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博 士 ( 医 学 ) 藤 崎 志 保 子 学 位 論 文 題 名

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     博 士 ( 医 学 ) 藤 崎 志 保 子 学 位 論 文 題 名

ヒトオステオポンチンの測定用酵素抗体法の開発に関する研究

―血清オステオポンチンの分子脆弱性について―

学位論文内容の要旨

    オステオボンチンは,骨,腎,血管壁,血清,母乳など様々な組織に存在する酸性 リン酸糖蛋白であり、その機能として細胞接着や骨におけるりモデリングへの関与,免 疫系への関与など多岐にわたり報告され、また,細胞の悪性化との関連も報告されてい ることより,臨床マーカーとしての有用性の可能性も示唆される.しかし,これまでに 報告されているオステオポンチンの研究において、オステオボンチン蛋白そのものの量 を測定したものはほとんど見られない.オステオポンチンを臨床的なマーカーとして利 用するには,検体中のオステオボンチンの測定系を確立することが必要であり、わが国 でもオステオポンチン測定キットの開発が試みられているが,未だに標準化には至って いない.オステオポンチンの測定を困難にしている理由のひとつにオステオボンチンの 脆弱性が関与している可能性について報告する.

    ヒト初乳よルバリウム吸着法とクロマトグラフイーにて精製した母乳オステオポン チン(以下mOPN)を、家兎膝窩に免疫し、得られた抗血清のIgG分画を抗オステオポン チン抗体 (抗mOPN)と した.血清 中のオステオボンチン(以下sOPN)は母乳と同様に バリウム 吸着法を基 に分画した .mOPNおよぴsOPNと抗mOPN抗体との反応を,免疫電 気泳動法,SDS‑ボリアクリルアミド電気泳動,Western Blot法,サンドイッチEnzyme   Immunoassay(EIA)法,mOPN7抗mOPN抗体.抗原抗体反応阻害試験により検討した・

    結果として、l冫・抗mOPN抗体はmOPNとゲル内沈降反応を示し,この抗体を固層化 したサンドイッチEIAによる測定も可能であったが,sOPNはゲル内沈降反応を示さず,

またEIAにおける測定も不能であった.2)この抗体はWestern blot法では両オステオポ ンチンとの反応を示した。ただし,得られたバンドパターンは両者に大きな差を認めた.

3) sOPNはゲル内反応で沈降線を形成しなかったが、mOPNと抗体間の沈降反応形成を 阻害し,かつ固相化したmOPNの抗体結合も抑制した.

    以上の実験 結果から、sOPNは抗mOPN抗体に対し,mOPNと明らかに異なる奇異な 反応を示すことが明らかになった。この奇異な反応現象について次のように考察した。

sOPNが陽性反応を示したWestern blot法はシート上に吸着した抗原と溶液中の抗体を反 応させるシステムである.抗原は蛋白質自体の吸着能でシートに固定され安定しており,

仮に蛋白がシート上で小さなフラグメントに分解され,エピトープが極少になったとし

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ても,その残されたエピトープと抗体が結合し陽性反応を得ることが可能である.一方、

免疫電気泳動法は,沈降性の免疫複合体を認識する方法であり、サンドイッチEIA法は 抗原を固相化抗体および標識抗体との双方を反応させる方法で,いずれも多価のエピトー プを有する抗原を検出する方法である.また,どちらの方法も抗原は溶解された状態で 長い反応時間を要するため,反応途中で抗原が分解されてしまう可能性は高い.仮に sOPNが反応過程で分解を受け,エピトープの乏しい小さな分子となっていた場合,沈 降性の大きな抗原抗体複合物の形成ができず,免疫電気泳動法では沈降線として認識さ れなくなる.同様に,分解を受けた抗原が複数のエピトープ,即ち固相化抗体と反応す るエピトープと標識抗体と反応するエピトープの両方を有しなければ,サンドイッチ法 では反応物質として認識されないことになる.免疫電気泳動法でsOPNが沈降線を形成 しな かったにも かかわらず ,mOPNと抗mOPN抗体間の沈降線形成を阻害するのは次の ように解釈できる.すなわち、反応過程で分解されてできたsOPNの小さなフラグメン トは、抗mOPN抗体と結合するものの、残されたエピトープが乏しいため,沈降線を示 すほどの十分な免疫複合体の形成が出来ず,結果として沈降線が認識されない.一方,

