシア連邦のハバロフスク市、サハ共和国の首都ヤクーツク市、

炭鉱 都市であるネリュンゲリ市、およびエニセイ川河口の鉱 業都市ノリリスク市にお け る、 分 子拡 散サ ンプ ラー を用 いた 夏季 の二 酸化 硫黄(S02)および二酸化窒素(N02) の 濃度 分 布測 定結 果に っいて述 べた。N02にっいてはいずれ の都市も札幌とほぼ同じ か また は それ 以下 の濃 度であっ たが、S02にっいては、ノリ リスク市において、札幌 に比 べて10倍以上の高濃度を示した。次に、ヤクーツク市お よびノリリスク市内にお い て、3年間 にわ たり 大気 中のエアロゾル成分濃度およびS02、HNOヨガス濃度の連続 測定 を行った。なお今回、 S02のサンプリングにパーマピュ アドライヤーを応用する こ とに よ り、 これ まで 不可能で あったシベリアのような極寒の地におけるS02測定が 初め て可能となった。これらの結果、ヤクーツクにおける大 気エアロゾル成分および ガス 成分の濃度はほぼ札幌と同程度であったが、ノリリスク においては、工アロゾル 中 の硫 酸 イオ ン成 分濃 度が高く 、さらにS02ガス濃度にっい ては半月あるいは一力月 平 均で100〜200ppbと いう 異常な高濃度を示した。この結果 ノリリスク市周辺の樹木 は立 ち枯れしていわゆる酸性雨被害が発生しており、さらに 住民への健康影響も危惧 され るところである。

  第 三章では、サハ共和国のレナ川河口、北極海の沿岸にあ るティクシ市の郊外にお いて 測定された大気工アロゾル成分およびS02,HNOヨガス濃 度の季節変動にっいて述 べた 。各成分ともに冬季から春季にかけて濃度が上昇してお り、アークティック.ヘ

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イ ズがティクシ周辺にまで出現していること、およびアー クティックヘイズが主とし て 硫酸イオンおよび有機物と黒色純炭素から構成されてい ることが明らかになった。

ま た、この組成分析結果に基づき算出されたアークティッ ク・ヘイズの単一散乱アル ベ ドは、これまでにアラスカやカナダにおいて得られたも のとほぼ同じ値となった。

  第四章では、永久凍土域にあるヤクーツク、ティクシお よびノリリスクの郊外の数 力 所において土壌のサンプリングを行い、帰国後、その土 壌試料中の重金属汚染成分 の 分析を行った結果にっいて述べた。特にティクシ郊外の土壌中に含まれている砒素、

ニ ッケル、ク口ム、バナジウム、銅の濃度がヤクーツクの 土壌中の10倍以上の高濃度 と なっており、ノリリスクやヨー口ッパロシアおよび中部 ヨーロッパで排出された大 気 汚染物質がアークティック.ヘイズを発生させ、最終的には永久凍土土壌に沈着し、

蓄 積されていることが推測される。

  第 五章 では 、1994年1年 間の 毎 日6時間 毎に 、ノ リリス クからの10日間の前方流跡 線 解析およびティクシからの10日間の後退流跡線解析を行 い、シベリア北極圏におけ る 大気汚染物質の長距離輸送過程の解析を行った結果にっ いて述べた。この結果、ノ リ リスクからの排煙は、冬季はティクシを通って北極海海 上ヘ、一方夏季にはシベリ ア 大陸内部に輸送される場合が多いこと、またティクシへ は、冬季にはノリリスクお よ びウラル工業地帯から汚染物質が輸送され、春季には北 極海からアークティック・

ヘ イズが侵入してくることが分かった。

  第六章では、シベリア北極圏、特にティクシ周辺の永久 凍土層への大気汚染物質の 沈 着と蓄積作用にっいて述べた。永久凍土層は夏季にその 上部30〜50cmの深さの活動 層 と呼ばれる部分しか融けず、秋にはまた全層凍結してし まい、温帯地域のような地 下 水による成分流出がナょい。このため、永久凍土表面に沈着した汚染物質は、活動層 内 に閉じ込められ、蓄積されていく。ティクシにおける冬季の大気エアロゾル中には、

土 壌 起源 エア ロゾ ルと 比べて 、バナジウムが4000倍、鉛が2000倍、銅が900倍、砒素 が700倍 も濃 縮さ れて 合ま れており、これらのエアロゾル の沈着によルティクシの土 壌 中のバナジウムや砒素等の汚染重金属成分はヤク―ツク に比べて約10倍以上の高濃 度 となっている。今後もアークティック.ヘイズの発生が 繰り返される限り、北極圏 に おける永久凍土表層への重金属成分および酸性成分の沈 着蓄積は継続されることと な り 、動 植物 生態 系、 さら には 人体 への 影響 が甚 大なも のとなってくるであろう。

