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word2vec を用いた分析結果考察のまとめ

第 8 章 分析結果の統合

8.3 word2vec を用いた分析結果考察のまとめ

8.1の考察の結果、各社の企業名で得られた製品名は各社の「売れ筋製品」であるという ことが言えよう。但し、この売れ筋の製品とは単に販売額あるいは販売量が多いだけでな く、数量が伸びている製品、大きく市場を変化させている製品とも言える。またブランド イメージ調査の結果の方が過去のイメージや個人の思いに捉われていると考えられる。た だ、word2vecで得られた製品名には国内の市場だけでなく、海外戦略に関係する製品名が 現れやすい。これらのことは、1.1の研究の分析対象に新聞記事データを選択した理由を述

「小型車」による類義語抽出結果 「ハイブリッド」による類義語抽出結果 「高級車」による類義語抽出結果

類義語 出現数 R(コサイン類似

度1回平均) 類義語 出現数 R(コサイン類似

度1回平均) 類義語 出現数 R(コサイン類似

度1回平均)

Cymru 9 0.769409246 Prius 10 0.808001602 LEXUS 10 0.738156855

demio 10 0.768369997 Insight 3 0.713426967 セルシオ 4 0.706817433

シビック 8 0.758378521 フィットハイブリッド 3 0.668954472 メルセデス・ベンツ 9 0.705348167

MARCH 5 0.756665587 アコード 3 0.660505116 アキュラ 8 0.703472584

カローラ 8 0.755874924 カローラ 3 0.659040888 BMW 8 0.692327552

TEEDA 8 0.753714487 Cymru 9 0.657263094 Audi 9 0.690082822

MURANO 4 0.753104419 シビック 5 0.656697357 キャデラック 4 0.688525513

AXELA 8 0.752632812 Infiniti 8 0.677770510

YARIS 7 0.751972931 ティアナ 4 0.667541862

コルト 4 0.751778260 YARIS 6 0.666622122

Vitz 10 0.749924260 アコード 4 0.664202467

アコード 6 0.749341269 ALTIMA 4 0.664026558

アテンザ 9 0.747325871 Vitz 5 0.660916066

PREMACY 5 0.742713177 ダイムラー 5 0.660573494

Prius 4 0.734068379 シボレー 6 0.658936848

ALTIMA 4 0.732787400 Cymru 10 0.650855088

ティアナ 6 0.728760113 ポルシェ 4 0.650368005

SWIFT 5 0.718780684 カローラ 8 0.648238316

TEEDA 5 0.647367227

Prius 4 0.644134745

シビック 6 0.635224958

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べたところで紹介した「新聞には定期的に社会の出来事が記述され、そしてそれが蓄積さ れていっており、現在の社会状況を映す鏡であると同時に、過去の状況を教えてくれる貴 重な資料」(中野,2009)ということに通じるのであろう。

また、「企業名をコーポレート・ブランド、製品名をプロダクト・ブランドとし、positive wordとして企業名を与えてword2vecによって得られた製品名の類義語の上位がその企業 の製品名であり、その製品名をpositive wordとして与えてword2vecによって得られた企 業名の類義語の上位がその企業名である時にコーポレート・ブランドとプロダクト・ブラ ンドが一致しているとみなすことができる」と6.5でおこなった仮定、つまり、word2vec の分析結果がコーポレブランドとプロダクト・ブランドの一致の程度を表しているという 仮定は8.2の考察で肯定できたと言えよう。

表8-18は5.1.1のブランドの評価に関する先行研究で紹介した簗瀬が大学院生とおこな

ったトヨタ、日産、ホンダの自動車メーカー3社についてのインターネット調査による共同 調査(簗瀬,2007)の結果と、本研究でおこなったブランドイメージ調査の結果、word2vec を用いて分析した記事データの分析結果の比較である。簗瀬らの調査は2006年におこなわ れており、2003年から2012年までを対象期間とした本研究のword2vecを用いた分析や、

