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博 士 ( 医 学 ) 横 田 卓 学 位 論 文 題 名

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 横 田    卓

学 位 論 文 題 名

2 型糖 尿病 モ デル マウ スで は,

骨 格 筋酸 化 スト レス がミ ト コン ドリ ア機 能を 障 害し ,      運 動 能 カ を 低 下 さ せ る

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

【背景と目的】2型糖 尿病は肥満・インスリン抵抗性を基盤とした代謝異常であり,動脈 硬化の主要な危険因子として心筋梗塞や脳血管障害の発症率を高めることが知られている.

糖尿病の予防・治療は適切な食事と適度な運動によって達成されるが,2型糖尿病患者で は運動能カが低下していることが示されており,効果的な運動療法を行えないことが病態 の更なる悪化・進展へ導くという悪循環を形成している可能性がある.運動能カを規定す る因子として骨格筋エネルギー代謝が重要であることはこれまで多くの研究で示されてい る,2型糖尿病では骨 格筋ミトコンドリアでのェネルギー産生において中心的な役割を果 たしている電子伝達系機能が低下していることが示されているが,その詳細なヌカニズム はわかっていない,糖尿病では全身の酸化ストレスが増加していることが報告されており,

さらに心血管組織,脂肪組織および腎臓などの局所臓器においてNAD(P)H oxidase (Nox) 由来のスーバーオキサイドアニオン(021)が過剰に増加し,病態の悪化に関わっているこ とが示唆されている.骨格筋においてもNoxが存在していることから,骨格筋Nox由来の 02.が運動能カを制限している可能性が考えられる.

  本研究の目的は,高脂肪食負荷による2型糖尿病モデルマウスを用いて,1)運動能カは 低下しているか,2)骨格筋ミ卜コンドリア呼吸能が障害されているか,3)骨格筋におい て02・産生が増加し,その制御によって運動能カが改善するかどうかを明らかにすること であった.

【材 料と 方法 】8 ¥‑12週齢 オスC57BL/6Jマウスを無作為に分け,標準食(ND)ま たは高 脂肪 食(HFD)を8週 間投 与し た. さら にHFD投与 マウ スか ら無 作為 に抽 出 し,NAD(P)H oxidase活性阻害剤であるアポサイニン(Apocynin; A)  10 mmol/L水溶液を飲水用ポトルよ り投 与する群を作成した.本研究では,標準食8週間投与群(ND群),高脂肪食8週間投 与 群(HFD群 ) , 高 脂 肪 食 + アポ サイ ニン8週間 投与 群(HFD+A群) で実 験を 行っ た.

  8週間飼育したマウ スを,6時間の絶食後にImg/g body weightグルコースを腹腔内投与 し,糖負荷前後で尾静脈より採血し,血糖測定を行った.同様に6時間の絶食後に麻酔下 で各種臓器を摘出し重量測定を行い,下大静脈より採取した血液で血液生化学検査を行っ た.また臓器摘出前に,麻酔下で心工コーおよびミラーカテーテルによる心内圧測定を行 った.運動能カの評価には小動物用トレッドミルを用い,速度漸増負荷を行った.運動量 の指 標と して ,マ ウス の体 重を 考慮した垂直方向の仕事量(〓体重x重力加速度x垂直 方向の走行距離)を用い,運動中の呼気ガスをmixing chanlber法で分析し最大酸素摂取量,

最大二酸化炭素産生量を計測した.骨格筋ミトコンドリア呼吸能は,両下肢骨格筋よルミ

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ト コ ン ド リ ア を 単 離 し た 後 , ク ラ ー ク 型 酸 素 電 極 を 用 い て ,NADH( グル タ ミ ン 酸十 リ ン ゴ 酸 ) を 基 質 と し たADP存 在 下(State3) お よ びADP非 存 在 下(State4)の 酸 素 消 費速 度 を計 測 し た ,同 様 に 単 離し た ミ ト コン ド リ ア から 電 子 伝 達系 複 合 体m活性を 吸光度 計で 測 定し た . 下 肢骨 格 筋02. 産 生 量 およ びNox活 性は , ル シ ジェ ニ ン 化 学発 光法に より測定 した.

