博 士 ( 医 学 ) 江 屋 一 洋
学 位 論 文 題 名
長期呼吸 循環繍助を目 的とした小型 人エ´黼システ ムの開発と評価
―´良陸動物実験での呼吸循環完全代行による検討―
学位論文内容の要旨
長 期 呼 吸 循 環 補 助 を 目 的 と し た 小 型 人 工 心 肺 シ ス テ ム を 開 発 し 、 慢 性 動 物 実 験 に て そ の 性 能 を 評 価 し た 。 開 発 し た 人 工 心 肺 シ ス テ ム は 、 空 気 駆 動 式 拍 動 型 補 助 人 工 心 臓(VAD) と 小 型 膜 型 人 工 肺 か ら 成 る 。VADは 、1回 拍 出 量70ml、 最 大 拍 出 量7L/minの 性 能 を 有 し 、 材 質 は セ グ メ ン ト 化 ポ リ ウ レ タ ン で あ る 。 す で に200例 を 超 す 臨 床 例 か ら 、 優 れ た 抗 血 栓 性 と 機 械 耐 久 性 を 有 す る こ と が 示 さ れ て い る 。 膜 型 肺 は 、 膜 面 積l.2ni2、 充 填 量 140mlと 非 常 に 小 型 で あ る 。 ま た 、 熱 交 換 器 を 廃 し た 構 造 で あ り 、 圧 力 損 失 が 最 大 血 流 量6.OL/mm時 で 約50mmHgと 低 値 で あ る た め 、VADへ の 組 み 込 み も 可 能 で あ る 。 膜 型 肺 の ガ ス 交 換 膜 に は 、 血 液 接 触 面 が 盲 端 と な っ て い る ポ リ オ レ フ ィ ン 製 中 空 糸 が 用 い ら れ て い る 。 し た が っ て 、 長 期 使 用 時 に お い て も 血 漿 漏 出 を き た さ な い 。 ま た 、 膜 型 肺 の 全 血 液 接 触 面 に は 新 た に 開 発 し た 共 有 結 合 の み か ら な る へ バ リ ン 結 合 が 施 さ れ て お り 、 長 期 間 に わ た り 優 れ た 抗 血 栓 性 を 有 す る と 考 え ら れ る 。 シ ス テ ム の 評 価 に は 、 体 重28―36kg の 成 山 羊7頭 を 用 い た 。 完 全 心 肺 バ イ バ ス を 設 立 す る こ と に よ り 、 覚 醒 下 の 動 物 の ガ ス 交 換 能 お よ び 血 液 ポ ン プ 機 能 を ほ ぽ 完 全 に 代 行 さ せ 、 最 長336時 間 に わ た り 評 価 を 行 っ た 。 評 価 期 間 中 は 、 抗 凝 血 療 法 は 一 切 施 行 し な か っ た 。 実 験 期 間 を 通 じ て 、 シ ス テ ム の 酸 素 添 加 能 は142か ら174ml/min,炭 酸 ガ ス 除 去 能 は78か ら148 ml/mmと 良 好 に 維 持 さ れ 、 動 物 の 動 脈 血 液 ガ ス 所 見 も 、 酸 素 分 圧 が146か ら 323mHg、 二 酸 化 炭 素 分 圧 が38か ら 50rnrnHgと 良 好 に 保 た れ た 。 全 身 血 液 灌 流 量 は 、 実 験 期 間 を 通 じ て107か ら 130ml/′kg/mmと 完 全 心 肺 パ イ バ ス 開 始 前 の 心 拍 出 量 の128ml/l娼/mmと ほ ぼ 一 致 す る 値 に 維 持 さ れ た 。 し か し な が ら 、 平 均 大 動 脈 圧 は 前 値 の98mmHgよ り 完 全 心 肺 バ イ バ ス 開 始 後62か ら82mrnHgへ と 低 下 し た 。 一 方 、 中 心 静 脈 圧 は 、 前 値 の 7mmHgか ら 完 全 心 肺 バ イ バ ス 開 始 後 は 著 明 な 変 化 を 示 さ な か っ た 。 凝 固 ・ 線 溶 系 の 指 標 で は 、 フ ィ プ リ ノ ー ゲ ン が 前 値 の 250mg/d1か ら 完 全 心 肺 バ イ バ ス 開 始 後 は 96か ら 205mg/dlで 推 移 し 軽 度 の 低 下 を 示 し た が 、 プ 口 ト ロ ン ピ ン 時 間 お よ びFDPは ほ と ん ど 変 化 を 認 め な か っ た 。 血 小 板 数 は 、 前 値 の45.2万/mm3か ら 完 全 心 肺 パ イ バ ス 開 始24時 間 後 に32.2万 /11H3へ と 軽 度 の 低 下 を 認 め た 。 血 漿 遊 離 ヘ モ グ 口 ピ ン 値 は 、 前 値 の5.7mg/d1か ら 完 全
