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文字サイズの最適化

ドキュメント内 2014,12,24 (ページ 52-57)

1.3 視環境の最適化

1.3.4 文字サイズの最適化

漢字の複雑さと文字サイズ

中根[153]は,視距離による見え方の差異は,視対象のなす視角が同じであれば

無視できるとし,見やすい文字サイズは,視角として扱うことで,机上の読書材 料から黒板に提示する読書材料の文字サイズを規定できるとした.ロービジョン 者に最適な文字サイズを推定する方法として,字を読むために識別が要求される 細部の寸法は,2画の漢字で文字寸法の1/11,8画の漢字で文字寸法の1/14,23 画の漢字で文字寸法の1/19から,計算によって求められると報告した.

読書評価と読み刺激の統制

Sloanら[27]は,読書評価に用いる刺激を,字一つ視標ではなく,長さや文字の

間隔などの物理特性を統制した文章を用い,視距離を固定して読書評価を行った.

提示する文字サイズを大きな刺激から徐々に小さくして,容易かつ快適に読書で きる最も小さい文字サイズを最適文字サイズと判定した.

北尾[170]は,大学生を被験者とし,平仮名文と漢字混じり文の読みやすさを比

較したところ,それぞれの読みやすさは言語経験の有無の差によって異なるとし,

高次の言語理解が読みに影響することを示唆した.

一方,小田[66]は,同じ内容の文章を2週間の間を置いて2回読ませた実験で は,記憶の効果は有意にはならず,被験者の主観的な記憶の程度と読書成績に相 関はなかったことから,読書材料の制御によって高次の言語理解・記憶の関与を ある程度均一にできることを示した.

MNREADによる最適文字サイズの推定

Leggeら[16]は,読書に適した文字サイズの推定値として,臨界文字サイズを

用いる評価法MNREAD(The Minnesota Low-Vision Reading Test)を提案した.

MNREADを用いて計測される,1分間に正確に音読できた文字数を読書速度(文

字/分),読書速度を文字サイズの関数で表したグラフを読書曲線(reading curve)

[20]という.読書速度を落とさずに読むことのできる最小の文字サイズを臨界文字 サイズ(critical print size:CPS),文字サイズが読書するのに適当な条件で提示さ れたときの読書速度の平均値を最大読書速度(maximum reading speed:MRS),

文字を文字として知覚できる最小の文字サイズを読書視力(reading acuity:RA) という.

MNREAD-J及びMNREAD-Jk

小田[91]は,MNREADの日本語化を行ってMNREAD-Jを開発した. MNREAD-Jで用いられる刺激文は30文字からなり,8文字の教育漢字を含んでいる.さらに,

中村ら[123]は,小学生向けに合計24文字の平仮名9単語からなるMNREAD-Jk

を開発した.このように日本語化されたMNREADを用いて計測された読書曲線 を基に,様々な研究が展開された.

川嶋[45]は,臨界文字サイズ前後の文字サイズにおいて,読界文字サイズより 大きな文字サイズは,臨界文字サイズを下回る文字サイズと比べて混み合い効果 が生じないことを報告した.氏間ら[174]は,臨界文字サイズ付近で音読速度が大

きく変化する要因を明らかにするため,バンガータフィルタを用いた低視力状態に おける検討をおこなったところ,臨界文字サイズ未満の文字で音読速度が低下す る要因は,単語認識時間の延長によるものであると報告した.小田ら[69]は,晴眼 者を被検者として,PCのディスプレイにMNREAD-Jの刺激文を平成明朝体W3 で提示して計測した.紙で実施した場合と比較して,若干の検査値の違い,計測 時の読み誤りデータの取得が困難であるという問題を指摘しながらも,臨界文字 サイズを決定するという意味では実用的な結果を得たと報告した.中村ら[125]は,

加齢黄斑変性症の患者で通常のMNREAD-J検査ではプラトーの見られない14例 について,48インチのプラズマディスプレイに1.7から2.5 logMARで刺激文を提 示して計測を行うと,13例でプラトーが観察されたと報告した.プラズマディス プレイを使うことで,1.30 logMARまでしか測定できない通常のMNREAD-Jの 幅を広げられることを示唆した.

読書評価の有用性

小田[68]は,通常,人は閾値レベルで行動をするのではなく,余裕を持った閾上 レベルで生活をしている.読書行動に関していえば,臨界文字サイズは視覚の処 理行動が安定する刺激強度であり,効率が最大になる閾値であると主張した.武内 ら[42]は,最大読書速度及び臨界文字サイズと視力の関係が見いだせない理由と して,最大読書速度及び臨界文字サイズが,視野の状態や透光体の混濁の有無と いった,視力以外の要因に大きく左右されることによると考察した.中村ら[124]

は,19名のロービジョン者に対し,新聞を読むために処方されたリーディングエ イドの倍率は,視力から推定された値より,臨界文字サイズから推定される倍率 の方がよく適合したと報告した.氏間ら[175]は,臨界文字サイズは,100インチ のディスプレイを3 mの視距離で閲覧させるといった大型電子化提示教材の文字 サイズの推定に利用できると報告した.Subramanianら[28]は,30名の晴眼者を 被験者として,視距離条件を変えながら,MNREADによる計測の再現性を検討 したところ,MNREADを用いた臨界文字サイズ,最大読書速度,読書視力の計測 は信頼性が高いと報告した.Yuら[35]は,中心暗点の患者に対する周辺視野を用 いた読書のトレーニング効果の検証方法として,MNREADを用いることが有効 であると報告した.Merrillら[19]は,63例の白子症の患者に対して,MNREAD を用いて印刷文字サイズを決定することが就学・就労において有効であったと報 告した.Virgiliら[32]は,76例の網膜色素変性症患者に対して,MNREADを用 いた読書評価及び視力,視野,コントラスト感度といった視覚特性の評価を行っ て検討したところ,ほとんどの患者で読書速度の低下がみられたこと,読書速度 はコントラスト感度、視力、視野と相関することを報告した.

中心暗点の有無と最適文字サイズ

Leggeら[15]は,ドリフト文字列の視認において,中心視野が利用できる場合で

は視角が3.0〜6.0゜で読書速度が最大となるのに対し,視野の中心に暗点がある

場合[14]では視角が12〜24゜で読書速度が最大となったことから,中心暗点のあ

る場合では最適文字サイズが大きくなることを示した.Chungら[7]は,視野の偏 心度が増すと最大読書速度は低下し,臨界文字サイズは大きくなることを示した.

Fletcherら[9]は,MNREADを用いて暗点の状態と読書速度の関係について評価

した.Cheungら[6]は,加齢黄斑変性症などによる中心暗点があり,MNREADの

読書速度の結果に欠損値がある場合では,2本の直線をフィッティングする方法よ り,指数減少関数を用いる方が読書曲線によくフィットすると報告した.

ドキュメント内 2014,12,24 (ページ 52-57)