2016年に実施した本研究のブランドイメージ調査とは設問の内容だけでなく、対象期間の 違いによる社会環境の違いも存在する。その点を考慮しつつ、その内容を考察してみる。

簗瀬らの調査の設問は、購入するときに重視するコーポレート・ブランドとプロダクト・

ブランドの割合と、自由記述によって企業について連想すること(ブランド連想)の回答 を求めている。簗瀬らの調査では購入するときに重視するコーポレート・ブランドと製品 ブランド(プロダクト・ブランド)の割合はトヨタ、日産、ホンダの3社は拮抗している としながら、トヨタは製品ブランドを8割以上重視が20%、企業ブランドを8割以上重視

が25%、日産はトヨタとほぼ同じ、ホンダは3社の中で最も(製品)ブランド寄りである

としている。ブランドイメージ調査の結果では、ホンダはQ2-3の「企業名でイメージが思 い浮かぶ」が平均値5.73で最も高く、次にQ2-1の「思い浮かぶ製品が多い」であった。

ブランドイメージ調査ではホンダは企業イメージが優先しているようである。トヨタと日 産はQ2-1の「思い浮かぶ製品が多い」が最も高いが、2位は「Q2-3の企業名でイメージ が思い浮かぶ」で、3社のイメージに大きな差はないようである。これはホンダが3社の中 で最も(製品)ブランド寄りであるとしながらも、3社のコーポレート・ブランドと製品ブ ランドの割合は拮抗しているとしている簗瀬らの調査結果と似ている。word2vecの分析結 果で得られた企業名の類義語の上位2つを比較すると、トヨタはホンダ、日産となり、日 産はトヨタ、ホンダ、ホンダはトヨタ、日産と、3社の新聞記事表現の特徴が似ていること を示している。簗瀬らの調査結果、ブランドイメージ調査の結果、word2vecを用いた分析 の結果は、いずれも3社の類似性を示していると言えよう。

簗瀬らの調査のブランド連想(自由記述)ではトヨタは企業としての「世界一」や「業 界一」などの企業の評価に対する言葉の割合が3割を超え、自動車の特徴や性格は現れず、

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「安心・信頼」、「技術」などがあり、企業への信頼の大きさは感じるが個別製品ブランド の魅力がいまいちとしている。それに対して、ホンダは「F1」、「技術力」、「バイク」、「若 者向き」などの強烈なブランド連想を持たれており、企業としての個性を守っているとし ている。簗瀬らはホンダのブランド連想は「F1」と「技術力」で31%になり、自動車メー カーとしての性格がはっきり表れているとしているが、「F1」=「技術力」と捉えると、「F1」

のイメージが製品のイメージではなく、企業のイメージとなっているのではないかと推測 できる。そういった意味ではホンダは企業のイメージが先行しているという、簗瀬らとは 全く異なった解釈もできる。ホンダは2008年には「F1」から撤退しており、現時点で同様 の調査をおこなうと違った結果となるであろう。逆にトヨタは個別製品ブランドの魅力が いまいちとしているが、トヨタのブランド連想の中には製品の特徴を表す「ハイブリッド」、

「高級」、「大衆車」などの具体的な製品イメージの回答もある。ハイブリッド車のプリウ スの販売台数が急上昇するのは2009年であるが118、それ以前からトヨタ=「ハイブリッド」

というイメージは存在していたようである。word2vecの分析結果では、得られたトヨタの 製品名の類義語の上位には自社の製品が並んでおり、その点が日産やホンダと大きく異な っている。これはトヨタのコーポレート・ブランドとプロダクト・ブランドの一致を示し ているとした。また簗瀬らが個別製品ブランドの魅力がいまいちとした「安心・信頼」、「技 術」、「無難」といったと言葉も重要なプロダクト・ブランドの要素であり、トヨタの製品 の強みでもあろう。このようなことから、簗瀬らの調査でも解釈によってはトヨタのコー ポレート・ブランドとプロダクト・ブランドの一致が表れていると推測できる。日産のブ ランド連想について簗瀬らは、トヨタ以上に自動車の魅力に関係のない「ゴーン」という

