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保険募集規制改革の背景と意義

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■アブストラクト

2016年⚕月29日に施行された改正保険業法は保険募集規制の抜本的な改革 を主眼としている。保険業法は1996年に金融ビッグバンの一環として大きく 改正されたが,その際に保険募集規制に関する改正は先送りされることにな った。今般の改正によって,1980年代末に始まった保険制度改革の動きは遂 に完結を迎えることになる。

新しい保険募集規制においては,保険募集人の義務として,意向把握義務,

情報提供義務,意向確認義務,体制整備義務が法定される。これら義務の法 定には⚓つの意義がある。第一に⽛対話をベースにした保険募集の開始⽜,

第二に⽛代理店経営の高度化⽜,第三に⽛乗合代理店による比較推奨販売の 本格実施⽜が実現することである。今回の規制改革によって,消費者は保険 募集における⽛昔ながらの保険募集の方法⽜から解放され,適切な比較説明 と推奨を含め,自らの意向に沿った保険への加入という本来有すべき権利を 享受することになる。

■キーワード

保険制度改革,保険募集人の義務,比較推奨販売

⚑.はじめに

2016年⚕月29日に施行された改正保険業法1)は保険募集規制改革を主眼と / 平成28年⚘月16日原稿受領。

1) 2013年⚖月11日に公表された金融審議会・保険 WG 報告書⽛新しい保険商

保険募集規制改革の背景と意義

栗 山 泰 史

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し,これによって新しい保険募集ルールが登場する。以下では,新しいルー ルが登場する歴史的経緯を辿り,それが保険募集にもたらす意義について述 べてみたい。

⚒.保険業法改正に至る経緯

わが国において保険業法が最初に制定されたのは1900年(明治33年)であ る。その後,これは1939年(昭和14年)に改正され,それから57年を経た 1996年(平成⚘年),当時の橋本龍太郎政権の下で推進された金融ビッグバ ンによって抜本的な改正が行われている。

保険事業が保険業法という法律によって規制される根拠は,保険事業の公 共性と消費者保護に求めることができる。具体的な柱としては大きく二つあ るといってよいであろう。それは保険を巡って消費者に混乱が生じる局面を 想定すると容易に理解できる。一つは保険会社の経営の乱れによる破綻であ る。多くの保険契約者が保険金や満期金を受け取ることができずに大混乱が 生じる。もう一つは保険の募集現場における保険募集人の不適切な行為であ る。説明の不足や虚偽に始まり,不適切な乗換募集や圧力募集等の行為がこ れに含まれる。いずれも消費者保護上,あってはならない事象である。これ らから消費者を保護することこそが保険事業に対する公的規制の最も大きな 理由といってよいであろう。すなわち,保険会社の経営と保険募集人による 保険募集が保険業法によって規制される主要な二本柱である。

⑴ 保険会社の経営に関する規制改革

1996年に保険業法が抜本的に改正されるまでの保険行政は護送船団行政と 呼ばれるものであった。当時,保険を監督する大蔵省は保険会社の業務の多

品・サービス及び募集ルールのあり方について⽜をベースに国会において法改 正の審議が行われ,2014年⚕月23日⽛保険業法等の一部を改正する法律⽜が成 立した。その後,内閣府令・監督指針が定められ,2016年⚕月29日に施行され た。

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くの分野に細かく関与し,⽛箸の上げ下げにまで介入する⽜と言われる状況 が長く続いた。

こうした規制は保険会社の破綻から消費者を保護するために行われたもの であるが,結果的に業界保護につながったことは否定できない。1980年代後 半以降の自由化・規制緩和の動きの中で,銀行・証券・保険三位一体の改革 が指向され,1990年代半ばにおいて⽛金融ビッグバン⽜と称される大改革が 行われた。保険に関しては1996年の保険業法改正によって,保険商品の自由 化,生損保の相互乗り入れ,保険契約者保護制度の創設等の改革が行われた。

それまでのように,保険会社経営への介入によって破綻を回避するという形 ではなく,破綻に対する一定の牽制2)は行うものの保険会社の経営の自由度 を増すことで消費者の利便性の向上を図り,それによって生じる保険会社の 破綻に際しては,保険契約者を直接保護する体制3)が出来上がったのである。

金融ビッグバンによる保険の自由化以降,保険会社の経営は大きく変化す ることになった。画一的であった商品が多種多様なものになり,業態間の垣 根が低くなって,保険会社間の競争は劇的に激しさを増した。競争に加え,

金融環境の変化や業務の複雑化により,多くの保険会社が破綻によって姿を 消すことになる一方で,保険会社の合併が次々に行われた。そして,ERM の浸透により,いまや巨大化した保険会社の活動の舞台は世界にまで広がっ ている。

