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⽛保険募集⽜に関する新たな基準と

⽛募集関連行為⽜概念の新設

細 田 浩 史

■アブストラクト

平成26年保険業法改正に伴って改正された保険会社向けの総合的な監督指 針では,保険募集の概念について基準が新たに示された。また,保険募集に 関連する行為として,募集関連行為の概念が新たに導入され,保険募集人に よる顧客アプローチの前段階において行われている行為についても一定の規 律の対象とされることとなった。

これらの改正はこれまでの保険業法の考え方に全く異質のものを導入した ものではない。保険募集概念に関する新たな基準については,これまでの整 理をその延長線上でより具体的に敷衍して規定したものと評価できると考え られる。また,募集関連行為に係る規制についても,募集関連行為従事者に 義務を課すものではなく,保険会社や保険募集人に対する保険業法に基づく 委託先の管理義務を根拠に,かかる義務の内容をより具体的に規定したもの と評価できると考えられる。

■キーワード

改正保険業法,保険募集,募集関連行為

⚑.はじめに

保険業法上,保険募集に関する規制の対象となる場面として,⽛保険募集⽜

を行う場合が含まれるのは平成26年改正前の保険業法においても明らかであ / 平成28年⚘月30日原稿受領。

(2)

ったが,平成25年⚖月⚘日付金融審議会⽛保険商品・サービスの提供等の在 り方に関するワーキング・グループ⽜報告書(以下⽛WG 報告書⽜という。)

においては,広義の保険募集プロセス(契約見込客の発掘から契約成立に至 るまでの広い意味での保険募集のプロセスをいう。以下同じ。)のうち,⽛保 険募集⽜それ自体には該当しないものの,保険募集人による顧客アプローチ の前段階において行われている行為についても,保険契約者等の保護の観点 から,一定のルールに基づいて行われる必要があるものが存在するとの考え に基づき,当該行為が規律の対象とされるとの方針が示された1)

かかる規律の前提として,その対象となる行為である,広義の保険募集プ ロセスのうち⽛保険募集⽜に該当しない行為の射程範囲を明確化する必要が あることから,平成26年保険業法改正に伴って改正された保険会社向けの総 合的な監督指針(以下⽛監督指針⽜という。)では,保険募集の概念につい て基準が新たに示されることとなり,また,保険募集に関連する行為として,

募集関連行為の概念が新たに導入された。

本稿では,監督指針において基準が示された保険募集概念と,新たに導入 された募集関連行為の概念について,パブリックコメント回答(2015年⚕月 27日付⽛コメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方⽜における金 融庁の回答をいう。以下同じ。)における考え方等も踏まえて,検討するこ ととする。

1) 保険募集人による顧客アプローチの前段階において行われている行為に関し て具体的に想定される問題点として,WG 報告書においては,⽛過度・不適切 な勧誘・推奨や誤った商品説明などの不適切な行為が行われるなど,保険募集 人による顧客アプローチが行われる前のプロセスにおいて瑕疵があり,保険商 品の内容等について顧客に誤った印象や情報が与えられた場合には,保険募集 人が事後的に適切な商品説明等を行ったとしても顧客の誤解を解くことが困難 であるなど,当該瑕疵の治癒が困難となるおそれがある。⽜といった点が指摘 されている。

(3)

⚒.保険募集の概念の整理

⑴ 定義,具体的類型

保険募集については,保険業法⚒条26項において,⽛保険契約の締結の代 理又は媒介を行うこと⽜と定義されており,改正前の監督指針では,①保険 契約の締結の勧誘,②保険契約の締結の勧誘を目的とした保険商品の内容説 明,③保険契約の申込の受領,④その他の保険契約の締結の代理又は媒介,

といった⚔つの類型が,保険募集に該当するものとして列挙されてきた。こ れらの類型は,①~③が具体的な行為態様を挙げる一方で,④はこれらの態 様に該当しない保険募集行為を包括的に捉えるためのキャッチオール規定と の形式をとっている。

