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博士(歯学)玉川博貴 学位論文題名

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Academic year: 2021

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(1)

     博士(歯学)玉川博貴 学位論文題名

E:ffect of nano‑hydoroxyapatite on bone morphogenetic protein‑2‑induced cementum ― like hard tissue formation     and dentin resorption on dentin surface

(ナノハイドロキシアパタイトがBMP‑2 によるセメント質様硬組織形成と      象牙質吸収に及ぼす影響)

学位論文内容の要旨

【諸言】

BMP―2を歯周組織に応用すると、骨やセメン卜質が形成されることが知られている。しか し、象牙質表面にBMP−2を塗布して口蓋結合組織内に移植すると、象牙質表面に硬組織が 形成される一方で象牙質吸収が認められること、BMPー2濃度を高くすると硬組織形成も増加 するが、それ以上に象牙質吸収が増加することが報告されている。これらの研究結果から、

BMP―2で歯周組織を再生させるためには、象牙質の吸収を抑制してセメント質の形成を増加 させることが課題と考えられる。

一方当教室では、BMP―2のキャリアーとしてのコラーゲン膜にナノハイド口キシアパタイ 卜を添加すると、骨形成が高められることを報告してきた。このことから、ナノハイド口 キシアバタイ卜を複合化したコラーゲン膜にBMP−2を配合して象牙質面に応用することで、

BMP―2が低濃度でもセメント質様の硬組織を象牙質上に誘導レ、象牙質吸収を抑制できる可 能性が考えられる。本研究の目的は、コラーゲン膜にナノハイド口キシアバタイトを複合 化してBMP―2のキャリアーとして使用する場合の、象牙質面上へのセメン卜質様硬組織形 成と象牙質吸収に及ぼす影響について組織学的に検討することである。

【材料と方法】

  ナノハイド口キシアパタイトコラーゲン複合体膜は、コラーゲン溶液に塩化カルシウム 溶液、リン酸―卜リスパッファーを混合して遠心分離後、吸引して膜状にし、1ーエチル・

‑ 437

(2)

3一 カルボ ジイミド 塩酸塩(EDC)を加 えて架橋、グリシンで架橋停止し、水洗後凍結乾燥 を行って作製した。コラーゲン膜は塩化カルシウム溶液を混合せずに同様の方法で作製し た。いずれの膜も走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。

  作 製 し た 膜 を 濃 度 の 異 な るthBMP―2に10分 間 浸 漬 し 、 以 下 の4群 に 分 け た 。 Cl00群:コラーゲン膜/thBMP−2100ルg/Illl

C400群:コラーゲン膜/thBMP−2400U9/ml

Hl00群 : ナ ノ ハ イ ド 口 キ シ ア パ タ イ ト コ ラ ー ゲ ン 複 合 体 膜/thBMP−2100M g/ml H400群 : ナ ノ ハ イ ド 口 キ シ ア パ タ イ ト コ ラ ー ゲ ン 複 合 体 膜/thBMP―2400M g/ml   ラット切歯歯根から象牙質片を66個作製し、24% EDTA (pH7.0)で3分脱灰し、thBMP―2 に浸漬した膜を脱灰象牙質上に貼付し、ラッ卜大腿筋内に移植した。2、4週後に固定、脱 灰後、バラフイン包埋して連続切片を作製し、ヘマ卜キシリン・エオジン重染色を行って、

光学顕微鏡下にて硬組織形成率と象牙質吸収率を組織学的に計測した。各組織学的計測値 の統計学的分析には、Mann−Whitney〃検定を用いた。

【 結果】

1.SEM観察結果

ナノハイド口キシアバタイトコラーゲン複合体膜は多孔性の構造を呈し、50―150 nmの 多くのアバタイトの結晶がコラーゲン表面に観察された。一方コラーゲン膜は孔の少な い密な構造が観察された。

2.組織学的観察結果

  Cl00群の2週後では、一部にのみセメント質様硬組織形成がみられ、新生硬組織上お よび象牙質上には立方形及び楕円形のヘマトキシリン好染色性の細胞が観察され、象牙 質吸収はわずかであった。4週では、セメント質様硬組織形成と象牙質吸収が2週より も多く認められた。

438

(3)