⑵ 保険募集規制改革の先送り

保険会社の経営に関する規制が1996年の保険業法改正によって大きく変化 する中で,規制のもう一つの柱である募集はどう扱われてきたのだろうか。

保険募集に関する法的規制は1948年(昭和23年)の⽛保険募集の取締に関す 2) 商品認可等の従来の規制に加え,ディスクロージャー制度の充実,ソルベン

シーマージン比率に基づく早期是正措置制度の創設が行われた。

3) 保険契約者保護機構の創設等の保険契約者保護制度がこれに該当する。1998 年12月に創設され,その後,2000年⚖月,2006年⚔月に制度の見直しが行われ ている。

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る法律(以下,⽛募取法⽜)⽜に遡る。⽛取締⽜という言葉に,この法律が制定 された時代的背景としての保険募集における乱れが象徴的に表れている。戦 後の混乱の中で,消費者を害する保険募集人による不祥事が頻発し,それを 取り締まることを目的として保険募集に関する規制が本格的に導入されるこ とになったのである。

募取法は,保険募集人が⽛してはならない行為⽜を列挙する行為規制を核 とし,当該行為に対する罰則を定める点に特色がある。逆にいえば,今回の 改正保険業法のように保険募集人が⽛しなければならない行為⽜を義務とし て定め,義務違反に対して行政処分を行うという内容にはなっていない。

そして,1996年の保険業法改正時に,保険募集に関しては水面下での議論 は種々行われたものの,結果的には募取法が中身を大きく変えることなく新 法に引き継がれることとなった4)。すなわち,この時点で募集に関する規制 改革は先送りされることになったのである。

一方で,保険と異なり,銀行や証券が行う金融商品の募集については,金 融ビッグバンによる自由化の中で消費者保護を目的として全面的な改革が行 われることになった。銀行法が改正され,金融商品取引法が制定されること によって,丁寧な説明や適合性の原則の導入による消費者の実態に即した金 融商品の販売が募集人に義務付けられることになった。この点で,保険と金 融商品では対極的な相違がみられたのである。

保険に関し,金融商品と異なる対応となった理由は,商品の特性がもつ消 費者にとってのリスクの相違や,保険仲立人に関する議論を優先する中で保 険募集全般については十分な時間を費やすことができなかった等が上げられ るが5),実態的には,従来からの募集形態の維持が保険の普及には効果的で

4) 保険業法第300条第⚑項各号等。

5) 金融審議会⽛保険商品・サービスの提供等の在り方に関するワーキング・グ ループ⽜(第⚕回)議事録 山下友信委員の発言より抜粋

⽛1995年の業法改正のときは,(中略)この情報提供に関するあたりは,旧募 取法をそのまま引き継いだというか,あまりそこは検討が行われませんで,当 時は保険仲立人の導入をどうするかで大騒ぎでした。また,あわせて95年改正

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あるとの現実感が存在したことは大きな理由の一つであったと思われる。

明治に近代的な形で保険が導入されて以来,保険募集は欧米のようなリス ク・マネジメントをベースとする姿とは異なる形で進化してきた。1879年

(明治12年)に営業を開始した東京海上保険会社は,三井物産や三菱会社

(現在の三菱商事),日本郵船等を代理店として海上保険の募集を開始してい る。また,1888年(明治21年)に営業を開始した東京火災保険会社は,地域 の名士を代理店とすることで火災保険の募集を開始している6)。すなわち,

有力者を代理店とすることで,それらが有する⽛力⽜を保険募集の原動力に したのである。

また,生命保険の場合は,大正後期から昭和初期にかけて歩合給制の外務 員が営業職員として採用され,募集の中核を担うこととなった。そのような 中で,第二次大戦後,大手生保を中心に女性が大量に採用されることになり,

現在にも続く生保募集における一つの特色を形成することになった。そうし た大量の営業職員による保険募集に対しては,効率性の観点からの批判や

⽛G(義理)N(人情)P(プレゼント)⽜といった募集方法への揶揄がある ものの,これが,わが国の保険の歴史の中で,特に生命保険の普及に大きく 貢献したことはいうまでもないであろう。

いずれにしても,保険の普及においては,消費者の持つリスクを把握し,

それに見合う保険を丁寧に説明するという募集方法よりも,消費者と保険募 集人の⽛人間関係⽜に基づく募集方法が勝っていたのである。そして,その 結果,この国においては顧客からの⽛ハンコを押すから後はやっておいて⽜

に至る当時というのは,まだ広い意味での金融商品に関して情報提供を義務づ けるという,そこら辺の発想があまり本格的には出てこない時代だったのだろ うと思います。その後徐々にバブルの崩壊で,変額保険や証券などいろいろな 事故があり,そのトラブルの解決の過程で,やはり情報提供の義務づけが必要 という中で,100条の⚒の体制整備というやや間接的な方法を使って,いろい ろな義務を導入してきたという経緯かと思います。⽜。

6) 設立認可は,東京海上が1878年(明治11年),東京火災が1887年(明治20年)