今回の改正保険業法においては,保険業法上の保険募集の定義は変更する ことはなく,また,改正監督指針において保険募集に該当する具体的な行為 類型について新たな類型が追加されたわけではないが,キャッチオール規定 である上記④の⽛その他の保険契約の締結の代理又は媒介⽜に該当するか否 かについて,監督指針Ⅱ-⚔-⚒-⚑⑴②において判断基準が示された。具体 的には,⽛その他の保険契約の締結の代理又は媒介⽜に該当するか否かにつ いては,⽛一連の行為の中で,当該行為の位置付けを踏まえたうえで,以下 のア. 及びイ. の要件に照らして,総合的に判断するものとする。⽜とされた。

⽛ア. 及びイ. の要件⽜としては,以下の要件が記載されている。

ア.保険会社又は保険募集人などからの報酬を受け取る場合や,保険会社 又は保険募集人と資本関係等を有する場合など,保険会社又は保険募集 人が行う募集行為と一体性・連続性を推測させる事情があること。

イ.具体的な保険商品の推奨・説明を行うものであること。

ここで,上記アで記載される,保険会社や保険募集人から報酬を受け取る 場合や資本関係等を有する場合というのは,⽛募集行為と一体性・連続性を 推測させる事情があること⽜という要件に該当する場合の例示として挙げら れるものであり,これらの場合に限定されないことになる。特に,保険会社

(4)

や保険募集人との関係性により募集行為との一体性・連続性が推測される場 合については,資本関係⽛等⽜と記載されていることからも,資本関係以外 の関係が含まれ得ることになる。

資本関係以外の関係としてどのような関係が該当するかについては,パブ リックコメント回答 No.189では,資本関係以外に,たとえば,役職員の出 向・派遣などの人的関係や親族関係が含まれ得る,とされている2)

これは,こうした関係があれば,保険会社や保険募集人の意向を受けて,

保険会社や保険募集人のために,その行うべき募集行為を行っていることが 推定されるとの理由に基づくものと考えられる。

ここで,上記ア. の要件の中心になるのは,募集行為との一体性・連続性 を推測させる事情があるかどうかということに照らすと,ここで例示される 報酬の受領や資本関係等の存在についても,保険会社や保険募集人の募集行 為との一体性・連続性が認められる程度のものである必要があると考えられ る。

この点,資本関係の程度については,パブリックコメント回答 No.192に おいても,資産運用の観点から僅かな資本関係を有するに至ったことのみを もって,募集行為との一体性・連続性があると判断されるものではない旨述 べられている3)

2) 同回答は次のように述べている。

Ⅱ-⚔-⚒-⚑⑴②はⅡ-⚔-⚒-⚑⑴①⽛エ. その他の保険契約の締結の代理又 は媒介⽜の該当の適否を判断するうえでの要件であり,そのうちア. に規定す る⽛資本関係等⽜には,例えば,役職員の出向・派遣などの人的関係も含まれ,

それによって保険会社又は保険募集人が行う募集行為との一体性や連続性を推 測させることがあるものと考えられます。なお,個別具体的な事案においては,

親族関係についても,一体性・連続性を推測させる要素となるケースが考えら れます。

3) 同回答は次のように述べている。

貴見のような,資産運用の観点から僅かな資本関係を有するに至ったことの みをもってⅡ-⚔-⚒-⚑⑴②ア. に該当するものではありません。例えば,平 成10年大蔵省告示第238号第⚑条第⚑号イからニに掲げる法人に該当するよう

(5)

また,同様に,受領する報酬についても,募集行為との一体性・連続性が 認められる程度のものである必要があると考えられる。この点,パブリック コメント回答においても関連する記載があり,パブリックコメント回答 No.243では,⽛⽛報酬⽜には,いかなる体系の報酬であっても含まれ得る⽜

としたうえで,⽛高額な紹介料やインセンティブ報酬⽜は,保険募集に該当 する蓋然性を高める,とされている4)

