博士(歯学) アラムモハンマド トウフイック 学位論文題名
AdenovlruSE40rf6/7aCtiVateSASPP1,WhiChinduCeS ●
apoptOSlS
(アデノウイルスE40rf6/7はASPPlを活性化し,アポトーシスを誘導する)
学 位 論 文 内 容 の 要 旨
【本研究の意義および目的】有害刺激は細胞の代謝に異常をきたし、細胞に生 じた変化が大きい場合には細胞死が起こる。有害刺激による細胞死は多細胞生 物が生命を維持していく上で重要な意義を有する。有害刺激に対する細胞の反 応として知られるアポ卜ーシスは遺伝子によってプ口グラム化された細胞死で あり、p53遺伝子を中心とした細胞死のヌカニズムが詳細に研究されている。
しかし、個々の有害刺激を出発点としたメカニズムの詳細についてはまだ解明 されていない部分が多い。
ア デ ノ ウ イ ル ス(Ad)初 期 遺伝 子E40rf6/7はAd初期 遺伝 子EIAと 同様 、細 胞 にp53依存的アポトーシスを誘導する。EIAは転写抑制因子RBによって不 活 化されている転写因子E2F‑lの遊離を促進する。RBから遊離したE2F‑lは 単独でも遺伝子プ口モ←夕に結合できるが、E40rf6/7の存在下ではプ口モー夕 一上で安定化され、下流遺伝子の転写をさらに促進する。アポトーシスの誘導 に必要なE40rf6/7の機能領域はE2F‑lの安定化に必要な領域であるE40rf6/7 夕ンバクのC末領域と一致することから、E40rf6/7がE2F‑lの安定化を介して p53依 存 的 ア ポ 卜 ー シ ス を 誘 導 す る こ と が 示 唆 さ れ て い る 。 ASPPl (apoptosis‑stimulating protein of p53)は近年、p53依存的アポトー シスの誘導に関わる因子として同定されたASPPファミリーに属する遺伝子で あ る 。ASPP1遺 伝子 の 上 流 には 複数のE2F‑l結 合部 位が 存在 し、E2F‑lが ASPP1の転 写を増 加さ せる こと がこれまでに示されている。ASPP1はEIAの 遺伝子導入によっても発現が促進される。このことから、RBにより不活化され て いるE2F‑lはEIAの作用 によ り遊離され、ASPP1を転写活性化してアポト ーシスを誘導していることが示唆される。
p53依存的アポトーシスに重要と考えられるE40rf6/7の標的遺伝子はこれま
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で に 同 定 さ れ てい な い 。 し か し 、E40rf6/7はE2F‑lを 安 定 化する こと から 、 E2F‑l結 合 部 位 を 有 す るASPP1プ □ モ ー タ ー か ら の 転写 調 節 を 介 し てp53依 存 的 ア ポ ト ー シ ス を 誘 導 し て い る こ と が 推 察 さ れ る。 本 研 究 で はASPP1が E40rf6/7の標 的遺 伝子 であ るとい う仮 説の 真偽を明らかにする目的で分子生物 学的解析をおこなった。
【 実 験 方 法 、 結果 お よ び 考 察 】 ヒ トAd5型E40rf6/7の ア ポ トーシ ス活 性は 、 過去 にげ っ歯 類の 細胞 にE40rf6/7を発 現す る組み換えアデノウイルスを感染さ せる こと によ り示 され てい る。ヒ ト細 胞に 対するE40rf6/7のアポトーシス活性 をDNAの 分 解 に よ り 検 出 す る目 的で、5% ウシ 胎仔 血清 を添 加した ダル ベッ コ 変 法 イ ー グ ル 培 地 で ヒ ト 由 来293T細 胞 を 培 養 し 、Ad初 期 遺 伝 子EIA12S、 E40rf6/7を発 現す るプ ラス ミドを りポ フェ クション法により導入し、遺伝子導 入24時 間 後 に 抽出 し た ゲ ノ ムDNAを ア ガ 口 ース 電 気 泳 動 法 により 解析 した 。 E40rf6/7のDNA分 解 能 は ア ポ 卜 一 シ ス 誘 導 活 性 が 示 さ れ て い るEIA12Sよ り も 高 か っ た 。 また 、E40rf6/7とEIA12Sを とも に導 入し た細 胞では 単独 で導 入 した細胞よりもさらに強いDNA分解がみられた。
