1.3 視環境の最適化
1.3.10 図形や線の最適化
線幅の最適化
谷村[162]は,視力0.03〜0.2のロービジョン生12名を対象として,確認距離の
最低基準を25cmとした時の線幅の見え方を検討したところ,線幅 0.1〜2.5 mm
の直線のうち,全ての被験者で基準に達したのは0.5 mm以上の線幅の直線であっ たと報告した.これは,ポイントに換算すると約1.4 ポイントである.谷村は,直 線が並列している場合は,幅が太いと分離距離は大きくなり,幅の違った線を区 別するためには,線幅以上の間隔が必要であることを示唆した.
小林[97]は,ロービジョン者の認知可能な線幅について,最小視認閾ではなく,
楽に見ることのできる線幅を有効線幅として求めている.10名の晴眼者を被験者 として,白濁眼鏡による混濁,凸レンズによる屈折異常の2条件で,A4用紙に横 7×縦5の35個の数字をランダムに配置し,左上の位置から20本の線で各数字を 継いだ線をたどりながら数字を音読するのに要した時間を,認識しやすさの指標 とした.線幅は0.1 mm 〜 1.5 mm まで,対数で等間隔になるように10種類,実 線,破線,点線,鎖線について検討している.その結果,中間透光体混濁の方が 屈折異常より有効線幅が太いこと,点線は直線に比較して有効線幅が太いことを 報告した.線幅の予測式として,
中間透光体混濁 y= 1.05 + 0.07x
屈折異常 y= 0.52 + 0.23x
を導いている.ただしx は近見視力である.
高橋ら[73]は,三角形,正方形,菱形,五角形,六角形,円形の図形から,ラ ンダムに縦5 × 横5 の25個をディスプレイに表示し,その中に五角形の図形が 含まれる数をカウントするのに要した時間を指標として,線の見やすさを評価し
ている.赤,青,黄,白の各色ごとに,線幅を8,4,2,1ピクセルと変化させな がら,色ごとの有効線幅を求めたと報告した.
図の最適化
田中ら[169]は,ロービジョン児童生徒のための拡大教科書について,各学校に
おける使用状況と,指導担当者と生徒を対象に拡大教科書の評価に関する実態調 査を実施したところ,解決すべき課題として,文字サイズやフォントなどの他,地 図等の中の文字の表記方法,グラフ,レイアウトといった諸点を報告した.
谷村[162]は,ロービジョン者にどの程度図や表を拡大修正すれば正確な視認識
を与えるために有効なのかを検討するため,視力0.03〜0.2のロービジョン生12 名を対象として7種の基本的な図形の見え方を調べた.図形には,確認に必要な 有効限界面積があり,三角形で4cm2,正方形で16cm2,六角形で10 cm2,円で 30 cm2であった.外接または交又要素をもつ図形は変形して認識されやすく,内 接または内包要素は,外形の影響で確認しにくい傾向があったが,用いる線の幅 を修正すれば,解決が可能であることを報告した.谷村は,教科書中の図をロー ビジョン者に視認させやすくするための具体的な方策として,
1. 適切な倍率
2. 本質的必要性の少ない要素の除去
3. 十分な要素間隔
4. 全体的に線を太く修正
5. 主要部の強調
6. 線輻の違いによる要素の表現
を挙げている.
辰巳ら[48]は,拡大教科書作成作業における紙面上でのレイアウトについて,各 ページに配置する図や文章などの要素の配置を,原本の内容を基に自動で行うア ルゴリズムの開発を行った.試行後,アンケート調査で検証し,その有効性を報 告した.