なお,報酬の程度については,監督指針Ⅱ-⚔-⚒-⚑⑴②やパブリックコ メント回答 No.221では,同⑴②アの要件該当の問題として捉えられている が,監督指針Ⅱ-⚔-⚒-⚑⑵末尾の注では,同⑴②イの具体的な商品の推 奨・説明を行うことの要件の問題として捉えているようにも読める。

この点についてどのような整理がされているのかは必ずしも明らかにされ ていないが,いずれにせよ,報酬の程度が高い場合や,報酬支払が業績連動 型のような場合は,保険募集に該当すると判断される可能性が高まる,とい うことになると思われる。

な場合には,一定程度,保険会社又は保険募集人が行う募集行為と一体性・連 続性を推測させる事情がある場合とみなし得ると考えられますので,人的関係,

取引関係その他の事情を考慮し,Ⅱ-⚔-⚒-⚑⑴②ア. の該当性を判断するこ とになると考えます。⽛資本関係等⽜には,役職員の出向・派遣などの人的関 係も含まれ,貴見に例示のある行為についても,その人的関係性や具体的な商 品説明の程度等によっては保険募集に該当する場合もあると考えます。

4) 同回答は次のように述べている。

⽛報酬⽜には,いかなる体系の報酬であっても含まれ得るものと考えます。

また,⽛高額な紹介料やインセンティブ報酬⽜はⅡ-⚔-⚒-⚑⑵(注)に記載のあ る蓋然性を高める場合として使い分けているものです。 また,紹介⚑件あた りの紹介料が固定化されていることと保険募集の該当性との関係性についての ご意見は,必ずしも明確ではありませんが,いずれにしましても,⽛保険募集」

(Ⅱ-⚔-⚒-⚑⑴①エ.)への該当の適否判断にあたっては,特定の行為がⅡ-

⚔-⚒-⚑⑴②ア. とイ. のいずれにも該当するか否かを判断したうえで,具体 的な報酬額の水準や商品の推奨・説明の程度などから総合的に判断する必要が あります。

(6)

⑵ ⚒つの要件の関係

監督指針Ⅱ-⚔-⚒-⚑⑴②においては,⽛以下のア. 及びイ. の要件に照ら して,総合的に判断する⽜と記載されているが,ア,イの両方の要件を満た す必要があるのか,それとも,いずれかの要件で足り,一方の要件を満たさ ない場合であっても,他方の要件を充足する程度が高いような場合にはこの 点を重視して,総合判断により,保険募集に該当すると判断される場合があ るのか,については,監督指針の記載からは必ずしも明確ではない。

この点については,パブリックコメント回答 No.203等では,保険募集へ の該当性の判断にあたっては,監督指針Ⅱ-⚔-⚒-⚑⑴②のアとイの両方の 要件に該当する必要があり,両方の要件に該当する場合に,アとイの要件を 充足する程度,つまり,具体的な報酬額の水準や商品の推奨・説明の程度な どから総合的に判断する,とされている5)

⑶ 共同募集行為の取扱い

上記のパブリックコメント回答 No.203によれば,いずれかの要件に該当 していない場合には,保険募集にあたらないことになる。但し,以下に記載 する共同募集行為については,具体的な商品の推奨・説明(監督指針Ⅱ-⚔-

⚒-⚑⑴②イの行為)を自ら直接行っていなくとも,共同して行っているも のとみなされる可能性がある。

募集プロセスを分担する形で共同募集行為が行われる場合については,パ ブリックコメント回答 No.193では,募集プロセスを複数の保険募集人が分 担するケースにおいて,一方の保険募集人が,実際の勧誘行為は行わず,募 集プロセス当初の段階で⽛家計の見直し相談⽜や⽛ライフプランニング⽜等

