第 6 章 word2vec を用いた個別製品の分析
6.3 ビールメーカーの比較
6.3.3 ビール業界の製品カテゴリーで実行した word2vec の結果
前述の6.3.1、6.3.2の考察では、ビール会社の新聞記事の特徴には製品カテゴリーが影響
しているのか、各社の新聞記事表現の特徴が影響しているのか判別しにくい面があった。
ビール、発泡酒、第三のビールというビール系飲料の 3 つの製品カテゴリー名を positive wordとして与え、2003年から2012年の記事データからword2vecによって類義語とコサ イン類似度を5.3.2で述べた手順に従って処理、分類し、Rの値の高い順に整理したものが 表6‐12である。
【製品名】
ビールの類義語として得られた製品名は上位からザ・プレミアム・モルツ(0.67)、一番 搾り(0.66)、スーパードライ(0.65)、黒ラベル(0.63)であった。発泡酒の類義語として 得られたのは上位からドラフトワン(0.69)、金麦(0.65)、のどごし(0.64)、ザ・プレミ アム・モルツ(0.64)、スーパードライ(0.63)、麦とホップ(0.63)、クリアアサヒ(0.62)、 一番搾り(0.61)、黒ラベル(0.60)、第三のビールの類義語として得られたのは上位から金 麦(0.69)、クリアアサヒ(0.68)、ドラフトワン(0.67)、麦とホップ(0.66)、ザ・プレミ アム・モルツ(0.66)、スーパードライ(0.64)、のどごし(0.63)、EVISU(0.61)、黒ラ ベル(0.59)、一番搾り(0.59)であった。
ビールで得られたザ・プレミアム・モルツはサントリーの、一番搾りはキリンの、スー パードライはアサヒの、黒ラベルはサッポロのビールの製品名である。これらは6.3.2で考 察したビールメーカー4 社の代表銘柄(製品)で、その R の値に大きな差はない。各社の 代表銘柄に関する記事にはビールについての共通の新聞記事表現の特徴が多く用いられて いると推測できる。であれば、前述の6.3.1や6.3.2で考察してきた企業のや製品の新聞記 事表現の特徴は企業や製品に共通の特徴よりもビールという製品カテゴリーに共通の新聞 記事表現の特徴が多く用いられているとも考えられる。とはいえ、前述の6.3.2で考察した ように製品名で得られた企業名はそれぞれの製品の製造会社名が上位に現れており、それ ぞれの企業に共通の新聞記事表現も用いられていると推測される。
発泡酒で得られたドラフトワンと麦とホップはサッポロの、金麦はサントリーの、のど ごしはキリンの、クリアアサヒはアサヒの第三のビールの製品名である。またザ・プレミ アム・モルツはサントリーの、スーパードライはアサヒの、一番搾りはキリンの、黒ラベ ルはサッポロの第三のビールの製品名である。4 社の製品名が現れていて、その R の値も 大きく違わないところから、発泡酒についての記事には第三のビールに共通の新聞記事表 現の特徴とビールに共通の新聞記事表現の特徴が多く用いられていると推測できる。なお 発泡酒で得られた類義語に発泡酒の製品名が含まれていないのは、データの期間中の新聞 記事に発泡酒について何らかの特徴のある新聞記事表現が無かったからではないかと推測
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表 6-12 ビール・発泡酒・第三のビールの2003年~2012年類義語
する。実際、データ期間中、発泡酒の売り上げは減少し65、サントリーは発泡酒の生産を中 止している66。
第三のビールで得られた金麦、クリアアサヒ、ドラフトワン、麦とホップ、のどごしは ビールメーカー各社の第三のビールの製品名である。またザ・プレミアム・モルツ、スー パードライ、EVISU、黒ラベル、一番搾りはビールメーカー各社のビールの製品名である。
第三のビールについての記事には第三のビールに共通の新聞記事表現の特徴とビールに共 通の新聞記事表現の特徴が多く用いられていると推測できる。さらに言えば、ビールにつ いての新聞記事に共通の新聞記事表現の特徴と、発泡酒、第三のビールについての新聞記 事に共通の新聞記事表現の特徴は異なるが、発泡酒、第三のビールについての新聞記事に 共通の新聞記事表現の特徴は類似しているとも言えよう。
65 日本経済新聞「発泡酒、影薄く――安さなら『第三』、味は『プレミアム』(チラシで読む)」2010年8 月31日付朝刊,p.31。
66 日本経済新聞「発泡酒の生産終了、サントリー、ビールに注力。」2012年7月20日付朝刊,p.9。
【製品名】
「ビール」による類義語抽出結果 「発泡酒」による類義語抽出結果 「第三のビール」による類義語抽出結果