言葉が35%で、回答にあったブランドも「スカイライン」、「マーチ」と、「マーチ」以外に

新しいブランドがなく「個別ブランドの多くの試練を想像させる」(簗瀬,2007)と述べて いる。10年後におこなった本研究のブランドイメージ調査で得られた日産の思い浮かぶ製 品名はマーチ、セレナ、スカイラインで、簗瀬が述べたこととほぼ一致していおり、簗瀬 らの2006年の調査時の想像が的を射ていたことを示しているのかもしれない。

このようなことから、word2vecを用いた分析とブランドイメージ調査、簗瀬らの調査は 同じような結果を導き出しているとみなせよう。つまり、word2vecの分析結果はアンケー ト調査を用いなくともコーポレート・ブランドとプロダクト・ブランドの関係を知るため のツールになりうると言えよう。

118 8-2参照。

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表 8-18 簗瀬らの調査結果とブランドイメージ調査、word2vecの分析結果

簗瀬らのインターネットによる共同調査結果企業のブランドイメージについての調査word2vec 11設問評価1類義語の製品 全体 トヨタは製品ブランド8割以上重視が20%、企業ブ ランド8割以上重視が25%、日産はトヨタとほぼ同 じ。ホンダは最も製品ブランドより。

設問での評価は、ホンダはQ2-3の企業名でイメー ジが思い浮かぶが平均値5.73で最も高い。トヨタは Q2-3の企業名でイメージが思い浮かぶは2番目だが 平均値は6.16 トヨタと日産はQ2-1の思い浮かぶ製品が多いが最 も高いが平均値はトヨタが6.50で、日産は5.82

トヨタではトヨタの製品名が上位に並ぶが、日 産、ホンダは他社の製品名が上位に並ぶ。 2)ブランド連想(自由記述)2自由記述製品1類義語の製品 トヨタ

トヨタは企業としての「世界一」や「業界一」など の企業の評価に対する言葉の割合が大きく、自動車 の特徴や性格は現れていない。「安心・信頼」、 「技術」、「無難」などがあり、個別製品ブランド の魅力がいまいち。

思い浮かぶ製品はプリウス(52.3%)とレクサス 18.2%)で累計は70.5%。トヨタでの製品名の類義語の上位はカローラ、 Prius ハイブリッド車の製品名の類義語ではプリウス、 高級車の製品名の類義語ではレクサスが最上位に 現れる。 日産

日産はトヨタ以上に自動車と関係のない言葉の割合 が大きい。「スカイライン」、「マーチ」の製品ブ ランドは現れたが、他の新しいブランドはない。ま た、自動車の特徴や性格は現れていない。

思い浮かぶ製品はマーチ(20.5%)、セレナ 13.6%)、スカイライン(15.9%)で累計は 50%。

日産での製品名の類義語の上位はTEEDA、ア キュラ、カローラ。日産の製品ではSERENA MARCHが上位。 ホンダ

ホンダは「F1」、「技術力」、「バイク」、「若 者向き」で個性を守っている。最も差別化された強 烈なブランド連想を持たれている。

思い浮かぶ製品はフィット(22.7)、オデッセイ 13.6%)、シビック(9.1%)、ステップワゴン 6.8%)で累計は52.3%。

ホンダでの製品名の類義語の上位はVitz、カロー ラ、Prius。すべて他社の製品名。ホンダの製品 ではシビックとFITが上位。 背景

ホンダのチームは2008年にF1より撤退。 トヨタレクサスの日本国内販売開始は2005年。 トヨタの自由記述では「ハイブリッド」、「高 級」、「大衆車」などの言葉もある。

日産で2015年時点で最も売れている新車はノート。 次いでセレナ。 ホンダのシビックは2016年時点では国内販売はされ ていない。

トヨタのプリウスの販売台数が急上昇したのは 2009年、2010年(エコカー減税がきっかけ)。 日産のマーチは2003年、2004年は日産の中では販 売台数1位。その後も2012年まで日産の製品の中 では34位に位置。