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博士(医学)松原 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(医学)松原 学位論文題名

急性心筋梗塞に併発した呼吸不全症例に対する      人工呼吸管理の検討

学位論文内容の要旨

    I.研究目的

  急性心筋梗塞は冠状動脈の急性閉塞によっておこる病態であり,心筋の虚血,壊死によって心 収縮カの低下をきたす重篤な病態である。その急性期における不整脈の予防と心機能の改善が予 後を大きく左右させるとされている。環境管理と並行して呼吸管理の重要性も指摘されている。

とくに,心不全の極めて重篤な症例では心原性肺水腫,呼吸不全を併発し,酸素療法では対処で きない症例も多く経験する。急性心筋梗塞の呼吸管理にっいて詳細に検討した報告はこれまで余 りない。

  急性心筋梗塞症例にっいて,呼吸管理の観点からretrospectiveに検討を加えた。さらに,機 械的 人 工呼 吸に よる 呼吸管理を行った83症例にっいて呼吸不全を,Pa02が60mmHg以下で PaCOzが45mmHg以 下 を示 した 低酸 素 性呼 吸不 全と ,Pa02が60mmHg以下 でPaC02が45mmHg 以上を示した肺胞低換気性呼吸不全にわけて検討を加えた。

    n.対象と方法

  1983年6月より1989年12月までに市立札幌病院救急医療部で治療した急性心筋梗塞380例のう ち,搬入時心停止を呈した症例や急性期を過ぎて搬入された症例などを除外した男性211例,女 性93例の304例を対象とした。これらの症例を,1)自発呼吸で管理できた221例(以下酸素療法 群とする)と機械的人工呼吸を必要とした83例(以下人工呼吸群とする),さらに2)機械的人 工呼吸を要した83例を低酸素性呼吸不全(以下低酸素群とする) 66例と,肺胞低換気性呼吸不全

(以下低換気群とする) 17例にわけて検討した。動脈血ガス分析値(コーニング社製Model 178 全自動血液ガ ス分析装置)の測定およびP/F値(動脈血酸素分圧(Pa0ユ)/吸入気酸素濃度

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Fi0よ) を 求 め た 。血 圧 , 脈 拍 数,Swan.Ganzカテ ーテ ルを用 いての 肺動脈 楔入 圧(以 下PCWP と す る ) ,お よ び 熱 希 釈法 に よ る 心 係数 (以 下CIと する) と共に 尿量,BUNクレア チニン (以 下Crnnと す る ) など に っ い て も比 較 検 討 し た。 成 績 は 平 均 値土SEMで表 現 し , 両 群間 の比 較 は StudentsC一 検 定 を 用 い て 行 く ,Pく O. 05を 推 計 学 的 に 有 意 と し た 。

    UI.結  果

  @酸素 療法 群と人 工呼吸 群の比 較

    搬 入 時の 動 脈 血 ガ ス分 析の 比較で は,P/Fは人 工呼吸 群で 酸素療 法群に 比較し て有意 に低 下し て い た 。pHは 人 工 呼 吸群 で 有 意 に 低 く,BEも 同様 で 人 工 呼 吸 群で は 代謝性 のアシ ドーシ スに 陥 っ て い た 。酸 素 療 法 後 でfま ,P/Fは 人 工 呼吸 群でさ らに低 下して いた 。BEにっ いても 人工 呼 吸 群 に 有 意の 低 値 を認 めた 。心機 能ではCIが酸 素療法 群で人 工呼吸 群よ り有意 に高値 を 示 し , PCWPも 人 工 呼 吸 群 が 酸 素 療 法 群 に 比 較 し て 有 意 に 高 値 で あ っ た 。   ◎低酸 素群 と低換 気群の 比較