C400群 の2週 後 は、 象牙 質上 に多 核 巨細 胞を 伴う 大き な 吸収 窩が 認め ら れ、 象牙 質上 に は ヘ マ ト キシ リ ン好 染色 性の 立方 形 の細 胞が みら れ た。4週で は 、象 牙質 上に 有 細胞 セ メン ト質 様 硬組 織お よび 象牙質吸収 が広範囲に認められた。

Hl00群 の2週 後で は、 薄 く、 均一 で連 続し た セメ ン卜 質様 硬 組織 が形 成さ れ、 象 牙質 吸 収 は わ ず かで 、吸 収窩 に は多 核巨 細胞 は ほと んど みら れな か った 。4週で も広 範囲 に 薄いセメ ント質様硬組織がみられた。

H400群 の2週 後 で は、 不 整形 のセ メン ト質 様 硬組 織形 成が 広 範囲 に認 めら れ、 そ の上 に は立 方形 及 び扁 平な へマ 卜キ シ リン 好染 色性 の 細胞 が観 察さ れた 。 吸収窩の多くには 多 核 巨 細 胞 が みら れた 。4週で は 、セ メン 卜質 様硬 組 織は さら に不 整形 を 呈し 、ナ ノハ   イド 口キ シ アパ タイ トコ ラー ゲ ン複 合体 膜は 一部 が 残存 して 、そ の 周囲 に骨様硬組織が み られ た。

3. 組 織 学 的 計 測 結 果   l) 硬 組 織 形 成 率

  硬 組 織 形 成 率 はHl00群 は2週で27.7土6.8%で 、4週 で37.7土6.5% で あり 、と もにCl00 群2週6,5土3. 4%、4週12.8土2.5%よ り有意に高く、H400群は2週 で34.9土5.2%でC400 群2週2.3土1.6%よ り有 意 に高い 値を示したが、4週では有意 差がなかった。

2)象 牙 質吸 収率

象 牙 質 吸 収 率 は2週 と4週 後 にお いて 、Cl00群 は1.6‑‑4.7% 、Hl00群 は4.6〜4.7% 、 C400群は6.2〜12.9%,H400群は4.6〜10.8% で、両群間にはい ずれの濃度、期間でも 有意 差は なか っ た。

Cl00群 、C400群 、H400群 は2週 よ り4週 の 方 が 有 意 に 大 き い 値 を 示 し た が 、Hl00群 で は2週4.6土3.3%と4週4.7土1.7%で有意差はなかった。

【考察】

‑ 439

(4)

本 研 究 の 結 果 、 ナ ノ ハ イ ド 口 キ シ ア パ タ イ 卜 を 添 加 す る こ と で 、 低 濃 度 のthBMP―2で セ メ ン 卜 質 様 硬 組 織 形 成 が 早 期 か つ 多 量 に 認 め ら れ 、 象 牙 質 吸 収 は ナ ノ ハ イ ド 口 キ シ ア バ タ イ 卜 の 有 無 に 関 わ ら ず 、thBMP2濃 度 が 高 く な る と 多 く な っ た 。 こ の 理 由 と レ て 次 の2っ が 考 え ら れ た 。

    ナ ノ ハ イ ド 口 キ シ ア バ タ イ 卜 は 破 骨 細 胞 や 多 核 巨 細 胞 に よ っ て 吸 収 さ れ て 、 カ ル シ ウ ム イ オ ン や ル ン イ オ ン の 局 所 濃 度 を 上 昇 さ せ る こ と が 報 告 さ れ て お り 、 ま た 、 骨 芽 細 胞 は カ ル シ ウ ム や り ン に よ り 活 性 が 高 ま る こ と か ら 、 ナ ノ ハ イ ド 口 キ シ ア バ タ イ ト コ ラ ー ゲ ン 複 合 体 膜 が 吸 収 さ れ て 、 カ ル シ ウ ム イ オ ン と り ン イ オ ン が 放 出 さ れ て 局 所 濃 度 が 上 昇 す る こ と に よ っ て 、 セ メ ン 卜 芽 細 胞 様 細 胞 の 発 現 や 分 化 が 促 進 さ れ た 可 能 性 が 考 え ら れ た 。 も う ー っ は 、 ナ ノ ハ イ ド 口 キ シ ア パ タ イ 卜 はBMP2の 吸 着 が よ い た め 、 コ ラ ー ゲ ン 膜 よ ル ナ ノ ハ イ ド 口 キ シ ア バ タ イ ト コ ラ ー ゲ ン 複 合 体 膜 の 方 が よ り 多 く のthBMP2を 吸 着 し 、 膜 の 吸 収 に と も な っ て よ り 多 く のthBMP2を 徐 放 し て セ ヌ ン 卜 芽 細 胞 様 細 胞 の 活 動 性 を 強 く 亢 進 し た 可 能 性 が 考 え ら れ た 。

