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博士(歯学)鈴木豊典 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(歯学)鈴木豊典 学位論文題名

免疫 抑制物 質 APC0576 のヒト骨肉腫由来 MG ― 63      細 胞 培 養 系 に おけ る ケモカ イン なら びに マトリックスメタロプロテアーゼ遺伝子の発現抑制      学位論文内容の要旨

【緒言】

   免疫抑制効果を有する薬剤のうちいくっかの薬剤は,副作用として骨に対し ても作用し全身の骨量の減少をもたらすことが知られている,例えぱ,カルシ ニューリン阻害を作用機序とするシクロスポリンやタクロリムスは,動物実験 において用量依存的な骨量減少が報告されている.2002 年 Takehana らはヒト 臍帯静脈内皮細胞においてIL‑1[3 によるNF‑KB の活性化阻害を指標としてスク リーニングを行い,新規化合物APC0576 を同定した,この物質は免疫抑制作 用を有するとの報告もあるが,その詳細な作用の分子機構は不明であり,また 骨に対する作用にっいても明らかではない,本研究ではヒト骨肉腫由来の骨芽 細胞様細胞であるMG‑63 細胞の培養系を用いてAPC0576 が種々の遺伝子発現 にっいてどのような影響を及ぼすかを調べ,骨芽細胞に対する作用を明らかに することを目的とした.

【材料と方法】

  MG‑63 細 胞を 10 %ウ シ胎 児血清(FBS) , 100 yg/ml カナマイシン,2mML ‐

グノレタミン酸含有mlmmum essential medium alpha (a‑MEM) を用いて、100 mm

細胞培養用ディシュにて370C , 5 %C02 , 95 %気相下で培養を行った.培地は3

日毎に交換した.細胞がコンフルエントに達した後,1 %FBS 含有 a‑MEM に交

換し,炎症性サイトカインIL‑la ならびにAPC0576 を添加し培養を行った,経

時的に RNA を抽出し Rl 、.PCR 法およびりアルタイム定量RT‑PCR 法を用い,各

種 mRNA の 発現 量を 調べ た,ま た, APC0576 のMG‑63 細胞 に対する細胞障害

性などを調べるために, APC0576 を添加して培養しMTT 法を用いてその生細

胞数を測定した,培養上清中のIL‑8 タンパク量は,細胞の培養上清を採取し

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humanIし.8immunoassay kitを用いて測定した,

【 結果 】

  IL‑la(O.2ng/ml)を添 加し て12時間後のMG‑63細胞では,ケモカインである IL‑8,MCP‑1, マ トリッ クス メタ ロプ ロテ アー ゼ(MMP)で あるMMP‑1,MMP‑3, OPGな ら び にM‑CSFのmRNA量 は 増 加 し た . こ の と き 同 時 に10 vM APC0576 を 加 え て 培 養 し たと こ ろ ,IL‑8,MCP‑1,MMP‑1,MMP‑3な ら び にOPGのmRNA 量 はIL‑la単 独 で 添加し た場 合と 比べ て増 加量 は少 なか った .ま た,MG‑63細 胞 に お い てAPC0576はM‑CSF,al(I) プ ロ コ ラ ーゲ ン, オス テオ カル シン な ら び に オ ス テ オ ネ ク チ ン のmRNA発 現 量 を 変 化さ せ な か っ た .APC0576を10 uM以 上 添 加 し48時 間 培 養 し た 場 合 , 生 細 胞 数 が減 少し た,APC0576の 添加 の 有 無に かか わら ずIL‑laを 添加 し48時間 培養 後の 培養 上清 中のIL‑8タンパク量 に は違 いは 認め なか った .

【考 察】

  こ れ ま でAPC0576の 作 用 機 序 に っ い て は ,NF‑KBを 標 的 と しNF‑KB依 存 性 転 写 活 性 を抑 制 す る こ と が 報 告 さ れ て い る .IL‑8,MCP‑1,MMP‑1なら び に MMP‑3遺 伝 子 のIL‑laに よ る 発現 誘 導 に は い ず れ もNF‑KBの関 与が 報告 され て い る こ と か ら , 本 研 究 にお いて もAPC0576はNF‑1くBを介 する 転写 活性 化を 抑 制 し た 可 能 性 が 考 え ら れる .OPG遺伝 子のILーlaに よる 発現 誘導をAPC0576は 完全 に抑 制し たこ とか ら, この 発現 誘導 に関 わる シグ ナル伝 達経 路をAPC0576 は 標 的 と し う る こ と が 推察 され た,こ れま でOPG遺 伝子 の転 写活性 化に はp38 MAPKの 関 与 を 示 唆 す る 報 告 も あ り , 本 研 究 に お い てAPC0576はMG‑63細 胞 のp38 MAPKに 対 し て も 作 用 し そ の 経 路 を 阻 害 し た 可 能 性 が 考 え ら れ た .   al (I)プロ コラ ←ゲ ン, オス テオ カル シンならびにオステオネクチンといっ た 骨 芽 細 胞 の 産 生 す る マト リッ クスタ ンパ ク質 遺伝 子の 発現 調節 にお いて は NF KBの 関 与 は 現 在 ま で 報 告 さ れ て い ない , 本 研 究 に お い てAPC0576は こ れ ら のmRNA量 に 変 化 を 及 ば さ な か っ た こ と か ら ,MG‑63細 胞 に お い てこ れ ら の 遺 伝 子 発現 を 調 節 す る シ グ ナ ル 経 路 に はNF‑KBを 含 むAPC0576の 標的 と な る分 子が 関与 して いな いも のと 考え られ た.

