• 検索結果がありません。

word2vec の試行結果の考察

第 4 章 「ヒット製品」の事例検証

第 2 部 新聞記事の表現から見る

5.2 word2vec を用いた新聞記事分析

5.2.4 word2vec の試行結果の考察

54

表 5-3 Priusとトヨタ、ハイブリッド車での2004年のword2vecの類義語抽出結果

逆にトヨタという企業名で得られた類義語には Prius という製品名が現れている。また ホンダや日産、マツダといったトヨタと競合する企業名が類義語の上位に現れたが、同時 にカローラやCymru、クラウン、エスティマ、LEXUS(レクサス)などのトヨタのPrius 以外の製品名や、ハイブリッド車というPriusの製品カテゴリーも類義語に現れている。

ハイブリッド車で得られた類義語ではPriusがコサイン類似度0.81という高い値で現れ ている。他には製品名では同じくトヨタのCymruが類義語の上位に現れているが、コサイ ン類似度は0.66とPriusに比べるとかなり低くなっている。さらにハイブリッド車で得ら れた類義語にはホンダやトヨタ、フォードといった企業名も現れている。

55

ーが現れているということは、どちらの製品の新聞記事にも携帯音楽プレーヤーという製 品カテゴリーに共通の新聞記事表現の特徴が多く用いられていると推測される。さらに、

iPod の類義語では携帯音楽プレーヤーのコサイン類似度の値が 0.82 であるのに対して、

WALKMAN の類義語で携帯音楽プレーヤーのコサイン類似度の値が 0.68 と低いのは、

WALKMAN に比べてiPodの新聞記事の方が携帯音楽プレーヤーの新聞記事表現の特徴が

より多く用いられているからだと推測される。つまり製品と製品カテゴリーの新聞記事表 現の類似性はiPod の方が高いと推測される。またiPodの類義語にはアップルという企業 名が現れたが、WALKMAN の類義語にはソニーという企業名が現れなかったのは、iPod の新聞記事にはアップルという企業に共通の新聞記事表現の特徴が多く用いられているが、

WALKMAN の新聞記事ではソニーという企業に共通の新聞記事表現の特徴は多くは用い

られていなかった、つまり製品の新聞記事表現と企業の新聞記事表現の特徴の類似性が iPod とアップルでは高かったが、WALKMAN とソニーでは低かったと言えよう。この新 聞記事表現の特徴の類似性は、アップルとソニーの、iPodとWALKMANに対する企業と しての取り組みの違いと考えることができないだろうか。同様に表5-2のアップルの類義語 ではiPodという製品名や iTunesというアップルのサービス名が上位に現れたこともアッ プルという企業に共通の新聞記事表現の特徴がアップルの製品の新聞記事全般に多く用い られている、つまりアップルは各製品とアップルというと企業のイメージ、取り組みが一 致していると推測されよう。

表5-3でPriusの類義語として得られたハイブリッド車のコサイン類似度の値が 0.81と

高いのは Prius という製品の新聞記事表現とハイブリッド車という製品カテゴリーの新聞

記事表現の類似性が極めて高いためと推測される。同様に、ハイブリッド車で得られた類

義語ではPriusが最上位でコサイン類似度の値が0.81と高いことは、Priusという製品の

新聞記事にハイブリッド車という製品カテゴリーに共通の新聞記事表現の特徴が多く用い られている(類似性が高い)ことが推測できる。Priusの結果として得られた類義語にトヨ タという企業名が現れていることは、トヨタという企業に共通の新聞記事表現と Prius と いう製品の新聞記事表現の類似性の高さを表していると推測される。さらに、ハイブリッ ド車で得られた類義語にホンダやトヨタ、フォードといった企業名が現れていることは、

これらの企業の新聞記事表現と製品カテゴリーの新聞記事表現の特徴の類似性の高さを表 している、つまり、2004年当時では、これらの企業(ホンダ、トヨタ、フォード)がこの 製品カテゴリー(ハイブリッド車)に取り組んでいたと推測される。

本研究で分析に用いる日本経済新聞の記事は事例5-1のように、単に製品発売時に企業か ら寄せられた製品情報を記事にする(記事1)だけでなく、その製品に関する市場の状況や 競合製品との比較なども加えて記事にされている場合(記事2)や、製品発表を受けた後の 市場分析結果の解説記事(記事3)がある。もちろん、これらの記事の他に事件や事故、社 会的な話題、スポーツなどの記事も含まれているが、多くの記事は記事1、記事2、記事3 のいずれかに該当すると推測する。

56

企業はいろいろな製品を製造しており、いろいろな企業が同じ製品カテゴリーに市場参 入し、製品を投入して競い合っている。逆に 1 つの企業がさまざまな異なる製品カテゴリ ー(製品市場)に製品を投入して他社と競い合ってもいる。新聞はそのような製品に関す る情報を企業の発表や市場での反応を基に記事にしている。であれば、①ある製品につい ての新聞記事の表現と、そのターゲットとする市場(製品カテゴリー)についての新聞記 事の表現が似ていれば、その製品をpositive wordとして与えて記事データをword2vecで 分析した結果、類義語として得られる製品カテゴリー名のコサイン類似度は高くなり、一 致していなければその製品カテゴリー名のコサイン類似度は低くなるであろう(製品と製 品カテゴリーの新聞記事表現の一致の程度)。同様に、②ある製品についての新聞記事の表 現と、その製品を製造している企業についてのさまざまな内容の新聞記事の表現が似てい れば、その製品をpositive wordとして与えて記事データをword2vecで分析した結果、類 義語として得られる企業名のコサイン類似度は高くなり、一致していなければその企業名 のコサイン類似度は低くなるであろう(製品と企業の新聞記事表現の一致の程度)。この① と②は逆の見方もできる。③ある製品カテゴリー名をpositive wordとして与えて記事デー