    し か し 、 象 牙 質 吸 収 率 に お い て は24週 と もCl00群 とHl00群 の 問 に 有 意 差 は 認 め ら れ ず 、 ま たthBMP2の 濃 度 が 高 く な る と 破 骨 細 胞 の 活 性 が 高 く な っ て 硬 組 織 形 成 よ り 象 牙 質 吸 収 が 促 進 さ れ る と い う 報 告 が あ る こ と か ら 、 ナ ノ ハ イ ド 口 キ シ ア パ タ イ 卜 コ ラ ー ゲ ン 複 合 体 膜 の 方 が コ ラ ー ゲ ン 膜 よ りthBMP2の 放 出 量 が 多 か っ た と は 考 え に く い 。 し た が っ て 、 ナ ノ ハ イ ド 口 キ シ ア バ タ イ ト を 添 加 す る こ と で 、 低 濃 度 のthBMP2で セ メ ン 卜 質 様 硬 組 織 形 成 が 早 期 か つ 多 量 に 認 め ら れ た 理 由 と し て は 、 ナ ノ ハ イ ド 口 キ シ ア バ タ イ ト か ら 放 出 さ れ る カ ル シ ウ ム イ オ ン や り ン イ オ ン の 役 割 が 大 き か っ た と 考 え ら れ た 。

【結諭】

コ ラ ー ゲ ン 膜 に ナ ノ ハ イ ド □ キ シ ア バ タ イ ト を 複 合 化 さ せ てthBMP2の キ ャ リ ア ー と し て 象 牙 質 に 貼 付 レ て 筋 内 に 移 植 し た こ と 結 果 、 低 濃 度 のthBMP2で 象 牙 質 吸 収 作 用 を 高 め る こ と な く 、 早 期 に 多 量 の セ ヌ ン ト 質 様 硬 組 織 を 誘 導 す る こ と が 可 能 で あ っ た 。

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(5)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

Effect of nano‑hydoroxyapatite on bone morphogenetic protein − 2 ー induced cementum ― like hard tissue formation     and dentin resorptlonondentinSurfaCe

け.ノハイドロキシアパタイトがBMP ,2 によるセメント質様硬組織形成と      象牙質吸収に及ぼす影響)

  衛龕は主査、^刊A全i!が‑liiJに会して口頭でfテった。初めにIl・IIilj肯に対して本論文の概 盤の説川を求めたところ、 以下の内容についてI論述し た。

  BMPー2を肉鬮ネIl織に応JIjすると、1書やセメン卜質 が形成されることが知られている。しか し、象牙質表I『|nこ.BMP―2を塗稲して口蓋結合糾織I勺に移あAすると、象牙質表而に硬組織が 形成される一方で象牙質吸 収が認められること、BMP―2濃度をlt iくすると硬糾織 形成も増)I する が、 それ 以上 に 象牙 質吸 収が 増 加す るこ とが 報告 さ れて いる 。これらの研 究結果から、

BMP−2で 附鬮 糾織 を 襾生 させ るた め には 、象牙質の 吸収を抑制してセメント質の 形成を増加1 させることが諜越と考えら れる。

  一 方当 教室 では 、BMP−2の キャ リ アー とし ての コラ ー ゲン 膜に ナノハイドロ キシアバタイ 卜を 添加 する と、,ii'tJ畛成が高められることを報告 してきた。このことから、 ナノハイド口 キシ アパ タイ トを 後 合化 した コラ ー ゲン 膜にBMP−2を配合して象牙質jniに応用 することで、

BMP―2が 低濃J叟 でも セメ ン 卜質 様の 嚠糾 織を象牙質 上に誘導し、象牙質吸収を 抑制できる可 能 性 が 考 え ら れ る 。 本 研 究 の目 的は 、コ ラー ゲ ン膜 にナ ノハ イ ド口 キシ アパ タイ ト を後 合 化し てBMPー2のキ ャ リア ーと して 使 用す る場 合の 、象 牙 質面 上へ のセ メン 卜 質様 硬翻1織 形 成 と 象 牙 質 吸 収 に 及 ぼ す 影 鮮 に つ い て 組 織 学 的 に 検 討 す る こ と で あ る 。   ナ ノ ハ イ ド 口 キ シ ア パ タ イ卜 コラ ーゲ ン夜 合 体膜 は、 コラ ー ゲン 溶液 に塩 化カ ル シウ ム 溶液 、リ ン酸 ―ト リ スバ ッフ ァー を 混合 して 遠心 分離 後 、吸 引し てJ膜状にし、1ーエチル・

