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博 士 ( 獣 医 学 ) 石 渡 賢 治 学 位 論 文 題 名

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博 士 ( 獣 医 学 ) 石 渡 賢 治

学 位 論 文 題 名

猫 条 虫 '1aenza taeniaeforrnz,s 感 染成 立 に お ける 宿 主 一 寄 生 虫 相 互 作 用 の 解 析

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  猫条 虫一マ ウス・ ラット の実 験系を 用いて ,包虫 症/嚢 虫症 の感染 防禦機 構の解 析,あるいは 宿主― 寄生 虫相互 作用の 解析を 試みた 。と くに, 体内に 侵入し た猫 条虫の 幼虫に 対する宿主応答 を個々 の感 染防禦 因子に っいてtn vwoある いはin vitroにお いて検 討し ,以下 の事柄を示した。

  猫 条 虫 感 染 に 対 し て 先 天 的 に 抵 抗 性 の マ ウ ス(BALB/c) の 遺 伝 子を 背 景 に も ち, か っ 機 能 的 なT,B細 胞 を 欠 損 し た 重 症 複 合 型 免 疫 不 全 症(Severe Combined Immunodeficiency Syndrome: SCID)の モ デ ル 動 物 であ るSCIDマ ウ ス を 用い て , 初 感 染虫 体 に 対 す る 宿主 応 答 の うちTお よ びB細 胞 に 依 存 する 応 答を明 確にし た。そ れら は好酸 球およ びマク 口フ ァージ の虫 体周囲 への 集簇, 感染初 期の虫 体殺滅 およ び虫体 周囲の 著明な 肝細 胞の壊 死であ った。一方,非 依 存性 応 答 は 虫 体周 囲 へ の 早 期多 形核 自血球 の遊走 および 線維 増多に よる虫 体の被 包化で あっ た。ま た細 胞移入 によっ て感染 防禦に おけ るT細 胞の 必要性 を示し た。

  ラッ トに感 染した 場合, 肝臓 内幼虫 周囲に 形成さ れる宿 主性 被膜に 肥満細 胞が著 明に増多する がマウ スの 場合極 めて稀 である 。この 肥満 細胞に っいて ラット にお けるそ の動態 および性状を組 織学的 に観 察した 。肥満 細胞は 感染後14日目 より宿 主性被 膜に 著明に 出現し ,28日 目頃にピーク を持つ 一峰 性の増 多を示 した。 この増 多1まヌー ドラ ットに おける同様の観察より胸腺依存性であ る こと が 明 ら か とな っ た 。 組 織化 学 的 お よ びcompound 48780に 対す る 脱 顆 粒性 の観察 から , 増多す る肥 満細胞 のうち ,感染 初期に 増多 する肥 満細胞 は粘膜 肥満 細胞夕 イプで あるが,感染経 過に伴 い粘 膜肥満 細胞と 結合組 織肥満 細胞 との中 間的な 性質を 有す る肥満 細胞が 現れ,感染後70 日目に は結 合組織 肥満細 胞タイ プの肥 満細 胞が観 察され た。こ のこ とは幼 虫周囲 の宿主性被膜内 で肥満 細胞 の分化 ・成熟 が起き ている こと を示唆 する。

  感染 初期虫 体への 宿主細 胞の 作用を 調べるために,虫卵を人工的に孵化・活性化させ,fnめと−

r0実 験 系 の 確 立を 検 討 し た 。テ ニ ア科条 虫卵の 活性化 に重 要であ るとさ れてき た不 溶性二 酸化 炭素は ,猫 条虫卵 の活性 化には 効果を 示さ ず,ま た人工 腸液に 加え る胆汁 はウサ ギ由来のものが

