第 8 章 分析結果の統合
8.1 word2vec で企業名から得られた製品名の検証
8.1.2 自動車メーカーでの検証
8.1.2.1 トヨタでの検証
トヨタではプリウス、レクサス、カローラがword2vecから得られたトヨタの製品名にも、
ブランドイメージ調査で得られた製品名にも現れている。ただ、カローラの評価(回答件 数)はブランドイメージ調査の方がかなり低い。これはカローラが売れ筋80であったとして も、ブランドイメージ調査の結果ではトヨタを代表する車ではないということであろう。
逆に販売台数が多くないレクサスは、トヨタが高級車として2005年から日本国内でディー ラー展開を含めて、新たなブランドとして立ち上げて販売を開始81したため、新聞記事にも 多く取り上げられ、その記事にレクサスとトヨタを表す特徴があったことがword2vecから 抽出した類義語に現れた理由と推測する。またブランドイメージ調査では「高級車=代表 的な車」とのイメージが強いために回答結果に現れたのではないかとも推測する。プリウ スは売れ筋製品であり、ハイブリッド車としての人気もあるため、word2vecから得られた トヨタの製品名にも、ブランドイメージ調査で得られた製品名にも現れて当然であろう。
word2vecから得られたトヨタの製品名にだけ現れたのはVitz、Cymru、エスティマ、
YARISであった。6.2.2で述べたようにYARISはVitzの海外市場での製品名である。Cymru も主たる市場は日本国内というよりは海外である。2003年1月1日から2012年12月31 日までの日本経済新聞の記事を、日経テレコンを使いカムリとトヨタで絞り込んで検索す ると、該当する記事は500件あった。2012年11月と12月の記事の見出しが表8-3である。
13件の記事のほとんどが海外市場に関する記事である。新聞記事には日本国内だけでなく、
企業の海外戦略に関わる記事も多数掲載されている。word2vecで抽出された類義語には、
当然、そのような海外戦略に関わる類義語も多数含まれていよう。その点ではword2vecで 抽出された類義語は新聞記事で話題となっている製品名を的確に抽出していると言えるが、
同時に、企業の海外戦略などが含まれていることを理解して目的に合わせて判断する必要 もある。
表8-4はトヨタをpositive wordとして与える他に、海外をnegative word(除外語)と して与えて2003年から2012年の記事データからword2vecによって類義語とコサイン類
似度を5.3.2で述べた手順に従って処理した結果である。Cymru (カムリ)の出現順位は
低くなり、Vitzの海外市場での製品名であるYARIS は現れなくなっている。これは海外
80 後述の表8-5「日本自動車販売協会連合会 2012年~2015年新車乗用車販売台数ランキング」参照。
81 日本経済新聞「『レクサス』8月30日始動、トヨタ、旗艦店公開――大理石の床で高級感。」2005年5 月20日付朝刊,p.13。
113
表 8-2 word2vec抽出結果とブランド調査の思い浮かぶ製品名比較 【自動車】
※ は他社製品・無回答等 は一方にしか出現しない
wordvec2 「トヨタ」2003年~2012年類義語(製品名) ブランドイメージ調査 自由回答 トヨタ
類義語 出現数 R(コサイン類
似度1回平均) 代表的な製品名 度数 パーセント
カローラ 10 0.699118215 プリウス 23 52.3
Prius 10 0.672059262 レクサス 8 18.2
Vitz 9 0.651633554 ランドクルーザー 2 4.5
LEXUS 10 0.649423337 カローラ 2 4.5
Cymru 10 0.648366326 アクア 2 4.5
フリード 3 0.633752326 その他の製品名 6 13.6
SERENA 5 0.633603382 他社製品 1 2.3
シビック 7 0.630205691
アキュラ 3 0.630095740
エスティマ 5 0.617696619
TEEDA 4 0.611516595
YARIS 4 0.609320790
wordvec2 「日産」2003年~2012年類義語(製品名) ブランドイメージ調査 自由回答 日産
類義語 出現数 R(コサイン類
似度1回平均) 代表的な製品名 度数 パーセント