5) 同回答は次のように述べている。

Ⅱ-⚔-⚒-⚑⑴①エ. への該当の適否判断にあたっては,特定の行為がⅡ-

⚔-⚒-⚑⑴②ア. とイ. のいずれにも該当するか否かを判断することとしてお り,Ⅱ-⚔-⚒-⚑⑴②ア. とイ. の両方に該当する場合には,具体的な報酬額 の水準や商品の推奨・説明の程度などから総合的に判断することとなります。

(7)

を行う場合,一般的には,この保険募集人の行為は,保険募集に該当すると 判断される可能性が高い,とされている6)

他方,前述した通り,パブリックコメント回答 No.203では保険募集に該 当する前提として,監督指針Ⅱ-⚔-⚒-⚑⑴②のアとイの両方の要件の充足 が必要との考え方が示されており,また,監督指針Ⅱ-⚔-⚒-⚑⑴②イの要 件は,具体的な商品の推奨・販売を行うことを内容とするものである。した がって,この要件に照らすと,実際の勧誘行為を行っていないこのパブリッ クコメント回答 No.193の募集人Aの行為は,具体的な勧誘を行っていない 以上,保険募集に該当しない,という結論になるとも考えられる。

そうすると,一見矛盾するように見える,要件相互の関係性についてパブ リックコメント回答 No.203において示された考え方(監督指針Ⅱ-⚔-⚒-⚑

⑴②のアとイの両方の要件の充足が必要)とこのパブリックコメント回答 No.193の回答内容をどう統一的に整理するか,という点が問題になるが,

一つの考え方としては,自ら直接勧誘行為ないし商品の推奨行為を行ってい ない場合であっても,相談やライフプランニング等の行為が他の保険募集人 の行う勧誘行為と一体的に行われ,行為の性質としても両者に同質性・連続 性があると認められるような場合は,自ら直接勧誘行為を行っていない者も,

共同して勧誘行為も行っていると判断される,との整理が可能と考えられる。

特に,このパブリックコメント回答 No.193の事例は,⽛もう一方のBが,A による行為の結果を踏まえ,その後,生命保険募集行為を行ったというケー ス⽜であり,一方の保険募集人による相談等の行為の結果が,他の保険募集

6) 同回答は次のように述べている。

(一方のAが,生命保険募集プロセス当初の段階で,⽛家計の見直し相談⽜

⽛ライフプランニング⽜等を行い,もう一方のBが,Aによる行為の結果を踏 まえ,その後,生命保険募集行為を行ったというケースにおいて)貴見のよう な保険募集人であるAの行為は,個別具体的に判断する必要がありますが,一 般的には保険募集に該当すると考えられます。また,A,Bそれぞれが募集行 為を行い,それらが一連の生命保険募集に該当する場合に,保険会社からA,

B双方へ募集手数料を支払うことは問題ないものと考えます。

(8)

人による勧誘行為に利用されていることをも踏まえて,保険募集人相互の行 為の共同性が認められているものと考えられる。

共同募集行為については,パブリックコメント回答 No.198においては,

同一の法人の内部でも問題になり得るとされている7)

このパブリックコメント回答では,営業店の保険募集人が,より保険の専 門的知識のある本部所属の保険専門担当者へ,相談客,見込み客を取り次ぐ ケースが挙げられており,この場合も,営業店における行為が勧誘を伴うも のでない場合であっても,本部における募集行為が営業店における行為と一 連のものとして行われているかどうか,つまり本部における行為と営業店に おける行為に共同性が認められるかどうかにより,営業店における行為が保 険募集に該当するかどうかが判断されることになる。

⑷ 見込み客の紹介行為

次に,見込み客を紹介する行為が保険募集に該当するかどうか,といった 論点について説明したい。

この点について,一連のパブリックコメント回答では,監督指針の要件に 照らして総合判断すべき旨述べるのみで,いずれの事例に対しても,具体的 な回答は示されていない。ただ,私見では,パブリックコメント回答 No.201の事例のような,保険に興味のある知人を保険会社や保険募集人に 単に紹介する場合においては,単なる紹介を行っているだけでその知人に商 品の推奨,説明を行っていないのであれば,監督指針Ⅱ-⚔-⚒-⚑⑴②イの 要件を満たしていないことになることから,紹介者の行為が保険会社・保険 募集人の募集行為との共同行為とみなされない限り,紹介者の行為は,保険