【 結 果 】ND群 と 比較 し てHFD群 で, 体 重(31土1vs 39士lg pく0.05).内 臓 脂 肪 重量(399 土48 vs 2035土54 mg pく0.05).空腹時血糖(108士7vs 207土16 mg/dL,pく0.05).インスリ ン(0.28士0.05 vs l.11士0.33 ng/mL,pくO.05).中性脂肪(69土5vs125土16m〆(也,pく0.05) が 有意 に 増 加 した . ま た 糖負 荷 試 験 でもHFD群 で い ずれ の 時 間 経過 に おい ても有 意に血 糖 値 が 増 加 した . 一 方 ,血 圧 や 心 機能 に は 影 響が な か っ た. ト レ ッ ドミ ル テ ス トで は ,ND 群 と 比 較 し てHFDで 仕 事 量 が36% 低 下し , 骨 格 筋重 量 で 補 正し た 最 大 酸素 摂 取 量 は11% 低 下し た , ま た骨 格 筋 ミ トコ ン ド リ ア呼 吸 能 で は,State3呼 吸 能がHFD群で33% 低下し , ミ ト コ ン ドリ ア 電 子 伝達 系 複 合 体m活性 に お い てもHFD群 で31% の 低 下を 認 め た .一 方 , State4呼吸 能 は 変 化が な か っ た. さ ら に 骨格 筋 で の02. 産 生 量お よ びNox活性は ,ND群 と 比 べてHFD群 で 有 意に 増 加 し た. 一 方 ア ポサ イ ニ ン 投与 に よ り ,高 脂 肪食 負荷に よる骨 格 筋02・ の 過 剰産 生 が 軽 減し , 体 重 や糖 代 謝 に は影響 せずに 運動能 力・骨格 筋ミト コンド リ ア呼吸能が有意に改善した,.

【 考察 】 今 回 の研 究 で 最 も重 要 な 所 見は ,2型 糖 尿 病 モデ ル マ ウ スの 運 動能カ が有意 に低 下 し た こ と で あ っ た . こ の こ と は 最 大酸 素 摂 取 量の 低 下 を 伴っ て い た ,さ ら にHFD群よ り 摘 出 し た下 肢 骨 格 筋ミ ト コ ン ドリ ア のState3呼 吸 能 の 低下 お よ び 電子 伝 達 系 複合 体Iu 活 性 の 低 下 を 認 め た . ま たHFD群 に お ける 運 動 能 力低 下 と 骨 格筋 ミ ト コ ンド リ ア 機 能障 害 は 、Noxの活 性 化 を 阻害 す る ア ポサ イ ニ ン の慢 性 投 与 によ っ て 抑 制さ れ た . この 時HFD 群 の骨 格 筋 に おけ る02・産 生 お よ びNox活 性 の 増加 は , ア ポサ イ ニ ン 投与 によっ て抑制さ れ た , し たが っ て ,Nox由 来 の02・ が ミ ト コン ド リ ア 機能 障 害 を 引き 起 こ し ,HFD群 の 運 動能力低下に重要な役割を果たしていると考えられた.

  本 研 究 で 観 察 さ れ たHFD群 で の 運 動 能 カ お よ び 最 大 酸 素 摂 取 量の 低 下 は ,2型糖 尿 病 患 者に お け る これ ま で の 報告 と 一 致 する . 持 続的 な運動能 カは運 動筋の ミトコ ンドリ アに お ける 酸 化 的 リン 酸 化 に 依存 し て い る, 本 研 究に おいて, 下肢骨 格筋か ら単離 したミ トコ ン ド リ ア のState3呼 吸 能 はHFD群 で 有 意 に 低 下 し , さ ら に 電 子 伝 達 系複 合 体III活性 が 低 下し た . こ のこ と は 糖 尿病 モ デ ル マウ ス に おい て最大酸 素摂取 量が低 下した ことを 支持 するものである.

