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博 士 ( 医 学 ) 柿 木 康 孝 学 位 論 文 題 名

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博 士 ( 医 学 ) 柿 木 康 孝

学 位 論 文 題 名

Gene expressions and activities of protein phosphatases PP l and PP 2 A in rat liver   regeneration after partial hepatectomy

(ラット肝部分切除後の肝再生過程におけるプロテインホスファターゼ

    PP1

とPP2A の遺伝子発現と酵素活性の変動)

学 位 論 文 内 容 の 要旨

  [目的]

  生体機能の基本的な調節機構のひとつに蛋白質のりン酸化・脱リン酸化がある。近年細胞増殖、分化、

癌化に蛋白質のりン酸化・脱リン酸化が関与しているという報告が数多くなされその重要性が認識されて いる。この場合、細胞内のシグナル伝達は標的蛋白質のりン酸化・脱リン酸化のパランス状態により可逆 的に制御される。プロテインホスフんターゼはこれらの標的蛋白質の脱リン酸化を触媒する酵素である。

  プロテインホスファターゼは現在セリン/スレオニンホスファターゼとチロシンホスファターゼに大別 され、 セリン /スレオ ニンホスファターゼ(以下PP)はさらにPP1、PP2A、PP2B、PP2Cのサプタイ プに分 けられ 、さらに これら各々にはa、p等のイソホ―ムがある。細胞内PP活性の大部分はPP1PP2Aに基ずくことが明らかにされている。

  われわれは、これまでにラット移植性腹水肝癌をモデルにPPの変化を検討し、PP1のイソホームの ひとつであるPPlamRNA、タンパク質の両レペルでこれら肝癌において選択的に増加していること を明らかにしてきた。

  本論文においては、生理的条件下での細胞増殖におけるPP1およぴPP2Aの役割を明らかにする目的 で、ラット肝部分切除後の肝再生過程におけるPPlおよぴPP2Aの遺伝子発現、蛋白発現、酵素活性等 の変動を検討し、その生理的意義について考察する。

  [方法]

  WU岨觚Kmラット( 雄、18200g)の肝臓をHigginsandAndersmの方法に準じて約70%の部分切除 を行い、各時間後のラットを屠殺し、肝を摘出してサンプルとした。細胞分画法は基本的にBlobcland Ponerの方法に準じKureIらの変法にしたがった。すなわちショ糖の密度勾配をかけて124000xgで遠心 後、上清を非核画分とし沈殿をさらにO.5%T血mで洗浄し、再沈殿させたものを核画分とした。酵素活 性はCohenらの方法に準じ、3ヤでラペルしたホスホリラーゼaを基質として用いた。この測定系では PPlPP2Aのみが測定でき、更にインヒピター2の有無によりPP1とPI唸Aの分別定量ができる。また、

(、′ヂィオン存在下トリプシン処理、あるいは2ーメルカプトエタノール添加凍結融解処理によりそれぞ れPPl、PP2Aが活性化されることが知られており、これらによる活性変化もあわせて検討した。本論文 ではこれら処理前の活性をspontar崩Ms活性、処理後の活性をpotential活性と呼ぷ。酵素1単位は1分間 に1umolの りン 酸を遊離 するの に要する 酵素量と 定義す る。ノー ザンプ ロットはAcdGuimnium 111iocyanale1Phenol‐のlomfo|1n法によりtotalRNAを抽出し、1サンプルあたり20pgのめtalRNAを電気 泳動し、その後ニトロセルロース膜にプロットし、PPla、PP2AのcDNAフラグメントをプロープにして

‑ 339

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ハ イ プ リ ダ イ ズ し た 。 イ ン タ ー ナ ル コ ン ト ロ ー ル と し て ラ ッ ト ア ル プ ミ ンcDNAを用 いた 。   [結果]

  遺伝子発現:

  PPla mRNAは 肝 部 分 切 除 後6時間 より 上昇 し、 以後12時間 と48時間 にピ ーク を示 した 。PP2A mRNAは肝部分切除後6時間に著増し、その後すみやかに減 少し、lO‐12時間に再上昇する2相性のバ ターンを示した。

  酵素活性:

  非核画分ではPPl、PP2Aのspont卸eous活性は肝部分切除後7日目まで両者ともlmU′mg前後とほぼ 一定の値を推移したが、PPlのp0にnda亅活性は7‐12時間にコントロールに比べ1.5倍の増加を示した。

核幽分では、PPl活性は肝部分切除後4・7時間より上昇しはじめ12時両にコントuールの2.4倍まで上 昇し、以後すみやかに減少し7日目までにはコントロールレペルにもどった。PP2A活性は全経過を通じ てきわめて低値を推移した。

  [考察]