このフラグメントはエピトープが少ないとはいえ,抗mOPN抗体と反応する抗原活性が ある ため,mOPNと抗mOPN抗 体反応系に加えられると抗原過剰状態(抗体量に比ベ抗 原量が過剰)になり沈降線は形成されなくなったと考えることが出来る.なお,固相化 mOPNプ レー ト を用 いたmOPN7抗mOPN抗体阻害試 験(EIA)で高 濃度のsOPNが阻 害活性 を示したことは,sOPNとその分解産物には抗mOPN抗体と反応し,それを消費するエピ トープがあることを示している.事実、mOPNに比較し,sOPNは短時間の保存,溶血,

凍結 融解などで容易に小分子が出現し,非常に分子的脆弱性が高いことが、Western blot法およぴゲル濾過上で観察される。即ち、このsOPNの脆弱性がEIAによるsOPN測定 を困難にする要因,要素と考えられる.またWestern blot法で示したように,分解様式 にもmOPNとsOPN間に差を認 めた.以上からmOPNとsOPNでは,抗原性,蛋白の安定性 において異なった性質を持っと結論した.オステオポンチンは母乳や血液の他にも骨,

尿,血管壁と様々な組織に局在しており,今後の測定系の確立において各組織間のオス テ オ ポ ン チ ン の 差 異 に 注 目 し 解 析 す る こ と が 必 要 と 考 え ら れ る .

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学 位 論 文 審 査 の 要 旨

学 位 論 文 題 名

ヒトオステオポンチンの測定用酵素抗体法の開発に関する研究

一血 清 オ ステ オ ポン チ ン の分 子 脆弱 性 につい て―

    オス テオポン チンは, 骨,腎, 血管壁, 血清,母乳 など様々 な組織に 存在する酸性 リン 酸糖蛋白 であり、 その機能 として細 胞接着や骨 における りモデリ ングヘの関与,免 疫系 への関与 など多岐 にわたり 報告され 、また,細 胞の悪性 化との関 連も報告されてい るこ とより, 臨床マー カーとし ての有用 性の可能性 も示唆さ れる。し かし,オステオポ ンチ ンを臨床 的なマー カーとし て利用す るには,検 体中のオ ステオポ ンチンの測定系を 確立 すること が必要で あり、わ が国でも オステオポ ンチン測 定キット の開発が試みられ てい るが,未 だに標準 化には至 っていな い。オステ オポンチ ンの測定 を困難にしている 理 由 のひ と っ にオ ス テオ ポ ン チン の 脆弱 性 が 関与して いる可能 性について 報告する 。     ヒト 初乳よル バリウム 吸着法と ク口マト グラフイー にて精製 した母乳 オステオポン チ ン (以 下m〇PN)を 、 家 兎膝 窩 に 免疫 し 、得 ら れ た抗 血 清のIgG分 画を 抗 オステ オポ ン チ ン 抗 体 ( 抗m○PN)と し た。 血 清 中の オ ステ オ ポ ンチ ン (以 下s〇PN)は母 乳 と同 様 に バ リ ウ ム 吸 着 法 を 基 に 分 画 し た 。mOPNお よ びs○PNと 抗mOPN抗 体 との 反 応 を,

免 疫 電気 泳 動 法,SDS−ポ ル ア クリ ル アミ ド 電気 泳動,Westem Blot法 ,サンド イッチ EnzymeImmunoassay(EIA)法 , mOPN/ 抗mOPN抗 体 ― 抗 原 抗 体 反 応 阻 害 試 験 に よ り 検 討 し た 。 結 果 :1) 抗m○PN抗 体 はmOPNと ゲ ル内 沈 降 反応 を 示し , こ の抗 体 を固 層 化 した サ ン ドイ ッ チEIAに よ る測 定 も可 能 で あっ た が,sOPNは ゲ ル内 沈 降反応 を示 さ ず ,ま たEIAにお け る測 定 も 不能 で あっ た 。2) この 抗 体はWestem blot法で は両オ ステ オポンチ ンとの反 応を示し た。ただ し,得られ たバンド パターン は両者に大きな差 を 認 め た 。3) sOPNは ゲ ル内 反 応 で沈 降 線を 形 成 しな か っ たが 、mOPNと抗 体 間 の沈 降 反 応 形 成 を 阻 害 し , か つ 固 相 化 し た mOPNの 抗 体 結 合 も 抑 制 し た 。   以 上 の 実 験 結 果 か ら 、sOPNは 抗mOPN抗 体 に 対 し ,mOPNと 明 ら か に 異 な る 奇 異 な 反応 を示すこ とが明ら かになっ た。この 奇異な反応 現象につ いて次の ように考察した。

  sOPNが陽 性 反 応を 示 したWestem blot法は シ ー ト上 に 吸 着し た 抗原 と 溶 液中の 抗体 を反 応させる システムで、抗原は蛋白質自体の吸着能でシートに固定され安定しており,