タをword2vecで分析した結果、類義語として得られる複数の製品名のコサイン類似度は、

それらの製品についての新聞記事表現がその製品カテゴリーについての新聞記事表現の特 徴に一致するほど高くなるであろう(製品カテゴリーにおける製品と製品カテゴリーの新 聞記事表現の一致の程度)。④ある企業名を positive word として与えて記事データを

word2vecで分析した結果、類義語として得られる複数の製品名のコサイン類似度は、それ

らの製品についての新聞記事表現がその企業についての新聞記事表現の特徴に一致するほ ど高くなるであろう(企業における製品と企業の新聞記事表現の一致の程度)。

このように、5.2.3のword2vecの試行結果から、①製品と製品カテゴリーの新聞記事表 現の一致の程度、②製品と企業の新記事表現の一致の程度、③製品カテゴリーにおける製 品と製品カテゴリーの新聞記事表現の一致の程度、④企業における製品と企業の新聞記事 表現の一致の程度を見ることができよう。

このような関係を考察することによって企業のイメージ(コーポレート・ブランド)と 製品のイメージ(プロダクト・ブランド)の関係を見出すことができるのではないだろう か。第2部の目的はword2vecを用いることによって、このコーポレート・ブランドとプロ ダクト・ブランドの関係(一致の程度)を見出すこととする。

57

事例 5-1 日本経済新聞の記事例

【記事1】

(日 本 経 済 新 聞 「 か わ い い デ ザ イ ン 採 用――ソ ニ ー ( ニ ュ ー フ ェ ー ス ) 」2003年1月29 日 付 朝 刊,p31)

 ソニー(0570・003311)のかわいいデザインの携帯型MDプレーヤー「MDウォークマ ン」(型式=MZ―E610)=写真

 生活雑貨専門店のソニープラザに外観デザインを依頼した。ピンクを基調に水色や黄色 などのしま模様を付けた商品と白を基調に黄色やオレンジなどの水玉模様を付けた商品の2 種類をそろえた。付属の耳かけ式ヘッドホンや充電スタンド、ポーチの色使いも本体に合 わせてあり、アクセサリー感覚で使えるようにした。主に小中学生の女の子に販売する。

 《オープン価格だが店頭実勢は1万8000円前後の見込み。2月10日》

【記事2】

(日 本 経 済 新 聞 「 デ ジ タ ル 音 楽 機 器 、 ソ ニ ー 「 携 帯 型 」 巻 き 返 し――廉 価 版 を 投 入 、 圧 縮 に 標 準 方 式 。 」2004年9月30日 付 朝 刊,13p)

米アップル追撃

 ソニーは、ハードディスクなどを使った携帯型デジタル音楽機器を強化する。データの 圧縮で、独自方式に加え「MP3」と呼ぶ業界標準方式も採用。使い勝手を向上させる。

ハードディスク型では十月、現行機種より一万三千円前後安い機種を追加。一連の措置で 競争力を高め、高いシェアを押さえる米アップルコンピュータを追撃する。

 ハードディスクなどを使った携帯型のデジタル機器では、パソコン経由で大量の曲を蓄 積できるよう、CD(コンパクトディスク)など本来のデータ量を十分の一程度に圧縮す る。

 現状のソニー製品は「ATRAC3」と呼ぶ独自の圧縮方式を採用しているが、年末にも業 界標準の「MP3」方式も併用できる商品を出す。

 現行機種では「MP3」方式のデータをいったん「ATRAC3」に変換しないと取り込めな い。新製品では「MP3」データをそのまま蓄積、再生できるようにする。一曲当たり数分 かかっていたデータの変換作業が不要になる分、手早くCDやインターネット上の音楽を機 器に蓄えられるようになる。 (以下略)

【記事3】

(日 本 経 済 新 聞 「 攻 防 デ ジ タ ル 音 楽 市 場 ( 上 ) 再 生 機 器 、 新 興 勢 が 主 役――ス ピ ー ド 勝 負 、 大 手 後 手 。 」2004年5月12日 付 朝 刊,13p)

 大量の音楽ソフトを取り込んで再生できる携帯型プレーヤーなどのデジタル音楽機器市 場が拡大している。台頭する外資系や新興企業がソニーや松下電器産業の牙城を崩すなど 構造変化も急だ。インターネットによる音楽配信には著作権問題など課題が山積するが、

成長市場を巡る攻防は一段と激しくなってきた。

 デジタル音楽機器で急成長するエヌエイチジェイ(NHJ、東京・港)という新興企業が ある。一九九九年設立で社員は四十五人。二〇〇四年度の売上高は百十億円と前年度の二 倍を超え、経常利益五億円を見込む。米欧アジアにも進出、〇六年の株式公開をめざす。

(以下略)