第 8 章 分析結果の統合
8.2 コーポレート・ブランドとプロダクト・ブランド
8.1ではブランドイメージ調査のQ3の思い浮かぶ製品の結果や、販売実績に関する資料 などを用いて考察をおこない、word2vecで企業名から得られた製品名は売れ筋製品の製品 名であるとした。しかし、8.1はword2vecで得られた製品名が妥当であるかどうかの考察 で、word2vecで得られた企業名と製品名の関係、つまりコーポレート・ブランドとプロダ クト・ブランドの関係については考察をおこなわなかった。そこで、ここではword2vecで
109 日経MJ(流通新聞)「20代女子の落とし方、最高益、コーセー――創立30年の長寿ブランド「雪肌
精」、販促一新、古くささ払拭。」2015年10月7日付,p.1。
日経MJ(流通新聞)「20代女子の落とし方、最高益、コーセー――購買力ある30代、取り込み課題。」 2015年10月7日付,p. 1。
110 例えば資生堂のマキアージュの場合、化粧下地、ファンデーション、コンシーラー、おしろい、スポン ジ・パフ・ブラシ 、口紅・リップグロス、リップベース 、リップライナー、アイシャドー、アイライ ナー 、マスカラ、アイブロー、チーク 、ネールカラー、ネールケア、香水・コロンなど。
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得られた企業名と製品名の出現の特徴の企業間での相違について、ブランドイメージ調査 のQ2-1からQ2-7の結果や、関連する文献、新聞記事などを用いて考察をおこなう。
第6章のword2vecを用いた分析の考察で、企業名で得られた製品名の類義語は、上位が
自社の製品でまとまっているもの企業と、上位が他社の製品でまとまっている、あるいは 上位に他社の製品が多数現れている企業があり、これは企業の新聞記事表現の特徴と、製 品についての新聞記事表現の特徴の一致の程度、つまりコーポレート・ブランドとプロダ クト・ブランドの一致の程度を表しているのではないかとし、「企業名をコーポレート・ブ ランド、製品名をプロダクト・ブランドとし、positive wordとして企業名を与えてword2vec によって得られた製品名の類義語の上位がその企業の製品名であり、その製品名をpositive wordとして与えてword2vecによって得られた企業名の類義語の上位がその企業名である 時にコーポレート・ブランドとプロダクト・ブランドが一致しているとみなすことができ る」と仮定した。
word2vecを用いた分析の結果で、企業名をpositive wordに与えてword2vecで得られ た製品名の類義語の上位が自社の製品名でまとまっていたのはアップル、ソニー、トヨタ、
マツダ、花王であった。アップルではiPhone、iPad、iPodが上位に並び、ANDROIDの
次もiTunesと分析対象期間に新たに発売されたアップルの製品名が上位に並んでいる。ト
ヨタは小型車・普通車のカローラとVitz、Cymru、ハイブリッド車のPrius、高級車のLEXUS、
マツダは小型車・普通車のdemioとアテンザ、AXELA、花王は化粧品のソフィーナ、スキ ンケアのビオレ、ヘアケアのASIENCEと各社ともその代表的な製品名が並んでいる。ソ
ニーもWALKMANとBRAVIAが並んでいるが、ソニーの製品をネットで販売しているソ
ニーストアのホームページには、ブラビア(BRAVIA)やウォークマン(WALKMAN)の 他にデジタル一眼カメラ α(アルファ)やデジタルスチルカメラ サイバーショット、デ ジタルビデオカメラ ハンディカムなどのブランド名(製品名)が掲示されている。トヨタ やマツダ、花王もそれぞれの社の全製品名が得られた訳ではないが、ソニーの主たる製品 というには得られた製品名が少ない。また第6章の考察で確認したようにソニーで最上位
のWALKMANも、製品カテゴリーの携帯音楽プレーヤーではアップルのiPodが上位に現
れていて、そのRの値もiPodに比べるとかなり小さかった。そのような理由で、上位が自 社の製品名でまとまっている企業としての考察からソニーを除外する。