類義語 出現数 R(コサイン類似
度1回平均) 類義語 出現数 R(コサイン類似
度1回平均) 類義語 出現数 R(コサイン類似
度1回平均)
ザ・プレミアム・モルツ 5 0.665566564 ドラフトワン 5 0.688133073 金麦 5 0.692735827
一番搾り 8 0.656789564 金麦 5 0.647132862 クリアアサヒ 5 0.680181623
スーパードライ 9 0.652965711 のどごし 6 0.642071644 ドラフトワン 5 0.670208836
黒ラベル 6 0.629655361 ザ・プレミアム・モルツ 7 0.639760997 麦とホップ 4 0.659356281
スーパードライ 10 0.631407475 ザ・プレミアム・モルツ 7 0.658619191
麦とホップ 4 0.625054210 スーパードライ 8 0.637437917
クリアアサヒ 5 0.621697462 のどごし 6 0.625549495
一番搾り 8 0.611825958 EVISU 5 0.609817398
黒ラベル 6 0.595410804 黒ラベル 7 0.593193642
一番搾り 7 0.591802554
【製品カテゴリー】
「ビール」による類義語抽出結果 「発泡酒」による類義語抽出結果 「第三のビール」による類義語抽出結果
類義語 出現数 R(コサイン類似
度1回平均) 類義語 出現数 R(コサイン類似
度1回平均) 類義語 出現数 R(コサイン類似
度1回平均)
発泡酒 10 0.769596285 第三のビール 9 0.806311475 発泡酒 9 0.806311495
缶チューハイ 4 0.711258054 ビール 10 0.769596261 ビール系飲料 8 0.727164365
第三のビール 9 0.703311755 ビール系飲料 8 0.687800094 ビール 9 0.703311748
アルコール飲料 6 0.695964148 アルコール飲料 6 0.685893168 アルコール飲料 5 0.687234735
ウイスキー 10 0.694687903 缶チューハイ 6 0.664474507 第3のビール 5 0.645253658
チューハイ 6 0.688506683 第3のビール 4 0.646311939 ビール風味飲料 4 0.615324840
焼酎 8 0.683439486 チューハイ 10 0.640585971 プレミアムビール 4 0.599928930
低アルコール飲料 7 0.673087137 低アルコール飲料 7 0.634655195 缶チューハイ 5 0.594307601
生ビール 7 0.663555171 ウイスキー 5 0.615515184 低アルコール飲料 8 0.589329444
酒類 8 0.661471859 リキュール類 4 0.601455629 チューハイ 7 0.582317105
日本酒 8 0.655901715 酒類 6 0.592422446 酒類 5 0.577307892
酒 4 0.653757900 炭酸飲料 7 0.590409900 リキュール類 4 0.574536085
ビール系飲料 7 0.650566944
ワイン 7 0.632406133
ハイボール 4 0.631789580
炭酸飲料 5 0.627564585
【企業名】
「ビール」による類義語抽出結果 「発泡酒」による類義語抽出結果 「第三のビール」による類義語抽出結果
類義語 出現数 R(コサイン類似
度1回平均) 類義語 出現数 R(コサイン類似
度1回平均) 類義語 出現数 R(コサイン類似
度1回平均)
サントリー酒類 4 0.705200076 サントリー酒類 4 0.645756468 サントリー酒類 4 0.713382900
キリン 7 0.659011790 キリン 5 0.637861764 アサヒ 7 0.638596594
アサヒ 5 0.652892566 キリンビール 6 0.625283668 キリン 5 0.618134189
サッポロビール 9 0.651822666 アサヒ 7 0.621354154 サッポロビール 9 0.612298568
キリンビール 7 0.641133138 サッポロビール 10 0.618544483 キリンビール 6 0.591213763
アサヒビール 6 0.640488317 アサヒビール 6 0.601255010 アサヒビール 7 0.578523891