である。

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とか,逆に保険募集人からの⽛申込書にハンコを押してもらえば後はやって おきます⽜というような欧米には見られない消費者と保険募集人のやり取り が日常的な風景になり,それは現在にまで色濃く残っている。

このように保険募集の実態を見ていくと,金融ビッグバンの際に金融商品 と保険で募集規制に差が設けられた背景が理解できるであろう。国民の意識 の底流に保険募集人による丁寧な説明を忌避する傾向がある中で,金融商品 であれば丁寧な説明に嫌気がさして購入を止めてもお金は銀行口座に残り,

そのお金は経済に貢献する。しかし,保険の場合は単に無保険になるだけで あり,それは国民が裸でリスクにさらされることを意味する。

昔ながらの保険募集の方法は,消費者がしっかりと保険の内容を理解した 上で加入するという点では大きな限界があるものの,当時においては,保険 の普及という観点でまだまだ有効な方法であったことは否定できない事実で あったのではないだろうか。

⑶ 保険制度改革の完結

変えることなく温存された保険募集に焦点が当たることになったのが2005 7)の⽛保険金支払い漏れ事件⽜である。保険自由化によって保険商品が多 様化,複雑化したものの,昔ながらの募集方法では保険募集人による十分な 説明は行われることはなく,消費者は自らが加入した保険について十分にそ の内容を理解するに至ることはなかった。その結果,消費者は保険金支払い 対象の事故が生じても自らの保険金請求権に気付くことがないまま,大量の 保険金の支払い漏れが発生したのである。

この事件をきっかけにして,金融審議会の場などで本質を踏まえて保険募 集のあり方が検討されることとなった8)。そして,得られた結論が今回の保 7) 日本損害保険協会⽛ファクトブック2015⽜によれば,⽛2005年 付随的な保険 金支払い漏れが判明した損保会社に対し,業務改善命令⽜と記載されている。

8) 金融審議会⽛保険商品の販売・勧誘のあり方に関する検討チーム⽜(2005年 から2006年)および⽛保険の基本問題に関するワーキング・グループ⽜(2008 年から2009年)によって論点の整理がなされた。その後,2013年⚖月11日に

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険業法改正を通じた新しい保険募集ルールである。

1980年代の末に始まった保険制度改革の動きは,1996年の保険業法改正に よって保険会社の経営を大きく変えることで第一段階を終えた。そして,

2016年に実施された新しい保険募集ルールの登場によって第二段階に至るこ とで,ついにゴールに到達したといえるのではないだろうか。まさに1996年 から2016年に至る20年の時を経て保険制度改革は最終的な完結を迎えるので ある。新しい保険募集ルールの下での主体はいうまでもなく保険募集人であ る。そして,その向こうに消費者の保護されるべき権利と満たされるべきニ ーズが存在する。

⚓.保険募集制度改革の意義

保険募集制度改革によって登場した新しい保険募集ルールの意義は,保険 募集人の義務の法定によって消費者が本来享受すべき権利が満たされること であり,それは⚓つに整理されると考えている。第一に⽛対話をベースにし た保険募集の開始⽜,第二に⽛代理店経営の高度化⽜,そして第三に⽛乗合代 理店による比較推奨販売の本格実施⽜である。

⑴ 対話をベースにした保険募集の開始

第一の⽛対話をベースにした保険募集⽜は,先に述べた⽛昔ながらの保険 募集の方法⽜を根本から変えることによって実現する。改正前の保険業法に おいて,消費者への保険の説明の開始から契約が成立するまでの間,保険募 集人の義務として定められていたのは,⽛顧客に対する説明⽜として,①所 属保険会社等の商号・名称・氏名,②代理か媒介かの別等のみであった9) 結果として,保険の説明の開始から契約が成立するまでどのような方法によ るかは保険募集人の自由であった。ただし,保険業法第300条⽛保険契約の 締結又は保険募集に関する禁止行為⽜第⚑項各号に記載されている行為につ

⽛新しい保険商品・サービス及び募集ルールのあり方について⽜が公表された。

9) 改正前の保険業法第294条及び同施行規則227条の⚒。

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いては禁止されており(行為規制),これについては罰則が設けられている。

これは,いわば⽛落とし穴⽜のようなものであり,保険募集人はほとんど何 も義務がない中,これに落ちることだけは避けることが必要であった。

これに対し,改正保険業法においては,保険募集人一人ひとりの義務が定 められる。それが意向把握義務,情報提供義務,意向確認義務の三つの義務 である10)。この三つの義務の具体的な内容は,金融庁が定めた監督指針11) 中に詳細に定められている。一人ひとりの保険募集人はそれを熟知した上で 保険募集に当たることを求められるが,一言で表すと⽛対話(ダイアロー グ)⽜という表現が適切なのではないだろうか。まずは,リスクの内容,望 む保障,保険料の負担能力等,消費者にしか語ることができない事実を十分 に語り尽くしてもらい,保険募集人はそれを傾聴して把握する。それが⽛意 向把握義務⽜である。

