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博士(獣医学) 須永隆文 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(獣医学)   須永隆文 学位論文題名

犬変形性関節症に対する病態修飾薬(Disease modifying osteoarthritis drugs; DIVIORDs) の効果発現機序に関する基礎的検討

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  

変形性 関節 症(OA) の 分子 生物学的な病態に関する研究が進むにっれ、OA を本質的 に改善する変形性関節症病態修飾薬(disease modifying osteoarthritis drugs ,DMOADs) が 注目さ れて いる 。こ れら 薬剤はOA の特徴的病態である軟骨の変性・消失を遅延・

改 善する 効果 を持 っと 考え られているが、それらの臨床効果発現に関する詳細な作 用 機 序は 不明 であ る。 そこ で、本 研究 では 、犬 のDMOADs ある いは それ に準 ずる と 考えられているテポキサリン、ポリ硫酸ペントサンナトリウム(PPS) およびヒアルロ ン 酸(HA) につ いて 、こ れら 薬剤の臨床効果発現機序を解明することを目的とした。

    

第1 章では、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs) のひとっであるシクロオキシゲナ ー ゼ(COX)/ リ ポキ シゲ ナー ゼ(LOX) 共 阻害 薬テ ポキ サリ ンについて、

OA

の特徴的病 態 の ひ と っ で あ る 増 殖 性 の 滑 膜炎 の 制御 機構 を、

COX

阻 害を その 作用 機序 とす る

NSAIDs

で ある メロ キシ カム およ びカ ルプ ロフ ェン 、お よび

LOX

特異的阻害薬AA‑861 と 共に検 討し た。 関節 炎罹 患症例犬の病的滑膜から犬培養滑膜細胞を培養し、これ に 対する 薬剤 の細 胞障 害性 を評価した。その結果、他のNSAIDs と異なり、テポキサ リ ンおよ びAA‑861 は犬 培養 滑膜細胞に対する有意な細胞障害性を示した。また、こ の 細 胞障 害性 はLOX の一 種で ある

5‑LOX

の介 在を 受け てア ラキ ドン 酸か ら産 生さ れ る

5‑oxoETE

に より 減弱 され た。テポキサリンおよびAA‑861 の細胞障害性の特徴を検 討するため、ギムザ染色法、アネキシンV/ ヘキスト33342 による螢光染色法およびカ スパーゼ3 阻害試験を行った。その結果、テポキサリンおよびAA‑861 の犬培養滑膜細 胞 に対す る細 胞障 害性 はア ポトーシス誘導によるものであった。以上の結果から、

COX‑2

選 択 的 阻 害 を そ の 主 な 作 用 機序 とす るNSAIDs は、

OA

罹 患犬 に対 する 臨床 効 果 は鎮痛 効果 に限 定さ れる 可能性が示唆された。テポキサリンは、炎症性増殖を示 した滑膜に対する直接的な抑制効果があることが示唆された。したがって、COX/LOX 共阻害薬であるテポキサリンは、OA に対する病態修飾作用を有していると考えられ、

OA

病 態 改 善 に 有 効 な

DMOADs

と し て の 可 能 性 が あ る と 考 え ら れ た 。

  

第二章 では 、犬 の

DMOADs

とし て臨 床応 用さ れて いる

PPS

についてその効果発現機 序 を検討 した 。レ ッグ ・カ ルベ.ペルテス病患症例犬から治療のために切除した大 腿 骨頭の 正常 と思 われ る軟 骨から、培養細胞を得た。この犬培養軟骨細胞にインタ ーロイキン(IL) −lp で刺激し、関節炎における軟骨の炎症性反応を再現した。まず、

PPS

が軟 骨代 謝酵 素の 産生 を抑 制する か検 討す るた め、

OA

の病態形成に重要と考え ら れてい るマ トリ ック スメ タロ プロ テイ ナー ゼ(MMP)‑3 の遺伝子およびタンパクの 発 現に対 する

PPS

の効 果を 検討 した。 その 結果 、IL‑ip 刺激によるMMP‑3 の産生亢進 を

PPS

が 濃度 依存 性に 抑制 した。次に、

MMP‑3

産生にっながる代表的な細胞内シグナ ル 伝達系 であ る分 裂促 進因 子活性化タンパク質キナーゼ(MAPKs) 、すなわち、p38 、 細 胞外シ グナ ル調 節キ ナー ゼ(ERK) およびc‑JunN 末端キナーゼ(JNK) のりン酸化に対