E40rf6/7に より 誘 導 さ れ た293T細 胞 のDNA分 解 が ア ポ 卜 ーシス の結 果で あ る こ と を 示 す 目的 で 、 ア ポ トー シス の分 子マ ーカ ーで あるPARPの 分解 をウ ェ ス タ ン ブ 口 ッ ト 解 析 に よ り 検 索 し た 。 す べ て の サ ン プ ル で 非 分 解 型PARP
(116kDa)が 検 出 さ れ 、E40rf6/7とE1A12Sを 導 入 し た 細 胞 で は ア ポ ト ー シ ス 細 胞 の 存 在 を 示 す 、 分 解 型PARP(85kDa) の シ グ ナ ル が 検 出 さ れ た 。 E40rf6/7に よるE2F.1の発現調節と細胞内局在を明らかにするためにおこな った ウェ スタ ンブ □ッ ト解 析では 、E40rf6/7導入293T細胞で のE2F.1の発現 増加 が認 めら れた 。ま た、 発現が 誘導 され たE2F.1は核に局在することが見出 された。
E40rf6/7導 入24時 間 後 の 細 胞 全 抽 出 液 中 に 含 ま れ るASPP1をウ エス タン ブ 口ッ 卜解 析で 検出したところ、コント口一ルと比較して、E40rf6/7導入細胞に おい てASPP1の 発現 増加 が認 めら れた 。E40rf6/7に よるASPP1の発 現促 進能が E40rf6/7分子のどの領域にあるのかを明らかにするため、一連の変異型E40rf6/7 を293T細 胞に 導入 して 検索 したと ころ 、C末領域を保存した変異型E40rf6/7の 導 入 でASPP1の 発 現 が 促 進 され 、C末 領域 を欠 失レ たE40rf6/7で はASPP1の 明 ら か な 発 現 促 進 が 見 ら れな か っ た 。E40rf6/7のASPP1発 現 促 進 ド ヌ イ ン は
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E2F‑l活性化ドヌインであるE40rf6/7のC末領域と一致することが示された。
ASPP1は、微 量が核近辺の細胞質に局在することが知られているが、細胞核 内でp53の転写調節機能を助けてアポトーシスを誘導するためには、ASPP1の 発現促進に加え、ASPP1夕ンバクが核内部に局在する必要があると考えられる。
E40rf6/7の 導入により発現を誘導したASPP1の細胞内局在を明らかにする目 的で免疫螢光染色を行った。コン卜□ールではASPP1の核近辺細胞質領域での 局在は検出 限界以下であったが、E40rf6/7導入細胞ではASPP1の著明な核局 在を認めた 。変異型E40rf6/7によるASPP1の発現促進と核局在について検索 した と ころ 、C末 領 域を 保 存し たE40rf6/7変異 株 の導 入 細胞 で は野 生型 E40rf6/7導入細胞と同様にASPP1の発現促進と核局在がみられ、C末領域を欠 失し たE4変異株 の導入細胞 ではASPPlの 発現促進が 検出限界以 下であり、
ASPP1の核局在は評価困難であった。
細胞質における局在が報告されているASPP1がアポトーシス刺激によって どの よ うに 核 へ移 行 する か の詳 細 はこれ まで報告さ れていない 。そこで E40rf6/7がASPP1を核に移行させる直接的因子の候補になりうるかどうかを検 討する目的で、E40rf6/7のASPP1結合能を免疫沈降法により検索したところ、
E40rf6/7はE2F‑lとの結合を示すのみならず、ASPP1とも結合することが示さ れた。E40rf6/7のASPP1結合能はASPP1の核への移行あるいは核内部での遺伝 子転写促進 に関わるE2F‑lとの共同作用に重要である可能性が示唆された。
以上の結果は次のように要約できる。
・E40rf6/7をp53野生型ヒト細胞293Tに発現させるとDNA分解とPARP分解が 引き起こされた。