7) 同回答は次のように述べている。

(銀行において,保険についての相談のある顧客又は見込み客を,営業店の 保険募集人が,より保険の専門的知識のある本部所属の保険専門担当者へ取り 次ぐ(トスアップ)ケースにおいて)本部における募集行為が,営業店におけ る行為と一連のものとして行われているのであれば,営業店における行為も保 険募集及び保険募集に係る業務に該当し得ると考えられます。

(9)

募集に該当しない,と判断される可能性が高いものと考えられる8)。また,

このパブリックコメント回答の⽛お知り合い紹介キャンペーン⽜のような場 合は,紹介する者の行為が,⽛業として⽜の要件に該当しない場合も多いと 思われる。

監督指針Ⅱ-⚔-⚒-⚑⑴②の記載に照らすと,具体的な商品の推奨・説明 を行っていることが,保険募集に該当するための要件であることから,たと えば,保険代理店が他の事業者と業務提携して,その事業者から顧客に保険 代理店等を紹介させるような場合には,提携先の事業者が紹介行為のほかに,

具体的な商品の推奨・説明を行わないよう,保険代理店が管理・監督すると いった対応が必要になる。業務提携というのは,通常何らかの委託を伴う場 合が多いと考えられるが,このような対応は,今回の平成26年改正保険業法 で新設された保険募集人の体制整備義務の一つである委託先管理措置義務

(保険業法294条の⚓,保険業法施行規則227条の11)から導かれることにな る。

この点については,パブリックコメント回答においても関連する記載があ り,パブリックコメント回答 No.210では,⽛保険代理店が会計事務所や不動 産事業者と業務提携を通じた紹介案件による保険募集プロセス⽜を実行する 事例において,適切な提携先を選定することや,提携先との業務提携契約書 に基づいて,提携先に対する継続的なモニタリング等を行うことが必要であ る,とされている。

⑸ ⽛具体的な商品の推奨・説明⽜についての補足

監督指針Ⅱ-⚔-⚒-⚑⑴②イの⽛推奨・説明⽜については,推奨と説明の 両方を行う必要があるのか(推奨及び説明なのか),どちらかを行えば足り

8) 同回答は次のように述べている。

(保険会社又は保険募集人が,保険に興味ある知人を紹介(単なる紹介)し て頂いた方に報酬等を支払う⽛お知り合い紹介キャンペーン⽜を行うケースに おいて)貴見の行為が保険募集に該当するかについては,Ⅱ-⚔-⚒-⚑⑴②ア.

及びイ. に照らして総合的に判断する必要があります。

(10)

るのか(推奨又は説明なのか),必ずしも明確ではない。

この点については,そもそも保険募集とは,⽛保険契約の締結の代理又は 媒介を行うこと⽜を意味しており,⽛媒介⽜は契約の成立に向けて尽力する ことを意味していることから,ある程度の推奨を伴う説明を想定しており,

単なる説明を行うだけでは,基本的には保険募集に該当しないと思われる。

そうすると,監督指針の⽛推奨・説明⽜というのは,一般的には,⽛推奨及 び説明⽜を行うことが想定されていると考えられる。もっとも,監督指針に おいて,⽛保険契約の締結の勧誘を目的とした保険商品の内容説明⽜が,保 険募集に該当する行為の一例として例示されていることに照らすと(監督指 針Ⅱ-⚔-⚒-⚑⑴①イ),(推奨を実際には伴わず)説明のみを行う場合であ っても,たとえば,推奨を目的とした説明を行う場合は監督指針Ⅱ-⚔-⚒-