  本研究においてわれわれは、核内PPl活性が肝部分切除後12時間にー過性に上昇することを示した。

70%肝部分切除後の肝細胞の再生動態は肝部分切除後12.16時間よりDNA合成が開始され、24時間にピ ークに達することより、核内PPl活性の一過性上昇が認められる12時間は肝細胞周期の観点から考える と、Gl/s移行期にあたる。現在、哺乳動物における細胞周期はGl後期ないしG1/s移行期にRB夕ンバ クがりン酸化され、その結果DNA合成に必要な種々の転写因子がRBタンバクより離れ活性化されること によりDNA合成が開始されるとする考えが主流であり、わ れわれが示したGl/s移行期にPPl活性が上 昇することと矛盾するように思われる。しかし、肝部分切除後の肝再生過程におけるRBタンバクのりン 酸化状態は一般論と多少挙動を異にするとする報告もあり渾沌としている。Gl岱移行期の核内PPlの標 的蛋白の解明は今後の課題である。

  今回の研究では(1)タンバクレベルでの検討がなされていないこと、(2)ラット肝のPP1のイソホ ームにはぱ、6、YlがあるがaのみのmIu吋Aしか検討していないこと、(3)m晒v0の.系であるので PPl活性変化と肝細胞増殖との関係が不確かなこと、などの問題点がある。そこでわれわれはこれらの問 題点を解決すべく、初代培養 肝細胞の培養液にEGFを添加 し肝細胞を同調的にDNA合成に誘導する系 を利用しこれらの問題点の解決を試みた。結果は初代培養肝細胞においてもG1岱移行期に核内PPl活性 が一過性に上昇し、さらにこの系にその作用点がGl後期ないしGl/s移行期にあるとされている1・G耶1 を加えるとこの核内PPl活性の上昇は1℃邱1の増殖抑制効果依存的に抑制された。これらのことより核 内PPlは肝細胞のDNA合成に対 し正の制御をしている可能性が考えられる。また核内PPlの蛋白量は活 性変化にかかわらず3つのイソホーム共に一定であった。従ってG1馬移行期に上昇する活性変化の機序 として、蛋白翻訳後の修飾が考えられる。これらの結果は参考論文として提出した論文(1)に記載され ている。

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(3)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

Gene Expressions And activities of protein phosphatases PP l and PP 2 A in Rat liver   regeneration after partial hepatectomy

( ラ ッ 卜 肝 部 分 切 除 後 の 肝 再 生 過 程 に お け る プ 口 テ イ ン ホ ス フ ァ タ ー ゼ     PP1とPP2Aの 遺 伝 子 発 現 と 酵 素 活 性 の 変 動 )

    I. 目 的

  生 体 機 能 の 基 本 的 な 調 節 機 構 の ひ と つ に 蛋 白 質 の り ン 酸 化 ・ 脱 リ ン 酸 化 が あ る 。 近 年 細 胞 増 殖 、 分 化 、 癌 化 に 蛋 白 質 の り ン 酸 化 ・ 脱 リ ン 酸 化 が 関 与 し て い る と ぃ う 報 告 が 数 多 く な さ れ そ の 重 要 性 が 認 識 さ れ て い る 。 こ の 場 合 、 細 胞 内 の シ グ ナ ル 伝 達 は 標 的 蛋 白 質 の り ン 酸 化 ・ 脱 リ ン 酸 化 の バ ラ ン ス 状 態 に よ り 可 逆 的 に 制 御 さ れ る 。 プ ロ テ イ ン ホ ス フ ん タ ー ゼ は こ れ ら の 標 的 蛋 白 質 の 脱 リ ン 酸 化 を 触 媒 す る 酵 素 で あ る 。

  プ ロ テ イ ン ホ ス フ ァ タ ー ゼ は 現 在 セ リ ン / ス レ オ ニ ン ホ ス フ ん タ ー ゼ と チ ロ シ ン ホ ス フ ん タ ー ゼ に : 大 別 さ れ 、 セ リ ン / ス レオ ニン ホ スフ んタ ーゼ (以 下PP) は さ ら にPP1、PP2A、PP2B、PP2Cの サ プ タ イ プ に 分 け ら れ 、 さ ら に こ れ ら 各 々 に は イ ソ ホ ー ム が あ る 。 細 胞 内PP活 性 の 大 部 分 はPP1とPP2Aに 基 ず く こ と が 明 ら か に さ れ て い る 。

  わ れ わ れ は 、 こ れ ま で に ラ ッ ト 移 植 性 腹 水 肝 癌 を モ デ ル にPPの 変 化 を 検 討 し 、 PP1の イ ソ ホ ー ム の ひ と つ で あ るPPlocがmRNA、 タ ン バ ク 質 の 両 レ ベ ル で こ れ ら 肝 癌 に お い て 選 択 的 に 増 加 し て い る こ と を 明 ら か に し て き た 。   本 論 文 に お い て は 、 生 理 的 条 件 下 で の 細 胞 増 殖 に お け るPP1お よ ぴPP2Aの 役 割 を 明 ら か に す る 目 的 で 、 ラ ッ ト 肝 部 分 切 除 後 の 肝 再 生 過 程 に お け るPP1お よ びPP2Aの 遺 伝 子 発 現 、 蛋 白 発 現 、 酵 素 活 性 等 の 変 動 を 検 討 し 、 そ の 生 理 的 意 義 に つ い て 考 察 す る 。

