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Academic year: 2021

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博 士 ( 理 学 ) 高 橋 浩 晃

     学位論文題名

汎地球測位システム(GPS) から求めた    ア ジ ア 北 東 地 域 の プ レ ート 運 動

(Plate Motion in the Northeast Asia Determined from     Global Positioning System(GPS) Observation)

学位論文内容の要旨

  日本海東縁部からサハリンにかけての地域で発生する地震は,ユーラシアプレートと北米プ レートの相対運動が原因であると考えられてきた,しかし近年,それらのメガ・プレートとは 独立した形でオホーツクプレートやアムールプレートといったマイクロプレートが存在し,そ れらの相対運動がこの地域の地震活動の原因であるとする説が提唱されている.これらのマイ クロプレートは,拡大軸を持たず,またプレー卜境界と想定される場所での地震活動度が低い ことから,この地域での地震・地殻変動観測データの絶対的な不足もあるから,それらの運動 を従来と同様な古地磁気学的・地震学的手法で決定することは困難である.そこで今回我々は・

同地域でその地震活動の直接的な原因と考えられている,アジア北東地域でのプレー卜運動を 明らかにするために、GPS  (Global Positioning System)を用いた広範囲な観測を行った.

  GPSを用いた地殻変動観測を行うことにより,観測点でのプレートの速度ベクトルが求め

られるため,プレート運動の決定に必要な速度と向きのデータを同時に直接測定することが可 能である,あるプレート内部での最低2観測点での速度ベク卜ルが求まれぱ,プレート境界が はっきりしなくともプレー卜運動パラメータの推定が可能であり,先に述べたようなマイクロ プレートの運動の推定に強カな手段となりうるものと判断した.

  現 在 ,GPSの国 際 組 織 であ るIGS(InternationalGPSService for Geodynamics)がG PS衛星の精密軌道暦を推定するために,世界中にGPS観測網のグローバル・ネットワーク を構築して観測を行っている.しかし,本研究の対象地域であるロシア極東地方を主とするア ジア北東 地方に はGPS観 測点が全くなく,世界的に見てもGPS観測の空白地域となってい た,そのため,この地域のプレー卜キネマティクスを既存の観測網から得られる測地学的デー タだけから明らかにすることはできない状況にあった.

  そこで,我々は自らこの観測空白域にGPS観測網を構築し,その観測データを解析するこ とによってアジア北東部のプレー卜運動を明らかにすることを目標にした研究をスタートさせ た.サハリン,カムチャッカ,ウスリー(沿海州)地方など,いままで全くGPSの観測点が 設置されていなかった地域において,現在まで13点に及ぶGPS観測点を設置することがで きた.また,各観測点では短い観測期間で高精度の速度ベクトルを推定するために,できるだ     ―16ー

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け連続観測データの取得を目指した独自のシステムを開発した.

  これらの観測網から得られたGPS観測データと,IGSが中国,韓国そして日本に設置して いる グ 口 一バ ルGPS観 測 点の デ ー タを 統合して ,高精 度GPS解 析ソフト ウエア とGPS衛 星精密軌道暦を用いた基線解析を行った。それにより各観測点でのブレート運動をあらわす速 度ベクトルを精度よく求めた.

  その結果,以下のようなことが明らかになった.

  サハリン北部のOKHAでは,ユーラシアブレー卜に対する速度ベク卜ルがゼロになり,この付 近にユーラシア・オホーツクプレート相対運動の回転極が存在することが明らかになった.こ の結果は,Seno[1996]によって地震のメカニズムによるスリップベクトルから求められた回転 極と一致する.

  カムチャッカ南部のPetropavrovsk―Kamchatkyでは,太平洋プレー卜の沈み込みの影響が強 く,速度ベクトルは北西方向に求まった.北部のEssa,Kluch,Kortbergではすべて西南西方 向の速度ベクトルが得られた.この速度ベクトルの方向は,太平洋プレートとオホーツクプレ ートとのカップリングによる変形と,オホーツクプレートの運動方向とのベク卜ル和の方向に 調和的である.しかし,Kluchを除いて誤差が大きく,精度の高い議論を行うためにはより多 くのデータの蓄積が必要である.

  アムールプレート上にあると考えられてきた韓国やロシア沿海州地方の観測点では,ユーラ シアプレートに対して東に約lcm/yrの速度ベク卜ルが観測された.この観測結果から,アムー ルプレー卜がユーラシアプレー卜から独立して東進運動を行っていることが測地学的に明らか にされた.また,従来,オホーツクプレー卜に属していると考えられてきたサハリン南部の Yuzhno−Sakhalinskが,約8mm/yrの東向きの速度ベクトルをもっていることが明らかにされた.