⚑⑴②イの要件を充足することになるものと考えられる。

この点に関連して,具体的にどのような行為を行うと⽛具体的な商品の推 奨・説明⽜に該当するか,という点については,パブリックコメント回答 No.215では,監督指針Ⅱ-⚔-⚒-⚑⑵(注3)で列挙される,①保険会社等の 指示を受けて行う商品案内チラシの配布,②コールセンターのオペレーター の行う事務手続の説明,③商品説明会での一般的な商品説明,④広告の掲載,

については,⽛報酬を得て行っている場合であっても,保険募集・募集関連 行為のいずれにも該当しない⽜とされている。

これは報酬の受領等によって,保険募集該当性の要件の一つである,保険 募集人等の行為との一体性・連続性(監督指針Ⅱ-⚔-⚒-⚑⑴②ア)が認め られるとしても,保険募集に該当しない,ということを示唆した記載と考え られる。そのため,上記の①~④の行為については,保険募集への該当性に 関する他方の要件である,⽛具体的な商品の推奨・説明⽜(監督指針Ⅱ-⚔-

⚒-⚑⑴②イ)には該当しないということが含意されているものと考えられ る。

(11)

⚓.募集関連行為

⑴ 定義,具体的類型

今回の改正監督指針では,⽛募集関連行為⽜の概念が新たに導入された。

監督指針Ⅱ-⚔-⚒-⚑⑵において,⽛募集関連行為⽜とは,契約見込客の発 掘から契約成立に至るまでの広い意味での保険募集のプロセスのうち,保険 募集に該当しない行為と定義されており,何が募集関連行為に該当するかに ついては,広義の保険募集プロセスのうち保険募集以外の部分であるという 以上に積極的な定義はされていない。但し,⽛募集関連行為⽜に該当する具 体的な行為の例示として,保険商品の推奨・説明を行わず契約見込客の情報 を保険会社又は保険募集人に提供するだけの行為や,比較サイト等の商品情 報の提供を主たる目的としたサービスのうち,保険会社又は保険募集人から の情報を転載するにとどまるものがあげられている(監督指針Ⅱ-⚔-⚒-⚑

⑵(注1))。

一方で,①保険会社又は保険募集人の指示を受けて行う商品案内チラシの 配布,②コールセンターのオペレーターの行う事務手続の説明,③商品説明 会での一般的な商品説明,④保険会社等の広告を掲載する行為は,募集関連 行為に該当しないとされている(監督指針Ⅱ-⚔-⚒-⚑⑵(注3))(なお,こ れらの行為は改正前の監督指針でも保険募集に該当しない行為として明記さ れていたが,改正監督指針により,保険募集のみならず,募集関連行為にも 該当しないとの解釈が示された)。

募集関連行為については,それを行う募集関連行為従事者自身には規制が 課せられないが,後述する通り,募集関連行為従事者に募集関連行為を委託 する保険会社や保険募集人は,外部委託先の管理に係る体制整備義務(保険 業法施行規則53条の11,同227条の11)に基づき,募集関連行為従事者が募 集規制等に違反することのないよう,管理・監督する義務を負うことになる。

(12)

⑵ 比較サイトの位置付け

今回の改正監督指針では,保険商品の比較サイトの位置付けについて言及 されている。改正監督指針によると,広告の掲載は,保険募集に該当しない だけでなく,募集関連行為にも該当しないということになる。そこで,比較 サイトが広告の掲載に相当するものとして,募集関連行為にも該当しないの かどうかという点であるが,この点については,前述した通り,監督指針上,

⽛比較サイト等の商品情報の提供を主たる目的としたサービスのうち,保険 会社又は保険募集人からの情報を転載するにとどまるもの⽜については,募 集関連行為と捉えており(監督指針Ⅱ-⚔-⚒-⚑⑵(注1)),単なる広告掲載 とは同視されていないようである。