647

(2)

するPPS の効果についてウエスタンブロッティング法を用いて検討した。その結果、

PPS

IL‑ip

刺激により誘起される軟骨細胞内での

p38

およびERK のりン酸化を抑制 し、

JNK

のりン酸化には関与しなかった。さらに、P38 および

ERK

のシグナルが、核 内に情報を伝達する物質である核内因子(NF)‑KB に伝えられていることを確認する ため、NF ー

KB

の核内移行における

PPS

の抑制効果を検討した。その結果、IL‑ip 刺激に より誘起されるNF‑KB の核内移行はPPS 存在下では有意に抑制された。以上の結果か ら、

PPS

は炎症刺激によるMAPKs 、特に

p38

および

ERK

のりン酸化を抑制してNF‑KB の核内移行を抑制し、軟骨細胞の核内におけるMMP‑3 産生を含む炎症性反応を抑制 することが示された。この炎症反応抑制効果が、結果的にPPS のDMOADs としての軟 骨保護効果と深く関連していると考えられた。

  

第三章では、犬OA 治療で実施されるHA の関節内投与の効果発現機序を検討するた め、

HA

の軟骨の細胞外基質

(ECM)

の性状改善作用について検討した。軟骨から産生 される

HA

が高分子なほど、軟骨細胞のECM におけるコラーゲンの成熟が促進され、

より質の良い

ECM

形成が誘導されるため、関節内に投与されたHA について、その軟 骨細胞における高分子HA 産生促進作用を第二章と同様のin vitro で関節炎を再現した 犬培養軟骨細胞を用いて検討した。

HA

を合成する

3

種類のHA 合成酵素(HAS) がそれぞ れ異なる分子量のHA を合成することに注目し、炎症環境下におけるHAS 遺伝子発現 様式に対するHA の効果を検討した。供試したHA は、分子量が500‑1 ,200 kDa と6 ,000

kDa

の2 種類を用いた。犬培養軟骨細胞に

HA

を作用させた後、24 時間

IL‑ip

刺激を加え た。その後、全

RNA

を抽出し、リアルタイムPCR 法にてHAS1 、2 および3 、II 型コラ ーゲン、およびアグリカンの遺伝子発現を定量した。その結果、IL‑ip 刺激は

HAS1

には影響せず、HAS2 の遺伝子発現を低下させ、HAS3 の遺伝子発現を増加させた。ま た、II 型コラーゲンおよびアグリカンの遺伝子発現を低下させた。すなわち、炎症刺 激は軟骨細胞での高分子

HA

産生を抑制し、低分子HA 産生を促進させて軟骨ECM の質 を低下させることが示唆された。分子量が500‑l ,

200 kDa

の外因性HA は、このような 炎症刺激を抑制する効果が認められたが、分子量6 ,000 kDa のHA では認められなかっ た。さらに、分子量が500‑1 ,200 kDa の効果は、HA 受容体と考えられているCD44 に対 する抗体

IM7

の競合作用を受け、抑制された。以上の結果から、適切な分子量の外因 性HA は、CD44 を介して細胞内における各

HAS

遺伝子発現を調節することで、軟骨か らの産生される

HA

の分子量を高め、関節軟骨のECM の性質を改善する作用を有し、

こ の 特 徴 に よ っ て 軟 骨 保 護 効 果 を 発 揮 す る こ と が 示 唆 さ れ た 。

  

以上の結果から、

1)COX/LOX

共阻害薬テポキサリンでは、一般的なNSAIDs にはな い、特徴的な部分的LOX 阻害能による炎症性の増殖滑膜に対する直接的な抑制効果、

2)PPS

では特定の細胞内シグナルの活性化およびNF‑KB の核内移行の抑制による軟骨

代謝酵素産生抑制効果、3 )外因性の

HA

では、軟骨細胞からの高分子HA 産生を促進さ

せ、

OA

に伴う炎症刺激による軟骨

ECM

の変性抑制効果により、それぞれが

DMOADs

としての効果を有していると考えられた。これら薬剤の異なる作用機序は、各薬剤

を複合して使用することで

OA

を効果的に治療できる可能性を示しており、相乗ある

いは相加効果についての臨床的あるいはin vivo での検討が必要であるが、本研究は

OA

治 療 を 確 立 す る 上 で の 重 要 な 基 礎 的 情 報 を 供 給 す る と 考 え ら れ た 。

(3)