3一 カ ル ボ ジ イ ミ ド 塩 酸 塩(EDC)を 加 え て 架 橋 し 、 水 洗 後 凍 結 乾 燥 を 行 っ て 作製 し た。 コ ラ ー ゲ ン 膜 は 塩 化 カ ル シ ウ ム溶 液を 混合 せず に 同様 の方 法で 作 製し た。 いず れの 膜 も走 査 型電子顕徴鏡(SEM)で観察し た。

  作 製 し た 膜 を 濃 度 の 異 な るthBMP−2に10分 間 浸 渋 し 、 以 下 の4群 に 分 け た 。

川 土

網 亘

(6)

Cl00群:コラーゲン膜/thBMP−2100肛9/rUl C400群:コラーゲン膜/thBMPー2400U9/ml

Hl00群 : ナ ノ ハ イ ド 口 キ シ ア パ タ イ ト コ ラ ー ゲ ン 複 合 体 膜/thBMP−2100肛g/ml H400群 : ナ ノ ハ イ ド 口 キ シ ア バ タ イ ト コ ラ ー ゲ ン 複 合 体 膜/thBMP―2400肛g/ml   ラット切歯歯根から象牙質片を作製し、24% EDTA (pH7.0)で3分脱灰レ、thBMP―2に浸 漬した膜を脱灰象牙質上に貼付し、ラット大腿筋内に移植した。2、4週後に通法に従って 組織標本を作製し、象牙質片上に形成された硬組織形成部位と吸収部位の長さを計測し、

象牙質片の長さに対する割合を算出して統計学的分析を行った。

  SEM観 察結果ではナノハイドロキシアバタイトコラーゲン後合体膜は多孔性の構造を呈 し、50―l50 nmの多くのアパタイ卜の結晶がコラーゲン表面に観察された。一方コラーゲン 膜は孔の少ない密な構造が観察された。

  組織学的計測結果により硬組織形成率はHl00群2過で27.7土6.8%で、4週で37.7士6.5% であり、ともにCl00群2週6.5士3.4名、4週12.8土2.5%より有意に高く、H400群は2週で 34.9土5.2%でC400群2週2.3士1.6%より有意に商い値を示したが、4遡では有意差がなか った 。 一 方象 牙 質 吸 収率 は 両 群問 に は いず れ の 濃度 、 期 間でも 有意差 はなかっ た。

  コラーゲン膜にナノハイド口キシアパタイトを後合化させてthBMP―2のキャリアーとし て象牙質に貼付して筋内に移植した結果、低濃度のthBMP―2で象牙質吸収作用を高めるこ となく 、早悶nこ多拭のセメント質様硬組織を誘導することが可能であると考えられた。

  引き統き斎龕担当者と申請者の|閉で、論文内容及び関述事項について質疑応答がなされ た。主な質I凸J事項は、

1.当教室におけるこれまでのBMP‑2を用いた研究の結果について 2.ナノハイド口キシアバタイトの性質について

3.硬組織形成、象牙質吸収の測定方法について 4.象牙質表面に形成された硬組織について

5.象牙質表而に硬翻【織が形成された卵由について

6. ナ ノ ハ イ ド 口 キ シア パ タ イト が 硬 糾織 形 成 に及 ぼ す 彫響 の メ カ ニズ ム に つい て   これらの質問に対して、申請者は適切な説りnこよって回答し、本研究の内容を中心とし た専門分野はもとより、関連分野について十分な理解と学識を有していることが確認され た 。本研究 は、ナ ノハイド口キシアパタイトがBMP‑2による硬組織形成を高めることが明 らかとなり、歯周組織再生療法への応用に対して重要な指針を与えたことが高く評価され た。本研究の内容は、歯科医学の発展に十分貢献するものであり、審査担当者全員は、学 位 申 請 者 が 博 士 ( 歯 学 ) の 学 位 を 授 与 す る に 偵 す る も の と 認 め た 。

―442 ‑

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