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有効 であっ た。活 性化し たオ ンコス フェア に対す るラッ ト血 清中の 易熱性 因子が非特異的に傷害 作用 を示し た。宿 主への 感染 血清の 受動移 入によ る防禦 効果 を調べ るため に,感染血清で前処理 した オンコ スフェ アを正 常ラ ット腹 腔細胞 と共培 養した 。オ ンコス フェア ヘの細胞の付着が観察 され たが, 非特異 的な細 胞付 着も見 られた 。付着 細胞の 多く は顆粒 球であ ったが,短期間の培養 では 付着細 胞によ るオン コス フェアの傷害は認められナょかった。次に,マウスの単核食細胞系の 貪食 能をブ ロック あるい は促 進させ ること によっ て,感 染初 期虫体 に対す る肝臓のクッパー細胞 の役 割を調 べたと ころ, 貪食 能をブ 口ック したマ ウスで 無処 理の対 照マウ スに比べて虫卵感染に よる 肝臓内 病巣数 が減少 した 。一方 ,促進 させた マウス では 対照マ ウスと 病巣数に差は見られな かっ た。こ のこと から, 単核 食細胞 系によ る虫体 物質の 取り 込みの 過多は 宿主の抵抗性を増強す ると いうよ りもむ しろ抑 制す る方向 へ働く 可能性 が示唆 され た。

  最後 に,感 染初期 虫体 による 宿主免 疫系の 調節 とその 感染性 にっい て検討 した。ラットに適応 し た 猫条 虫 株(MRn株 ) を マウ ス に 感 染 させ る と そ の 多 くが 変 性 ・ 死 滅し, 生残し た虫体 数は マ ウ ス に 適 応 し た 猫 条 虫 株(BMc株 ) よ り も 明 ら か に 少な い 。 し か しな が ら , 生 残し たMRn 株 虫 体 は 感 染 後12日 目 の 宿 主 脾 細 胞 のConA刺 激 によ る 幼 若 化 反応 をBMc株感 染 マ ウ ス のそ れよ りも抑 制した 。幼虫 体培 養上澄 中の物 質が高 濃度で 正常 マウス 脾細胞 の幼若化反応を抑制し た が,低 濃度で は増 強した 。この 抑制作 用は98℃,5分の 加熱処 理ある いは トリプ シン処 理で消 失 せ ず, ま たMRn株 で よ り 強い 傾 向 に あ っ た。 感 染虫体 による 宿主免 疫系 の抑制 能が強 いほど 感染 性が高 いとい う関連 性を 示すこ とはで きなか ったが ,感 染後生 残した 幼虫体による宿主免疫 系の 非特異 的な抑 制作用 が示 唆され た。

  猫条 虫の幼 虫に対 する 感染抵 抗性を 担う主 たる 防禦因 子を特 定する ことは できなかったが,こ のこ とは感 染防禦 が複数 の因 子によ ってな されて いる事 を支 持する 。

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学位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 教授 教授

神 谷 杉 村 板 倉 小 沼

正 男     誠 智 敏     操

  包虫症 /嚢虫 症は, テニア 科に 属する 条虫の 幼虫感 染に よって ヒトお よび家 畜に重篤な症状を 引 き起こ すこ とから 公衆衛 生上か つ畜 産上, 世界的 に問題 となっ てい る疾患 である 。同科に属す る 猫条虫 は宿 主とし てマウ ス・ラ ット をとり (肝臓 に寄生 ),ま た, その他 の同科 条虫と交叉免 疫 性のあ るこ とから 嚢虫症 の感染 防御 機構の 解析あ るいは 宿主― 寄生 虫相互 作用の 解析にしばし ば 利用さ れて きたが ,防御 因子の 特定 ,工フ ェクタ ー細胞 の関与 など にっい て未だ 明らかとされ る べき点 を残 してい る。

  そこで 申請者 は,猫 条虫の 幼虫 の感染 初期に おける 宿主 応答を 中心に 関連す る個々の感染防御 因 子にっ いて 検討し ,宿主 一寄生 虫相 互作用の解析を試みた。これらの結果をまとめた本論文は,

邦 文142頁 よ り な り, そ の 内 容 の一 部 をAPMIS(1991) ,Parasitology(1992)に 公 表 し, そ の 他,参 考論 文1編 を付 してい る。そ の内容 は次 のよう に要約 される 。