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【製品カテゴリー】
ビールの類義語として得られた製品カテゴリーは上位から発泡酒(0.77)、缶チューハイ
(0.71)、第三のビール(0.70)、アルコール飲料(0.70)、ウイスキー(0.69)、チューハイ
(0.69)、焼酎(0.68)、低アルコール飲料(0.67)、生ビール(0.66)、酒類(0.66)、日本 酒(0.66)、酒(0.65)、ビール系飲料(0.65)、ワイン(0.63)、ハイボール(0.63)、炭酸 飲料(0.63)の16製品カテゴリーであった。発泡酒の類義語として得られたのは上位から 第三のビール(0.80)、ビール(0.77)、ビール系飲料(0.69)、アルコール飲料(0.69)、缶 チューハイ(0.66)、第3のビール(0.65)、チューハイ(0.64)、低アルコール飲料(0.63)、 ウイスキー(0.62)、リキュール類(0.60)、炭酸飲料(0.59)の11製品カテゴリーであっ た。第三のビールの類義語として得られたのは上位から発泡酒(0.81)、ビール系飲料(0.73)、 ビール(0.70)、アルコール飲料(0.69)、第3のビール(0.65)、ビール風味飲料(0.62)、 プレミアムビール(0.60)、缶チューハイ(0.59)、低アルコール飲料(0.59)、チューハイ
(0.58)、酒類(0.58)、リキュール類(0.57)の12製品カテゴリーであった。
ビールで得られた類義語は前述の6.3.1や6.3.2で現れたビール、プレミアムビール、生 ビール、発泡酒、第三のビール、ビール系飲料、低アルコール飲料、缶チューハイ、アル コール飲料の他にウイスキーや焼酎、日本酒、ワイン、ハイボールなど、アルコール飲料 が幅広く現れている。特に、焼酎、日本酒、ワイン、ハイボールは発泡酒や第三のビール では得られなかった製品カテゴリーである。このことはビールに関する新聞記事の表現の 特徴が、幅広いアルコール飲料の製品カテゴリーに共通する新聞記事表現の特徴を含んで いることを表していると推測する。もちろん、最上位に現れている発泡酒の0.77というR の値は極めて高く、ビールに関する新聞記事には発泡酒に共通の記事表現の特徴が最も多 く用いられていると推測される。
発泡酒で得られた最上位は第三のビールでRの値も0.80と極めて高い。またその次に現 れているビールもRの値は0.77と高く、その次に現れているビール系飲料の Rの値0.69 とはかなりの開きがある。つまり、発泡酒に関する新聞記事には第三のビールに共通の新 聞記事表現の特徴が最も多く用いられていると推測できる。
第三のビールで得られた最上位は発泡酒でRの値は0.81と発泡酒で得られた第三のビー ルと同様高い値で、発泡酒と第三のビールに共通の新聞記事表現の特徴が多くあることが 容易に推測できる。さらに発泡酒ではビールのRの値が0.77と高かったの対して、第三の ビールではビール系飲料のRの値が0.73、ビールのR の値が0.70と発泡酒よりもかなり 低くなっている。これは発泡酒に比べて、第三のビールの方が他の製品カテゴリーの新聞 記事表現の特徴を多く含んでいるためではないだろうかと推測される。
【企業名】
ビールの類義語として得られた企業名は上位からサントリー酒類(0.71)、キリン(0.66)、 アサヒ(0.65)、サッポロビール(0.65)、キリンビール(0.64)、アサヒビール(0.64)で あった。発泡酒の類義語として得られたのは上位からサントリー酒類(0.65)、キリン(0.64)、
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キリンビール(0.63)、アサヒ(0.62)、サッポロビール(0.62)、アサヒビール(0.60)、第 三のビールの類義語として得られたのは上位からサントリー酒類(0.71)、アサヒ(0.64)、
キリン(0.62)、サッポロビール(0.61)、キリンビール(0.59)、アサヒビール(0.58)で あった。
ビール、発泡酒、第三のビールの3つの製品カテゴリーすべてにおいて、ビールメーカ ー4社の企業名が現れており、それぞれの製品カテゴリーについての新聞記事に各企業に共 通の新聞記事表現の特徴が含まれているが推測できる。これはビール業界が4社の寡占状 態にあり、それぞれが同じ製品カテゴリーで競い合っていることから当然のことであろう。
その中で、サントリー酒類が3つの製品カテゴリーすべてで最上位に現れている。これは サントリーの各製品カテゴリーでの販売が好調だったためであろうと推測する67。