そもそも比較サイトとは何か,という点であるが,パブリックコメント回 答 No.220では,⽛例えば,保障内容や保険料等に係る希望の条件を入力する と,複数の保険会社の商品間における,それら条件に基づいた比較内容が表 示されるインターネットサイト等を想定⽜している,とされている。このパ ブリックコメント回答の定義内容と保険募集該当性の要件に照らすと,顧客 が入力した条件に合致した保険商品を機械的に表示して,その上で,入力し た条件に合致する複数の商品の相互の比較内容を機械的に表示するだけであ れば,比較サイトの運営者の主観や裁量が介在しない形で,商品間で中立的 な表示がされていると評価できることから,その場合は,具体的な商品の推 奨行為があるとまでは評価できないと考えられる。

他方で,比較サイトの運営者が,保険会社や保険募集人からの情報を単に 転載する等,機械的な表示を行ったり,保険会社等の広告の掲載を行うだけ でなく,特定の商品を推奨したり優先するような表示が運営者の独自の主 観・裁量によって行われているような場合は,⽛媒介⽜の意味内容に照らし ても,具体的な商品の推奨行為があると評価されるのではないか。その場合 は,その推奨・説明の程度や,保険会社等からの報酬の程度などを総合考慮 して,その程度によっては,保険募集に該当すると判断される場合があると 考えられる。

(13)

この点については,パブリックコメント回答においても関連する記載があ り,パブリックコメント回答 No.221では,結論は明らかにされていないが,

⽛独自の見解として当該商品を推奨する内容を記載している場合⽜は,監督 指針の要件に照らして総合判断されると述べられている9)

次に,比較サイト上でどのような表示をした場合に,具体的な商品の推奨 があったといえるかという点であるが,入力条件に合致した商品を表示する 際に,その商品間で特定の商品を勧めるような記載や,優先するような記載 があれば,基本的には,推奨があったと評価されると思われる。また,商品 を表示する際に並び替えを行って,特定の商品を優先する表示を行う場合も,

その並び替えに客観的・合理的な理由がなければ,推奨に当たり得ると思わ れる。ただ,売れ行き順に並べるようなランキング表示は,それが販売数や 販売高が多い順に並べている旨の表示を行っていれば,販売数や販売高その ものはサイト運営者の主観によって左右されない客観的なデータであるから,

サイト運営者による推奨とは評価されないか,推奨に当たるとしても,弱い 程度の推奨行為に留まると思われる。もっとも,その場合,どのような基準 に基づいて並び替えを行っているのか,その根拠を表示するのが望ましいの ではないか。一方で,単に⽛この商品が今人気⽜等の表現により,客観的な データに基づいていないように見える表示は,どのような観点,データに照

9) 同回答は次のように述べている。

(比較サイト等の商品情報の提供を主たる目的としたサービスを提供する者 が,保険会社の広告として,当該保険会社の保険商品の情報をそのまま転載す る等のケースにおいて)保険会社又は保険募集人の広告を掲載する行為は,保 険募集にも募集関連行為にも該当しないと考えます。ただし,その広告とあわ せて,独自の見解として当該商品を推奨する内容を記載している場合には,

Ⅱ-⚔-⚒-⚑⑴②ア. とイ. のいずれにも該当するか否かを判断し,Ⅱ-⚔-⚒-

⚑⑴②ア. とイ. の両方に該当する場合には,具体的な報酬額の水準や商品の 推奨・説明の程度などから募集行為への該当性を総合的に判断し,保険募集に 該当しない場合であって,保険会社又は保険募集人において,当該行為を第三 者に委託又はそれに準じる関係に基づいて行わせている場合には,募集関連行 為従事者の行為に該当するものと考えます。

(14)

らして人気があるのかを明記しない場合は,サイト運営者による主観が介在 しているとして,推奨行為があるとされるおそれがあるのではないかと思わ れる。

なお,以上述べたことは,具体的な推奨行為が存在するかどうかという判 断であり,監督指針上の要件を踏まえるならば,具体的な推奨行為が存在す ると評価されたうえで,さらに,その推奨・説明の程度や募集行為との一体 性・連続性の有無,程度を総合判断して,保険募集への該当性が判断される ことに留意されたい。

