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博士(歯学)南川 兀 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(歯学)南川   兀 学位論文題名

Development of multi‑functional dental materials using      ●

    an amlnoaCidderiVatiVe

     (アミノ酸誘導体を用いた多機能型歯科材料の開発)

学位論文内容の要旨

【目的】近年、歯科材料が周囲組織/細胞に及ぼす為害作用と細胞に加わる酸化 ストレスとの関連性が指摘されている。抗酸化システイン誘導体である〃‐アセ チ ル シ ス テイ ン(NAC)は 、細 胞内 に取 り込 まれ てジア セチ ル化 され 、グ ルタ チ オ ン(GSH)の 前駆 体で あるL.シ ステ イン とな る。 この ため 、NACは直 接的 抗酸 化能 を示 すだ けで なく 、GSHを細胞内に供給することで、細胞内のレドッ クスシステムを改善する。レジン材料など一部の歯科材料は歯髄細胞に酸化ス トレ スと 関連 した 為害 作用 を及ばすことが知られており、NACを歯科材料に添 加することにより、その作用を減弱あるいは消去できる可能性がある。本研究 の目 的は 、歯 科材 料にNACを応用することによって歯科材料由来の歯髄細胞為 害 作 用 を 減 弱 あ る い は 消 去 す る こ と が で き るか を 検 討 す る こ と で あ る 。

【材料と方法】

第一部: Mineral rrioxide Aggregate (MTA)のラット歯髄株化細胞への影響   細 胞 は ラ ッ ト 歯 髄 株 化 細 胞(RPC‑C2A)を 用 い 、 被 験 材 料 と し てM′rA

(ProR00tMT A,DentsplyTulsaDental,Thba,OK)を使用した。RPC‐C2Aに M′IIA抽 出液 を作 用さ せて 、NF‐K活性化、iNOSならぴにシクロオキシゲナー ゼ2(COX‐2)mRNA発現 、プ ロス タグ ラン ジンE2(P(迎2)産 生を 調べ た。

第 二 部 : MTA上 で 培 養 し た ラ ッ ト 歯 髄 細 胞 に 対 す るNACの 効 果   細 胞は8週 齢のSprague‐DaWleyラ ット の上 顎切 歯か ら分離培養したラット 歯髄 初代 培養 細胞 を用 いた 。MTAを12‐weu細 胞培 養皿 底面で硬化させた。そ のMTA上 に ラ ッ ト 歯 髄 初 代 培 養 細 胞 を 播種 し、 培養 液中 にNACを添 加し たも の を 実 験 群、NACを 添加 して いな いも のを 対照 群とし た。 播種 後24時間 の細 胞数 、細 胞伸 展、 細胞 内活 性酸 素種 (ROS)の 産生 量な らぴにGSH量を検討し た。

第三 部:NACによ るレ ジン 添加型グラスアイオノマーセメント(RMGI)の無毒 化と多機能化

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  被 験 材 料 と し て 、RMGI (FuiLCn,GCAmedca, 心sip,IL) を 使 用 し た 。 RM(HにNACを 配 合 し た も の を 実 験 群 と し 、RMGIを 対 照 群 と し た 。 実 験 群 およぴ対照群を12‐weu細胞培養皿底面で硬化させ、そのサンプル上にラット歯 髄初代培養細胞を播種し、初期細胞接着数、細胞生存率、細胞伸展、増殖能力、

炎症 性サ イト カイ ン、 アル カリ フオ スファターゼ(ALP)活性、石灰化関連遺 伝子 (I型コラ ーゲ ン、 オス テオ ポン チン(0P)、オステオカルシン(OC))