学位論文審査の要旨 主査 副査

副査 副査

教 授    奥 教 授    昆 教 授    堀 准教授   高

学 位 論 文 題 名

裕 寛 広 哲

     犬 変 形 性 関 節 症 に 対 す る 病 態 修 飾 薬 (Disease modifying osteoarthritis drugs; DMORDs) の効果 発現 機序に 関す る基礎 的検 討

  変 形性関 節症(OA)は年齢の経 過とともに人と多 くの動物が罹患す る疾患であり、関節 の構造的な疲 弊を 主徴と する。一般に、OAの 治療は対症療法的 な鎮痛および機能 保持を目的とした理 学療法に主眼 がお かれ、 薬理効果に関するエ ビデンスに基づい た治療法は確立さ れていない。近年、OAの治療にお いて病態修飾薬(disease modifying osteoarthritis drugs,DMOADs)という概念がっくられ、多種の物質につ いて関節症の症 状改善効果が検討 されるようになった 。その多くは、関節軟骨の構成成分であるグリコ サミノグリカン 類似物である。そ れらの物質は疲弊し た軟骨成分を補填することを目的に投与されてい るが、結果的に関節症の症状を著しく軽減することが経験されている。

  本論文の第1章では、非 ステロイド性抗炎 症薬(NSAIDs)のひ とつであるシク口オ キシゲナーゼ(COX)/

リポ キ シゲ ナー ゼ(LOX)共阻害 薬テポキサリンの 増殖性滑膜炎制御 能およびその効果発 現機構にっい て、COX‑2阻 害性NSAIDsであ るメ ロ キシ カム お よびカルプ ロフェン、さらにLOX特異的 阻害薬AA‑861 とともに検討し た。その結果、テ ポキサリンおよぴAA‑861における特徴的な細胞障害性と、これらの細 胞障 害性が5‑LOX阻害 を介在して発現す ることが示された。 第2章で は、ポリ硫酸ペント サンナトリウ ム(PPS)の犬培養軟骨細胞 における炎症誘導 性基質異化反応の抑制について検討した。まず、インターロ イキン(IL)‑lDで刺激した 軟骨細胞において 産生されるマトリックスメタロプロテイナーゼ‐3がPPSによ って抑制される ことを示された。そして、その効果はPPSがp38ERIくのりン酸化および核内因子(NF)‑KB の核 内 移行 阻害 に よる こと が明らかと なった。この炎症反 応抑制効果が、PPSのDMOADsとしての軟骨 保護効果の一部 であることが示唆 された。第3章では、ヒアル ロン酸(HA)の軟骨細 胞外基質の性状改善 効果をHA合成酵 素(HAS)の アイソエンザイム の発現比を調べる ことで検討した。そ の結果、IL‑If3刺激 がHAS2の遺 伝子 発 現を 低下 さ せ、HAS3の 遺伝 子発 現 を増 加さ せ るこ と、 お よぴ 低分 子HA( 分子量 500‑1200 kDa)がCD44を 介して細胞内にお けるIL‑1誘発性のHAS遺伝子発現の変化を緩和させることが 示された。また 、低分子HAは、軟 骨基質成分であるII型コラーゲンおよびアグリカンの遺伝子発現につ いても同様の改 善効果を有するこ とが示された。以上 の結果から、1)COX/LOX共阻 害薬テポキサリンで は、 特徴的 なLOX阻害 能による炎症性滑 膜に対する直接的な 抑制効果、2)PPSでは特定の 細胞伝達シグ ナル の活性 化およびNF‑KBの核内移行の 抑制による軟骨異化 酵素産生抑制効果 、3)外因 性のHAでは、

HASア イソ エ ンザ イム 産 生調節 による軟骨細胞外 基質の性状改善効 果により、それぞれ がDMOADsとし ての 効果を 有していると考えら れた。これら薬剤 の異なる作用機序 の解明は、各薬剤に よるOAの治療 を効果的に施行する上で重要な基礎的情報となりうると判断された。

  以 上のよ うに申請者は、犬変 形性関節症に対す るDMOADsの効果発 現機序解明に重要な 知見を提示し た。よって、審 査員一同は、上記 博士論文提出者須永 隆文氏の博士論文は、北海道大学大学院獣医学研 究 科 規 程 第 6条 の 規 定 に よ る 本 研 究 科 の 行 う 博 士 論 文 の 審 査 等 に 合 格 と 認 め た 。

‑ 649 ‑

正 泰

村  

  内

参照

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