博 士 ( 獣 医 学 ) 大 町 麻 子 学 位 論 文 題 名
)83 アドレナリン受容体作動薬によるイヌの肥満治療と 脱共役夕ンパク質UCP1 の役割
学位論文内容の要旨
げっ 歯類 では脂 肪細 胞に 発現 する83 アドレナリン受容体を刺激すると、白 色 脂肪 組織
(WAT)での 脂肪 分解 と褐色脂肪組織(BAT) に発現する脱共役タンパ ク 質1 (UCP1 )依存的エネルギー消費の亢進が起こり、抗肥満作用が認められ る 。イ ヌで は成長 とと もに
BATが退 縮す るが、
B3作 動薬 を長 期投与すると体 脂 肪蓄 積が 抑制さ れる こと が知 られている。本研究では、新しく開発された
B3作動薬AJ ー9677 (以下AJ) を肥満犬に投与し、体脂肪減少効果と、その効果 に対するUCP1 の役割について検討した。
1
. 予め 肥満 させ たビ ーグ ル犬 にAJ を単 回経口 投与 する と、 用量依存的に遊 離 脂肪 酸の 血中濃 度が 増加 し、
WATから の脂肪 動員 効果 が確 認された。AJ を
10週 間
1日
1回 経 口 投与 し続け ると 、顕 著な 副作 用を 示さ ずに 、プ ラセ ポ群 に 比べ て体 重が有 意に 減少 した 。それが体脂肪の顕著な減少によることが、
コ ンピ ュー ター断 層撮 影画 像や 血中アディポサイトカインの変化から示され た 。更 に、
AJを投 与し た犬 のWAT で は、 多房性 で小 型の 脂肪 細胞が増加し、
UCPl mRNA
を発現していることが明らかとなった。
2.
正 常 体 重 の ビ ー グ ル 犬 に
AJを
2週 間 投 与 し た 場合 も、 上記 と同 様の 脂肪 細 胞の 変化 がみら れ、 更に
UCP1タンパク質の誘導とシトクロムオキシダーゼ や
FiATPaseといっ たミ トコ ンド リアタンパク質の増加が認められた。この脂 肪細胞を単離しin vi tro で機能を調べたところ、酸素消費量の大幅な増大と、
AJ
に対 する 脂肪分 解活 性の 改善 および酸素消費応答能の獲得が認められた。
以上 のよ うに、
B3作 動薬
AJは 肥満犬において体脂肪減少効果を有し、この
抗 肥満 効果 に脂肪 組織 での ミト コンドリア増生とUCP1 発現によるエネルギー
消費の増大が寄与していることが示された。
学 位 論 文 審 査 の要 旨 主査 教授 木村和弘 副査 教授 藤永 徹 副査 教授 滝口満喜
副査 教授 斉藤昌之(天使大学)
学 位 論 文 題 名
,83 ア ド レナ リ ン 受 容体 作 動 薬 によ る イ ヌ の肥 満治療と 脱 共 役 夕 ンパ ク 質 UCP1 の 役 割
学 位 論 文 提 出 者 は 、 新 規B3作 動 薬AJ―9677( 以 下AJ)を 用 い 、 肥 満 犬 に 対 す る 体 重お よび 体 脂 肪 減 少 効 果 に つ い て 検 討 し 、 そ の 効 果 に お け るUCP1の 役 割 に っ い て 解 析 し た 。 予 め 肥 満 さ せ た ビ ー グ ル 犬 にAJを 単 回 経 口 投 与 す る と 、 用 量 依 存 的 に 遊 離 脂 肪 酸 の 血 中 濃 度 が 増 加 し 、AJに 犬 の 白 色 脂 肪 組 織(WAT)か ら の 脂 肪 動 員 効 果 が あ る こ と を 示 し た 。 次 い で10週 間1日1回 のAJの 長 期 経 口 投 与 は 、 顕 著 な 副 作 用 を 示 す こ と な く 、 プ ラ セ ボ 群 に 比 べ て 体 重 を 有 意 に 減 少 さ せ る こ と を 示 し た 。 ま た 、 こ の 体 重 減 少 は コ ン ピ ュ ー タ ー 断 層 撮 影 画 像 や 血 中 ア デ ィ ポ サ イ ト カ イ ン 濃 度 の 解 析 に よ り 主 に 体 脂 肪 の 減 少 に よ る こ と が 示 さ れ た 。 さ ら にAJ投 与 犬 のWATで は 多 房 性 で 小 型 の 脂 肪 細 胞 が 増 加 し 、UCPl mRNAが 異 所 性 に 発 現 す る こ と を 示 し た 。
AJを2週 間1日1回 正 常 体 重 の ビ ー グ ル 犬 に 経 口 投 与 す る と 、 上 記 と 同 様 の 脂 肪 組 織 の 変 化 が お こ る こ と を 示 し た 。 さ ら にAJ投 与 犬 のWATよ り 単 離 し た 脂 肪 細 胞 に はUCP1タ ン パ ク 質 が 発 現 し 、 シ ト ク ロ ム オ キ シ ダ ー ゼ やFiATPaseと い っ た ミ ト コ ン ド リ ア タ ン パ ク 質 量 が 増 大 し た こ と を 示 し た 。 ま た 、 そ の 細 胞 は 基 礎 的 な 酸 素 消 費 量 を 大 幅 に 増 大 し 、AJに 対 す る 脂 肪 分 解 応 答 を 改 善 す る と と も に 酸 素 消 費 亢 進 機 能 を 持 っ こ と を 示 し た 。 以 上 の よ う に 、B3作 動 薬AJー9677は 成 長 と と も にUCP1を 発 現 す る 褐 色 脂 肪 組 織 が 退 縮 す る 犬 に お い て も 体 脂 肪 減 少 効 果 を 有 し 、 そ の 抗 肥 満 効 果 に はWATで の ミ ト コ ン ド リ ア 増 ―116―
生とUCP1 異所性発現によるエネルギー消費の増大が寄与していることが示された。したが って本研究はロ3 作動薬の犬肥満治療薬として応用の可能性を示したものであり、獣医学 の発展に大きく寄与するものである。