な ら び にOP、OCタ ン パ ク 質 の 発 現 、ROSの 産 生 量 、 ( 掩H量 を 検 討 し た 。

【結果と考察】

第一 部:MI・A抽出 液に より 細胞 のPGE2産生量が培養3、6、12時間後と経時的 に増 加し た。 また 、MTA抽出 液を 作用 させることにより、対照群とくらべて有 意にPGE2産出 量の 増加 が確 認さ れた 。さらに、MT.A抽出液を作用させること によりCOX‐2、iNOSの遺伝子発現が誘導されることをR1・‐PCR法により確認し た。COX‐2発現には細胞内情報伝達系のぃぼ‐佃の関与が示されている。ウエス タンブロッティング法により、NF.1毋のサブュニットであるp65、p50、RelB、 またIKBa、pIKBaの 発現 を確 認し とこ ろ、MTA抽 出液 を作 用さ せる ことにより p65、p50、Re皿発 現の 細胞 質内 での 減少と核内での増加、また、IKB発現の減 少 、pIK発 現 の 増 加 が 細 胞 質 内 で 確 認 さ れ た 。 これ に より 、MTA抽 出液 を作 用さ せる ことで、細胞質内で11dBaがりン酸化されNF‐1毋の活性化が行われて いる こと が示 され た。 以上 の結 果よ り、MTA抽出液を歯髄細胞に作用させるこ とに より 、NF・1く が活 性化 され てCOX・2遺伝子が転写され、PGE2産生量の増 加に関与することが示唆された。

第二 部:MTA上 でNACを 添加 した 培養 液を用 いて ラッ ト歯 髄細 胞を 培養した。

培 養24時 間 後 のMTA上 の 細 胞 数 をWST1法 に よ り 測 定 す る と、N.ACを 添 加 させ た実 験群では、対照群と比べて60%増加していた。また、ローダミン・フ アロ イジ ンにて細胞骨格を染色し、共焦点レーザー顕微鏡を用いて観察した。

得られた画像を画像解析ソフト(ImageJ,NIH,Bethesda,MD)を用い細胞面積 と周 径を 定量 化し た。 細胞 面積 及ぴ 周径はNACを添加した実験群では対照群と く ら べ て2倍 高 い 値 を 示 し た 。比 色 検 定 法 に よ り 測 定 し たGSH量 はNAC非 添 加の場合より3.5倍に増加した。また、細胞骨格と同時に共焦点レーザー顕微鏡 で 細 胞 内ROS産 生 を 調 べ た と ころ 、ROSはNAC添 加 に よ り 減 少 し た 。 以 上 の こ と よ り 、NACを 培 養 液 に 添 加 す る こ と でMrA上 の 細 胞数 や細 胞伸 展を 改善 する こと が明 らか にな った 。こ の生 物学的影響はNACによる細胞内レドックス システムの改善が関係しているものだと考えられる。

第三 部: 初期 細胞 接着 数をWS小1法に より検討したところ、材料上に接着して いた 実験 群の 細胞 数は 、対 照群 に比 べて、培養3時間後で約90%、培養24時間 後で60% 増加していた。さらに培養24時間後にフローサイトメトリー解析によ

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り 細 胞 生 存 率 を 検 討 し た とこ ろ 、NAC含 有RMGI上 で 培 養さ れ た 歯 髄 細 胞は 73.3%生存したのに対し、RMGI単独上では46.7%しか生存しなかった。また、

細胞骨格をローダミン・ファロイジンにて染色し、共焦点レーザー顕微鏡を用 いて細胞伸展を検討したところ、培養24時間後で対照群ではほとんどの細胞が 球形を示していたのに対し、実験群では、細胞伸展がみられ、また細胞内部で はは っき りと アク チン ファ イバ ニが 確認 でき た。ImageJを用い細胞面積、周 径、フェレの直径を定量化したところ、いずれにおいても、対照群に比べ実験 群に おい て有 意に 高い 値が得られた。また、対照群において、増殖能力、ALP 活性 、石 灰化 関連 遺伝 子な らび にOP、QCタン パク 質の発現がいずれも抑制さ れた が、NAC添加 によ りその活性、発現は有意に改善された。細胞の石灰化の 評価 は、 培養20日 後に 、フ オン コッ サ染 色、Ca沈 着量、走査型電子顕微鏡に よる石灰化物の観察ならびにエネルギー分散型,X線分析を用い検討した。いず れの 値に おい ても 対照 群と 比ベ 、実 験群 では 有意 に高い値が得られた。これ ら のNACに よ る 細 胞 挙 動 の 改 善 はGSH量 の 増 加 お よ びROS産 生 量 の 減 少 と関 係があると考えられる。また、より詳しい機序を調べるために、RMGI硬化後、