そして,次に保険募集人は,消費者の意向をベースに丁寧に,漏らすこと なく保険の内容について説明する。説明の途中で消費者の意向が変わるとい う事態は当然に生じるが,その場合は以降の変更に応じて説明する。これが

⽛情報提供義務⽜である。

こうした消費者と保険募集人の⽛対話⽜を経て,加入する保険の内容が段 階を経て固まっていく。固まった内容について消費者と保険募集人の双方で 確認し合うのが⽛意向確認義務⽜である。この確認には,当初の意向と最終 的な意向の相違に関する確認が含まれる。そして,保険募集人はこの三つの 義務に関し,事後の検証に備えて⽛証跡保存⽜しなければならない。(図表

⚑参照)

10) 意向把握・確認義務については保険業法第294条の⚒⽛顧客の意向の把握等⽜

及び同施行規則第227条の⚖,情報提供義務については同法294条⽛情報の提 供⽜及び同施行規則第227条の⚒。

11) 保険会社向けの総合的な監督指針(2015年⚕月改正)Ⅱ-⚔-⚒⽛保険募集管 理態勢⽜。

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⽛対話⽜の中身は,昔ながらの義理や人情によるものではなく,また,保 険会社のキャンペーンにおいて生じがちな保険募集人が販売したい商品の押 し込みでもなく,欧米流のリスク・マネジメントをベースにした保険加入の ためのやり取りといってよい。保険募集人一人ひとりの義務の法定化によっ て,この国において初めて,消費者に欧米流のリスク・マネジメントのマイ ンドが根付いていくことになるであろう。

三つの義務は,それぞれが分離独立した義務ではなく,三位一体の義務と して捉えるべきものである。消費者は自らの抱えるリスク,または必要とす る保障について保険募集人にしっかりと伝達し,保険募集人は十分な説明を 行い,両者が中身をしっかりと確認する。消費者にとっては,義理や人情に よってではなく,これらの行為が段階ごとに連続的に繰り返されることによ って⽛理解して申込書に判をつく⽜という結果が実現するのである。

なお,ここで⽛助言義務⽜に触れておきたい。例えば,保険契約締結後に 図表⚑:保険募集人一人ひとりの義務に基づく契約プロセス

出典:日本損害保険代理業協会作成

(10)

事故が起こったものの保険の対象外になったような場合,⽛これを対象にす る保険を勧めてくれればよかったのに⽜というトラブルが生じることがあり 得る。意向把握義務においても,一定程度,こうした消費者のニーズに応え ることにはなるが⽛助言⽜は法定の義務にはなっていない。この点に関し,

⽛募集人による保険契約についての助言がどこまで求められるか,すなわち,

助言を巡る法的義務の有無と範囲が今後の論点になるかもしれない12)。⽜と の指摘がなされている。

⑵ 代理店経営の高度化

新しい保険募集ルールの意義の第二は⽛代理店経営の高度化⽜である。こ れには,改正保険業法において定められた保険募集人の⽛体制整備義務⼧13) が大きく関わっている。

①代理店の体制整備義務

保険募集人という言葉は様々なものを指す。保険会社で営業に従事する社 員と女性を主力とする生保の営業職員はまさに保険会社の社員としての保険 募集人である。また,損保の個人営業の専属代理店は社員ではなく代理店で あるが,業務の実態上,社員に近い存在である。これらの保険募集人につい ては体制整備義務が定められたといっても,保険会社の研修に参加して意向 把握義務等の保険募集人の義務を果たすよう努めるといった程度の義務14) しかない。

問題はそこから先にいる企業としての代理店である。専属代理店でも法人 化したもの,地域における専業の乗合代理店,自動車ディーラーのような兼 業代理店,親会社を持つ企業代理店,窓口販売を行う銀行,損保と提携する 12) 保険毎日新聞特別企画⽛保険商品・サービス WG を振り返る⽜(2013.9.13

号)における東京大学大学院法学政治学研究科准教授後藤元氏の発言。

13) 保険業法第294条の⚓⽛業務運営に関する措置⽜及び同施行規則第227条の⚗

~15。

14) 保険会社向けの総合的な監督指針(2015年⚕月改正)Ⅱ-⚔-⚒-⚙⽛保険募 集人の体制整備義務(法第294条の⚓関係)⽜(注)を参照。

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生保,大型の来店型保険ショップ等々,規模と特性によって様々に異なる代 理店の体制整備義務が問題になる。

改正前の保険業法においては,保険会社にのみ体制整備義務が定められ15) これら企業として行動する代理店であっても体制整備義務は定められていな かった。すなわち,法的には規模や特性に関わりなく保険会社の社員と同じ 位置付けになっていた。消費者との位置関係をみれば,消費者に対する義務 を有するのは保険会社であり,代理店は保険会社に所属してその監督を受け る存在でしかなかったのである。

