第 3 章 印刷文字を閲覧する際の視条件評価チャートの提案 120
3.3 結果
3.3.4 tConChart と読書速度との関係の検討
1分間に,正確に音読できた文字数を読書速度(文字/分),読書速度を文字サ イズの関数で表したグラフを読書曲線[20]という.読書速度を落とさずに読むこ とのできる最小の文字サイズを臨界文字サイズ(CPS),文字サイズが読書する のに適当な条件で提示されたときの読書速度の平均値を最大読書速度(Maximum
Reading Speed以下MRS),文字を文字として知覚できる最小の文字サイズを読
書視力(Reading Acuity以下RA)という.
計測結果の一例について,tConChart曲線のMaxRangeと読書曲線における読書
表 3.5 A群とB群での2回の計測誤差の比較表
グループ 文字サイズ毎の MinSizeの MaxRangeの VAの
VRの誤差 誤差 誤差 誤差
A群 平均 0.80 0.60 0.50 6.60
標準偏差 0.29 0.57 0.57 5.68
B群 平均 0.70 0.50 0.60 5.60
標準偏差 0.31 0.59 0.69 4.57
t検定 0.093391 0.710161 0.496865 0.373363
A群とB群で2回計測した計測値について,MaxRange,MinSize,VAの誤差の 平均,標準偏差,t検定結果を示している.
表 3.6 tConChart曲線と最小分離閾との相関
関係要素 相関係数
最小分離閾―MaxRange -0.54 最小分離閾―MinSize 0.61 最小分離閾―VA -0.68
速度の最大値で正規化してプロットしたグラフを図3.11に示す.17画の漢字を用い るtConChart曲線と,平仮名と平均画数7.6画の漢字8文字からなるMNREAD-J の刺激文を用いて計測した読書曲線を比較すると,後者の方がより小さい文字サ イズまで視認できている.計測した90例についてtConChart曲線のMinSizeと読 書曲線のRAを比較すると,MinSizeの方が平均で1.46×0.1 logポイント大きい.
そこで,tConChart曲線を左方に補正しながら1.46×0.1 log付近での相関を検討 したところ,図3.12に示すように,補正値0,0.1 log,0.2 logのうち,0.2 logの 補正で相関が最も高くなった(相関係数 = 0.92,P = 0.00061).なお,0.3 log以 上では各々の計測結果における相関係数の計算に用いるサンプル数が減少するた
図 3.7 学生の最小分離閾のヒストグラム
tMinChartを使って106名の学生で計測された最小分離閾の分布を示して
いる.
め,信頼できる結果が得られないと判断した.これらのことから,tConChart曲 線と読書曲線の関係を検討する際には,0.2 logの補正を行うこととし,補正した 曲線を「補正tConChart曲線」と呼ぶこととする.
次に,各被験者の読書曲線についてCPSを求めた.CPSを求めるには,個々の 読書曲線において読書速度の高いデータから順にサンプルに加えながら平均と標準 偏差を求め,平均に対して読書速度が標準偏差の1.96倍を超えて低下した時を有 意に読書速度の低下が見られたと判断し,その直前の文字サイズをCPSと判定し た.全被験者のCPSと補正tConChart曲線との対応関係をヒストグラムとして図 3.13に示す.補正tConChart曲線において正規化したVRの50〜80 %に,読書曲 線におけるCPSの83%が含まれた.なおCPSが存在する補正tConChart曲線の
平均は65 %,標準偏差0.12であったことから95 %信頼区間は42〜88 %となった.
CPSとの相関係数は,MaxRange: -0.149,MinSize: 0.191,VA: -0.426となり,
図 3.8 最小分離閾と最大視認レンジの散布図
106名の学生で計測された最小分離閾と最大視認レンジ(MaxRange)の関係 を散布図で示している.
MRSとの相関係数は,MaxRange: 0.166,MinSize: -0.093,VA: 0.134となって,
いずれも相関は認められなかった.
図 3.9 最小分離閾と最小視認文字サイズの散布図
106名の学生で計測された最小分離閾と最小視認文字サイズ(MinSize)の関係 を散布図で示している.
図 3.10 最小分離閾と視認エリアの散布図
106名の学生で計測された最小分離閾と視認エリア(VA)の関係を散布図で示 している.
図 3.11 tConCahrtと読書速度の計測結果の一例
tConChartと読書速度の計測結果を正規化してグラフに示している.
図 3.12 シフト値と相関係数の平均およびP値
90名の学生を被験者として計測したtConChart曲線を左方に0, 0.1 log, 0.2 log補正した時の読書曲線との相関係数の平均とP値を示している.補正値0.2 logで最も相関係数が高く,P値が低くなっている.
図 3.13 補正tConChart曲線とCPSの関係
補正tConChart曲線においてCPSが存在する位置のヒストグラムである.補
正tConChart曲線の50〜80 %の範囲にCPSの83 %が存在した.