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博士(歯学)百海 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(歯学)百海 学位論文題名

3 次元模型による口呼吸時の口蓋部の脱水・乾燥と      口腔内気流に関する実験的研究

学位論文内容の要旨

  【緒  言】

  口呼吸は,歯肉炎や歯周炎の発症や進行に深い関係をもつ重要な修飾因子であると考えられて いる。しかし,ロ呼吸と歯周疾患との関係にっいては,実証的な研究は極めて少なく臨床的経験 に基ずく主観的な報告がほとんどである。石川は,口呼吸常習者の口腔内がどのような環境にあ るのかを科学的に解明したいと考えて研究指導に取り組み,徐は,2次元模型を用いて,口呼吸 時の空気の流れにっいて可視化実験を行い,正中矢状断面上の口腔内の流れの様相を検索し,小 林は,同様の2次元模型を用いて正中矢状断面上の各部位の水分蒸発量を測定し気流と脱水・乾 燥との問に密接な関係があることを示唆している。しかし,実際の口腔内は,立体的な3次元構 造であり,その気流の動きは複雑で,2次元模型ではロ呼吸時の口腔内の気流の実態を十分解析 するのは困難である。そこで本研究は,より生体に近い状態での口呼吸の実態を明確にし,□呼 吸が歯周疾患ヘ与える影響を明らかにする目的で,実物大3次元模型型を作製しこれを用いて口 呼 吸 時 の 口 蓋 部 の 脱 水 ・ 乾 燥 状 態 と 口 腔 内 気 流 と の 関 係 を 検 討 し た 。

@《実験I》ロ呼吸時の口蓋部の脱水・乾燥の検討

  【実験材料および方法】上顎をプラスチックシーネ,下顎と舌は石膏模型で実物大3次元模型 を組み立て,咽頭部から風洞を用いて空気を吸引し,□呼吸の状態とした。上顎口蓋部に蒸発量 測定部位を10力所選び,各部位に蒸発量測定材料を設置した。予備実験の結果をもとに,室温を 25℃,湿度を54〜  63%の間に調整し,ヒトの1回換気量と同じ毎秒500mEを25分間連続吸気した 後 , 蒸 発 量 測 定 材 料 の 重 要 変 化 を 測 定 し て 各 部 位 の 蒸 発 量 を 求 め た 。

  【結果および考察】各部位のl cnfあたりの1分間の蒸発量は,大きく3っのグループ分けする ことができた。蒸発量が最も多い第1のグループは,中切歯,側切歯,犬歯の口蓋側辺縁部でそ

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れぞ れ20mg, 19mg,17mgで あった 。次い で第2のグ ループ は口 蓋中央 部で13mg,そして第3グルー プは 小臼歯 の口蓋 側辺 縁部でllmgと比 較的少 ない値 を示し た。

  第1のグル ープは ,臨 床上, 堤状隆 起を生 じや すい部 位と一 致して おり, □唇 から流 入して き た吸 気は, 上下顎 の切 歯間隙 を通過 し,ま ず,上 顎前 歯の口 蓋側辺 緑歯肉 と舌に衝突し,乱流を 起こ すため ,そこ には 剥離流 を生じ ,蒸発 量を増 すの ではな いかと 考えら れる。そして,水分を 吸 収 して か ら 咽 頭 方向 へ 進 ん で い くも の と 恩 わ れる。 また, 第2のグル ープは ,第1と第3の グ ルー プの中 間的な 位置 にあり ,口唇 方向か ら層流 状態 で直接 衝突し てくる 吸気と,よどみを生じ 停 滞し ている 空気 とが混 在する 結果生 じたエ リア と思わ れる。 さらに 第3のグル ープ は蒸発 量が 最 も少 ないエ リア で,第1の グルー プのエ リアを 通過し てき た吸気 がすぐ に流れ ずよ どむ傾 向を 示す 部位と 考えら れる 。すな わち, 空気の 流れが 少な く,停 滞して いるた め蒸発量が少ないので はな いかと 思われ る。 以上の 考察を 実証す るため には 口腔内 の気流 を可視 化することが必要と考 えら れる。 そこで ,実 験IIとし て,口 呼吸 時の蒸 発量と 口腔内 気流の 状態 との関連を解明するた め, 口呼吸 吸気時 の口 腔内気 流の可 視化を 実験を 行っ た。

