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博士(歯学)前川邦昭 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(歯学)前川邦昭 学位論文題名

口腔扁平上皮癌によるインターロイキン―6 の      産生と顎骨浸潤との関連

゛学位論文内容の要旨

【目的】骨浸潤や骨転移を生ずる癌としては乳癌、前立腺癌、口腔癌などが知られ ているが、骨浸潤あるいは骨転移における骨破壊の機序については未だ不明な点が多 い.これまでに癌細胞が産生するサイトカインやホルモンによって破骨細胞が活性化 されることにより骨破壊性に骨転移巣が形成されることが報告されており、口腔癌の 顎骨浸潤においても破骨細胞が重要な役割を担っていることが推測される.本研究で は、口腔扁平上皮癌細胞が産生し、破骨細胞を活性化するサイトカインのーつである インターロイキン―16 aL‑6)に着目し、ILー6の産生と腫瘍の顎喟黼との関連につい て検討をおこなった.

【材料と方法】ヒト口腔扁平上皮癌細胞IYS細胞およびヒト正常歯肉由来線維芽細 胞 を10%牛胎児 血清(FBS)添加DトMEMにてコ ンフルエ ンスまで培養後、培養液を a―MEMに交 換して更 に48時間培 養し、培 養上清を 回収して 上清中のIL‑6量 を測 定 した .また、 骨芽細胞 様細胞株MC3T3‑E1 (El)細胞と4週 齢マウス の大腿骨か ら 採取した骨 髄細胞の 共存培養系に各種濃度のIL‑6、抗マウスIL‑6抗体あるいは IYS細胞の 培養上清 を添加し 、6日間培 養して酒 石酸抵抗 性酸フォス ファター ゼ ぱ馳ぜ)陽性の多核細胞を破骨細胞として数を計測した.さらに、real‑time PCRを 行い線維芽細胞、TYS細胞および口腔扁平上皮癌と診断され摘出された臨床検体に おけるIL−6mRNA発現を定量的に計測した.

【結果と考察】本研究では破骨細胞を活性化させるサイトカインのーつであるILr6 に着目し,微少量の組織や細胞から短時間に定量的にm恥弧を測定可能な定量耐‐

6meKRを 用 い て , 培 養 細 胞お よ び臨 床 検 体に お け る1L篇耐 貽 弧 を検 索 した .   ILんの破骨細胞前駆細胞から破骨細胞への分化誘導への影響を調べるために,El 細胞と骨髄細胞との共存培養系にIIんを添加してT珊汀C数を計測した.ILん非添加 群と比較してII丿石添加群ではその濃度依存的にTm{C数は増加した.この結果から Iし6カ ミ 破 骨 細 胞 分 イt擂 秀 導 す る 因 子 で あ る こ と カ 蠏 さ れ た .   次にTYS細胞培養液中に破骨細胞分化を誘導する因子が放出されていると推測し て ,El細 胞 と骨 髄 細 胞と の 共存 培 養 系にn′s細 胞 のCMを 添加 して1剛C数を計 測 した.CM非添 加群と比 較して(N添加群で は1/1肌1居倍希釈までTh佃C数は濃 度依存的に増加したが,1彪,1倍希釈を加えた場合は抑制された.この結果から1YS 細胞は何らかの因子を放出し,破骨細胞の分化を誘導する可能性があることが示され

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た.また,1/2および1倍希釈で誘導が抑制されたのは,癌細胞によりFBS中の増殖 因 子が消費 され,CMと して添加 した共存 培養系に 用いた培養液中のFBSの最終濃 度が低下したためと推測される.

  ここまでの結果からyIYS細胞の放出しているIl̲r6が破骨細胞誘導に関与している と推測して,El細胞と骨髄細胞との共存培養系を用いて1鴟25(OH)ZD添加群と非添 加 群に分け て,TYS細胞のCMを添加し,さらに抗マウスIし6抗体を添加してT恥忙 数を計測した.1弧2ヌolあ:D3添加群と非添加群のいずれにおいてもTYS細胞のCM を 添加した 場合、T恥 忙数は有意に増加した.この結果より、TYS細胞が破骨細胞 の誘導を促進させる因子を産生していることが推測される.また,いずれの群におい ても抗マウスIIん抗体添加によりT鼎忙数増加は有意に抑制された.lQ,25(oIDユD3 は 骨芽細胞 におけるRAMqーの発現を促進させることが知られている.非添加群に お いてTYS細胞 のCMが誘導 されるTmIC数 を増加さ せ,その 効果が抗マ ウスIし石 抗体を作用させることにより,ほぼ完全に抑制された,これらの結果はTYS細胞の 産生するILんが骨芽細胞におけるRANKIーの発現を促進することを示唆している・

