博 士 ( 獣 医 学 ) 杉原 潔 学 位 論 文 題 名
In v レ〇pharmaCOdynamiCSStudieSOfCarbapenem
antibiotiCSagalnStf 〕 Seudbm 〇 . 口 aSaeru 舌 口 口 〇 Saand methiCiHin ― reSiStantS 己 夐 p カ ァ : め C 〇 CCuSaureUS
(緑膿菌とメチシリン耐性黄色ブドウ球菌に対するカルバベネム系抗菌薬の 面W 閉薬力学的検討)
学位論文内容の要旨
多 様 な 耐 性 菌 の 増 加 に 伴 い 、 有 効 な 抗 菌 薬 が 限 ら れ て き て い る こ と か ら 、 院 内 感 染 症 に 対 し て 経 験 的 投 与 が 可 能 な 広 域 ス ベ ク 卜 ラ ム の 新 規 抗 菌 薬 が 求 め ら れ て い る 。 Imipenem (IPM)やmeropenem (MEM)な ど カ ル パ ベ ネ ム 系 抗 菌 薬 は グ ラ ム 陽 性 菌 と グ ラ ム 陰 性 菌 両 者 に 対 し て 広 域 か つ 強 カ な 活 性 を 有 す る た め 、 重 症 感 染 患 者 に 対 し て 経 験 的 投 与 が 可 能 な 最 も 優 れ た 抗 菌 薬 の 亠 つ で あ る 。 一 方 、 メ チ シ リ ン 耐 性 黄 色 ブ ド ウ 球 菌(MRSA) と 緑 膿 菌 は 院 内 感 染 症 の 起 因 菌 と し て グ ラ ム 陽 性 菌 と 陰 性 菌 そ れ ぞ れ を 代 表 す る 最 も 問 題 と な る 菌 種 で あ る 。MRSAは 多 く の 院 内 感 染 症 の 原 因 菌 と な り 、 治 療 に 難 渋 す る 菌 種 で あ る 。 そ の 患 者 数 は ア メ1」 カ のICUに お い て は 年 々 増 加 傾 向 に あ り 、 死 亡 率 は 今 日 で はHIV 感 染 症 よ り も 高 い こ と が 報 告 さ れ て い る 。 ま た 、 緑 膿 菌 は 様 々 な 感 染 症 に お い て 最 も 分 離 頻 度 の 高 い グ ラ ム 陰 性 菌 の ー つ で あ る だ け で は な く 、 免 疫 不 全 患 者 や 重 症 感 染 患 者 に お け るそ の 死 亡 率 は6割 を 超 え る報 告 も あ る 。
, 抗 菌 薬 のpharmacokinticーpharmacodynamic (PK‑PD)解 析 は 臨床 効 果 を 予 測す る 上 で 有 用 で あ る こ と が 知 ら れ て い る 。 そ の バ ラ ヌ 一 夕 と レ て 、 薬 物 血 中 濃 度 が 最 小 発 育 阻 止 濃 度(MIC)を 超 え る 時 間(time above MIC, MIC)、 薬 物 血 中 濃 度 ― 時 間 曲 線 下 面 積(AUC) をMICで 除 し た 値AUC/MJC、 最 高 血 中 濃 度(Cmax)をMICで 除 レ た 値Cmax/MICの3っ が 知 ら れ て い る 。 カ ル パ ベ ネ ム 系 抗 菌 薬 の 薬 効 は MICに 依 存 す る こ と が 知 ら れ て い る ため 、 そ の 薬 効 に は 活 性 の み な ら ず 生 体 内 の 半 減 期 が 重 要 な フ ァ ク タ ー と な る 。 Tomopenemは 緑 膿 菌 に 加 え 、 既 存 カ ル バ ベ ネ ム の 適 応 外 で あ るMRSAに 対 し て も 強 い 抗 菌 活 性 を 有 す る 特 長 を 有 す る 。 さ ら に 、 ロMやMEMよ り 約2倍 長 し ゝ 半 減 期 を 有 す る た め 、 よ り 強 い 臨 床 効 果 が 期 待 さ れ る 。 筆 者 はtomopenemの 臨 床 効 果 を 予 測 す る こ と を 目 的 に 以 下 の 検 討 を 行 っ た 。 始 め に 、 臨 床 分 離 緑 膿 菌 とMRSAに 対 す るtomopenemのPK―PD 解 析 を 実 施 し た 。 次 に 、 得 ら れ たPK・PD解 析 結 果 を 参 考 にtomopenemの ヒ ト 体 内 動 態 を マ ウ ス で シ ミ ュ レ ー ト し 、 臨 床 分 離 緑 膿 菌 とMRSAに 対 す る 薬 効 を 確 認 し た 。 対 照 と し て 緑 膿菌 に 対 す るMEMの 治 療効 果 も 比 較 検 討し た 。
