博 士 ( 歯 学 ) 日 下 部 豊 寿 学 位 論 文 題 名
実 験 的 歯 の 移 動 時 に お け る 圧 迫 側 歯 槽 骨に 生じる背部骨吸収と血管分布
学位論文内容の要旨
異なる部位で吸収が生 下性骨吸収や直接性骨 る吸収で背部骨吸収と 部の背部骨吸収と深部 膜に近接した部位で生 下性骨吸収との問には しヽる。しかし、このよ 的な因果関係を説明す 位から骨髄腔と歯根膜 型標本を検索し、圧迫
材料と方法
成ネコの 右側上顎 犬歯を実 験歯、左側上顎犬歯を対照歯とした。実験歯は、100g の初 期 荷 重を第3前臼歯を 固定源と して、7日 ならびに14日間遠心 移動させた 。そ の後、両 側の総頚 動脈より10%ホルマリン にて灌流 固定した 。標本の一部は墨汁を 注入した 。脱灰の 後、通法 に従ってパラフインまたはセロイジンに包埋し、連続薄 切を行い光顕下で観察した。また、他の標本は合成樹脂(Mercox)を注入し、20%KOH で軟組織 を溶解し 遊離して 、血管鋳型標本を作製した。標本は乾燥の後金を蒸着し 走査電頭にて観察した。
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も見 られた。このような拡大した吸収領域の中央部では歯根膜組織の修復が生じて いた 。他 方、 同じ14日 後で も貫 通管 内で吸 収の 生じ てい ない ものも見られた。こ の貫 通管は直径が小さく、内部に押し込まれた歯根膜が少なく、血管がその歯根膜 の先端の位置まで達していなかった。
2.血管鋳型標本
対 照歯では、歯根膜腔の血管は、歯槽壁に近接して太い血管からなる網目と、こ れよ り歯 根側 に細 い血 管か らな る網目のニ層からなっていた。これらの2つの血管 網は ところどころで互いに連絡し、全体的には血管網は歯の長軸方向に引き伸され たよ うな形をしていた。これらの血管と貫通管の血管とは多くの交通が見られた。
実験 開始7日後 では 、圧 迫さ れて 血流が途絶えた変性歯根膜に対応する部分の歯槽 壁が 露出し、その表面には多くの貫通管の開口部が見られ、そのいくっかは拡大し てお り輪郭が不規則になっているものが見られた。それらの開口部は貫通管内部に 吸収 を生じていて輪郭は不規則になっていた。また、このような貫通管内部には血 管 の ル ー プや2次ル ープ が観 察さ れた 。実 験開 始14日後 では、 露出 した 歯槽 骨の 面積が7日後に比べ縮小していた。血管は本来歯軸と平行に走行する傾向を示すが、
穿下 性骨吸収の進行に伴って伸び出した血管は、複雑かっ不規則な走行を示し、特 に吸 収面に近い部位の新生血管は様々な形態で見られた。このような吸収窩にみら れる 多数の血管ループは貫通管内部に見られる単純なループと異なり、三次元的に 極め て複雑な形態を示していた。このような吸収窩の血管網と貫通管の問あるいは 隣接する貫通管の問にはこれらを連絡する血管が見られた。
考察
穿下性骨吸収|ま変性歯根膜組織内の無細胞帯の周辺に生じることが知られている が、貫通管内でも、押し込まれた変性歯根膜組織先端の無細胞帯がみられ、これに 接して背部骨吸収が生じていた。また、穿下性骨吸収と背部骨吸収は、無細胞帯に 近接して多数の細い血管が存在するという共通の所見が認められた。このように、
背部骨吸収は穿下性骨吸収と組織学的には同様の機構で生じることが明らかになっ た。
歯槽骨中に浅部の背部骨吸収が生じる機構について次のように考えた。圧迫部で 歯根膜の血流が途絶えると貫通管内の血流も途絶える。しかし一般に貫通管内には 複数の血管が存在するので、そこにバイパスとして血管ループが形成され、これよ り骨髄側の血流が維持される。従って、この時このループに加わる圧カがある圧カ の範囲内にあると、血管内の単核細胞の血管外への遊出が促進されこの部位で破骨 細胞の前駆細胞の分化が誘導され、貫通管壁に背部骨吸収が生じると考えられる。
同様に吸収の生じない場合も説明できる。すなわち、貫通管が細い場合や、バイパ スが形成されなかった場合、あるいはループがある圧カの範囲内にない場合は吸収 が起きないと考えられる。
今後、生体力学的手法などを用いてこの圧力範囲、すなわち至適矯正カを究明す ることが必要であると考える。
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学位論文審査の要旨
学位論文題名
実験的歯の移動時における圧迫側歯槽骨に 生じる背部骨吸収と血管分布
審査は主 査、副査 がそれぞれ 個別に申 請者に対 して口頭 試問により提出論文の内 容とそれに関連した学問分野について行った。
日常の矯正歯科臨床において適時矯正装置を調整し歯を移動させているが、その際の歯 周組織の変化に関して変性歯根膜に面する歯槽骨の中に生じる背部骨吸収についての研究は ほとんど報告されていない。そこで申請者はネコ上顎犬歯の遠心移動実験を行い、圧迫歯周 組織による骨吸収の様相と血管分布を墨汁注入標本及び血管鋳型標本を用いて検討を行って いる。
【実験材料ならびに実験方法】