今回,保険会社による代理店の監督は維持されたものの,代理店独自の体 制整備義務が法定された。これによって,代理店は保険会社の社員と同様の 位置付けではなく,保険会社から独立した存在として位置付けられることに なる。すなわち,代理店は,保険会社とともに消費者に直接的に相対する位 置に引き上げられることになるのである。代理店において,一人ひとりの保 険募集人が意向把握・確認義務と情報提供義務によって消費者に相対する一 方で,代理店の経営者は体制整備義務によって適切に消費者対応を行うこと ができる企業を作り上げる責務を負うことになる。

②体制整備義務の本質的意義

体制整備義務の下で代理店は具体的に何をしなければならないのだろうか。

保険募集人一人ひとりが義務を果たすための体制作り(保険募集管理態勢)

を筆頭に,顧客情報の適切な管理(顧客情報管理態勢)や外部委託先の管理 が適切になされるための体制づくり(外部委託先管理態勢)等が保険募集に 伴う態勢整備の内容になる。

しかし,それとともに重要なことは,代理店が企業として経営の高度化を 図らねばならない点である。今の時代において,企業が業種を超えて求めら れるものは,コーポレートガバナンスやコンプライアンスといったグローバ ルな尺度での経営の規範である。体制整備義務の第一に経営管理態勢,第二 に法令等遵守態勢が掲げられるが,まさに体制整備義務は,代理店に現代的

15) 保険業法第100条の⚒⽛業務運営に関する措置⽜及び同施行規則第53条。

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な企業としての経営の高度化を求めるものといえるであろう。

また,態勢整備にあたっては,PDCA サイクルが必要とされる。規定や マニュアルの策定を意味する Plan(P),それを全役社員が実行する Do

(D),問題がないかどうかを検証する Check(C),検証結果を改善につなげ る Action(A)が常に動的に維持されなければならない。この PDCA サイ クルのために求められるのが,顧客サポート等管理態勢と内部監査態勢の構 築である。顧客サポート等管理態勢は顧客からの⽛お褒めの言葉⽜等を含む 幅広い顧客の声を適切に収集,分析することを意味するが,最も重要な顧客 の声は⽛苦情⽜である。顧客からの苦情こそが PDCA サイクルを回してい く上で非常に重要なエネルギーになるのである。内部監査態勢も同じ位置づ けであることはいうまでもないであろう。

代理店は,体制整備義務の法定に伴い,保険会社が用意する⽛代理店体制 整備準備シート⽜等の活用によって当初の対応を行っている。しかし,本質 的にはそう遠くないうちに保険会社から自立した存在として自律的に PDCA を意識した企業経営を要求されることは明らかである。そして,こ れに問題がある場合,保険会社同様,行政処分16)という企業としての罰則が 適用されることにも留意すべきであろう。(図表⚒参照)

代理店の実態をみれば,銀行や生保,大手法人代理店等,企業として自立 している代理店の場合は独自に体制整備義務を果たすことが可能である。そ の一方で,数の上で大きなウエイトを占める地域の専業代理店や小規模の兼 業代理店,企業の機関代理店等は重い課題を背負うことになる。なぜなら,

体制整備義務の下で,これまでの保険会社に依存する経営から脱し,現代的 な企業としての新しい企業経営の形を構築することが必要になるからである。

16) 保険業法305条(立入検査等),同306条(業務改善命令),同307条(登録の 取消し等)。

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⑶ 乗合代理店による比較推奨販売の本格実施

①⼦乗合代理店⽜と⽛比較⽜に関する規制

新しい保険募集ルールの意義の第三は⽛乗合代理店による比較推奨販売の 本格実施⽜である。今では,街中の保険ショップ等において日常的に見られ る保険の比較推奨販売であるが,これが正面から容認されたのは2007年のこ とである。わが国では,明治以来の保険募集の歴史において,長く保険の比 較は事実上行えず,または法律によって規制されてきた。

わが国において代理店は,第二次大戦前,業界の自主規制によって生損保 ともに一社専属制が採られ17),実務的に複数保険会社の商品の比較ができな い状態になっていた。ところが,戦中,戦後の混乱による保険募集の乱れの 中で不適切な乗換募集が横行することになった。これを含む保険募集全体の 乱れを正すべく1948年に募取法が制定され,生保においては,業界の自主規

図表⚒:代理店の体制整備義務

出典:日本損害保険代理業協会作成

17) 刀೟俊雄・渡部記安(1989)⽛生命保険募集人の⽛一社専属制⽜について(Ⅰ) (Ⅱ)⽜⽝文研論集⽞87号,88号(生命保険文化研究所)に詳細が記されている。