@《 実験II》ロ呼 吸吸気 時の 口腔内 気流の 観察

  【 実験 材料お よび方 法】上 顎,舌 顎, 舌の全 てが透 明なプ ラス チック 板で作 製した 口腔3次元 模型 を, ガラス 製の水 流実験 装置 の中に 設置し ,咽頭 部から 吸水 するこ とによ り□呼吸の吸気時 の状 態を 引き起 こし,3次 元的な 口腔内 の流 況を観 察でき るよう,にした。模型の前方よルトレー サを 投入 し,吸 気時の 口腔内 気流 の状態 を可視 化した 。可視 化の 手法と しては ,ウラニン色素法 と水 素気 泡法を 用いた 。実験 時の 咬合関 係と水 流の状 態を以 下の ように 変化さ せ,流れの様相を 観 察 した 。1.定常 流にお ける 咬合様 式の違 い(正 常咬 合,上 顎前突 ,下顎 前突) によ る流況 の 変 化 の観 察(色 素法 )。2.正 常咬合 におけ る定常 流の 流速の 違い( 低速: 気流10cm7sec,水 流 O. 87cm7sec,中 速: 気流40cm/sec,水流3.5cm7sec,高速:気流100cm/sec,水流8.7cm/sec) に よ る流 況の変 化の 観察( 色素法 および 水素 気泡法 )。3.正 常咬合 におけ る非定 常流 時の流 况 の観 察( 色素法 および 水素気 泡法 )。

  【結 果およ び考察 】1.正常 咬合 と上顎 前突で は,流 れのパ ター ンは類 似して おり, 口腔 内に 流入 した流 体は上 顎前歯 を越え た後 ,口蓋 側歯肉 にそっ て流 れ,口 蓋中央へと達する。水平面か らみ ると正 中部に 向かっ て集中 化し ,かっ その収 束部位 は, 実験Iで蒸 発量が 最も多 かった 部位 と一 致して いた。 一方, 下顎前 突では,流体が口腔内に流入した初期には集中化傾向をみせるが,

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舌 と 下 顎 前 歯群 と の 間 に うず が 生 じ 乱 流 とな り 、 集 中 化せ ず 咽 頭 方向へ 進む傾 向を示 した。

  2.流 速が 遅い場 合には ,物体 は一体 化し て層流 状態の まま咽 頭方 向ヘ進 んだ。 一方, 流速が 速 い場合 には ,正中 部に向 かって集中化した後,そのまま口蓋に沿って咽頭部方向ヘ進む流れと,

第1大 臼歯部 付近で 左右 に分か れては 反転し て入 ルロ方 向に逆 流した 後,再 び咽 頭部へ 向かい , 循 環流( うず )が生 じた。 この循 環流 が臼歯 部辺縁 の脱水 ・乾燥 を引 き起こ し,第1大 臼歯付 近 ま で堤状 隆起 が形成 される 原因と なる のでは ないか と思わ れる。

  3.非 定常 流の流 況は, 流速の 異なる 定常 流の流 況が連 続的に 変化 しなが ら起こ ってい る状態 で あった 。

  【ま とめ】

  実 物大3次元 模型を 作製し これ を用い て□呼 吸時の 口蓋部 の脱 水・乾 燥状態 と口腔 内気 流との 関係を 検討し ,次 の結果 を得た 。

  1.口 呼吸時 の口蓋 側の蒸 発量 は,最 も多い のが前 歯の口 蓋側 辺縁部 であり ,次い で, 口蓋中 央部, 比較的 少な いのは 臼歯の 口蓋辺 縁部 であっ た。