・ E40rf6/7は E2F‑lの 発 現 と ASPP1の 発 現 を 増 加 さ せ た 。 ・ E40rf6/7に よ り 発 現 が 誘 導 さ れ たASPP1は 核 局 在 を 示 し た 。 ・ ASPP1の発現亢進 と核局在に はE40rf6/7のC末領 域が重要で あった。
・ E40rf6/7にASPP1との結合能が認められた。
【結諭】以上の結果から、E40rf6/7によるアポ卜ーシスの誘導にはE40rf6/7と そのC末 領域のE2F‑lの安定化機 能、これに 伴うASPP1の発現亢進とASPP1の 核局在が重要であると考えられた。
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学位論文審査の要旨 主 査 教 授 中村 太 保 副 査 教 授 進藤 正 信 副査 教授 柴田健一郎 副査 准教授 安田元昭
学 位 論 文 題 名
Adenovirus E40rf677 activates ASPP1, which induces ●
apoptoslS
(アデノウイルスE40rf6/7はASPP1を活性化し,アポトーシスを誘導する)
審査は、審査員全員出席の下に、申請者に対して提出論文とそれに関連した学科目につ い て 口 頭 試 問 に よ り 行 わ れ た 。 以 下 に 、 論 文 の 要 旨 と 審 査 の 内 容 を 述 べ る 。
ア デ ノ ウ イ ルス(Ad)初 期 遺伝 子E40rf6/7はAd EIA同 様 、p53依 存的 ア ポ ト ーシ ス を 誘導 する。EIAは転 写抑制因 子RBで不 活化されている転写因子E2F‑lの遊離を促進する。
RBから 遊離し たE2F‑lは 遺伝子 プ口モーターに結合するが、E40rf6/7存在下ではプロモ 一夕ー上で安定化され、下流遺伝子の転写をさらに促進する。.アポ卜一シス誘導に必要な E40rf6/7機能領域はE2F‐1安定化に必要なE40rf6/7蛋白のC末領域と一致し、E40rf6/7 がE2F‐1安定 化 を 介し てp53依 存 的アポト ーシス を誘導す ることが 示唆さ れている 。 ASPP1はp53依 存 的 ア ポト ー シ ス誘導に 関わる 遺伝子で ある。ASPP1遺伝 子上流に は E2F.1結 合部位 が存在し 、E2F・1がASPP1転写 を促進 すること が知ら れている 。E1A導 入 はASPP1の 発現を促 進するが 、RBで不 活化され ているE2F.1がE1Aにより 遊離され 、 ASPP1を 転 写 活 性 化 し て ア ポ ト ー シ ス を 誘 導 し て い る こ と が 示 唆 さ れ て い る 。 E40rf6′7はE2F.1を安定 化するこ とから、E2F.1結合部位を有するASPP1プ口モータ ーか らの転 写調節を介してp53依存的アポトーシスを誘導していることが推察される。本 研究 ではASPP1がE40rf6/7の標 的遺伝子であるという仮説の真偽を明らかにする目的で 分子生物学的解析をおこなった。
【実験方法、結果および考察】E40rf6/7のアポトーシス活性を検出する目的で、5%FBS添 加DMEM培 地 で293T細 胞 を 培 養 し 、AdElA12S、E40rf6/7発 現プ ラ ス ミ ドを り ポ フェ クシ ョン法 で導入し 、導入24時間後の ゲノムDNAをア ガ口ース 電気泳動法により解析し
た と こ ろ 、E40rf6/7のDNA分 解 能 は ア ポ ト ー シ ス 誘 導 活 性 が 示 さ れ て い るE1A12Sよ り も 高 か っ た 。
ア ポ 卜 ー シ ス 分 子 マ ー カ ーPARPの 分 解 を ウ エ ス タ ン 法 に よ り 検 索 し た と こ ろ 、E40rf6/7 と E1A12Sを 導 入 し た 細 胞 で ア ポ ト ー シ ス を 示 す 分 解 型PARPが 検 出 さ れ た 。 E2F.1発 現 の 調 節 と 細 胞 内 局 在 を ウ エ ス タ ン 法 で 検 索 し た と こ ろ 、E40rf6/7導 入293T 細 胞 のE2Fー1発 現 増 加 が 認 め ら れ 、E2F.1の 核 局 在 が 見 出 さ れ た 。