  HFD群 の 運 動 能 力 低 下 お よ び 骨 格 筋 ミ ト コ ン ド リ ア 機 能 異 常 に骨 格 筋 に おけ るNox由 来 の02. が 関与 し て い た. 同 様 の 糖尿 病 モ デ ル動 物 で 脂 肪, 血 管 , 腎臓 などの 臓器でNox 由来 の02.が 増加す ることが 報告さ れてい るが, 骨格筋 で増加 した02. の役割 につい ては今 回 の 研 究 では じ め て 明ら か に さ れた . し か しHFD群 に お いて 、 ど の よう な 作 用 機序 でNOx が 活性 化 さ れ るの か は 明 らか で は な い. 培 養 平滑 筋あるい は内皮 細胞を 用いた 実験に おい て は高 濃 度 グ ルコ ー ス , イン ス リ ン ある い は 遊 離脂 肪 酸 の 刺激 が 直 接Noxを活性 化する こ と が 示 さ れて お り , 今回 の モ デ ルで も 高 血 糖お よ び 高 イン ス リ ン 血症 が 骨 格 筋に お い て Noxの 活性 化 に 関 与し て い る 可能 性 が 考 えら れ る , また ,Nox由 来の02.がミ トコン ド1」 ア機能を障害する詳細な機序も不明である.

【 結論 】 今 回 の研 究 に お いて , 糖 尿 病モ デ ル マウ スで運動 能カが 低下し ,骨格 筋ミト コン ド リア 機 能 障 害が 起 こ っ てい る こ と ,さ ら に 骨格 筋におけ るNAD(P)HOXidase由 来の02. 産 生が こ れ ら の現 象 に 関 わっ て い る こと を 明 らか にした. 骨格筋02.の制 御は糖 尿病に お け る運 動 能 カ の改 善 , 結 果と し て 糖 尿病 自 体 の改 善に有効 な治療 法とな ること が期待 され る.