  1) 猫 条 虫 感 染 に 対 し て 先 天 的 に 抵 抗 性 の マ ウ ス (BALB7c)の 遺 伝 子 を 背景 に も ち , か つ 機 能 的 なT,B細 胞 を 欠 損 し た 重 症 複 合 型 免疫 不 全 症 の モデ ル 動 物 で あ るSCIDマウ ス を 用 い て , 初 感 染虫 体 に 対 す る宿 主 応 答のう ちTおよびB細 胞に依 存する 応答を 明確に した 。それ ら は 好酸球 およ びマ夕 口ファ ージの 虫体 周囲へ の集簇 ,感染 初期の 虫体 殺滅お よび虫 体周囲の著明 な 肝細胞 の壊 死であ った。 一方, 非依 存性応 答は虫 体周囲 への早 期多 形核白 血球の 遊走および線 維 増多に よる 虫体の 被包化 であっ た。

  2) ラッ ト に感染 した場 合, 肝臓内 幼虫周 囲に形 成さ れる宿 主性被 膜に肥 満細胞 が著 明に増 多 す るがマ ウス の場合 極めて 稀であ る。 この肥 満細胞 にっい てラッ トに おける その動 態および性状 を 組織学 的に 観察し た。肥 満細胞 は虫 卵感染 後14日目 より 出現し ,28日目 頃に ピークを持つ一峰 性 の増多 を示 し,こ の増多 がヌー ドラ ットに おける 同様の 観察よ り胸 腺依存 性であ ることを明ら か にした 。ま た増多 する肥 満細胞 のう ち,感 染初期 に増多 する肥 満細 胞は粘 膜肥満 細胞夕イプで あ るが, 感染 経過に 伴い粘 膜肥満 細胞 と結合 組織肥 満細胞 との中 間的 な性質 を有す る肥満細胞が 現 れ,感 染後70日目に は結合 組織 肥満細 胞タイ プの肥 満細 胞を観 察し, 幼虫周 囲の宿主性被膜内

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で肥満細胞の分化・成熟が起きていることを示唆した。

  3)感染初期虫体への宿主細胞の作用を検討した。まず宿主への感染血清の受動移入による防 御効果を調べるために虫卵を人工的に孵化・活性化させ,fn vLtro実験系の確立を検討した。活 性化したオンコスフェアに対してラット血清中の易熱性因子が非特異的に傷害作用を示し,既報 より補体仲介性であることを考察した。非働化感染血清で前処理したオンコスフェアを正常ラッ ト腹腔細胞と共培養し,オンコスフェアへの顆粒球の付着を観察したが,非特異的な細胞付着も 見られた。短期間の培養では付着細胞によるオンコスフェアの傷害は認められなかった。次にマ ウスの単核食細胞系の貪食能をブロックあるいは促進させることによって,感染防御における クッパー細胞の役割を調べ,単核食細胞系による虫体物質の取り込みの過多は宿主の抵抗性を増 強するというよりもむしろ抑制する方向ヘ働く可能性を示唆した。

  4)感染初期虫体による宿主免疫系の調節とその感染性にっいて検討した。ラットに適応した 猫条虫株(MRn株) をマウスに感染させるとその多くが変性・死滅し,生残した虫体数はマウ スに適応した猫条 虫株(BMc株)よりも明らかに 少ないが,MRn株虫体は感染 後12日目の宿 主脾細胞のConA刺 激による幼若化反応をBMc株 感染マウスのそれよりも抑制 した。この作 用物質は幼虫体培養上澄中に含まれ,この作用はMRn株でより強い傾向にあった。感染虫体に よる宿主免疫系の抑制能が強いほど感染性が高いという関連性を示すことはできなかったが,感 染 後 生 残 し た 幼 虫 に よ る 宿 主 免 疫 系 の 非 特 異 的 な 抑 制 作 用 を 示 唆 し た 。   以上のように,本論文は猫条虫一マウス・ラットの実験系により,宿主一寄生虫相互作用をよ り明確にした。また寄生虫側からの作用を検討に加えることによってさらにこの研究領域の枠を 広げたといえる。これらの結果は包虫症/嚢虫症の感染防御機構の解析に資するところが大きい と考える。よって審査員一同は,申請者石渡賢治氏が博士(獣医学)の学位を受ける資格が十分 あるものと認める。

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参照

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