  MMPの 産 生 をAPC0576が 抑 制 し た こ と は , 骨 吸 収 過 程 の 一 部 を 担 う骨 芽 細 胞が 関与 する マト リッ クス タン パク 質の 分解の抑制に作用しうる可能性を示唆 する と考 えら れた ,ま た,APC0576が 炎症 時に おい て炎 症性 細胞 の走 化性を誘 導 す るIL‑8な ら び にMCP‑1の 産 生 を 抑 制 し た こ と は ,骨 組織 にお いて 抗炎 症

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作用の一部を有していることも考えられた.マトリックスタンパク質のmRNA 量を変動させなかったことと併せて考えると,APC0576 は骨芽細胞に対しては 比較的副作用の少ない物質と推察された.しかしながら,APC0576 が10 vM 以 上の条件ではMG‑63 細胞の生細胞数の減少が認められたことから,高濃度の APC0576 は細胞に対して障害性を有するもしくはアポトーシスを誘導するとい う作用を有するかもしれなぃ。またAPC0576 によるIL‑8 mRNA の減少が48 時 間後には認められなかったことや培養上清中のIL‑8 タンパク質のレベルに変化 が認められなかったことから、その作用時間は比較的短時間である可能性も考 えられた,APC0576 の破骨細胞に対する作用や個体レベルで骨量にどのような 影 響 を 及 ば す か に っ い て , さ ら な る 研 究 が 必 要 と 考 え ら れ た .

【結論】

  APC0576 は,MG‑63 細胞に対してIL‑la により誘導されたIL‑8 ,MCP‑1 ,MMP‑1

, MMP‑3 ならびにOPG のmRNA 量を減少させる作用を有することが明らかとな った,これらより, APC0576 は,骨組織に対しては,骨芽細胞が関与するマト リックスタンパク質の分解の抑制ならびに抗炎症作用の一部を有している可能 性が示唆された.一方,APC0576 は,M‑CSF ,al (I )プロコラーゲン,オステ オカルシンならびにオステオネクチンmRNA 量は変化させず,APC0576 は骨芽 細胞のマトリックスタンパク質の産生には影響を及ぼさないことが推察された

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

免疫抑制物質APC0576 のヒト骨肉腫由来R/IG ―63 細胞培養系におけるケモカインならびに

マトリックスメタロプロテアーゼ遺伝子の発現抑制

審査 は,審査 員全員出席 の下に, 申請者に 対して提 出論文と それに関 連した学科目 にっ いて口頭 試問により 行われた .

  審査 論文の概 要は,以 下の通り である.

  本研 究 は ,NF‑KBの活 性 化を 抑 制 する こ とに よ り免 疫抑制作 用を発揮 する物質で あ るAPC0576の 骨 芽 細胞 へ の作 用 を 明ら か にす る ため に,ヒト 骨肉腫由 来の骨芽細 胞 様 細胞 で あ るMG‑63細 胞 の 培養 系 を 用い て ,APC0576の 遺 伝子 発 現に 及 ぼ す影 響 つい て検討し たもので ある.

  MG‑63細 胞を10%ウ シ胎 児 血清(FBS),100 t.cg/mlカナ マ イ シン ,2mML一グ ル タ ミン 酸含有minimum essential medium alpha (a‑MEM)を用いて,細胞培養用ディシュ に て37℃ ,50/0 C02,95%気相下で 培養した .培地は3日毎に交 換した. 細胞がコ ン フ ル エ ン ト に 達 し た 後 ,1%FBS含 有a‑MEMに 交 換 し , 炎 症 性 サ イト カ イ ンILlaな ら ぴ にAPC0576を 添 加 し 培 養 を 継 続 し た . 経 時 的 にRNAを 抽 出 しRT‑PCR法 およ び り ア ルタ イ ム 定量RT‑PCR法 を 用 しヽ , 各種mRNAの 発現量 を調べた .また,APC0576 のMG‑63細 胞 に 対 す る 細 胞 障 害性 を 調 べる た めに ,APC0576を添 加 して 培 養 しMTT 法 を 用い て そ の生 細 胞数を測 定した. さらに, 細胞の培 養上清を 採取しhuman IL‑8 immunoassay kitを 用 い て , 培 養 上 清 中 のIL‑8夕 ン バ ク 量 を 測 定 し た .   IL‑la (0.2 ng/ml)を添 加して12時 間後のMG‑63細胞では,ケモカインであるIL‑8, MCP‑1, マ ト リ ッ ク ス メ タ ロ プ ロ テ ア ー ゼ(MMP)で あ るMMP‑1,MMP‑3, な ら び にOPGやM‑CSFのmRNA量 は 増 加 し た . 同 時 に10 liM APC0576を 加 え て 培 養 し た 場 合 は ,IL‑8,MCP‑1,MMP‑1,MMP‑3な ら ぴ にOPGのmRNA量 はIL‑la単 独 で 添 加 し た場 合 に 比べ て 増加量は 少なかっ た.一方 ,APC0576は,MG‑63細 胞におい て,