24時間蒸留水に浸漬させてから細胞を播種した群と、硬化後すぐ細胞を播種し た 群 でGSH量を 比較し たと ころ 、対 照群 では24時 間後 播種 の群 と、 硬化 後す ぐ 播 種 し た 群 でGSH量 の 差 が な か っ た の に 対 し 、NAC含 有 の 実 験 群 で は24 時間 後播 種の 群で は、 硬化後にすぐ播種した群に比べGSH量が減少していた。

こ の こ と はNACがRMGIか ら 溶 出 し 、 細 胞 に 取 り 込 ま れ る こと に よ りGSH量 を増 加さ せて いる と考 えら れる 。ま た、RMGI抽出 液を培養液に添加し、さら にNACを 添 加 し た 群 と 、 抽 出 液 の み 作 用 さ せ た 群 でWST1法に よ り3時 間 後 の細 胞数 を比 較し たと ころ、NACを加えた群は、加えなぃ群よりも60%以上細 胞数 が増 加し てい た。 過去 の文 献か らRMGI抽 出液 には残留モノマーが溶出し て お り 、 そ れ が 細 胞 に 為 害性 を も た ら す こ と が 分 か っ て い る 。NACはRMGI 抽出液の細胞為害性の改善にも効果があることが示唆された。以上の結果から、

NACがRMGI自体 の細胞 毒性 を低 下さ せ、 また 、細 胞の 抗酸 化能 カを 増加 させ る こ と に よ り 、RMGIの 毒 性を 減 少 さ せ てRMGIを 多機 能化 する こと が示 唆さ れた。

【結 論】NACを応 用す ることで、歯科材料の生体為害性を改善し、石灰化組織 の 再 生 を 誘 導 す る 次 世 代 歯 科 材 料 開 発 の 可 能 性 が 示 さ れ た 。

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学位論 文審査の要旨 主 査    教 授    八 若 保 孝 副 査    教 授    鈴 木 邦 明 副 査    教 授    田 村 正 人

学 位 論 文 題 名

Development of multi −functional dental materials using      ′acid derivativ

    an amlno  e

     (アミノ酸誘導体を用いた多機能型歯科材料の開発)

  審査は、審査担当者全員の出席の下に行われた。まず申請者に提出論文の概要の説明を求め、次いでそ の内容および関連分野にっいて試問を行った。

  審査論文の概要は以下の通りである。

  近年、歯科材料が周囲組織/細胞に及ぽす為害作用と細胞に加わる酸化ストレスとの関連性が指摘され ている。抗酸化システイン誘導体であるN―アセチルシステイン(NAC)は、細胞内に取り込まれてジアセ チル化され、グルタチオン(GSH)の前駆体であるL―システインとなる。このため、NACは直接的抗酸化 能を示すだけでなく、GSHを細胞内に供給することで、細胞内のレドックスシステムを改善する。レジン 材料など一部の歯科材料は歯髄細胞に酸化ストレスと関連した為害作用を及ぽすことが知られており、

NAC‑を歯科材料に添加することにより、その作用を減弱あるいは消去できる可能性がある。本研究は、歯 科材料にNACを応用することによって歯科材料由来の歯髄細胞為害作用を減弱あるいは消去することがで きるかを検討した。

  被験材料としてldineral Trioxide Aggregate (MTA)ならぴにレジン添加型グラスアイオノマーセメン卜 (RMGI)を用いた。細胞は ラッ卜歯髄株化細胞(RPC‑C2A)ならぴにラット歯髄初代培養細胞を用いた。

RPC−C2AにMTA抽出液を作用させて、NF‑にB活性化、誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)ならびにシクロ オキシゲナーゼ2 (COX‑2) mRNA発現、プロスタグランジンE2(PGE2)産生を調ぺた。さらに、ラット歯 髄初代培養細胞を用い歯科材料にNACを作用させ、初期細胞接着数、細胞生存率、細胞伸展、増殖能力、