  2. 透 明 な実 物 大3次 元模 型を用 いて水 中口呼 吸シ ミュレ ーショ ン装置 を作製 し, 水流に よる ウラニ ン色素 法と 水素気 泡法を 用いる こと により ,口呼 吸吸気 時の口 腔内 気流を可視化すること かでき た。

  3.口 呼吸吸 気時の 口腔内 気流 は,正 常咬合 と上顎 前突で は上 顎前歯 の口蓋 側歯肉 に沿 って流 れ,正 中部に 沿っ て集中 化して 収束す る傾 向を示 し,こ れが前 歯口蓋 側歯 肉辺縁部に脱水・乾燥 量が多 い原因 とな ってい ると思 われた 。一 方,下 顎前突 では, 下顎前 歯の 舌側にうずが生じ,流 体の集 中化は みら れなか った。

  4.臼 歯部で は,吸 気時の 流速 が遅い と気流 はよど んだま まで あるが ,中・ 高速に なる と吸気 流は一 部が逆 流し て循環 流(う ず)が生じ,これが臼歯部の脱水・乾燥の原因となると思われた。

  5.非 定常流 の流況 は,流 速の 異なる 定常流 の流況 が連続 的に 変化し ながら 起こっ てい る状態 であっ た。

  以上 の結果 から, 口呼吸 を行う と吸 気時の 口腔内 の気流 によ り,前 歯から臼歯の口蓋側歯肉辺 縁部の 水分蒸 発量 が多く なり, 歯肉を 悦水 ・乾燥 させて 組織の 防御カ を低 下させるとともに,歯 頚部に プラー クを こびり 付かせ 強く付 着さ せ,歯 肉炎を 悪化さ せるの では ないかと考えられた。

今後さ らに, ヒト の口腔 内の脱 水・乾 燥状 態を直 接測定 するこ とを試 み, 病理組織学的検索や細 菌叢の 検索な どと 組み合 わせ, 口呼吸 と歯 周疾患 との関 係をよ り明確 にし ていく必要があると思

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わ れる 。

学位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 教授 助教授

加藤 亀田 下河辺 吉田

  熈 和夫 宏功

静男 (工学部)

  □呼吸は,歯肉炎や歯周炎の発症や進行に深い関係をもつ重要な修飾因子であると考えられて いるが,□呼吸時の口腔内の乾燥と気流の実態の解明をめざした実証的な研究は極めて少なく,

わずかに,徐,小林らが,2次元模型を用いて,□呼吸時の空気の流れや各部位の水分蒸発量の 研究を行っているにすぎない。しかし,実際の口腔内は,立体的な3次元構造であり,その気流 の動きは複雑で,2次元模型では十分に解析するのは困難である。そこで本研究は,より生体に 近い状態で□呼吸の実態を明確にし,□呼吸が歯周組織ヘ与える影響を明らかにする目的で,実 物大3次元模型を作製しこれを用いて□呼吸時の口蓋部の脱水・乾燥状態と口腔内気流との関係 を検討した。

  《実験I》口呼吸時の口蓋部の脱水・乾燥の検討

  上顎をプラスチックシーネ,下顎と舌は石膏模型も実物大3次元模型を組み立て,咽頭部から 風洞を用いて空気を吸引し,ロ呼吸の状態とした。上顎口蓋部に蒸発量測定部位を10力所選び,

各部位に蒸発量測定材料を設置した。予備実験の結果をもとに,室温25℃,湿度54〜63%の間に 調整し,毎秒500mgを25分間連続吸気し,各部位の蒸発を測定した。

