1.3 視環境の最適化
1.3.3 書体の最適化
め安定のプラトーを形成しないで単調増加になり,読書測度の絶対値は100文字/ 分を切るとした特徴があることを報告した.
網膜の暗点内部に島状に見える部分がある場合には,その部分だけが高い視力 を保持する.この場合,単語を提示すると,感度の良い小窓のような部分を使っ て読もうとする.そうした小窓がない場合,通常は暗点のすぐ外側の特定の場所 を使って単語を読もうとする.こうした中心暗点のある者が読書の際,好んで用 いる部位はPrefered Retinal Locus(PRL)と呼ばれる.Fletcherら[8]によると,
ロービジョン者の84%はPRLを確立しているという.中心暗点のあるロービジョ ン者で,視力検査や読書評価の値が安定しない理由として,複数のPRLを使い分 けている可能性が指摘されている.
型の液晶画面におけるユニバーサルデザインとして,小さい文字サイズであって も誰にでも読みやすい書体を開発する試み[140] などが報告されている.
ロービジョン者に適した書体の選択
宮下ら[47]は,同じ文字サイズであっても,書体の太さにより文字の見やすさ は異なるとして,JIS規格 高齢者・障害者配慮設計指針-視覚表示物-日本語文字の 最小可読文字サイズ推定方法から,年齢に合った読みやすい文字サイズを算出し,
その文字サイズにおける見やすい書体の太さと視距離の関係について検討した.
氏間[172]は,晴眼者を被験者として,漢字の混み合い度と線幅を要因,識別サ
イズと構造確認サイズを従属変数として,晴眼状態と白濁フィルター状態におけ る混み合い度と線幅の関係を検討した.ロービジョン者の文字の認識において混 み合い度は重要な要素であり,透光体混濁のあるロービジョン児に漢字を指導す る場合,漢字の構造が単純であれば線幅を太めに設定し,構造が複雑であれば線 幅を細めに設定することで構造を捉えやすくなると報告した.
井上ら[53]は,建物等に掲示する案内表示に関して,高齢者やロービジョン者 にも分かりやすい書体を検討したところ,文字はロダン,数字はセンチュリーゴ シックの可読性が高かったと報告した.
Russell-Mindaら[25]は,欧米の書体としては,Times New Romanのようなひ げ飾りのある文字よりも,ArialやVerdanaなどのひげ飾りのない文字がロービ ジョン者にとって読みやすいことを報告した(図1.9).
図 1.9 欧文書体の例
図 1.10 日本語書体の例
日本語の書体については,石田ら[112]が,ロービジョン生の読みやすい文字を 調査している.ロービジョン生で明朝系の文字を好む者は少なく,14ポイント程 度の文字サイズを使うロービジョン生は,MSゴシックなどのあまり太くない文字 を好むこと,それよりも大きい文字サイズを使うロービジョン生は,MGゴシック やHGS創英角ゴシックなどの,より太い字体へと読みやすい書体が移っていくと 報告した(図1.10).