逆に企業名をpositive wordに与えてword2vecで得られた製品名の類義語の上位が他社 の製品名でまとまっていたのはホンダと資生堂であった。ホンダはVitz、カローラ、Prius とトヨタの製品名が続き、その後にシビック、FITとホンダの製品名が現れている。ホンダ と資生堂以外では、日産も最上位は日産のTEEDAであったが、その次はアキュラ、カロ ーラ、Cymruと他社の製品名が上位にまとまっている。資生堂も最上位は花王のソフィー ナであった。
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表 8-15 企業別Q2-1~Q2-7による因子分析結果とQ2企業別設問回答平均比較①
変数(設問) 因子1 因子2 評価設問 平均値 標準偏差
Q2-1 浮かぶ製品 0.382 0.828 Q2-1 思い浮かぶ製品が多い 5.820 1.018
Q2-2 一貫した主張 0.831 -0.251 Q2-3 企業名でイメージが思い浮かぶ 5.660 1.160
Q2-3 企業イメージ 0.827 -0.255 Q2-2 製品に一貫した主張が表れている 5.110 1.298
Q2-4 明確な主張 0.684 0.143 Q2-6 忠誠心の高い顧客が多い 5.070 1.169
Q2-5 競争力 0.737 0.301 Q2-4 製品が主張を持っている 5.000 0.964
Q2-6 顧客忠誠心 0.622 -0.435 Q2-5 製品の競争力が強い 5.000 1.220
Q2-7 企業らしさ 0.833 0.064 Q2-7 製品に企業らしさが表れている 4.930 1.265
1)主成分分析、回転なし。 1)網掛けは標準偏差1.400以上。
2)網掛けは因子負荷の最も大きな変数。
変数(設問) 因子1 因子2 評価設問 平均値 標準偏差
Q2-1 浮かぶ製品 0.734 -0.021 Q2-3 企業名でイメージが思い浮かぶ 5.730 1.208
Q2-2 一貫した主張 0.754 -0.286 Q2-1 思い浮かぶ製品が多い 5.680 1.157
Q2-3 企業イメージ 0.640 -0.489 Q2-6 忠誠心の高い顧客が多い 5.230 1.097
Q2-4 明確な主張 0.793 -0.024 Q2-7 製品に企業らしさが表れている 5.230 1.255
Q2-5 競争力 0.663 0.483 Q2-4 製品が主張を持っている 5.110 1.039
Q2-6 顧客忠誠心 0.236 0.743 Q2-2 製品に一貫した主張が表れている 5.090 1.444
Q2-7 企業らしさ 0.843 0.081 Q2-5 製品の競争力が強い 5.020 1.171
1)主成分分析、回転なし。 1)網掛けは標準偏差1.400以上。
2)網掛けは因子負荷の最も大きな変数。
変数(設問) 因子1 因子2 評価設問 平均値 標準偏差
Q2-1 浮かぶ製品 0.606 0.206 Q2-1 思い浮かぶ製品が多い 5.950 0.963
Q2-2 一貫した主張 0.650 -0.449 Q2-3 企業名でイメージが思い浮かぶ 5.680 1.095
Q2-3 企業イメージ 0.718 -0.126 Q2-5 製品の競争力が強い 5.360 1.102
Q2-4 明確な主張 0.726 -0.424 Q2-7 製品に企業らしさが表れている 5.360 1.080
Q2-5 競争力 0.839 0.197 Q2-4 製品が主張を持っている 5.300 1.025
Q2-6 顧客忠誠心 0.378 0.813 Q2-2 製品に一貫した主張が表れている 5.230 1.309
Q2-7 企業らしさ 0.810 0.114 Q2-6 忠誠心の高い顧客が多い 5.000 1.034
1)主成分分析、回転なし。 1)網掛けは標準偏差1.400以上。
2)網掛けは因子負荷の最も大きな変数。
ブランドイメージ調査Q2結果 資生堂平均
変数(設問) 因子1 評価設問 平均値 標準偏差
Q2-1 浮かぶ製品 0.634 Q2-3 企業名でイメージが思い浮かぶ 5.840 1.119
Q2-2 一貫した主張 0.785 Q2-5 製品の競争力が強い 5.590 0.923
Q2-3 企業イメージ 0.884 Q2-6 忠誠心の高い顧客が多い 5.550 1.130