TomopenemのPK‐PD解 析 は 既 報 に 従 っ て 行 っ た 。 す な わ ち 、 緑 膿 菌 あ る い はMRSA を マ ウ ス 大 腿 部 に 接 種 し 、 接 種2時 間 後 か らtomopnemを 総 投 与 量400っ800,1600nlg爪 艀4 時間 と な る よ うに3,6,12,24時間 お き に投与 した(1,2,4,8分 割投与 )。投 与開始24時間 後 に 大 腿 部 内 生 菌 数 を 測 定 し 、 投 与 開 始 時 と 比 較 し て そ の 生 菌 数 が 同 等 以 下 で あ る 場 合 、 治 療 効 果 あ り と 判 定 し た 。Tomopenemの 薬 効 は 総 投 与 量 が 同 じ で あ る 場 合 、 投 与 回 数 に 依 存 し た こ と か ら 、DMICに 依 存 す る こ と が 示 さ れ た 。 ま た 、 緑 膿 菌 に 対 し てMEMも 同 様 に T冫MICに 依 存 す る 薬 効 を 示 し た こ と か ら 系 の 妥 当 性 が 証 明 さ れ た 。 投 与 開 始 時 と 同 等の 生 菌 数 を 維 持 す る 効 果 を 静 的 効 果 、 そ の 静 的 効 果 に 必 要 な 化 合 物 の 血 漿 中 フ リ ー 体 の24時 間
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に お け るT冫MICの 割 合 ( 彫T冫MIC) を タ ー ゲ ッ ト 値 と 呼 ぶ が 、 緑 膿 菌 に 対 す るtomopenem とMEMの タ ー ゲ ッ 卜 値 は そ れ ぞ れ29,24で あ り 、 ほ ぼ 同 等 で あ っ た 。 ま た 、tomopenemの MRSAに 対 す る 夕 一 ゲ ッ 卜 値 は27で あ り 、 緑 膿 菌 に 対 す る 値 と ほ ぼ 同 等 で あ っ た 。 こ れ ら の こ と か ら 、 緑 膿 菌 に 対 し てtomopenemの 薬 効 は MEMと 同 様 のPK‑PDプ 口 フ ァ イ ル を 示 し 、 さ ら に 、 夕 ー ゲ ッ ト 値 はMRSAと 緑 膿 菌 で 差 が 認 め ら れ な い こ と が 明 ら か と な っ た 。 次 に 、tomopenemの 臨 床 効 果 を よ り 詳 細 に 予 測 す る こ と を 目 的 と し 、 ヒ ト の 体 内 動 態 を マ ウ ス で シ ミ ュ レ 一 卜 し 、 臨 床 分 離 緑 膿 菌9株(MIC,4‑32 yg/mL)と 臨 床 分 離MRSA 9株(MIC,4‑16L‑r,g/mL)に 対 す る 治 療 効 果 を 評 価 し た 。 マ ウ ス に お け る 投 与 方 法 は tomopenem 750あ る い は1500 mgを ヒ 卜 に1日3回(TJD)、30分 の 点 滴 で 投 与 し た 場 合 の 丿 %1>MIC値 を 参 考 に 設 計 し た 。Tomopenem 750 mg TIDは 両 菌 種 のMICく8 yg/mL( 鵬T冫MlC 冫41) で あ る11株 中10株 に 、tomopenem1500mgTlDは 両 菌 種 のMlCく16いg/mL(/%T冫MlC 冫43) で あ る17株 中 16株 に 対 し て 薬 効 を 示 し た 。 本 モ デ ル に お い てMEMは 臨 床 の 最 高 用 量 で あ る1000mgTIDで 緑 膿 菌 のMlCく4川 叭nL( 彫T冫MIC冫33) の4株 中3株 に 対 し て 治 療 効 果 を 示 し た 。 こ の 結 果 はMJC4川 叭 乢 ま で が 感 受 性 と 判 断 さ れ る 臨 床 と 相 関 す る た め 、 本 モ デ ル は 臨 床 効 果 予 測 に 有 用 で あ る と 考 え ら れ た 。 こ れ ら の 結 果 よ り 、 緑 膿 菌 とMRSA に 対 し てtomopenemは750お よ び1500mgTIDに お い て そ れ ぞ れ ノ %T冫MlCが40% 以 上 得 ら れ るMlC8お よ び16H〆n止 の 株 ま で 有 効 性 を 示 す と 考 え ら れ た 。