  線維芽細胞とTYS細胞におけるIIんrn薑刑A発現は対照群である線維芽細胞がo.(X)5 土O.001に 対 し て ,TYS細 胞 がOQシ1土O.003で あり 有 意に 増 加 して い た・

  この結果からもTYS細胞カ激出するIIんが,破骨細胞分化誘導に関与しているこ と が示唆さ れた.次 に歯肉線維芽細胞とTYS細胞をコンフルエンスまで培養しnん 産生量を定量した.線維芽細胞と比較してTYS細胞のILん産生量はいずれの時間に おいても有意に増加していた.以上の結果より遺伝子発現のみならず|夕ンバク質レ ベ ル に お い て もTYS細胞 は 破 骨細 胞 を誘 導 す る能 カ が高 い こ とが 示 され た .   inVi的 実験の結 果をinWv0で確認するために,正常歯肉粘膜3例と口腔扁平上皮 癌組織12例を用い,職1−dmeKニRによりIし石m尉乢へ発現の検討を行った.u′6mRNA 発現量は対象群である正常歯肉粘膜がo.O船土OIolOに対して,口腔扁平上皮癌組織が oI185士O.100であり有意に増加していた.正常歯肉粘膜でのIし石111RNAの発現は3 例とも低く,生理的状態での発現は低いことが示された.一方,正常歯肉粘膜3例と 比較して口腔扁平上皮癌組織では12例中8症例でILんrnI玳Aの有意な発現亢進が認 められ,腫瘍細胞のnん産生も亢進していると推測された.これまで腫瘍のサイズ と骨浸潤の程度は関連があるとされているが,本研究においても腫瘍のT分類にお い てTlおよび 他症例と 比較して 耶およびT4症例では ,IIん耐えNAの 発現が有 意 に亢進しており,前述の説を支持する結果となった.また浸潤型増殖を示すものは悪 性度カ滴く,骨浸潤や転移の危険性が高いとされているが,本研究においても浸潤様 式 が浸潤型 症例の方 が膨張型症例よりもILんmRNAの発現が有意に亢進していた.

この結果より浸潤型の増殖をする癌細胞はIし石を産生することで,破骨細胞の形成 を 誘 導 し , 骨 を 破 壊 し な が ら 骨 組 織 内 に 浸 潤 して 行 くこ と が 推測 さ れる .   本研究の結果は口腔扁平上皮癌の顎骨浸潤には癌細胞によって産生されるILんが 関与している可能性を示唆している鹹破骨細胞活性化能を持つ他のサイトカインで あるM‐CSF,RANぬ ,TNF.aについては本研究では関連性は認められなかうた(随a 非掲載).ILん発現の検討による診断や治療方針の決定,また抗ILん抗体を用いた骨 浸潤の抑制などの臨床応用の可能性への検討をを今後さらに続ける必要があると思わ れた.

‑ 795 ‑

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

口腔扁平上皮癌によるインターロイキン― 6 の      産生と顎骨浸潤との関連

審 査は,審 査員全員 出席の下 に,申請 者に対して 提出論文 とそれに 関連した学科目 に っいて口 頭試問に より行わ れた・

  審 査論文の 概要は, 以下の通 りである.

  本 研究は, 口腔扁平 上皮癌細 胞が産生す るサイト カインの1つである インター ロイ キ ン‑6 (11ー6) と 腫 瘍 の 顎 骨 浸 潤 と の 関 連 に つ い て 検 討 し た も の で あ る ,   ま ず ,IL−6の 破 骨 細 胞 分 化 に 与 え る影 響 を 調べ る ため に , 骨芽 細 胞様 細 胞 株 MC3T3ーEl (El)細胞とマ ウスの大 腿骨から 採取した骨 髄細胞と の共存培 養系にIL―6 を 添 加 して6日 問 培養 し , 酒石 酸 抵抗 性 酸 フオ ス ファ タ ーゼ(TRAP)陽性 の多核細 胞 を 破 骨 細胞(TPMC)と し て ,そ の 数を 計 測 した , 結 果は ,IL−6添 加群では 非添加群 に 比較して ,TPMC数は濃 度依存的 に増加して おり,ILー6は破骨細 胞の分化 誘導因子 で あること が確認さ れた.