    人 工 呼吸 開 始 前 の 比較 で はpHは低 酸 素 群 で 低換 気 群 に 比 較し て 有 意に 高く,PaCO:で は 低換 気 群 が 有 意 に高 値 を 示し た。P/Fは両 群とも に低 値であ ったが 有意差 は見 られな かった 。 循環 動 態 の 比 較 では 両 群 間に 差異 は見ら れなか った。 人工 呼吸開 始後で は,P/F値は 低酸素 群 の218土15.6に 対し, 低換気 群で は162.4土20.5と 有意に 低値で ,そ の後も 低換気群で低値が持続 した 。BEに っい て は 低 換 気群 では人 工呼吸 開始後 に正 常化し ていっ た。低 酸素 群はア シドー シ スが 持 続 し た 。PEEP値 は低 換気 群で人 工呼 吸開始 後48時間 まで 低酸素 群に比 較して 高値で あっ た。 収 縮 期 血 圧 は両 群 と も にlOOmmHg以 上 の 値 を維 持して いた 。脈拍 数は24時 間後 からは 低換 気群で より安 定化 する傾 向がみ られ,72時間 後では 低換気 群で低 酸素 群に比 較して有意差が見ら れた 。CIで は12時 間 後 に低 換 気 群 で 低酸 素 群 に 比 較し て 有 意 の 高 値を 示 した。PCWP値は 両群 で同様 な値を 示し たが,72時間後 では 低換気 群が低 酸素群 より有 意に 低値で あった。尿量は低換 気 群 に おい て 増 加 傾 向 が見 ら れ , 低 酸素 群 よ り も 有意 差 を 認 め た。BUN,Crnnと もに 低 酸 素 群 で 高 値 を 示 し た 。 生 存 率 は 低 換 気 群 が76.5% , 低 酸 素 群 が27.3% で あ っ た 。

    IV. 考  察

  急 性心筋 梗塞に 伴うポ ンプ不 全が 心原性 肺水腫 をきた すこ とは良 く知られている。肺水腫は肺 の酸 素化能 の低 下をも たらし,低酸素血症をきたすことにナょる。低酸素血症の存在は,急性心筋 梗塞 に伴う 心拍 出量の 減少と あいま って 各臓器 および 心筋へ の酸素 供給を減少させ,さらに心不

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全を 悪化さ れる という 悪循環 を形成 し,生 命予 後に重 大な危 機をも たら す。心不全を併発した急 性心 筋梗塞 症例 に対し ては, 一般的 には酸 素投 与によ る酸素 療法が 行わ れる。しかしながら,酸 素療 法によ って も改善 しない 低酸素 血症に 対し ては, 機械的 人工呼 吸に よる呼吸補助が必要であ る。

  心原 性肺 水腫に 伴う呼 吸不全 は, 一般的 には低 酸素性 呼吸不 全で ある。 しかし,心筋梗塞発症 に 伴 う 心原 性 肺 水 腫 が引 き金と なっ て,気 道過敏 性を有 する 症例で は気管 支攣縮 が誘発 され , Pa02の 低 下 と 共にPaC02の 上 昇 を 示す 肺 胞 低 換 気性 呼 吸 不 全 も 見ら れ る 。 人 工呼 吸 を 必 要 と する 急性心 筋梗 塞症例 の多く は重篤 な循環 不全 を呈し ,ひい ては各 臓器 組織への酸素供給の低下 によ る多臓 器不 全をき たす重 篤な病態である。急性心筋梗塞症例に対する人工呼吸管理の適応は,

循環 不全の 急激 な進行 時に蘇 生術の 一環と し行 われる ことも 多い。 人工 呼吸開始の基準をどの時 点 に 求 める か に っ い ては 酸 素 化 能 から み れ ば ,P/Fが250を切る ような 場合 には機 械的人 工呼 吸が 必要と 考え られる 。今回 の検討 からも ,人 工呼吸 管理を 必要と する 症例では搬入当初より低 酸 素 症 が存 在 し , 酸 素療 法 に よ っ ても 改 善 し 得な いこと が明ら かであ り,P/Fが250以下 の場 合に は人工 呼吸 管理の 適応と いえる 。さら に人 工呼吸 を必要 とした 症例 の呼吸不全のタイプで比 較検 討した 結果 ,肺胞 低換気 性呼吸 不全で は低 酸素性 呼吸不 全より 重篤 な呼吸不全を示したが,

心機 能は比 較的 よく保 持され ていた ことか ら明 らかと なった 。急性 心筋 梗塞の症例の中で低酸素 血症 と共に 肺胞 低換気 を伴う ような 症例で は, 今回の 検討か らも明 らか なように,心機能も比較 的保 たれて いる 症例が 多く, 人工呼 吸管理 をも 含めた 積極的 な呼吸 管理 が救命率をさらに向上さ せる ものと 考え られた 。

学位論文審査の要旨

1.研 究目的

  急 性心筋 梗塞 に伴う 肺の酸 素化能 の低 下と, 人工呼 吸によ る呼吸 補助の開始時期の検討,およ び 人工呼 吸を要 した 症例に っいて は,心 原性の 呼吸 不全で は稀な 肺胞低換気性不全にっいて検討

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修 秀

   

   

物 田

劔 安

授 授

教 教

査 査

主 副

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し た。

2.対象と方法

  1983年6月より1989年12月までに市立札幌病院救急医療部で治療した急性心筋梗塞380例のう ち,搬入時心停止や急性期を過ぎて搬入された症例などを除外した304例を対象とした。これを,