  第七章は、本研究の総括である。

  以上のように、本研究は、これまで不明であったシベリ ア北極圏の大気環境汚染に っ いて、初めて現地調査を行い、その実態を明らかにし、 さらに大気汚染物質の沈着 に よる永久凍土表層への蓄積作用にっいて初めて言及した ものであり、今後のシベリ ア 北 極 圏 の 大 気 環 境 汚 染 研 究 の た め の 先 駆 け と な る も の で あ る 。

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

シベリア北極圏における大気環境汚染の現況調査と汚染機構の解析

  近年、北極圏においては、冬〜春 季にアークティック.ヘイズ(北極煙霧層)と呼ばれ る黒い煙霧層が発生するようになり 、大気汚染が深刻化してきている。このアークティツ ク.ヘイズは、北半球の気候に影響 を及ぼし、北極圏の生態系を撹乱し、さらには北極圏 住民の健康にも悪影響を及ぼしてい るのではないかといわれており、その実態の把握と汚 染 機 構 の 解 明 、 お よ び 環 境 影 響 の 予 測 ・ 評 価 は 重 要 な 研 究 課 題 と な っ て い る 。   本論文は、この北極圏の中でこれ まで調査の行われていないシベリアのヤクーツク、チ クシ 、ノ リリ ス クそ の他 の地域において、1993年から3年間にわたって大気中の汚染物質 濃度の測定調査を行い、その結果を 基にシベリア北極圏における大気環境汚染の実態を明 らか にし 、汚 染 機構 の解 析を 行っ たも ので あり 、主 要な成果は次のように要約される。

  1)サハ 共和 国 の首 都で ある ヤク ーツ ク市 、鉱 業都 市で ある ノリ リス ク 市な ど4都市に おい て夏 季のS02お よびN02の濃度分布測定を行った。その結果 、N02にっいてはいずれの 都市 も札 幌と ほ ぼ同 じか それ以下の濃度であったが、S02にっいてはノリリスク市におい て札幌と比べて10倍以上の高濃度を 示した。

  2)ヤク ーツ ク 、ノ リリ ス、クおよび北極海沿岸のチクシにお いて、大気中のS02、HN03 ガスおよびエアロゾル成分の通年測 定を行った。この結果、ヤク―ツクにおいてはガス、

エア口ゾル成分ともに札幌と同程度 の濃度であったが、ノリリスクにおいてはエアロゾル 中の硫酸イオン濃度が高く、またS02濃度は半月平均で100ppbvという異常な高濃度を示し た。この結果、ノリリスク周辺の樹 木は立ち枯れしていわゆる酸性雨被害が発生しており、

住民の健康被害も危惧される。.

  3)チク シに お いて は、 冬季 から 春季 にか けて 、主 として硫酸および有機物と黒色純炭 素から成るアークティック・ヘイズ が出現していること、およびその単一散乱アルベドは 0. 87であることがわかった。さら にチクシにおける大気エアロゾル中には、土壌起源エア ロゾルに比べてバナジウムおよび銅 がはるかに高濃度に濃縮されて合まれており、遠方の 人 為 汚 染 物 質 が チ ク シ ま で 長 距 離 輸 送 さ れ て き て い る こ と が 示 唆 さ れ た 。   4)チク シヘ の 後退 等温 位面 流跡 線解 析お よび ノリ リスクからの前進等温位面流跡線解 析を行ったところ、チクシには、冬 季にはノリリスクおよびウラル工業地帯から汚染物質 が輸送され、春季には北極海からア ークティック・ヘイズが侵入して来ること、一方ノリ リスクからの排煙は、冬季には北極 海上へ輸送される場合とシベリア大陸内部ヘ輸送され る 場 合 が あ り 、 夏 季 に は 主 と し て シ ベ リ ア 大 陸 内 部 に 輸 送 さ れ る こ と が わ かっ た。

  5)ヤク ーツ ク 、ノ リリ スク およ びチ クシ 周辺 の土 壌の重金属分析を行ったところ、特 にチクシ周辺の土壌中にバナジウム 、鋼などがヤクーツク周辺土壌の約10倍以上の高濃度 で含まれており、アークティック・ ヘイズ中に含まれている人為汚染物質が、シベリアの 北 極 海 沿 岸 の 永 久 凍 土 の 表 層 に 沈 着 し 、 蓄 積 さ れ て い る こ と が 示 唆 さ れ た 。   これを要するに、著者は、これま で不明であったシベリア北極圏における大気環境汚染 にっいて、初めて現地調査を行って その実態を明らかにし、汚染物質の長距離輸送過程の

雄 壽

幸 信

田 中

太 田

授 授

教 教

査 査

主 副

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解析を行い、さらに沈着した汚染物質が永久 凍土表層において蓄積濃縮されていくことを 指摘しており、大気保全工学および環境工学に対して寄与するところ大ナょるものがある。

  よ って 著者 は、 北海 道大 学博 士(工学)の学位を授与され る資格あるものと認める。

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