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制という実効性に問題のある規制ではなく,募取法に代理店の一社専属制が 定められることになった。一社への専属であるから複数保険会社の商品比較 をベースとした乗換募集は不可能ということになったのである。

一方,損保においては,生保代理店における一社専属制の反対解釈として 代理店の乗合が認められた。これには,募取法と同時に制定された⽛損害保 険料率算出団体に関する法律⽜が深く関わっている。この法律の下で,主要 な損保商品の約款と料率が全社同一になり,乗換行為そのものに何らの意味 がないという状態になったため,複数保険会社への乗合が容認されたのであ る。ちなみに,この法律は保険募集の規制のために制定されたのではなく,

損保会社が過度の料率競争によって破綻することを防ぐためのものである。

生保に関しては募集を規制し,損保においては商品を規制するという戦後の 保険行政の基本形をここに見ることができる。

さらにこれだけではなく,募取法に様々な行為規制が定められ,その中で

⽛不適切な乗換募集の禁止⽜とは別に⽛一部比較の禁止⽜が定められた。⽛全 部比較⽜は実務上不可能であるため,この規定によって比較は実態的に禁止 されることに等しくなった。保険募集人による不適切な乗換募集という消費 者への弊害をなくすために,生保における代理店の一社専属制,行為規制と しての⽛一部比較の禁止⽜という規制の二本柱がここに完成するのである。

②規制緩和の動き

こうした流れに変化が生じたのは,1996年の保険業法改正による生保代理 店の乗合に関する条件付き解禁と比較禁止規定の改正であった。生保代理店 の一社専属制に関しては,⽛保険契約者等の保護に欠けるおそれがないもの⽜

という例外規定18)が設けられ,それまで損保においてのみ許容された乗合代 理店が生保にも登場することになった。比較の禁止に関しては,それまでの

⽛一部比較の禁止⽜という客観的な表現が,⽛誤解させるおそれのある比較の 禁止⽜という主観的な表現に改正されたことによって,⽛誤解するおそれの ない⽜消費者に対しては比較が許容されることになった。

18) 保険業法第282条(生命保険保険募集人に係る制限)第⚓項。

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一社専属制の例外規定が設けられた背景には,1996年の保険業法の改正に よって生損保の子会社方式による相互参入が容認されたことがある。相互参 入に際し,損保の子生保としては親会社の損保代理店を募集チャネルとして 活用する以外の選択肢はない。しかし,保険会社と異なり代理店には生損保 兼営禁止規定が適用されないため,有力な損保代理店の多くが既に外資系生 保を中心に生保代理店としても保険募集を行っていた。この結果,保険自由 化における最大の目玉の一つである生損保の相互参入において,損保会社に 子生保の新設を促すためには,生保の一社専属制の廃止または緩和が必須と なった。そして,前述の例外規定が設けられるとともに,これを受けた政 19)によって,損保代理店に関しては,いわゆる⽛クロス特例⼧20)が設けら れることになったのである。この時,純粋の生保代理店に関しても規制が緩 和され,複数の保険募集人が存在することを条件として乗合が認められるこ とになった。これがいわゆる⽛複数使用人特例⽜と称されるものである。

二つの特例が設けられることによって,大きく変身したのは損保代理店よ りもむしろ⽛複数使用人特例⽜を活用した生保代理店であった。⽛比較⽜と

⽛乗合代理店⽜が交叉するところで,来店型保険ショップや銀行における窓 口販売が加速度的に存在感を増していった。これらは,自社を訪れる消費者 は必要かつ十分な比較情報の提供を受けることによって,法が規制する⽛誤 解するおそれのある比較⽜に抵触することなく商品選択ができるということ で比較推奨販売を拡大した。その背景にあったのは飛躍的に高まる消費者の 比較ニーズである。保険自由化によって保障内容や保険料が保険会社ごとに 様々に異なる中,消費者は自ら⽛比較して保険に入る⽜という新しい時代の 選択を行うようになったのである。

比較を巡る事実先行の中で,2007年,金融庁は法律を改正することなく監

19) 保険業法施行令第40条(生命保険募集人に係る制限が適用されない場合)。

20) 損保代理店が生保をクロス販売するという意味で一般に⽛クロス特例⽜と称 される。

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督指針の改正によって,一定の条件のもとで比較を可能にした21)。その狙い は高まる消費者ニーズへの対応であり,まさに消費者のために規制緩和が行 われたのである。

③比較推奨販売を行う乗合代理店への規制

ところが,その一方で,消費者が本来望む保険ではなく代理店手数料の高 い商品に誘導されるといった比較推奨販売のマイナス面や必ずしも適切とは いえない乗換募集が見られるようになってきた。消費者のために行った規制 緩和の結果,消費者への弊害が生じたのである。しかし,時代はもはや比較 推奨販売を禁止して一社専属の昔に戻ろうというものではなかった。