抗 菌 薬 のPK ̄PD解 析 は 臨 床 効 果 を 予 測 す る 上 で 有 用 で あ る と 認 識 さ れ 、 標 準 的 方 法 が 確 立 さ れ つ っ あ る が 、 カ ル パ ペ ネ ム の よ う に マ ウ ス に お け る 半 減 期 が ヒ 卜 に 比 べ て 著 し く 短 い 抗 菌 薬 の 場 合 ( マ ウ ス と ヒ 卜 に お け るtomopenemの 半 減 期 は そ れ ぞ れ 約15分 と 約 1.8時 間 ) 、 薬 効 に 関 与 す るPK・PDバ ラ メ ー タ そ の も の が 正 し く 判 断 で き な い こ と が あ る 。 そ の た め 、 筆 者 は カ ル バ ベ ネ ム の 分 解 酵 素 で あ る マ ウ ス デ ヒ ド 口 ペ プ チ ダ ー ゼ1の 阻 害 剤 で あ るcilastatinを 使 用 し 、 さ ら に 総 投 与 量 だ け で は な く 一 回 投 与 量 当 た り のT冫MICが 十 分 得 ら れ る 投 与 量 を 設 定 し た 。 こ れ ら の 方 法 に よ り 、tomopenemの 薬 効 はT冫MICに 依 存 し 、 静 的 効 果 が 得 ら れ る タ ー ゲ ッ 卜 値 はMEMと 同 等 で あ る こ と が 示 さ れ た 。 ま た 、2つ の 検 討 に お け るtomopenemの1回 投 与 量 は 大 き く 異 な る が (4−90mg瓜gと50‐800mg/kg) 、 緑 膿 菌 に 対 し てtomopenemの 薬 効 はT冫MICに 依 存 し 、 そ の タ ー ゲ ッ ト 値 は3ロ40/%r冫MICで あ る こ と が 両 検 討 か ら 示 さ れ た 。 投 与 方 法 に よ りC…aエ /MICお よ びAUC/MlCは 変 動 す る が 、 こ れ ら の 関 与 は 認 め ら れ な く 、r冫MICが 薬 効 に 関 与 す る 主PK‐PDバ ラ メ ー タ で あ る こ と が 示 さ れ た 。 す な わ ち 、 抗 菌 薬 は 一 般 的 に 宿 主 へ の 関 与 は な い と 考 え ら れ る た め 、 マ ウ ス と ヒ ト で は 化 合 物 の 投 与 量 や 薬 物 動 態 が 異 な る が 、 マ ウ ス 大 腿 部 感 染 モ デ ル を 用 い て 適 切 な 投 与 方 法 か ら 得 ら れ るPK‐PD解 析 結 果 は 臨 床 で 得 ら れ る 結 果 を 反 映 す る と 考 え ら れ た 。 以 上 の こ と か ら 、 ヒ ト の 臨 床 効 果 はmレfv0薬 力 学 的 検 討 か ら 予 測 可 能 で あ る と 考 え ら れ た 。
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学位論文審査の要旨
学 位 論 文 題 名
ヱ わ vレ 〇 pharmaCOdynamlCSStudieSOfCarbapenem antibiotiCSagalnStf) Seud〇 m〇 , ロ aSaeru宮 コ 田 〇 Saand methiCillin‐ reSiStantS己 a仁 め ゥ イ ゐ C〇 CCuSaureuS
( 緑 膿 菌 と メチ シ リ ン耐 性 黄色 ブ ド ウ球 菌 に 対す る カル バ ベ ネム 系 抗菌 薬 の 血 ガ 閉 薬 力 学 的 検 討 )
近年、新規抗菌薬の研究開発は新多剤耐性菌の出現の一般報道などによって 医療分野のみならず広く社会の関心を集めており、非常に重要な研究開発分野 で ある。杉原 潔氏は、 本学位論 文におい て院内感染症で死亡率が高いことで 特 に問題とな っているMRSAや緑膿菌 に対する新規抗菌薬であるカルバペネム 系 抗菌薬tomopenemにっ いて独自 に改良したPKーPD解析を行い、tomopenemが 優れた薬効を持つことを明らかにするとともに、本解析法がヒトでの治療効果 予測や抗菌薬の用量・用法を科学的に設定するための有用な方法となることを 報告した。