  その結果,各部位の蒸発量は,大きく3っのクごループに分けできた。第1のグループは,前歯 の口蓋側辺縁部で20〜17mgであった。第2のグループは口蓋中央部で15〜13mg,第3のグループ は小臼歯の口蓋側辺縁部で12〜llmgであった。第1のグループは,臨床上,堤状隆起を生じやす い部位と一致しており,□唇から流入した吸気は,切歯間隙を通過し,上顎前歯の口蓋側辺縁歯 肉と舌に衝突し,乱流を起こすため,剥離流を生じ,蒸発量が増すのではないかと考えられた。

第2のグループは,第1と第3のグルースの中間的な位置になり,口唇方向から層流状態で流れ

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てく る吸気 と,よ どみを 生じ ないで いる空 気とが 混在 する結 果生じ たェリ アと思 われ た。第3の グル ーフは ,空気 の流れ が少 なく, 停滞し ている ため 蒸発量 か少な いのではないかと思われた。

以上 の考察 を実証 するた めに は口腔 内の気 流を可 視化 するこ とが必 要と考え,□呼吸吸気を口腔 内気 流の可 視化実 験を行 った 。

  《実 験n》ロ呼 吸吸気 時の 口腔内 気流の 観察

  上 顎, 下顎, 舌の全 てを透 明な プラス チック 板で作 製した 口腔3次元 模型 を,ガ ラス製 の水流 実験 装置の 中に設 置し, 咽頭 部から 吸水す ること によ り口呼 吸の吸 気時の 状態を引き起こし,ウ ラニ ン色素 法と水 素気泡 法を 用いて 口腔内 気流の 状態 を可視 化した 。咬合 関係と水流の状態を変 化さ せ,流 れの様 相を観 察し た。

.そ の結果 、

  1.口呼 吸吸気 の口腔 内気 流は, 正常咬 合と上 顎前突 では上顎前歯の口蓋側歯肉に沿って流れ,

正中 部に分 かって 集中化 して 収束す る傾向 を示し ,こ れが前 歯口蓋 側歯肉 辺縁部に脱水・乾燥量 が多 い原因 となっ ている と思 われた 。一方 ,下顎 前突 では, 下顎前 歯の舌 側にうずが生じ,流体 の集 中化は みられ なから た。

  2.臼 歯部に おい ては, 吸気時 の流速 が遅 いと気 流はよ どんだ ままで ある が,中 ・高速 になる と吸 気流の 一部が 逆流し て循 環流(うず)が生じ,これが臼歯部の脱水・乾燥の原因にナょると思 われ た。

  3.非定 常流時 では, 流速 の異ナ ょる定 常流の 流況が 連続的に変化しながら起こっている状態で あっ た。

  以 上 の 実 験IとHの 結 果か ら,口 呼吸 を行う と,口 腔内の 気流 により ,前歯 から臼 歯の口 蓋側 辺縁 部の蒸 発量が 多くな り, 歯肉を 脱水・ 乾燥さ せて 組織の 防御カ を低下 させるとともに,歯頚 部 に プ ラ ー ク を 強 く 付 着 さ せ , 歯 肉 炎 を 悪 化 さ せ る の で は な い か と 考 え ら れ た 。   以 上 の 研 究 内 容に っ い て論文 提出者 に説 明を求 めた後 ,主査 および 副査 全員で 審査し 質問を 行っ たが, そのい ずれに っい ても適切な解答が得られた。なお,論文の一部の修正の指摘があり,

論 文提出 者は これを 認め訂 正する ことと した 。その 結果, 本論文 は, 実物大 口腔3次元 模型を 用 いて 口呼吸 モデル 実験装 置を 作製し ,口呼 吸時の 口蓋 部の脱 水・乾 燥を測 定したこと,さらに,

口 腔3次元模 型を水 中に 組み込 み流体 力学的 手法も 用い て,□ 呼吸吸 気時の 空気 の流れ を可視 化 し, その様 相を明 確に示 した ことは いずれ も高く 評価 でき, 博士の 学位を 授与されるに値するも のと 認定し た。

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参照

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