金融審議会はこれからの個人金融サービスの在り方について次のように述 べている22)。⽛金融業が商品開発・販売態勢を強化していくためには,その 前提として,顧客が自己のニーズを明確に認識し,十分な情報と豊富な選択 肢を基に購入判断ができるような環境を整備する必要がある。こうした観点 からは,健全性や信頼性を確保しながら,独立系の投資運用業者を育成して いくことや,保険仲立人の機能が適切に発揮される環境の整備が必要であ る。⽜

⽛保険仲立人の機能⽜という言葉が見られるが,わが国の現状では,保険 仲立人は極めて少数にとどまり,企業分野を主な活動領域としている。従っ て,個人分野において⽛保険仲立人の機能⽜を有するものとしては乗合代理 店に焦点が当たることになる。そして,これに対応する形で法定されること になったのが,新しい保険募集ルールの下に新設された⽛比較推奨販売を行 21) ⽛保険会社向けの総合的な監督指針 (2015年⚕月改正)⽜を見ると,Ⅱ-⚔-⚒-

⚒⑼②において,例えば⽛(注⚒)比較表示(中略)を行うに際し,以下の各 要件が全て充足されている場合には,保険契約の契約内容について,正確な判 断を行うに必要な事項を包括的に示したものと考えられる。⽜と定めるなど,

法改正を行うことなく監督指針において法解釈を示すことで,比較説明の道を 拓くこととした。

22) 金融審議会⽛我が国金融業の中長期的な在り方に関するワーキング・グルー プ⽜⽛我が国金融業の中長期的な在り方について(現状と展望)⽜(平成24年⚕

月28日)21頁。

(17)

う乗合代理店に対する(追加的)体制整備義務⼧23)である。これは,比較推 奨販売を行う乗合代理店に対して,消費者保護のために他の代理店とは異な る規制を行う必要があるというものである。

乗合代理店が⽛比較説明⽜と⽛推奨販売⽜に関して守るべきルールの内容 は監督指針24)に具体的に定められているが,その中に⽛形式的には客観的な 商品の絞込みや提示・推奨を装いながら,実質的には,例えば保険代理店の 受け取る手数料水準の高い商品に誘導するために商品の絞込みや提示・推奨 を行うことのないよう留意する。⼧25)との記述がある。これは比較推奨販売に 伴う⽛コミッション・バイアス⽜問題26)から消費者を守るためのものである といえよう27)

④比較推奨販売を行う乗合代理店の監督

消費者に対し,保険の比較情報を提供し,その中から商品を推奨して販売 するという乗合代理店の行為は,保険会社とは関係のない代理店独自の行為 である。従って,これに伴う体制整備義務は保険会社の管理・指導に頼るこ となく代理店が独自に負わねばならない。さらに,その適切性に関する監督 は金融庁が行う以外に誰も適任者はいない。

23) 保険業法第294条の⚓(業務運営に関する措置)において⽛二以上の所属保 険会社等を有する場合⽜として体制整備義務が定められている。

24) 監督指針Ⅱ-⚔-⚒-⚙⑸①②⽛保険募集人の体制整備義務(法第294条の⚓

関係)⽜。

25) 監督指針Ⅱ-⚔-⚒-⚙⑸(注⚑)。

26) 顧客の意向よりも,自らが保険会社から受け取る報酬の水準によって推奨す る保険商品を決める可能性が潜在することをコミッション・バイアス問題と称 する。

27) コミッション・バイアス問題回避のために代理店手数料を開示すべきとの主 張がなされることがある。金融審議会⽛保険商品・サービスの提供等の在り方 に関するワーキング・グループ⽜の報告書(2013年⚖月11日公表)においては,

⽛現時点において,一律にこれを求める必要はない⽜とした上で,今後の展開 において⽛手数料の多寡を原因として不適切な比較販売が行われる事例が判明 した場合には,手数料開示の義務づけの要否について,改めて検討を行う⽜こ ととしている。

(18)

しかし,現実に監督するとなると,乗合代理店は数多く存在し,今の金融 庁の態勢ではとてもすべてを監督することはできない。そこで出てきたのが

⽛規模が大きい特定保険募集人⽜のみを金融庁の直接の監督下に置くという 方法である28)。生保,損保,少額短期保険それぞれ別に,乗合保険会社の数 が15社以上,または手数料等の対価の総額が10億円以上の代理店がこれに該 当する29)

では,⽛規模が大きい特定保険募集人⽜に該当しない乗合代理店の比較推 奨販売に関する監督は誰が行うのか。まずは保険会社である。管理・指導が 及ばないとはいってもあくまでも自らの代理店であり,法的にも監督責任は 存在する。金融庁としては,乗合代理店の場合,乗り合っている保険会社の 連携の中で適切な監督を行うべきとの示唆を行っている30)