この結果は,Yuzhno−Sakhainskがアムールプレートに属していることを示している.また,こ の結果と国土地理院の全国GPS観測網から得られた北海道北部の速度場や地震活動,第4紀 地殻変動を合わせて検討した結果,北海道西方沖に存在するとされていたアムール・オホーツ クプレートの境界が,北緯44度付近で東側にトランスフオームし北海道北部で内陸に上陸して いることが推定された.しかし同時に,1971年にサハリン南西沖で発生したモネロン島地震

(M〓7.1)の存在がこれらプレー卜運動からは直接的に説明されず、今後の問題として残った.

  また,中国の3観測点Sheshan,WuhanとXianでは,ともに約lcm/yrの東向きの速度ベクト ルが観測された,これは,インドプレートのユーラシアプレートへの衝突の影響による南中国 ブロックの東向きの運動を示しているものと考えられ,VLBIによる観測結果や,地質学的に推 定された速度ベクトルと調和的な結果であった.

  日本海西 岸部に ある観測 点Taejon,Vladivostok,Khabarovskそしてサハリン南部の Yuzhno−Sakhalinskの速度ベク卜ルを用いてアムールプレートの運動パラメータの推定を行つ た,その結果,ユーラシアプレートに対する回転極が北緯71.6度,東経153.4度に求まり、回 転速度はO. 294rad/Maとなった.これから日本海東縁部でのオホーツクプレートとアムールプ レートの収束速度が計算され,約2. lcm/yrから0.6cm/yrと推定された,これは従来のプレー トモデルから期待される値と比較すると約1.5倍の大きさである.

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学位論文審査の要旨

主査  教授  小山順二 副査  教授  西田泰典 副査  助教授  笠原  稔 副査  助教授  森谷武男 副査  教授  瀬野徹三

    (東京大学大学院理学系研究科(東京大学地震研究所))

     学位論文題名

汎地球測位システム(GPS) から求めた    ア ジ ア 北 東 地 域 の プ レ ー ト運 動

(Plate Motion in the Northeast Asia Determined from     Global Positioning System(GPS) Observation)

  最 近 、 大 地 震 の 連 続 し て 発 生 し た 日 本 海 東 縁 部 か ら サ ハ リ ン に か け て の 地 域 は , 従 来 は 、 ユ ー ラ シ ア プ レ ー ト と 北 米 プ レ ー ト の 境 界 で そ の 相 対 運 動 が 原 因 で 地 震 が 発 生 して い る と考 え ら れてき た.しか し近年 ,それら のメガ ・プレー トとは独 立した 形で オ ホ ーツ ク プ レー ト や ア ムー ル プ レー ト な どの マ イ クロ プ レ ート が 存 在し , それら の相 対 運 動 が こ の 地 域 の 地 震 活 動 の 原 因 で あ る と す る 説 が 提 唱 さ れ て い る . こ れ ら の マ イ ク ロ プ レ ー ト は , 拡 大 軸 を 持 た ず , ま た プ レー ト 境 界 と想 定 さ れる 場 所 での 地 震 活 動 度 が 低 い こ と か ら , そ れ ら の 運 動 を 従 来 と 同 様 な 古 地 磁 気 学 的 ・ 地 震 学 的 手 法 で 決 定 す る こ と は 困 難 で あ る . 日 本 海 東 縁 部 お よ び サ ハ リ ン 島 内 の 大 地 震 の 繰 り 返 し 間 隔 な ら び に こ の 地 域 の テ ク ト ニ ク ス を 議 論 する た め に は、 基 本 的な こ の 地域 の プ レ ー ト 運 動 の 枠 組 み を 明 ら か に す る 必 要 が あ る が 、 こ の 地 域 で の 地 震 ・ 地 殻 変 動 観 測 デ ー タ の 絶 対 的 な 不 足 も あ り 、 現 在 の 変 動 を 直 接 検 証 で き な か っ た 。   本 論 文 は 、 新 た なGPS(Global Positioning System) 観 測 網 を 独 自 に 展 開 し 、 プ レ ー ト 問 相 対 地 殻 変 動 の 直 接 連 続 測 定 を2年 間 に 渡 り 行 う こ と に よ り 、 アジ ア 北 東 地 域 での プ レ ート 運 動 を 明ら か に した も の であ る 。 オホ ー ツ クプ レ ー トの 存 在とア ムー ル プ レ ー ト の 存 在 と そ の 運 動 が 解 明 さ れ 、 両 プ レ ー ト の 境 界 で あ る 日 本 海 東 縁 部 お よ び サ ハ リ ン 島 内 な ら び に そ の 北 方 延 長 部 で の ブ レ ー ト 収 束 速 度 が 、 従 来 の モ デ ル か ら 期 待 さ れ る 値 の 1.5倍 の 大 き さ で あ る こ と を 明 ら か に し た 。   本 研 究 の 対 象 地 域 で あ る ロ シ ア 極 東 地 方 を 主 と す る ア ジ ア 北 東 地 方 に は 、 こ の 研 究 以 前 に はGPS観 測 点 が 全 く な か っ た . そ の た め に 、 ま づ 、 本 研 究 を す す め る デ ー