1)自発呼吸で管理できた221例(以下酸素療法群),および人工呼吸管理を必要とした83例(以 下人工呼吸群)に分けて検討した。さらに,人工呼吸を要した83例を,2)低酸素性呼吸不全(以 下低酸素群)66例と,肺胞低換気性呼吸不全(以下低換気群)17例に分けて検討した。コーニン グ 社 製Model一178全 自 動 血 液 ガ ス 分 析 装 置 を 用 い てpH,PaCOz,BEを測 定 し,P/F

(Pa0:/Fi0:)値を算出した。血圧,脈拍数とスワン・ガン`ソカテーテルを用いた肺動脈楔入 圧,心係数,さらに尿量 ,BUNクレアチニンCPKなどに っいても比較検討した。成績は平均 値土SEMで表し,統計学的検討はStudentstー検定を用いて行い,Pく0.05を推計学的に有意 とした。

3.結果

1)酸素療法群と人工呼吸群の比較

  搬入時の比較では,P/Fは人工呼吸群で酸素療法群に比較して有意に低下していた。pHは 人工呼吸群で有意に低く,BEも人工呼吸群では代謝性のアシドーシスに陥っていた。酸素投与 後でfま,P/Fは人工呼吸群でさらに低下していた。BEにっいても人工呼吸群に有意の低値を 認めた。心係数は酸素療法群で人工呼吸群より有意に高値を示し,肺動脈楔入圧も人工呼吸群が 酸素療法群に比較して有意に高値であった。

2)低酸素群と低換気群の比較

  人工呼吸開始前の比較では,pH,PaCO.zに有意差を認め,これは高炭酸血症のためと思わ れる。P/Fは両群共に低値であったが有意差は見られなかった。循環動態の比較でも両群間に 差異はなかった。人工呼吸開始後では,P/Fは低酸素群の218土15.6に対し,低換気群では162.4 土20.5と有意に低値を示し,その後も低換気群で低値が持続した。BEにっいては低換気群では 人工呼吸開始後に正常化した。収縮期血圧は両群ともにlOOmmHg以上の値を維持していた。脈 拍数は24時間後からは低換気群でより安定化し,72時間後でfま低換気群で低酸素群に比較して有 意差が見られた。心係数では12時間後に低換気群で有意に低値を示した。肺動脈楔入圧は初期に は同様の値であったが,72時間後ではが低換気群で有意の低値が見られた。尿量は低換気群で有

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意に増加傾向が見られた。BUN,クレアチニンともに低酸素群で高値を示した。生存率は低換 気群が76.5%,低酸素群が27.3%であった。

4.考察

  急性心筋梗塞に伴うポンプ不全が心原性肺水腫をきたし,肺の酸素化能の低下をもたらす。低 酸素血症の存在は,急性心筋梗塞に伴う心拍出量の減少と相俟って各臓器および心筋への酸素供 給 を 減 少 さ せ , さ ら に 心 不 全 を 悪 化 さ せ る と い う 悪 循 環 を 形 成 す る 。   心不全を併発した急性心筋梗塞例には,一般的には酸素療法が行われる。酸素療法によっても 改善しない低酸素血症に対しては,機械的人工呼吸による呼吸補助が必要である。今回の検討で は,酸素療法群と人工呼吸群との比較からP/Fが人工呼吸開始の指標となり得ると診断された。

自発呼吸で管理できた症例のP/Fは300以上の値を維持していたが,人工呼吸を必要とした症 例では搬入時よりP/F値の低下が見られ,しかも進行性に増悪して酸素療法後でも200以下の 値を示していた。この酸素化能の低下が急性心筋梗塞に伴うポンプ不全の進行によることが示唆 された。以上よりP/F値が250以下となる症例では機械的呼吸補助を早期に考慮すべきである と考えられた。

  人工呼吸を要した症例にっいては,心原性肺水腫では稀な肺胞低換気性呼吸不全に焦点をあて て検討を加えた。もともと気道過敏性を有する患者で,急性心筋梗塞発症に伴う心原性肺水腫が ぢiき金となって気管支攣縮が誘発され,肺胞低換気性呼吸不全に陥ると考えられる。この肺胞低 換気性呼吸不全群における呼吸不全は低酸素性呼吸不全と比較してより重篤であった。しかし,

肺胞低換気呼吸不全でtま心機能は比較的よく保たれており,臓器不全の進行も少なく生命予後も 良好である結果をもたらしたものと推損lJされた。

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参照

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