しかしそれ以上に重要なのは代理店が自ら律するということである。金融 庁の監督下に置かれるか否かを問わず,比較推奨販売を行う限り,当該乗合 代理店としての体制整備義務は課せられている。従って,例えば消費者から の苦情等によって適切に体制整備義務が果たされていないことが発覚した場 31)は,当然,行政処分の対象になることを覚悟しなければならない。行政 処分が代理店の自律に向けての大きなインセンティブになるのである。

⑤保険仲立人規制との関係

保険仲立人制度は1996年の保険業法改正によってわが国に導入された。し かし,現在に至るまでその数は極めて少なく,また顧客も企業に限られるき らいがあった。

保険仲立人は顧客の代理人として保険会社を選択する役割を有する。そし て,保険仲立人は規模と特性に関係なく独自の体制整備義務を有し,かつ金 融庁の直接の監督下にある。保険業法の改正によって,比較推奨販売を行う

28) 保険業法第303条(帳簿書類の備付け),同304条(事業報告書の提出)。

29) 保険業法施行規則第236条の⚒(規模が大きい特定保険募集人)。

30) 2015年⚗月⚓日付⽛金融モニタリングレポート⽜56頁。

31) 体制整備義務において,苦情は⽛顧客サポート等管理態勢⽜として重要な位 置づけを与えられている。

(19)

乗合代理店は保険会社の代理店という位置付けではあるものの,⽛保険仲立 人の機能⽜を有する存在とみなされたとするならば,これに対する金融庁に よる直接の監督を含む規制強化は当然のものと考えるべきであろう。

また,同時に保険業法の改正によって,保険仲立人に関する従来の規制が 一部緩和されることになったが,比較推奨販売を行う乗合代理店への規制強 化に重ね合わせてみれば,⽛保険仲立人の機能⽜に関する規制とのハーモナ イズが行われたといってよいのではないだろうか。

比較推奨販売を行う乗合代理店に対する体制整備義務が法定された結果,

保険募集人は,大きく次の⚓つのカテゴリーに分けられることになる。第一 に,保険会社の監督下で保険募集を行う従来型の募集人,すなわち,⽛生保 の営業職員⽜,⽛専属代理店⽜,そして⽛乗合代理店であっても比較推奨販売 を行わないもの⽜である。第二に,独自の募集プロセスを持つがゆえに,保 険業法改正以降,少なくとも理論上は行政が直接監督することになる募集 32),すなわち,⽛比較推奨販売を行う乗合代理店⽜である。そして第三の カテゴリーが,かねてから規模の大小にかかわらず行政の直接監督下に置か れてきた⽛保険仲立人⽜である。この区分において重要な点は,比較推奨販 売を行う乗合代理店は,代理店ではあってもむしろ保険仲立人に近い位置に 置かれることになることである。

比較した上での保険加入という消費者ニーズに本格的に応えるために,そ の担い手である乗合代理店に対する規制強化が図られた。こうした環境整備 により,わが国における保険募集の歴史において,これ以降,乗合代理店に よる比較推奨販売が本格的に開始される。ただし,これに当たっては消費者 保護上の課題を克服することが求められ,比較推奨販売を行う乗合代理店は 体制整備義務の法定によって,ビジネスモデルの根本的な変革を迫られるこ とになるのである。

32) 実務上は,⽛規模の大きい特定保険募集人⽜が中心になることはいうまでも ない。

(20)

⚔.おわりに

本稿では,保険募集規制改革の背景と意義について述べてきた。これは,

金融ビッグバンの下で抜本的に改正された1996年の保険業法改正の際に先送 りされた保険募集に関わる改革である。この点で,20年の時を経てついに保 険業法改正は完結したと考えてよいだろう。

このルールの下で,消費者と保険募集人一人ひとりとの⽛対話⽜が始まり,

消費者は自らの意向に沿った保険を購入することが可能になる。中でも,複 数の保険を比較した上で,自らの意向に沿う保険の推奨を受けて保険を購入 することが可能になる点は,新しい保険募集ルールにおける非常に重要な柱 といってよい。

さらに,体制整備義務の法定によって,比較推奨販売を行う乗合代理店で あるか否かを問わず,保険会社とともに代理店が消費者に対する直接の義務 を負うことになる。代理店経営においても,保険会社への依存から脱し,今 の時代に見合う企業として経営を高度化することを求められる。経営の高度 化もまた,代理店が消費者に対して適切な対応を行う上で必要な措置と位置 付けるべきであろう。

新しい保険募集ルールはまさに消費者を主役としたものであり,消費者の 権利を満たすために,保険募集人に義務を負わせるものといってよい。この ルールの下で,ついに消費者は昔ながらの保険募集から解放され,自らのリ スクに見合う保険を選択した上で,それに加入することができる時を迎える ことになるのである。

(筆者は日本損害保険代理業協会アドバイザー 兼

丸紅セーフネット株式会社常勤監査役)

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