彦 三

邦 信

林  

  出

小 西

授 授

教 教

査 査

主 副

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仮に蛋白がシート上で小さなフラグメントに分解され,工ピトープが極少になったとし ても,残ったェピトープと抗体が結合し陽性反応を得ることが可能である。一方、免疫 電気泳動法は,沈降性の免疫複合体を認識する方法であり、サンドイッチEIA法は抗原 を固相化抗体および標識抗体との双方を反応させる方法で,いずれも多価のエピトープ を有する抗原を検出する方法である。また,どちらの方法も抗原は液相で長い反応時間 を要するため,反応途中で抗原が分解されてしまう可能性は高い。仮にsOPNが反応過 程で分解を受け,エピ卜一プの乏しい小さな分子となった場合,沈降性の大きな抗原抗 体複合物の形成ができず,免疫電気泳動法では沈降線として認識されなくなる。同様に,

分解を受けた抗原が複数のエピトープ,即ち固相化抗体と反応するエピトープと標識抗 体と反応するエピトープの両方を有しなければ,サンドイッチ法では反応物質として認 識されないことになる。免疫電気泳動法でsOPNが沈降線を形成しなかったにもかかわ らず,mOPNと抗mOPN抗 体間の沈降 線形成を阻 害するのは 次のように解釈できる。

すなわち、反応過程で分解されてできたsOPNの小さなフラグヌントは,抗mOPN抗体 と結合するものの、残されたェピトープが乏しいため,沈降線を示すほどの十分な免疫 複合体の形成が出来ず,結果として沈降線が認識されないが,このフラグヌントはェピ トープが少 ないとはい え,抗mOPN抗体と 反応する抗 原活性があ るため,mOPNと抗 mOPN抗体反応系に加えられると抗原過剰状態になり沈降線は形成されなくなったと考 えることが 出来る。な お,固相化m○PNプレ ートを用い たm○PN/ 抗mOPN抗体阻害 試験(EIA)で高濃度のsOPNが阻害活性を示したことは,s○PNとその分解産物には抗 mOPN抗 体と反応し ,それを消 費するエピ トープがあ ることを示 している。事実、

mOPNに比較し,sOPNは短時間の保存,溶血,凍結融解などで容易に小分子が出現し,

非常に分子的脆弱性が高いことが、Western blot法およびゲル濾過上で観察される。即 ち、このsOPNの脆弱性がEIAによるsOPN測定を困難にする要因,要素と結諭できる。

またWestern blot法で示したように,分解様式にもmOPNとsOPN間に差を認めた。以 上からmOPNとsOPNでは,抗原性,蛋白の安定性において異なった性質を持っと結論 した。オステオポンチンは母乳や血液の他にも骨,尿,血管壁と様々な組織に局在して おり,今後の測定系の確立において各組織間のオステオポンチンの差異に注目し解析す ることが必要と考えられる。

  公開発表に際し、副査の西教授から、母乳におけるオステオポンチン量と精製におけ る回収量について、EIAにおける蛋白量および単ク口ーン抗体ついての質問、ついで副 査の上出教授から母乳に存在するオステオポンチンの意義、実験結果の解釈の是非につ いて、特に用いた抗体と抗原の立体構造との関係について、抗原の脱燐酸化を行う理由 と意義、血清と血漿での反応の差についての質問があった。また、主査の小林教授から、

抗体のquality、特に認識工ピトープや抗体のカ価と反応性の関係、今後の研究の進展方 法についての質問、さらにフ口アーから他の抗体で行った場合の結果についての質問が あったが、 申請者は、 自らの実験 結果と文献 を引用して 概ね妥当な回答をした。

  審査員一同は、申請者が多種類の生化学的、免疫的な手法を駆使して、オステオポン チン測定系における奇異な反応現象を解明した点を高く評価し、博士(医学)の学位を 受けるのに十分な資格を有するものと判定した。

参照

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