´ 己 丶 肺 パ イバ ス開 始後 は9.8か ら16.2mg/dlの 間に 維持 され 、著 明な 変化 を示 さな かっ た。
実 験 終 了 後 の 人 工 心 肺 シ ス テ ム は 、 感 染 症 を 合 併 し た 一 動 物 に 適 用 さ れ た 膜 型 肺 とVAD
に肉眼的な血栓の形成を認めた。その他のシステムは、最長336 時間の評価後のものを 含めて、肉眼的には明らかな血栓の形成は認めなかった。また、動物の腎・脾・脳・消化 管・肝などの主要臓器には、いずれも明らかな出血あるいは塞栓症などは認めなかった。
以上より、開発した人工心肺システムは移植までのブリッジなどの長期呼吸循環補助療法
にも十分に使用可能な性能を有すると考えられた。
学位論文審査の要旨
学 位 論 文 題 名
長期呼吸循環補助を目的とした小型人工´ふ肺システムの開発と評価
―´ 漫慴湧 む物 実験 での 呼吸 循環 完全 代; 行による検討―
末 期呼 吸不 全患 者に 対す る治 療法 とし ては、 現在では肺あるいは心肺移植が唯一の有効 な手 段で ある 。し かし 、臓 器提 供者 の不 足は欧 米でも深刻な問題であり、移植に代わる新 たな 治療 手段 の開 発が 望ま れて いる 。人 工臓器 による呼吸循環補助療法や臓器置換治療法 は、 その 有望 な手 段の ーつ とし て開 発が 期待さ れている。本研究では、人工臓器による呼 吸循 環補 助療 法を 確立 すべ く、 長期 使用 が可能 な人工心肺システムを開発することを目的 とし た。
開 発 し た 人 工 心 肺 シス テ ム は 、 空 気 駆 動 式 拍 動型 補助人 工心 臓(VAD)と小 型膜 型人工 肺 か ら 成 る 。VADは 、1回 拍 出 量70ml、 最 大 拍 出 量7L/rnmの 性 能 を 有し 、 材 質 は セ グ ヌン ト化 ポリ ウレ タン であ る。 すで に200例を 超す 臨床 例か ら、 優れ た抗血 栓性と機械耐 久性 を有 する こと が示 され てい る。 膜型 肺は、 膜面 積1.2m2、充 填量140mlと非常に小型 で あ る 。 ま た 、 熱 交 換器 を 廃 し た 構 造 で あ り 、 圧 力 損 失 が 最 大 血 流 量6.OL/mm時で約 50mmHgと 低 値 で あ る ため 、VADへ の 組 み 込 み も可 能で ある 。膜 型肺 のガ ス交 換膜 には、
血液 接触 面が 盲端 とな って いる ポリ オレ フィン 製中空糸が用いられている。したがって、
長期 使用 時に おい ても 血漿 漏出 をき たさ ない。 また、膜型肺の全血液接触面には新たに開 発し た共 有結 合の みか らな るへ バリ ン結 合が施 されており、長期間にわたり優れた抗血栓 性 を 有 す る と 考 え ら れる 。 シ ス テ ム の 評 価 に は 、体 重28ー36kgの成 山羊7頭 を用 いた。
完全 心肺 バイ バス を設 立す るこ とに より 、覚醒 下の動物のガス交換能および血液ポンプ機 能を ほば 完全 に代 行さ せ、 最長336時 間に わた り評 価を 行っ た。 評価 期間中 は、抗凝血療 法 は 一 切 施 行 し な か っ た 。 実 験 期 間 を 通 じ て 、 シ ス テ ム の 酸 素 添 加 能 は142か ら 174ml/mm、 炭 酸 ガ ス 除 去 能 は78か ら148ml/mmと 良 好 に 維 持 さ れ 、 動 物 の 動 脈 血 液 ガ ス 所 見 も 、 酸 素 分 圧 が146か ら323mmHg、 二 酸 化 炭 素 分 圧 が38か ら50mmHgと 良 好 に 保 た れ た 。 全 身 血 液 灌 流 量 は 、 実 験 期 間 を 通 じ て107か ら130ml/kg/mmと 完 全 心 肺 パ イ バ ス 開 始 前 の 心 拍 出 量 の128m1/kg/mmと ほ ぽ 一 致 す る 値 に 維 持さ れ た 。 し か し な が ら 、 平 均 大 動 脈 圧 は 前 値 の98mmHgよ り 完 全 心 肺 バ イ バ ス 開 始 後62か ら82mmHg