TEEDA 7 0.624019853 マーチ 9 20.5
アキュラ 3 0.621623675 セレナ 6 13.6
カローラ 7 0.618994347 スカイライン 7 15.9
Cymru 6 0.617919922 GT-R 4 9.1
SERENA 7 0.615975959 ノート 4 9.1
MARCH 6 0.615854353 リーフ 3 6.8
Vitz 9 0.610052645 フェアレディZ 3 6.8
シビック 6 0.599300295 その他の製品名 5 11.4
demio 7 0.597478611 無回答 3 6.8
wordvec2 「ホンダ」2003年~2012年類義語(製品名) ブランドイメージ調査 自由回答 ホンダ
類義語 出現数 R(コサイン類
似度1回平均) 代表的な製品名 度数 パーセント
Vitz 9 0.675223755 フィット 10 22.7
カローラ 10 0.670220250 オデッセイ 6 13.6
Prius 9 0.660600199 シビック 4 9.1
シビック 9 0.652954631 ステップワゴン 3 6.8
FIT 6 0.652200301 N-BOX 3 6.8
Cymru 9 0.650365757 アコード 2 4.5
SERENA 7 0.649410972 その他の製品名 7 15.9
アコード 5 0.649254668 製品カテゴリー 1 2.3
エスティマ 5 0.639097297 他社製品 2 4.5
TEEDA 6 0.637672752 無回答 6 13.6
LEXUS 4 0.628217891
demio 6 0.626875738
wordvec2 「マツダ」2003年~2012年類義語(製品名) ブランドイメージ調査 自由回答 マツダ
類義語 出現数 R(コサイン類
似度1回平均) 代表的な製品名 度数 パーセント
demio 10 0.680430973 デミオ 10 22.7
アテンザ 10 0.659846812 ロードスター 8 18.2
AXELA 10 0.658270353 アクセラ 5 11.4
MURANO 3 0.656403283 アテンザ 3 6.8
Cymru 3 0.639781058 CX-5 3 6.8
PREMACY 7 0.631286868 RX-7 2 4.5
YARIS 3 0.625837167 その他の製品名 5 11.4
カローラ 8 0.617879711 製品カテゴリー 1 2.3
Vitz 8 0.601269469 無回答 7 15.9
TEEDA 6 0.594246075
SERENA 5 0.572193247
114
表 8-3 カムリとトヨタでの2012年新聞記事検索結果
表 8-4 トヨタによる2003年~2012年製品名類義語海外除く比較
急加速巡る米リコール訴訟、トヨタ、940億円で和解。
リコール訴訟、940億円で和解、トヨタ、北米の成長重視、影響の長期化を懸念。
2012年12月28日付 日本経済新聞 朝刊 9ページ 急加速巡る米リコール訴訟、トヨタ、940億円で和解。
2012年12月27日付 日本経済新聞 夕刊 1ページ
ホンダやトヨタ、米で生産、韓国に投入、米韓FTAを活用。
2012年12月27日付 日本経済新聞 大阪夕刊 一面
ホンダ・トヨタ、中国減産を緩和、一部工場で通常操業に。
2012年12月22日付 日本経済新聞 朝刊 9ページ
トヨタ、世界生産990万台、グループ来年計画、北米・東南ア上積み、最高水準維持。
2012年12月19日付 日本経済新聞 朝刊 3ページ TOYOTA東南ア深化の道(1)タイ「産業報国」根付く。
2012年12月11日付 日本経済新聞 地方経済面 中部 7ページ 米新車販売、11月15%増、5年ぶり高水準、日本勢がけん引。
2012年12月04日付 日本経済新聞 夕刊 3ページ
トヨタ、中国復調うかがう、販売10月44%減→11月22%減、年間計画は困難。
2012年12月04日付 日本経済新聞 朝刊 11ページ
2012年11月06日付 日本経済新聞 朝刊 2ページ
トヨタ、営業益7000億円、4~9月、ハイブリッド車好調、通期上方修正へ。
2012年11月05日付 日本経済新聞 夕刊 1ページ 2012年11月27日付 日本経済新聞 夕刊 1ページ