Q2-4 明確な主張 0.837 Q2-7 製品に企業らしさが表れている 5.550 1.044
Q2-5 競争力 0.788 Q2-1 思い浮かぶ製品が多い 5.500 1.502
Q2-6 顧客忠誠心 0.712 Q2-2 製品に一貫した主張が表れている 5.390 1.039
Q2-7 企業らしさ 0.768 Q2-4 製品が主張を持っている 5.300 1.002
1)主成分分析、回転なし。 1)網掛けは標準偏差1.400以上。
2)網掛けは因子負荷の最も大きな変数。
資生堂因子分析因子分析
ブランドイメージ調査Q2結果 ホンダ平均 ホンダ因子分析
ブランドイメージ調査Q2結果 日産平均 日産因子分析因子分析
ブランドイメージ調査Q2結果 サントリー平均 サントリー因子分析因子分析
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上位が自社の製品名でまとまっている企業の場合、各社ともその企業の代表的な製品名 が並んでいたが、日産とホンダでは上位に並んだ他社の製品名にはトヨタの製品が多い(日 産ではホンダのアキュラ以外はトヨタの製品名)ということ以外には特徴がない。word2vec で得られた製品名として上位に現れている自社の製品名をブランドイメージ調査のQ3で 得られた思い浮かぶ製品と比較すると、日産のTEEDAを除けば、日産ではSERENAと
MARCH、ホンダではシビックとFITと、どちらも上位は一致している。では日産、ホン
ダ、資生堂で、word2vecで得られた製品名の類義語に他社の製品名が上位に現れるのはど のようなことを意味するのであろうか。
7.2.1ではQ2-1からQ2-7を全社分まとめて主成分分析で因子分析をおこなって、
Q2-1からQ2-7で構成される因子を1つ得ることができた。ここでは企業間の相違を 確認するためにブランドイメージ調査のQ2-1からQ2-7の評価を企業別に因子分析を おこなった。その結果、日産とホンダ、サントリーだけが因子が2つ抽出された(他は 全社分の結果と同様に1つだけであった)。他社の製品名が上位に現れている日産とホン ダ、資生堂に因子分析で因子が2つ抽出されたサントリーを加えた4社の因子分析の結 果の成分行列表と、Q2-1からQ2-7の評価の平均、標準偏差を評価の平均の高い順に 並べたのが表8-15である。
日産の因子分析結果ではQ2-7の「製品に企業らしさが表れている」、Q2-2の「製品に一 貫した主張が表れている」、Q2-3の「企業名でイメージが思い浮かぶ」などの項目を中心と した企業イメージのグループと、Q2-1の「思い浮かぶ製品が多い」の評価が高いと、Q2-6 の「忠誠心の高い顧客が多い」の評価が低くなるグループに分かれている。ブランドイメ ージ調査の評価ではQ2-4の「製品が主張を持っている」、Q2-5の「製品の競争力が強い」、 Q2-7の「製品に企業らしさが表れている」の評価の平均が低くなっている。評価の平均か ら見ると製品に主張や企業らしさがそれほど感じられず、製品の競争力が弱いということ であろう。因子分析では企業らしさや企業のイメージが評価の特徴を形成しており、思い 浮かぶ製品と顧客の忠誠心は一致していない。つまり、コーポレート・ブランドとプロダ クト・ブランド、顧客の忠誠心が別々であるということで、word2vecの分析結果と同じと 言えよう。
ホンダの因子分析結果ではQ2-7の「製品に企業らしさが表れている」という項目を中心 とした製品のイメージのグループと、Q2-6の「忠誠心の高い顧客が多い」が高ければQ2-3 の「企業名でイメージが思い浮かぶ」が低くなるグループに分かれている。ブランドイメ ージ調査の評価ではQ2-4の「製品が主張を持っている」、Q2-2の「製品に一貫した主張が 表れている」、Q2-5の「製品の競争力が強い」の評価の平均が低くなっている。評価の平均 から見ると製品に主張がそれほど感じられず、製品の競争力が弱いということであろう。
これは日産の評価にも通じているようであるが、ホンダの場合はQ2-2の「製品に一貫した 主張が表れている」は標準偏差が大きく、回答の評価が分かれていることを示している。
因子分析では製品の企業らしさのイメージが評価の特徴を形成しており、製品の一貫した