アルカリフオスファターゼ(ALP)活性、石灰化関連遺伝子(I型コラーゲン、オステオポンチン(0P)、

オステオカルシン(oc))ならぴに0P、oCタンパク質の発現、細胞内活性酸素種(R0s)の産生量ならび にGSH量を検討した。

  MTA抽出液を作用させることにより、対照群とくらべて有意にPGE2産出量の増加が確認された。さらに、

MTA抽出液を作用させることによりCOX一2、iNOSの遺伝子発現が誘導されることをRT―PcR法により確認し た。ウエスタンプロッティング法により、NFIKBのサブユニットであるp65、p50、RelB、またI五BQ、pIKBQ の発現を確認しところ、MTA抽出液を作用させることによりp65、p50、RelB発現の細胞質内での減少と核 内での増加、また、I曲発現の減少、pIKB発現の増加が細胞質内で確認された。このことから、MTA抽出 液を作用させることによ り、細胞質内でIKBaがりン酸化されNFlだBの活性化が行われていることが示

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唆さ れた 。以上 の結果 より、LITA抽出 液を歯 髄細 胞に作 用させ ること によ り、NF‑にBが活性化されてCOX‑2 遺 伝 子 が転 写 さ れ 、PGE2産 生量 の増加 に関与 するこ とが示 唆さ れた。 次に、MTAセ メント 上で 抗酸化 アミ ノ 酸 で あるNACを 添加 し た 培 養 液を 用 い て ラ ット 歯 髄 細 胞 を 培養 した。 細胞 数なら びにGSH量はNAC非 添 加 の 場 合よ り 有 意 に 増 加し た 。 ま た 、細 胞内ROS量 はNAC添加 により 減少し た。さ らに、 ラッ ト歯髄 細胞 RMGI上 で 培 養 する と初期 細胞 接着数 、細胞 生存率 、細胞 伸展 、増殖 能力、ALP活 性、石 灰化 関連遺 伝子 な ら び にOPOCタン パク質 の発 現がい ずれも 抑制さ れたが 、NAC添加 により 有意に 改善さ れた 。細胞 の石 灰 化 もRMGI単 独 では 抑制さ れた が、NAC添加 により その誘 導が 確認さ れた。 また、 共焦点 レー ザー顕 微鏡 で 細 胞 内ROS産 生 を調 べ た と こ ろ、ROSNAC添 加 によ り 減 少 し た。 比 色 検 定 法 によ り 測定 したGSH量は NAC非添 加 の 場 合 より 増 加 し た 。こ れ ら のNACに よ る 細 胞挙 動 の 改 善 はGSH量 の 増加 お よびROS発 生量の 減 少 と 関係 あ る と 考 え られ る 。 ま た 、よ り詳 しい機 序を 調べる ために 、RMGI硬 化後、24時間 蒸留水 に浸 涜 さ せ てか ら 細 胞 を 播 種し た 群 と 、 硬化 後す ぐ細胞 を播 種した 群でGSH量を 比較し たと ころ、NAC含 有の 実 験 群 では24時 間 後播 種 の 群 で は、 硬 化 後 に す ぐ播 種 し た 群 に比 べGSH量が減 少して いた。 この ことは NACRAIGIか ら 溶 出 し 、 細 胞 に 取 り 込 ま れ る こ と に よ りGSH量 を 増 加 さ せ て い る と 考 え ら れ る 。 以 上 の 結果 よ りNACを 応用す ること で、歯 科材料 の生 体為害 性を改 善し、 石灰 化組織 の再生 を誘導 する次 世代 歯科 材料開 発の可 能性が 示さ れた。

  口頭 試問で は、 本論分 の内容 とそれ に関連 した学問分野にっいて質疑応答がなされた。

  主な 質問事 項は 、

1. 研究 を始め るきっ かけに っいて 2. MTAの 組成に っいて

3. ldTA抽出 液の成 分につ いて 4.クル クミン 作用 点につ いて 5. NACROS除 去の機 序につ いて 6. グル タチオ ンの構 成要素 にっい て 7.多機 能型の 定義 につい て

8.今後 の研究 の展 望にっ いて など であっ た。

  以上 の質問 に対 して申 請者か ら適切 かつ 明快な 回答が 得られ た。審 査担 当者と の質疑 応答をとおして、

申請 者が本 研究な らぴ に関連 分野に 対する 理解が 十分 なされ ており 、幅広 い知 識を有 してい ることが明ら かに なり、 本研究 のさ らなる 発展・ 今後の 研究が 期待 された 。

  以上 のこと から 、審査 担当者 全員が 、本 研究が 学位論 文に十 分に値 し、 申請者 は博士 (歯学)の学位を 授与 する十 分な学 識・ 資質を 有して いるも のと認 めた 。

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