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M‑CSF,al(I)プロコラーゲン,オステオカルシンならびにオステオネクチンのmRNA 発 現 量 を 変 化 さ せ な か っ た .APC0576を10 vM以上 添加 し,48時 間培 養した 際に , 生 細胞 数は 減少 した .IL‑la添 加,48時間培養後の培養上清中のIL‑8夕ンバク量は,

APC0576の添加の有無にかかわらず,違いはなかった・

  こ れ ま でAPC0576の 作 用 機 序 に つ い て は ,NF‑KB依 存 性 転 写 活 性 を 抑 制 す る こ と が 報 告 さ れ て い る .IL‑8,MCP‑1, MMP‑1顔 ら び にMMP‑3遺伝 子 のIL‑laに よ る 発 現 誘 導 に は いず れもNF‑KBの関 与が 報告 され てい るこ とか ら, 本研 究結果 にお い て も ,APC0576がNF‑KBを 介 す る 転 写 活 性 化を 抑制 した 可能 性が 考え られる .ま た OPG遺 伝 子 のIL‑laに よ る 発 現 誘 導 をAPC0576が 完全 に抑 制し たこ とか ら,APC0576 は こ の 発 現 誘 導 に 関 わ る シ グ ナル 伝 達 経 路 を 標 的 と し う る こ と が 推 察 さ れ た .   一方,al(I)プロコラーゲン,オステオカルシンならびにオステオネクチンといっ た 骨芽 細胞 の産 生す るマ トリ ック スタンノヾク質遺伝子の発現調節においてはNF‑KB の 関 与 は 現 在 ま で 報 告 さ れ て い な い . 本 研 究 に お い て ,APC0576は こ れら のmRNA 量 に 変 化 を 及 ほさ なか った こと から ,MG‑63細 胞に おい てこ れら の遺 伝子発 現を 調 節 す る シ グ ナ ル経 路に はNF‑KBを 含めAPく0576の標 的と なる 分子 が存 在して いな い ものと考えられた.

  こ れ ら の 結 果は ,APC0576は, 骨組 織に 対し て, 骨芽 細胞 が関 与す るマト リッ ク ス タン バク質の分解の抑制ならびに抗炎症作用の一部を有する可能性はあるものの,

骨芽細胞に対しては比較的副作用の少なしヽ物質であることを示唆している.ただし,

10vM以 上 の 条 件 で はMG‑63細胞 の 減 少 が 認 め ら れ , 高 濃 度 で は 細 胞 障 害性 を有 す ることも示された・

  論文の審査にあたって,論文申請者による研究の要旨の説明後,本研究ならびに関 連する研究について質問が行われた.

  主 な 質 問 事項 は ,1)IL‑la添 加 に よ り,mRNAレ ベル ではIL‑8が増 加し たの に,

夕ン バク レベ ルで は増 加しな かったのは何故か,2) NF‑KBの役割は,3)NF‑KBは慢 性炎症の際にも働いているのか,4)臓器移植時に免疫抑制剤とステロイド剤カキ併用 され るの は何 故か ,5) APC0576はシ クロ スポ リン と構造 が類似しているのか,6) MG‑63細 胞は 石灰 化能 を有 して いる のか ,7)RT‑PCR法 とり アル タイ ム定 量RT‑ PCR 法 で プ ライ マー が異な るの は何 故か ,8)免 疫抑制 剤の 作用 機序 は, 等で あっ た・

いず れの 質問 につ いて も,論 文申 請者 から 明快 な回 答が 得られ,また将来の研究の 方向性についても具体的に示された.

  本 研 究は ,APC0576は, 骨組 織に 対し て, 骨芽細 胞が 関与 する マト リヅ クス タン バク質の分解の抑制ならぴに抗炎症作用の一部を有する可能性はあるものの,骨芽細 胞に対しては副作用が比較的少なく,従来の免疫抑制薬に比べて骨代謝への影響が少 ない物質であることを明らかにした点が高く評価された.本研究の業績は,口腔外科 の分野はもとより,関連領域にも寄与するところ大であり,博士(歯学)の学位授与 に値するものと認められた.

参照

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