成ネコの 右側上顎 犬歯を実験 歯、左側 上顎犬歯 を対照歯 とした。実験歯は、100g の初 期 荷重 を 第3前 臼歯 を 固定 源 と して 、7日な らびに14日 間遠心移動 させた。 そ の後 、 両側 の総頚 動脈より10%ホルマリ ンにて灌 流固定し た。標本の 一部は墨 汁を 注入した 。脱灰の 後、通法に 従ってパ ラフイン またはセ ロイジンに包埋し、連続薄 切を行い 光顕下で 観察した。 また、他の標本は合成樹脂(Mercox)を注入し、2096KOH で軟組織 を溶解し 遊離して、 血管鋳型 標本を作 製した。 標本は乾燥の後金を蒸着し 走査電顕にて観察した。
【実験結果】
1.墨汁注入標本
対照歯の 遠心部で は、歯根膜 腔には歯 槽壁に近 接した太 い血管が見られ、また歯 槽壁から 離れて小 血管の集団 が見られ た。これ らの血管 は骨髄腔の血管と連絡して おり、そ の連絡血 管が通る管 は貫通管 と呼ぱれ ている。 また貫通管の中の血管は通 常複 数 存在 してい た。実験 開始7日後 では、変 性歯根膜 の外側の穿 下性骨吸 収とと もに変性 歯根膜に 面して歯槽 壁に背部 骨吸収が 数カ所見 られた。これらの背部骨吸 収では、 貫通管内 で吸収が生 じており 、貫通管 内に変性 組織が押し込まれてその周 囲には複 数の血管 が常に認め られた。 一方、変 性歯根膜 から離れた部位では、複数 の血管が 存在して も貫通管内 には吸収 が生じて いなかっ た。実験開始14日後では、
背部 骨 吸収 の吸収 像は様々 な形態が 見られた 。隣接す る2つの貫通 管にそれ ぞれ生 じた吸収 領域が拡 大するに伴 って、互 いに交通 して吸収 部位が急速に拡大したもの も見られ た。この ような拡大 した吸収 領域の中 央部では 歯根膜組織の修復が生じて いた 。 他方 、 同 じ14日 後で も 貫通 管 内 で吸収の 生じてい ないものも 見られた 。こ の貫通管 は直径が 小さく、内 部に押し 込まれた 歯根膜が 少なく、血管がその歯根膜 の先端の位置まで達していなかった。
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稔治 光 進重 田 村 田 脇 中 吉 授授 授 教教 教 査査 査 主副 副
2.血管鋳型標本
対照歯で は、歯根 膜腔の血 管は、歯槽 壁に近接 して太い 血管からなる網目と、こ れよ り 歯 根側 に細い血 管からな る網目の 二層から なってい た。これら の2つの血 管 網はとこ ろどころ で互いに 連絡し、全 体的には 血管網は 歯の長軸 方向に引き伸され たような 形をして いた。こ れらの血管 と貫通管 の血管と は多くの 交通が見られた。
実験 開 始7日後 では、圧 迫されて 血流が途 絶えた変 性歯根膜 に対応する 部分の歯 槽 壁が露出 し、その 表面には 多くの貫通 管の開口 部が見ら れた。そ れらのいくっかは 拡大して 、輪郭が 不規則に なっていた 。このよ うな開口 部は貫通 管内部に吸収を生 じた 結 果 と考 えられ、 内部には 血管のル ープや2次 ループが 観察された 。実験開 始 14日 後 では 、 露出 し た 歯槽 骨 の面 積 が7日 後に 比 べ縮 小 し てい た 。 血管 は本来歯 軸と平行に走行する傾向を示すが、.穿下性骨吸収の進行に伴って伸び出した血管は、
複雑かつ 不規則な 走行を示 し、特に吸 収面に近 い部位の 新生血管 は様々な形態で見 られた。 このよう な吸収窩 にみられる 多数の血 管ループ は貫通管 内部に見られる単 純なルー プと異な り、三次 元的に極め て複雑な 形態を示 していた 。このような吸収 窩の血管 網と貫通 管の聞あ るいは隣接 する貫通 管の聞に はこれら を連絡する血管が 見られた。
【結論】
1.浅部の背部骨吸収は、圧迫によって生じた変性歯根膜に対応する歯槽骨骨壁内の貫通管内 で生じる。
2.背部骨吸収は、貫通管の歯根膜腔開口部近くで貫通管内に押し込まれた変性歯根膜の周囲 で生じる。
3.背部骨吸収の開始には、1)貫通管の太さ、2)貫通管内の血管の走行と分布、ならびに 3)変性歯根膜が押し込まれた結果貫通管内に生じる圧力分布が重要な要素となっている。
4. 背部 骨 吸収 の 開 始と 進 行 は、 組 織学 的 に 穿下 性 骨吸 収 と 同様 の 変化 である 。 5.生体内で組織の圧迫によって骨の吸収が生じるためには、1)破骨細胞の前駆細胞の供給 路としての血管の存在と、2)それを閉鎖しない程度の圧カという物理的刺激の存在が必 要条件でであると考えられる。
6.上 記 の種 々の 条件の1つ でも欠落 する部位 では背部 骨吸収が 生じていな かった。
以上のよ うに本論 文は歯にカ を加えた 時の骨吸収の様相と血管分布について詳細 に検討し た点、こ れからの矯 正歯科臨 床に資するところ大と考える。よって申請者 は 博 士 ( 歯 学 ) の 学 位 を 授 与 さ れ る 資 格 を 有 す る も の と 認 め た 。
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