⑶ 募集関連行為従事者に募集関連行為を行わせる場合の規制内容

保険会社や保険募集人が第三者に募集関連行為を行わせる場合に,どのよ うな義務が課せられるか,について説明する。

まず,保険会社が委託又はこれに準ずる関係によって第三者に募集関連行 為を行わせている場合は,現行の保険業法施行規則53条の11の委託先管理措 置義務又はこの規定の類推適用等によって,保険会社は,第三者による募集 関連行為の遂行にあたって,保険募集規制の違反につながる行為が行われる ことがないよう,また,保険募集規制の潜脱が行われることがないよう,第 三者の行為を管理・監督する義務がある。

これは,保険募集人が委託又はこれに準ずる関係によって第三者に募集関 連行為を行わせている場合も同様で,今回新設された保険業法施行規則227 条の11の委託先管理措置義務10)又はこの規定の類推適用等によって,保険 募集人には,第三者の行為を管理・監督する義務がある。この場合,保険募 集人に募集業務を委託している所属保険会社は,保険募集人が募集関連行為 従事者に対する委託先管理措置義務を適切に履行しているかどうか,という 観点から,保険募集人を管理・監督する義務がある。

監督指針Ⅱ-⚔-⚒-⚑⑵①~③の以下の義務は,これらの保険業法施行規 10) 保険業法施行規則227条の11の⽛保険募集の業務⽜には,保険募集の業務そ

のものだけではなく,保険募集の業務に密接に関連する業務が含まれる。

(15)

則の委託先の管理に係る体制整備義務の内容を,募集関連行為従事者への委 託が行われる場合について,敷衍したものであると考えられる。

① 募集関連行為従事者において,保険募集行為又は特別利益の提供等の募 集規制の潜脱につながる行為が行われていないか。

② 募集関連行為従事者が運営する比較サイト等の商品情報の提供を主たる 目的としたサービスにおいて,誤った商品説明や特定商品の不適切な評価 など,保険募集人が募集行為を行う際に顧客の正しい商品理解を妨げるお それのある行為を行っていないか。

③ 募集関連行為従事者において,個人情報の第三者への提供に係る顧客同 意の取得などの手続が個人情報の保護に関する法律等に基づき,適切に行 われているか。

⚔.おわりに

改正監督指針においては,保険募集該当性について新たに示された基準は,

⽛媒介⽜の意味内容や従前の監督指針で示されてきた類型(上記 2.⑴の①~

③)と連続性のある内容とされており(監督指針Ⅱ-⚔-⚒-⚑⑴②イ),ま た,(民法上の共同不法行為や刑法上の共同正犯の成立を検討する場合にお ける)共同行為についての一般的な考え方から類推して導き出すことは可能 と考えられ(監督指針Ⅱ-⚔-⚒-⚑⑴②ア),その意味では,これまでの保 険募集概念に全く異質なものを導入したものではなく,これまでの整理をそ の延長線上でより具体的な形で提示したものと評価することができると思わ れる。

また,募集関連行為に係る規制についても,募集関連行為従事者に義務を 課すものではなく,保険会社や保険募集人に対する保険業法に基づく委託先 の管理義務の内容を敷衍したものと位置付けられる。

いずれにせよ,保険募集ないし募集関連行為への該当性については,前述 した比較サイト,紹介行為等の他,保険と情報等技術の融合であるインステ ック(InsTech)ないしインシュアテック(InsurTech)の登場等にも伴い,

(16)

より一層実務における適用関係が問題になるものと考えられる。今後は,実 務における実例の蓄積を待ちつつ,各事例における適用関係について検討を 行っていきたい。

(筆者は弁護士)

<参考文献>

細田浩史 (2014)⽛保険業法等の一部を改正する法律の概要 保険募集・販売に関 するルールの見直しに関する部分を中心に ⽜⽝旬刊金融法務事情⽞No.1999 (2014) pp.124-132。

参照

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