韓国へ車輸出、米経由が拡大、ホンダやVW、FTA活用、低コストで。
2012年11月27日付 日本経済新聞 大阪夕刊 一面 18ページ
トヨタ100年への計(下)クルマと対話、商品力磨く――コスト両立へ生産改革。
2012年11月20日付 日本経済新聞 朝刊 13ページ
トヨタ、得意市場で稼ぐ、今期営業益1兆500億円、コスト1400億円減。
類義語 出現数 R(コサイン類
似度1回平均)
エスティマ 5 0.455527866
Prius 9 0.450819678
カローラ 10 0.449294168
Vitz 8 0.442973010
SERENA 5 0.425057954
LEXUS 4 0.421663828
FIT 5 0.421629369
M.O.V.E 5 0.415036279
WISH 4 0.414901070
PASSO 6 0.414484451
STEP_WGN 4 0.413010009
Cymru 7 0.410070321
アルファード 5 0.409629011
シビック 7 0.403561030
demio 4 0.399462596
オデッセイ 5 0.397367030
マークX 4 0.390352108
1)網掛けはトヨタ関連。
115
に関する記事の内容がword2vecの分析から除外されたためと推測されるが、海外という言 葉が使われていると国内市場の記事であっても全て除外されている可能性もある。またR
の値がnegative word を与えなかった場合に比べて極端に低くなる。本論文では他の産業
分野との比較などもあるため、negative word を与えないword2vecの結果で考察をおこな い、必要に応じて、確認のためにnegative word を与えた結果を付け加える。
ブランドイメージ調査で得られた製品名にだけ現れたのはランドクルーザー、アクアで あった。ランドクルーザーという回答は2件だけであった。このランドクルーザーという 回答は、ある面では愛好者のマニアックなイメージが回答結果に現れたのではないだろう か。このような個々人の感覚による判断はword2vecでとらえることは難しい。
表8-5は日本自動車販売協会連合会が提供しているホームページの「新車乗用車販売台数 月別ランキング」82より2012年から2015年の年間販売台数上位30車種を抽出した一覧で ある。カローラ、プリウス、ヴィッツ、アクアは常に10以内に入っており、売れ筋の製品 と言えよう。
図8-2は、word2vecから得られたトヨタの製品名と、ブランドイメージ調査で得られた 製品名の両方に現れたカローラ、プリウス、レクサスと、ヴィッツ、アクア、エスティマ の販売台数(販売台数の資料については後述する)の推移である。word2vecにだけ現れた Vitz とブランドイメージ調査にだけ現れたアクアは、どちらも他のトヨタの製品に比べる と販売台数の数字が大きい。ブランドイメージ調査にだけ現れたアクアは小型のハイブリ ッド車で、その販売は2011 年からであるが、2011 年の販売台数は極めて少なく、実際に 販売台数が大きく伸びたのは2012年であるから、word2vecでの抽出結果に現れなくても 不思議はない。word2vecにだけ現れたエスティマは、近年は販売台数が減少傾向であるが、
2006年、2007年はかなりの販売台数があり、2003年から2012年が分析対象期間である
word2vecの抽出結果に現れたのは十分納得ができる。2003年から2015年まで高い販売台
数を示しているVitzがブランドイメージ調査に現れないのは、その販売台数が安定してい ることと、高級車やハイブリッド車といった特徴がないためではないかと推測する。実際、
ブランドイメージ調査に現れた小型車の売れ筋の製品であるカローラとアクアも、その回 答件数はそれぞれ2件と、プリウス(23件)やレクサス(8件)と比べると回答件数は少 ない。しかし、word2vecから得られたトヨタの製品名はトヨタの売れ筋の製品、あるいは 代表的な製品の製品名と言えることは間違いがないであろう。
82 日本自動車販売協会連合会ホームページ「新車乗用車販売台数月別ランキング」,
<http://www.jada.or.jp/contents/data/ranking.html> 2016年8月31日アクセス。