   

(4)

    IL方法

  WKAH/HKmラ ッ ト ( 雄 、180‑200g) の肝 臓 をHiggins and Andersonの 方 法に 準じ て 約70% の部 分 切 除を 行 い く各 時 間後の ラットを 屠殺し、 肝を摘出 してサ ンプルと した。細 胞分画法 は基本的 にBlobel and Potterの方法に準じKurelらの 変法 に し たが っ た。 す な わち シ ョ糖 の 密度 勾配をか けて124000xgで遠 心後、上 清を 非 核 画分 とし沈殿を さらに0.5%Tritonで洗浄し 、再沈殿 させたも のを核画 分とした。

  酵 素 活性 はCohenら の方 法 に 準じ 、32Pで ラ ベ ルし た ホス ホ リ ラー ゼaを基質 とし て 用 いた 。 この 測 定 系で はPP1とPP2Aの み が測 定 でき 、 更 にイ ン ヒピタ ー 2の 有 無 に よ り PP1と PP2Aの 分 別 定 量 が で き る 。 酵 素1単 位 は1分 間 に1 Lunolのりン酸を遊離するのに要する酵素量と定義する。

  ノーザンプロットはAcid Guanidinium Thiocyanate‑Phenol‑Chloroform法により total RNAを抽 出し、1サ ンプルあた り20 ptgのtotal RNAを電 気泳動し 、その後 ニ ト ロ セ ル ロ ー ス 膜 に プ ロ ッ トし 、PPla、PP2AのcDNAフ ラ グメ ン トを プ ロ ー プにしてノヽイプリダイズした。インターナル′コントロー・ルとしてラットアルプ ミンcDNAを用いた。

    m.結果 遺伝子発現:

  PPla mRNAは 肝 部 分 切 除 後6時 間 よ り 上 昇 し 、 以 後12時 間 と48時 間 に ピ ー ク を 示 し た 。PP2A mRNAは 肝 部 分 切 除 後6時 間 に 著 増 し 、 そ の 後 す み や か に 減 少 し 、 10‑12時 間 に 再 上 昇 す る 2相 性 の パ タ ー ン を 示 し た 。 酵素活性:

  非 核 画 分 で はPP1、PP2A活 性 は 肝 部 分 切 除 後7日 目 ま で 両 者 と も1mU/mg 前 後 と ほ ぼ 一 定 の 値 を 推 移 し た。 核 画分 で は 、PP1活 性 は肝 部 分切 除 後4‑7時 間よ り 上 昇し は じめ12時間 に コ ント ロ ール の2.4倍ま で 上昇 し 、 以後 すみ やか に減 少 し7日 目ま で には コ ン トロ ー ルレ ベ ル にも ど った 。PP2A活 性は 全経 過を 通じてきわめて低値を推移した。

    IV.考察

  本 研 究に お いて わ れ われ は 、 核内PP1活性 が 肝 部分 切 除後12時間 に 一過性 に 上昇 す る こと を 示し た 。70%肝 部 分切 除 後 の肝 細 胞 の再 生 動態 は 肝 部分 切除後 12‑16時 間 よ りDNA合 成が 開 始 され 、24時 間 にピ ー ク に達 す るこ と よ り、 核 内 PP1活 性 の 一過 性 上昇 が 認 めら れ る12時 間は 肝 細 胞周 期 の観 点 か ら考 える と、

Gl/S移行期にあたる。

  S期 移 行 にお け る核 内PP1の役 割 をよ り 詳細に検 討するた め、初代 培養肝細 胞 の 培 養 液 にEGFを 添 加 し肝 細 胞 を同 調 的にDNA合 成に 誘 導 する 系 を利 用 し た。

結果 は 初 代培 養 肝細 胞 に おい て もGl/S移 行期に 核内PP1活性 カ‑過性に 上昇し、

さ ら に こ の 系 に そ の 作 用 点 がGl後 期 な い しGl/S移 行 期 に あ る と さ れ て い る TGFpiを 加 え る と こ の 核 内PP1活 性 の 上 昇 はTGFpiの 増 殖 抑 制 効 果 依 存 的 に

(5)

抑制された。

  

これらのことより核内PP1 は肝細胞の

DNA

合成に対し正の制御をしている可 能性が考えられた。また核内PP1 の蛋白量は活性変化にかかわらず3 つのイソ ホーム鴿71 ,

6

共に一定であった。従ってGl/S 移行期に上昇する活性変化の機 序として、蛋白翻訳後の修飾が考えられた。

  

以上より、本研究は博士(医学)の学位論文として妥当なものと判断される。

参照

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