PK‑PD解 析 と は 一 般 的 に 薬 の 薬 物 動 態pharmacokineticsと 薬 力 学 pharmacodynamics(いわゆる薬の活性)を組み合わせて薬効を解析する方法で ある。抗菌薬の投与量はこれまで経験的に定められてきたが、近年、薬効の増 強 や 副作 用 の 軽減 を 目的 として用 法・用量 を科学的 に設定す るために この PK‑PD解 析が試みら れるよう になって きている。既にPK‑PD解析は抗菌薬の分 野でも有用であると認識され、標準的方法が確立されっっあるが、問題点も存 在する。そのーっにマウスにおける半減期がヒトに比べて著しく短い場合、薬 効 に関与するPK‑PDパラメータそのものが正しく判断できなぃことがある点が 挙 げられる。 カルバペネム系抗菌剤もその一例であり、tomopenemのマウスに お ける半減期 は約15分とヒトにおける約1.8時間に比べ、非常に短い。そのた め、マウスに腎障害を引き起こすことにより半減期を延長する試みが多く報告 されているが、腎障害が本解析に与える影響は十分に検討されていなぃ。さら に、半減期を延長する方法を取らずに評価し、薬効がいずれのパラメータに相 ―27―
修彦 喜徹 定満 波木 口盛 稲鈴
、滝 山 授授 授授 教 教教 教准 査査 査査 主副 副副
関 す る の か 判 断 で き な い 結 果 を 報 告 し て い る 例 も 少 な く な い 。 第 一 に 、 杉 原 潔 氏 は 薬 効 がT冫MIC( 薬 物 血 中 濃 度 が 最 小 発 育 阻 止 濃 度 [minimum inhibitory concentration,MIC]を超える時間)に依存するカルバペネム の 場 合 、1回 投 与 量当 た り のI>MICを 十 分 確保 し 、マ ウ スにおけ る薬剤の 短い 半 減期とい う問題を 克服するた めに、カ ルバペネ ムを分解 すること が知られて い るマウス デヒドロペプチダーゼIの阻害剤cilastati11を併用すると同時に、投 与 量 を50mg/kg以上 と 高 く設定し た。これら の改善策 により、1回投与量 当た り のT冫MICの 確 保 が 可 能 と な り 、tomopenemと既 存 類 薬meropenemの薬 効 が T冫MICに依存す ることを 明らかにし た。マウ スに腎障 害を与え ずにカル バペネ ム で 明 確 なPK.PD解 析 結 果 を 示 し た 研 究 は 本 学 位 論 文 が 初 め て で あ る 。 第 二 に 杉 原 潔 氏 はtomopenemの 薬 効 はT冫MICに 依 存 し 、 投 与 量 の 変 化 に 伴う他のパラメータであるCl11ax/MIC(最高血中濃度[m麒imumc(mcentration, Cー び]をMICで 除した値).やAUC/MIC(薬物血中濃度一時間曲線下面積[area undercurve,AUC]をMICで除 した値) には依存し ないこと を本論文 において初 めて明らかにした。
最 後 に 、杉 原 潔 氏は 本 研究 に お いて マ ウス のPKlPD解 析 をも と にし た ヒ ト の 体内動態 に対する シミュレー ションモ デルを作 成した。 一般的に マウスとヒ ト では投与 量・投与 スケジュー ルが異な る場合でもPK.IPDプロファイルは同等 で あり、抗 菌薬は一 般的に宿主 への関与 はない。 従って、PK‐PD解析を 的確に 行 うことさ えできれ ば、ヒトへ の臨床効 果は予測 できると 考えられ ている。本 研 究 で 得 ら れ た シ ミ ュ レ ー シ ョ ン の 精 度は 非 常に 高 い こと か ら、 ヒ ト での tomopenemの治 療 効果 は こ のmv加D薬力 学 的 検討 か ら十 分に高 い精度で 予測可 能であることを明らかにした。
以 上の 様 に杉 原 潔 氏の 本 論文 は 、 抗菌 薬 評 価に お いてPK‐PD解析に新 たな 改 良を加え ることに より、新規 抗菌薬tonlopenemの 高い薬効 と優れた 特徴を初 め て明らか にしたも のであり、 広い意味 で本論文 は多剤耐 性菌に対 する他の抗 菌 薬開発に おいても 重要な意義 を持つ研 究である 。また、 本論文のPK―PD解析 に よ るmvわD薬 力学 的 検 討法は ヒトでの薬 効予測や 抗菌薬の 用法・用 量を科学 的 に設定す るための 重要な方法 論のーっ になるこ とも示し て韜り、 臨床への応 用 という点 で重要な 研究である 。よって 、審査員 一同は、 上記学位 論文提出者 杉 原 潔 氏が 博 士( 獣 医 学) の 学位 を 授 与さ れ るの に 十分 な資格を 有するも の と認めた。
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