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学位論 文審査の要旨

主 査    教 授    筒 井 裕 之

副 査    教 授    小 池 隆 夫 副 査    教 授    三 輪 聡 一

学 位 論 文 題 名

2 型糖尿病モデルマウスでは,

骨格筋酸化ストレスがミトコ、ンドリア機能を障害し,

     運動能カを低下させる

  2 型糖尿病 は動脈硬化の主要な危険因子の1 つである.2 型糖尿病患者では運動能カが 低下していることが以前から示されているが,詳細なメカニズムについては明らかにされ ていない.2 型糖尿病の予防・治療にとって運動療法は重要であるが,効果的な運動療法 を行えないことが病態の悪化・進展へと導いている可能性がある.一方2 型糖尿病では全 身の酸化ストレスが亢進していることが報告されている,さらに心血管組織などの局所臓 器においてNAD(P)H oxidase (Nox) 由来のスーパーオキサイドアニオン(02') が過剰に増 加していることも報告されている,骨格筋にもNox が存在することから,骨格筋Nox 由来 の02‑ が運動能カを制限している可能性が考えられる.本研究の目的は,高脂肪食負荷に よる2 型糖尿病モデルマウスを用いて, 1 )運動能カは低下しているか, 2 )骨格筋ミ卜コ ンドリア呼吸能が障害されているか,3 )骨格筋において02‑ 産生が増加し,その制御によ っ て 運 動 能 カ が 改 善 す る か ど う か を 明 ら か に す る こ と で あ っ た ,    材料と方法: 8 〜  12 週齢オスC57BL/6J マウスを無作為に分け,標準食( ND )または高 脂肪食( HFD) を 8 週間投与 した.さ らに HFD 投与 マウスか ら無作為 に抽出し , NAD(P)H oxidase 活性阻害剤であるアポサイニン(Apocynm ;A ) 10mmol /L 水溶液を飲水用ボトルよ り投与する群を作成した.本研究では,標準食8 週間投与群(ND 群),高脂肪食8 週間投 与群( HFD 群 ),高脂肪食十アポサイニン8 週間投与群(HFD 十A 群)で実験を行った. 8 週間後に,空腹時採血,糖負荷試験を行った.また心機能評価のため,心エコーおよび心 内圧測定を行った.運動能カの評価には小動物用卜レッドミルを用い,速度漸増負荷中の 走行距離,仕事量および呼気ガスを測定した.骨格筋ミトコンドリア呼吸能は,クラーク 型酸素電 極を用いて ADP 存在下( State3 )および ADP 非存在下(State4 )の酸素消費速 度を計測した.さらに電子伝達系複合体川活性を吸光度計で測定した.下肢骨格筋02 ・産 生 量 お よ び Nox 活 性 は , ル シ ジ ェ ニ ン 化 学 発 光 法 に よ り 測 定 し た ,    結果: ND 群 と比較してHFD 群で,体重・内臓脂肪重量・空腹時血糖・インスリン・中 性脂肪が 有意に増加 した.また糖負荷試験では,HFD 群で糖負荷後の血糖値が有意に増 加した,一方,血圧や心機能には影響がなかった.トレッドミルテストでは,ND 群と比 較して HFD で 仕事量が36 %低下し,骨格筋重量で補正した最大酸素摂取量は 11 %低下し た.また 骨格筋ミト コンドリア呼吸能は,State3 呼吸能がHFD 群で 33 %低下した,さら

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に複合体III 活性がHFD 群で31 %低下した,骨格筋での02‑ 産生量およびNox 活性は,HFD 群で有意に増加した,一方,アポサイニン投与により ,高脂肪食負荷による骨格筋02 .の 過剰産生が軽減し,体重や糖代謝には影響せずに運動能力・骨格筋ミトコンドリア呼吸能 が有意に改善した.

   考察:本研究ではHFD 群の運動能カが低下し,同時に最大酸素摂取量も低下していた,

さらにHFD 群の骨格筋ミトコンドリア機能が低下し,酸化ストレスが亢進していた.一方 HFD 群においてNox 活性を抑制したところ,骨格筋での酸化ストレスが減少し,骨格筋ミ トコンドリア機能および運動能カが改善した,以上から骨格筋Nox 由来の酸化ス卜レスが ミトコンドリア機能を障害し,2 型糖尿病モデルマウスの運動能力低下に重要な役割を果 たしていると考えられた,さらに培養平滑筋あるいは内皮細胞を用いた実験にて,高濃度 グルコース,インスリンあるいは遊離脂肪酸の刺激が直接Nox を活性化することが示され ており,2 型糖尿病モデルマウスでは高血糖および高インスリン血症が骨格筋Nox の活性 化に関与している可能性が考えられた.

   口頭発表に際し,三輪教授から運動中の心機能や血管拡張反応が運動能カに与える影響 および正常マウスに薬剤を投与した際の運動能カの変化についての質問がなされた.次い で小池教授から本研究で用いた薬剤(アポサイニン)の臨床応用の可能性についての質問 がなされた.最後に筒井教授から動物実験の結果が臨床においても起こり得るか否かにつ いての質問がなされた,いずれの質問に対しても,申請者は研究結果および過去の文献を 引用し,適切な回答を行った.

   この論文は,2 型糖尿病の運動能力低下には骨格筋での酸化ストレス,ミトコンドリア 機能障害が関与していることを示し,2 型糖尿病の新たな治療戦略の可能性として意義の あるものと評価された.審査員一同は,これらの成果を高く評価し,大学院課程における 研鑽や取得単位なども併せ申請者が博士(医学)の学位を受けるのに充分な資格を有する ものと判定した.

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参照

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