E40rf6/7導 入 後 のASPP1発 現 を ウ エ ス タ ン 法 で 検 出 し た と こ ろ 、E40rf6/7導 入 細 胞 に お い てASPP1発 現 増 加 が 認 め ら れ た 。ASPP1発 現 促 進 に 関 わ るE40rf6/7の 機 能 領 域 同 定 の た め の 解 析 で は 、C末 領 域 を 保 存 し た 変 異 型E40rf6/7導 入 でASPP1の 発 現 が 促 進 さ れ 、C末 領 域 欠 失 変 異 株 で はASPP1の 発 現 促 進 が 見 ら れ な か っ た 。
E40rf6/7導 入 に よ り 発 現 を 誘 導 し たASPP1の 細 胞 内 局 在 を 免 疫 螢 光 染 色 法 で 検 索 し た と こ ろ 、E40rf6/7導 入 細 胞 でASPP1の 著 明 な 核 局 在 を 認 め た 。C末 領 域 を 保 存 し たE40rf6/7 変 異 株 の 導 入 細 胞 で は 野 生 型E40rf6/7導 入 細 胞 と 同 様 にASPP1発 現 促 進 と 核 局 在 が み ら れ 、C末 領 域 を 欠 失 し たE4変 異 株 の 導 入 細 胞 で はASPP1の 発 現 促 進 が 検 出 限 界 以 下 で あ り 、ASPP1の 核 局 在 は 評 価 困 難 で あ っ た 。
E40rf6/7がASPP1を 核 に 移 行 さ せ る 直 接 的 因 子 の 候 補 に な り う る か ど う か を 検 討 す る 目 的 で 、E40rf6/7のASPP1結 合 能 を 免 疫 沈 降 法 に よ り 検 索 し た と こ ろ 、E40rf6/7はASPP1 と 結 合 す る こ と が 示 さ れ た 。E40rf6/7のASPP1結 合 能 はASPP1の 核 移 行 あ る い は 核 内 部 で の 遺 伝 子 転 写 促 進 に 関 わ るE2F.1と の 共 同 作 用 に 重 要 で あ る 可 能 性 が 示 唆 さ れ た 。 【 結 論 】E40rf6/7に よ る ア ポ ト ー シ ス 誘 導 に はE40rf6/7と そ のC末 領 域 のE2F.1の安 定 化 機 能 、 こ れ に 伴 う ASPP1の 発 現 亢 進 とASPP1の 核 局 在 が 重 要 で あ る と 考 え ら れ た 。 以 上 の 論 文 内 容 の 説 明 に 引 き 続 き 、 論 文 及 び 関 連 分 野 に つ い て の 質 疑 応 答 が な さ れ た 。 主 な 質 問 事 項 は
1.E2Fと は 細 胞 蛋 白 質 か 2.ASPP1と は 何 か
3.E40rf6′7はASPP1の 転 写 が 必 要 か 4.DNAの 断 片 化 の 電 気 泳 動 像 に つ い て 5.E40rf6/7の カ ス バ ー ゼ 活 性 能 を 調 べ た か 6.PARPの 断 片 化 機 構 に つ い て
7.ASPP1とp53と の 関 係 に つ い て
8.E40rf6/7とE1Aの 抗 体 は 何 を 使 用 し た か
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9. な ぜE40rf6/7のC末 端 領 域 が 必 要 な の か 10.免 疫 沈 降 法 の 重 要 性
な ど で あ っ た 。
こ れ ら の 質 問 に 対 し て 申 請 者 か ら 適 切 か つ 明 快 な 回 答 が 得 ら れ た 。 ま た 、 関 連 分 野 に つ い て も 十 分 な 学 識 を 有 し て い る と 審 査 員 一 同 が 認 め た 。
し た が っ て 、 学 位 申 請 者 は 博 士 ( 歯 学 ) の 学 位 授 与 に 値 す る も の と 認 め ら れ た 。
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