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タ 取 得 の 観 測 網 が 必 要 で あ り、 著 者 は 、 1994 年 北 海 道 東 方 沖 地 震 ・ 1995 年 北 サ ハ リン 地震 のロ シア との 共同 観測 に参 加し た事 を契機 に、 1995 年夏から、ロシア科 学 ア カ デ ミ ー の 極 東 地 域 の 研 究 機 関 と 日 本 の GPS 大 学 連 合 の 支 援 の 基 に、 サハ リ ン , カ ム チ ャ ッカ ,沿 海州 地方 に順 次、12 点の GPS 観測 点の 設置 を行っ てき た。 ま た 、各 観測 点で は短 い観 測期 間で 高精 度の 速度 ベクト ルを 推定 するために,連続観 測データの取得を目指した独自のシステムを開発した,

   こ れ ら の 観 測 網 か ら 得 ら れ た 1995 年 夏 お よ び 1996 年 夏 か ら 1997 年 11 月 ま で の 観測 デー タと ,IGS (International GPS Service for Geodynamlcs )が中国,韓 国 そ し て 日 本 に設 置し てい るGPS 観測 点の デー タを 統合 して ,高 精度解 析ソ フト ウ エ ア と 衛 星 精 密 軌 道 暦 を 用 い た 基 線 解 析 を行 って 各点 の日 毎の 座標値 を求 め、 そ れ に よ り 各 観 測 点 で の プ レ ー ト 運 動 を あ らわ す速 度ベ クト ルを 精度よ く求 めた .    その 結果 、サ ハリ ン北 部の Okha では ,ユ ーラ シアプ レー トに 対する速度ベクトル が ゼロ になり,この付近にユーラシア・オホーツクプレート相対運動の回転極が存在 することが明らかになった.この結果は,Seno et al. (1996) によって地震の震源メカ ニズムによるスリップベクトルから求められた回転極の位置と一致する.韓国とロシア

・ ウス リー(沿海州)地方の観測点では,ユーラシアプレートに対して東に約lcm/yr の 速度 ベクトルが観測され、これらの点を含むアムールプレートがユーラシアプレー ト か ら 独 立 し て 東 進 運 動 を 行 っ て い る こ と を 測 地 学 的 に 明 ら か に し た .    また,従来,オホーツクプレートに属していると考えられてきたサハリン南部のユジ ノ サハ リンスクが,約8mm/yr の東向きの速度ベクトルをもっていることが明らかにな り ,こ の地点はアムールプレートに属している可能性を示唆している.この結果と国 土 地 理 院 の 全 国 GPS 観 測 網か ら 得 ら れ た 北 海 道 北 部 の 速 度 場 , 最 近 の 地震 活動 , 約 100 年 間 の 測 地 測 量 網 によ る 歪 み 場 , 第 4 紀 地殻 変動 を合 わせ て検討 した 結果 , 北 海道 西方沖に存在するとされていたアムール・オホーツクプレートの境界は,北緯 44 度付 近で 東側 にト ラン スフ オー ムし 北海 道北 部で内 陸に 上陸 している可能性を提 案している。

     以 上のデータからアムールプレートの運動パラメータの推定を行い,ユーラシア プ レー トに対するアムールプレートの回転極は北緯71.6 度,東経15 3.4 度に求まり、

回 転速 度は 0.147rad/Ma と なっ た. これから日本海東縁部でのオホーツクプレートと ア ムー ルプ レー トの 収束 速度 が計 算さ れ, 約2.lcm/yr 〜0.6cm/yr と推定された.こ れ は従 来の プレ ート モデ ルか ら期 待される値と比較すると約1.5 倍の大きさである.

これは、この地域のプレート運動の枠組みを与えるとともに、地震テクトニクスに大き く貢献する物である。

   よっ て審 査員 一同 ,申 請者 が北 海道 大学 博士 (理学 )の 学位 を授与される資格を

有するものと認める.

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