  次 に ,El細 胞 と 骨 髄 細 胞 と の 共 存培 養 系 にTYS細 胞の 上 清(CM)を添 加 してTPMC 数 を 計 測し た ,CM添 加群 で は 非添 加 群と 比 較 して1/10〜1/3倍希 釈までTMPC数 は濃 度 依存的に 増加して おり,TYS細 胞は破骨細 胞を分化 誘導する 何らかの 因子を放 出し て い る 可能 性 が示 唆 さ れた .なお,1/2および1倍希 釈では誘 導は抑制 されたが ,そ の 原 因 は癌 細 胞に よ りFBS中 の 増殖 因 子 が消 費 さ れ,CMとし て添加し た共存培 養系 に 用 い た 培 養 液 中 の FBS最 終 濃 度 が 低 下 し た た め と 考 え ら れ た ・   TYS細胞 の 放出 し て いる 物質がIL―6である ことを確認 するため ,El細胞と 骨髄細 胞 との共存 培養系を 用いてlor., 25(OH)2D3添 加群と非添加群に分けて,TYS細胞のCM を 添加し, さらに抗 マウスILー6抗体を添加 してTPMC数を計測した,la,25 (OH) 2D3 添 加 群 と非 添 加群 の い ずれ に おい て も ,TYS細 胞 のCMを添加 した場合 には,TPMC数 は 有意に増 加した. また,い ずれの群に おいても 抗マウスILー6抗体添 加によりTPMC 数 の増加は 有意に抑 制された, la,25 (OH) 2D3は骨芽細胞におけるRANKLの発現を促

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進させることが知られていることから,la,25 (OH) 2D3非添加群においてTYS細胞の CMがTPMC数 を増 加さ せ, その 効果 が抗 マウ スIL―6抗 体の 作用 でほ ぼ完 全に抑 制さ れ たこ とは ,TYS細胞 の産 生す るIL―6が骨 芽細胞 にお けるRANKLの 発現 を促進 させ たことを示唆している.

  線 維芽 細胞 とTYS細胞 にお けるILー6mRNA発現 は, 前者 が0.005土O.001に対し,

後者は0. 031土0.003であり,TYS細胞で有意に増加していた.歯肉線維芽細胞とTYS 細胞 をコ ンフ ルエ ンスま で培 養しIL−6産生量を定量した結果でも,TYS細胞のIL−6 産生量は有意に増加していた.

  in vitro実 験 の 結 果 をin vivoで確 認す るため に, 正常 歯肉 粘膜3例 と口腔 扁平 上皮 癌組 織12例を 用い,real‑time PCRに よりILー6mRNA発現の検討を行った,ILー 6 mRNA発 現量 は, 正常歯 肉粘 膜では3例とも低く,O.043土0.010であったのに対し て ,口 腔扁 平上 皮癌 組織 では12例 中8例 で有 意な 発現 亢進 が認 めら れ, 全体で 見て も0.  185土O.100と,正常歯肉粘膜に比べて有意に増加していた.腫瘍の大きさでみ る とTlお よぴT2症 例 と 比 較 し てT3お よ ぴT4症 例 で ,ILー6mRNAの 発現 が有意 に亢 進し てい た. また 浸潤様 式で は,浸潤型症例の方が膨張型症例よりもIL−6mRNAの発 現が有意に亢進していた.

  論文の審査にあたって,論文申請者による研究の要旨の説明後,本研究ならびに関 連する研究にっいて質問が行われた.

  主な質問事項は,1) 11−6mRNAの発現と腫瘍の発生部位,分化度との関係,2)正 常た細胞における工L−6 mRNAの発現と年齢との関係,3)IL―6の主な作用,4)破骨 細 胞の 分化 を誘 導す る物質にっいて,5)破骨細胞の分化に骨髄細胞との共存培養が 必要な理由,6)腫瘍細胞が産生する物質が直接骨を吸収することがありうるか,7)腫 瘍細胞が直接破骨細胞の分化を誘導しうるのか,等であった.いずれの質問について も,論文申請者から明快な回答が得られ,また将来の研究の方向性についても具体的 に示された.本研究は,口腔扁平上皮癌の顎骨浸潤に,がん細胞が産生するサイトカ インの1っであるIL−6が深く関与していることを明らかにした点が高く評価された,

本研究の業績は,口腔外科の分野はもとより,関連領域にも寄与するところ大であり,

博士(歯学)の学位授与に値するものと認められた,

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